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GOLGOのひとりごと

なぜ社員は社長のように考えられないのか?(企業にとっての憲法論)

2014.01.05

小室直樹の代表作『日本人のための憲法原論』を読みました。

https://www.youtube.com/watch?v=cmFwl5sh0uM

宮崎哲弥、橋爪大三郎、宮台真司が小室直樹のことを全力で推薦しているのを見て、その著作を読みたいと思いました。
それを読んで、気付いた点がこのコラムの表題です。


多くの社長さんとお話をしていて、とてもよく言われる悩みが以下のようなものです。
・なぜ社員は社長のように(自分で)考えられないのか?
・社員が自分で会社のためを思って働いてくれないのはなぜか?

つまり、経営者は社員も含めた会社全体のことを考えて行動しているのに、社員は自分の仕事のことしか見ることができなかったり、社長の気持ちを理解せず、利己的な行動ばかりしたりするということです。
経営者と社員とは、共に利益を生み出しそこから糧を得るという運命共同体なのですから、もっと思いが一致しても良いのではないかと思うのですが、実際にはそうはなりません。

社長のように考えて行動してくれる社員(=自律的社員)を育てる方法はあるのでしょうか?

現場を見る限り、それは無理だとこれまで私は感じていました。

ところが、この本を読んでみて、自律的な社員を育てる方法はあるかもしれないと思いました。

この本に書いてあるのは、国家において民主主義や憲法がそもそもどういうものなのかという『そもそも論』(=原論)なのですが、国家を企業に置き換えてみると国民は社員ということになり、国家権力とは経営者ということになります。
そうして考えてみると、企業における自律的社員とは、国家における自律的国民ということであり、国民が自分で国のことを考えて行動するように仕向ける方法が分かれば、それが企業にも応用できるはずです。

で、結論を言いますと、企業における憲法を定めることが自律的な社員を育てるための必要条件ではないかと思うのです。

ここで言う『憲法』というものの意味が重要で、恥ずかしながら私はこれまでよく知りませんでした。そしてこの本を読んだことにより、『憲法』というものの意味を完璧に理解することができたと思います。

●憲法とは国民が国家権力を統制するためのもの

これに対し、普通の法律は『国家権力が定めた国民に守らせるルール』です。企業における就業規則とは、国家における一般的な法律に相当します。

必要条件と言ったのは、憲法を定めればすぐに国民が自律的になるかを考えればすぐ分かると思います。選挙の投票率がそれを物語っています。憲法は自律的国民育成のための十分条件にはなり得ません。
ただし、もし憲法が無ければやはり、自律的国民は絶対に育たないでしょう。

よって、企業において自律的な社員を育てたければ、まず社員の権利を保障することから始めなくてはダメです。経営者の権力の範囲を明らかにしなくてはなりません。

そのために最も重要なのは『雇用契約書』です。

雇用契約書をまず、きちんと書面で交付すること。
人間の記憶は曖昧にできているため、書面は非常に重要です。

そして、雇用契約書には社員の権利と考えられるものをしっかりと書くこと。
たとえば、就業規則に「勤務時間中は上司の指示に従わなければならない」とあったとして、「上司の指示」はどこからどこまで許されるのかが書かれていなければ、社員の権利は保障されたとは言えません。

たとえば社長が公私混同して、社長の趣味で使うゴルフ用品の手入れを部下に命じることがあるかもしれません。もちろん、社長の身の回りの世話を目的として雇われた社員であればいいですが、事業内容とまったく関係のない社長の私生活のために労働を命じられることに対しては、社員は戸惑いがあるでしょう。こういったことが実際にあるか無いかではなく、あらかじめ定めておくことが権利を保障することにつながるのです。
・上司から部下への指示は事業の目的に即したものであるべきである。

また、上司の指示と外部の法律との関係もあります。実際に私もかつて期間工時代に、フォークリフトの免許を持っていないにも関わらず夜勤の時にこっそりフォークリフトを運転するように指示されて困ったこともありました。
・上司から部下への指示は外部の法令を遵守して行わなければならない。

賃金の変更も、経営者の権力によって行われることです。定期昇給という考え方は、公務員以外では一般的ではなくなりましたが、これを定めればとても価値のある社員の権利になるでしょう。定期昇給が無理だとしても、賃下げを行わないとか、賃下げを行う場合のルールを定めておくことも可能です。
・原則として賃下げは行わない。経営上の高度の必要性がある場合にも、6カ月以上前に額を予告して行うこととする。

一般に出回っている雇用契約書のひな形には、こんな条項は一切書かれていないと思いますが、多くの経営者が望んでいる『自律的社員の育成』のためには非常に重要です。
・社員の権利を明確にすること。
・社員の権利を可能な限り大きく認めること。

もちろん、権利の保障だけでなく、企業の目的や経営理念をしっかりと伝えることも必要です。(目的ばかり力説しても、権利の保障をしっかり行わなければ、自律的社員は育ちません。そういう企業が非常に多いような気がします)

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