GOLGOのひとりごと

言葉に力を与えるもの

2021.05.21

昔々、私が就職活動をした時の話。

結果的にたった一社から内定を得られたのだが、その時の決め手になったであろう一言を今でも覚えている。

その時は最終面接だった。それなりに好感触で話が進んでいたと思うのだが、いまひとつ決め手に欠ける感じもあった。

だが、その一言が出た後はガラリと雰囲気が変わって明らかに話が収束していった記憶がある。つまり相手が納得した瞬間だった。

私はさして意識高い系の学生ではなく、当時のバブル景気の中、内定ぐらいは適当にやってもいくつかは取れると多寡をくくって大した準備もせずに4年生になってしまっていた。そして、いくつかの会社を試しに受けてみるもなかなかうまく行かないことに気付いてからは慌ててマスコミ業界に的を絞って(興味のない業界では却って受からないという判断だった)本腰を入れて活動をやり直すも、時すでに遅く、大半の大手が採用を終える時期になってもひとつも内定が無い状態に陥っていた。

そんな中、最後に受けた出版社でのことだった。内定状況を聞かれて私は正直にどこも受かっていないと答えた。他に受けている会社についても聞かれ、それも無いと答えた。

「もしもうちを採用にならなかったらどうするつもりですか?」
実はこの質問については事前に考え尽くしていた。聞かれなくてもそういう状況であれば、考えるであろうことだ。

正直、就職活動に関しては出遅れた感があった。友人の中には就職活動をやり直すために留年するという者もいた。確かに大学受験に浪人があるのだから、就職にも再チャレンジがあってもいいと思う。何しろ、新卒での採用と中途採用や既卒採用とでは大きなハンデがあった時代だ。大手などは新卒以外採用しないという会社も多かった。そういった状況を鑑みれば、就職浪人という選択も不合理とは言えなかった。私はたまたま現役で大学に入っていたので、一年くらい浪人しても年齢的に不利になるほどではなかったと思う。

ただ、私はそのようなゆがんだ就職戦線に踊らされて時間を無駄にすることに違和感を感じていた。就職活動に失敗したのは自分の責任だし、ひとり暮らしまでさせてもらってわざわざ留年するのは親に対しても申し訳ないと思うところがあった。だからたとえ就職で不利になるとしても、余計な学費の掛からない卒業という選択をしようと思っていた。

もちろん卒業後は親からの援助はストップし、自分でアルバイトでも何でもやって生計を立てつつ、就職するなりの道を探ろうと思っていた。面接で問われた時に、そこまで細かい説明はしなかったが、自分の中では答えの出ている結論を淡々と述べることができた。

「はい。その時は仕方ないので、アルバイトでもやりながらどこか採用してくれる会社を探そうと思います」

こんな感じだったと思う。

面接を終えて会場を後にする時、私は相手と対等に話ができたことに手ごたえを感じていた。正直、それまでの就職活動では面接時に何と答えるか? 何と言うか? そればかりを考えていた。つまり言葉のレベルでしか考えていなかった。まるで面接を正解のある筆記試験のように考えていた。問答における正解さえ見つけられれば採用されるかのように。

でも、この時は違った。私はこの年の就職活動でこの会社を最後にするつもりでいた。それまでは受かりたい、採用されたいと思っていたが、この時は開き直っていた。そう簡単に受からないこともさすがに分かったし、自分程度の浅知恵で小細工をしても仕方が無い、相手に気に入られなければ終わりだと悟っていた。この状態を「覚悟」というのかもしれない。

今となっては自分が面接をする側なのでわかるが、言葉はそれ単体では力を持たない。氷の上でタイヤが空回りしているようなものだ。本人の中で考え尽くして出てきた言葉と、面接対策で創作した言葉とではグリップ力が全然違う。

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