なぜ僕が社労士をやっているのか
GOLGO社労士事務所 所長 木村正士が社会保険労務士である理由
所長が独立を志したきっかけは何でしたか?
おそらく僕は、嘘をつけない性格なんだと思います。良くも悪くも、真面目なんでしょうね。だから、組織の中で自分の本音を抱えながら、うまくやっていく事が出来なかった。
出版や、ホテルや、工場やら、いろいろな所で働きましたが、働くということは自分の時間を売ることなんです。会社は労働者から時間を買い、労働者はその時間、会社の指揮命令に従わなきゃならない。つまり自由じゃなくなるわけです。
サラリーマンという生き方のメリットは安定です。デメリットは働き方を自分で決められないこと。
僕の中では、明らかに自由の方が安定より優先順位が高かった。
だから25歳の時にせっかく入った出版社の正社員という地位をあっさり捨てて退職することができたのです。
この事に気付くのに、随分と時間が掛かってしまったなと思います。大手自動車メーカーの正社員登用試験に落ちて、同じ期間工の仲間のアパートに遊びに行った時にこんなことを言われました。
「木村さんはすぐ上司に意見ばっか言うから嫌われる。あいつらは黙ってロボットみたいに、言われた通りに働く奴が好きなんよ。キミみたいな人はもし仮に試験に受かっても続かんと思うよ。・・・それにしても困ったね。おいらは一人モンだからいいけど、木村さんには家族がおるけんね。35過ぎて手に職も無い人が今さら就職はきついよね。作業もトロ臭いし、運転も上手くないから、運転手とか無理やしなあ。」
客観的な彼の言葉で、目が覚めました。それまでは、家族のためになんとか正社員になろうとして、向き不向きも考えずに目の前のニンジンを追いかけていた私でしたが、この時はじめて本当の自分と向き合ったのでした。
なるほど、その時は社労士と決めていたわけではなかったのですね
自分の過去を振り返ってみたら、試験と名のつくものは、意外と上手にクリア出来て来たのがわかりました。一方、会社組織に属することに関してはとても苦手で、特に価値観の違う上司に合わせることが致命的にできなかった。だから、期間工仲間の言うとおり、正社員登用試験を受けてもいいことは無さそうです。
会社員向きの性格ではないということを素直に認めて、勤め人とは違う生き方を考えてみるしかない。そういう結論に達しました。それで食べていくために資格を取ろうと思いました。様々な資格の中で、難易度がそれほどでもなくて、そこそこ収入が得られそうだったのが社労士でした。
そのようにして試験勉強を始めたわけですが、その段階では、社労士の仕事をちゃんと理解していませんでしたし、本当に食べて行けるかも分かりませんでした。世の中にそれで食べている人が居るのだから、何とかなるんじゃないかという、頼りない期待だけでした。
ただ、社労士を選んだもうひとつの理由は、人を扱う仕事だという点がありました。若い頃から小説家になりたかったり、それで出版の世界に入ったり、ホテルも楽しかったのは、人を相手にする仕事だったからかなと。人に興味があったんだと思います。
実際やってみて、その直感は当たっていたと思います。一般的に考えると、自分はあまり使い勝手のいい人間ではないと思いますが、だからこそ色々な立場の人のことをちゃんと考えることができるのかもしれません。
所長に顧問をお願いすると、会社にはどのようなメリットがありますか?
経営者と労働者の間には、決して埋められない溝が有るんです。労働者はどうしたって経営者に本音を言うことができない。
経営者は労働者が辞めると言い出した時に初めて労働者の本音に気付くわけです。大抵の社長さんは、うちの社員たちはそれなりに満足していると言われるのですが、それは社長の思い込みであることが多い。
労働者自身もはっきりと気付いていないかもしれませんが、いつかきっと気付いてしまうような不平不満がドロドロと渦巻いているものなんです。
そういう状態の会社を、将来にわたって経営していくためには、第三者からの意見が欠かせないわけです。私もあの時の期間工仲間の言葉が無かったら、今頃どうなっていたか分かりません。彼自身は感じたことを率直に言ってくれただけかもしれませんが、それは第三者だからこそ状況が客観的に見られたんだと思います。
また、かつて私自身が不満を抱える労働者だったからこそ、社労士となった今、ドロドロの中身が想像できるのかもしれません。サラリーマンをやる上では足かせとなってしまった「嘘をつけない性格」ですが、経営者が労働者の本音を理解するためにはお役に立てると思います。
最後にこれを読んでいる方へのメッセージを!
私はこの仕事がとても好きです。
最近ある番組で「幸せとは、愛する人を幸せにする事だ」と言われているのを見て、なるほどと思いました。
自分ひとりの欲望をかなえることは、大した幸せではない。世のため人のために自分が何かできた時に、人は本当の幸福を感じることができるというわけです。
私はこの仕事を通じて、社長さんと社員さんが共に幸せになれるお手伝いがしたいと思っています。社長さんもきっと社員の幸せを願っていると思います。社員の皆さんもそこに属する以上、会社の発展に貢献したいはずです。たまたま同じ時代に生まれ、同じ時をすごすことになったのですから、みんなが幸せになれることを考えたいですよね。
一緒にいい会社を作っていきましょう。