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GOLGOのひとりごと

MGの決算と真善美

2022.05.22

「先生とても無理っす。全然わかりません」

初心者ばかりの出張MGの2日目。

それまで彼の周りには先に決算を終えた数人の仲間たちが見守っていた。

どうしても差額が見つけられないらしい。

彼にはさっきもワルツを教えたばかり。
転記と合計の意味をごっちゃにしている。
ひとつしか値の無い行を合計すると、まるで値を合計欄に転記したように見える。それを何度か繰り返している内に、合計を転記と錯覚してしまう。MX会計表のUターンの後でよく生じる勘違いだ。

だからもう一度あずきバーの説明をした。会計恒等式のマグネットを90度回転させて・・・。
あとはやってみるだけの状態。
そこで仲間が教えに来たらしい。
彼は致命的なミスを犯した。
自分自身ではなく仲間の方を信じてしまい、結局また混乱に陥った。
助けようとしたはずの仲間が間違えたのだろう。よくあることだ。
他責思考が心を蝕んでいるようだ。オレはツイてないとか、なんでオレだけとか。
本当は間違えた仲間ではなく、人にやってもらおうとした自分が原因なのに・・・。

人はどんな時でも主体性を手放してはならない。
手綱は自分で握るべきなのだ。
何を信じるかを決めるのは自分。
ギブアップした彼に、事情を説明して、もう一度自分でやってみるしかないことを伝えると、彼は顔をしかめた。
「まだやるんすか?」
完全に心折れた状態だ。何を信じていいのかわからなくなってしまっている。
「じゃあ、ここ(講師席)にイス持ってきて、見ててあげるからここでやってごらん」
そこから先は決算プログラムを普通にやっただけである。
15分ほどで終わった。
彼も途中から自分でできることに気付いた様子だった。

「やってみる」ということは簡単なようで難しい。
「まずやる、後でなおす」というのは学校では決して習わない考え方だ。
自分を信じられないとやってみることすらできないのが人間だ。
信じることは単純な意思決定に見えるが、実は「勇気」というパワーが要る。
その勇気をどこから得るかが問題なのだ。

MGの決算は一見、アタマの問題に見えるが実はココロの問題で多くの人がつまづく。
私もそうだった。

人間には3つの側面がある。

真=論理=頭の良さ

善=倫理=心の善さ

美=感性(暗黙知の世界)

心の善さとは素直さ、謙虚さ、凡事徹底。
これらの反対が横着さ、他責思考、なげやり。
人間は失敗を反省しPDCAを回して成長するが、それを阻害するのが心の問題だ。
どうせ自分は努力しても無駄だと思ってしまった人間はそこで止まってしまう。まるでエンジンが止まった車だ。失敗を恐れて挑戦することをやめてしまう。

考案者の西順一郎先生がマトリックス会計表を作る時に、心の問題の矯正を意図したという話は一度も聞いたことが無いので、これは「天界の仕業」であろうか?
素直さが大事だと人からいくら教わったところで、本当の意味を理解することは難しい。
彼のように土壇場まで追い詰められる体験がなければ、人はなかなか悟ることはできないものだ。
MGの決算ではその貴重な体験が積める。横着さが必ずしっぺ返しされる見事なシステムなのだ。

自分の会社は製造業じゃないからMG(の知識)は役に立たないなどという方がたまにみえるが、MGで重要なのは知識(データ)よりむしろ考え方(プログラム)の方だ。

同じデータを入れたとしても、処理するプログラムが違えば結果は変わってしまう。
今の世の中、知識やデータは本やYouTubeやそこらのセミナーでいくらでも手に入るが、考え方(プログラム)はそう簡単には書き換えられない。

データで人生が変わることはない。MGで人生が変わる人が続出するのはプログラムが変わるからに他ならない。
単なるノウハウが目的ではなく、思想がそこに宿っているからこそ、MGを何百期もやる人がいるのだ。

「まずやる、後でなおす」という考え方の大切さを、彼はきっと忘れないだろう。


ちなみに彼の感想文には、悔しいからまたやりたいと書かれていた。
初MGの時の私が帰りの電車で思ったことと同じではないか!笑

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