GOLGOのひとりごと
【法律守ってますか?】記事一覧
- 2024.06.18
- ついに51人以上の企業のパートに社会保険の適用が拡大されます
- 2023.05.10
- 派遣業の書類管理、大変ですよね?
- 2023.02.27
- 労働時間の把握ガイドライン(自己申告の場合の措置)
- 2023.02.20
- 労働時間の把握ガイドライン(把握の方法)
- 2023.02.14
- 労働時間把握のガイドライン(労働時間とは)
- 2023.02.06
- 割増賃金計算に算入すべき手当、除外可能な手当の実態とは
- 2023.01.30
- 割増賃金計算に算入すべき手当、除外可能な手当の概要
- 2023.01.16
- 育児を理由とする短時間勤務制度の内容
- 2023.01.10
- 育児を理由とする短時間勤務制度の対象者
- 2023.01.04
- 複数の事業所で雇用される場合の社会保険
- 2022.11.23
- 定年後継続雇用期間の「無期転換ルール」の例外
- 2022.06.28
- 社宅を貸したときの所得税
- 2021.10.26
- 労災保険の費用徴収
- 2021.10.04
- 労災で休業した日に賃金を払ったら休業補償の計算は?
- 2021.09.27
- 資格喪失後の保険給付(健康保険)
- 2021.09.20
- 64歳と65歳の失業保険の違いは?
- 2021.08.29
- 70歳までの就業確保
- 2021.08.23
- 育児休業中の就労
- 2021.08.17
- 産業医の選任
- 2021.07.25
- アルバイトの有休
- 2021.07.15
- 障害者の法定雇用率引き上げについて
- 2021.03.19
- 士業事務所の社会保険の適用要件が変わります
- 2021.03.01
- 接骨院で保険は使えるか?
- 2021.02.26
- 労働基準法上の賠償予定の禁止
- 2020.12.30
- 平均賃金の基本的な考え方
- 2020.12.14
- 健康診断後の医師への意見徴収
- 2020.12.10
- フレックスタイム制における休日割増賃金
- 2020.11.30
- 従業員が休憩を取らない代わりに、早く帰りたいと希望した時の対応
- 2020.11.24
- 労働安全衛生法の健康診断の種類
- 2020.10.29
- 自動車通勤者の通勤手当
- 2020.10.19
- 別居している被扶養者の認定
- 2020.10.15
- 調査で判明する社会保険の誤解
- 2020.10.12
- 男性の育児休業の注意点
- 2020.10.08
- 給与から控除できる項目
- 2020.10.01
- 労働保険料の再確定申告
- 2020.09.28
- 育児休業中に有給休暇を取得可能か?
- 2020.09.14
- 労働者死傷病報告
- 2020.09.04
- 労働保険料申告手続きを忘れたら?
- 2020.09.02
- 令和2年度、被扶養者資格の再確認について
- 2020.09.02
- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金について
- 2020.09.01
- 休業等があった場合の算定基礎届の考え方
- 2020.08.18
- 非常勤役員の社会保険加入
- 2020.08.14
- 育児休業終了日と雇用保険上の取り扱いについて
- 2020.08.12
- 障害者の法定雇用率
- 2020.05.19
- 未払い残業代請求訴訟における「付加金」
- 2020.05.12
- 外国人を雇用する際の注意点
- 2020.05.01
- 役員の社会保険加入
- 2020.04.27
- 台風で休業した時の休業手当
- 2020.03.31
- 試用期間の延長はできるか
- 2020.03.24
- 従業員への罰金制度は違法か?
- 2020.03.09
- 監視または断続的労働従事者の取扱
- 2020.02.10
- 転籍は拒否できるか
- 2019.12.13
- 振替休日と代休
- 2019.10.25
- 産前産後の労働者への対応
- 2019.10.21
- 外国人の雇用
- 2019.10.15
- 子供を雇う時の注意点
- 2019.10.04
- 賃金台帳と労働者名簿
- 2019.09.30
- 労働時間の適正な把握&措置
- 2019.09.27
- 従業員代表の適法な選出
- 2019.09.13
- 労働条件の調査
- 2019.09.06
- サマータイムの導入に必要な届出
- 2019.09.02
- 最低賃金と労働時間
- 2019.08.09
- 36協定
- 2019.08.05
- 算定基礎届について
- 2019.08.02
- 労働保険の年度更新
- 2019.07.22
- 公正な採用
- 2019.07.05
- 定期健康診断の報告
- 2019.06.27
- ダブルワーカーを雇用した場合の時間外割増の計算
- 2019.06.23
- パートタイマーへの労働条件の通知
- 2019.06.20
- 人事労務関係の書類の保管義務
- 2019.05.19
- 夜勤者の健康診断
- 2019.04.15
- 試用期間中の社会保険
- 2019.03.12
- 休業手当
- 2019.02.28
- 健康診断を実施後に会社がするべき事
- 2019.02.25
- 障害者雇用率制度
- 2019.02.22
- 労務関係の書類保管
- 2019.02.12
- アルバイトにも有休?
- 2019.02.12
- 社員旅行は労働時間か?
- 2019.02.05
- 夏休みや冬休みを有休消化日にできるか
- 2019.02.01
- 在宅勤務のみなし労働時間
- 2019.01.31
- 社員を雇った時の書類
- 2018.12.21
- 最低賃金に関する法律
- 2018.11.20
- 管理監督者の条件
- 2018.08.13
- 休憩時間中の「電話番」
- 2018.08.06
- 社員の健康診断
- 2018.07.30
- 36協定について
- 2018.07.23
- 平成29年10月施行 育児・介護休業法改正
- 2018.04.16
- 宿直・日直で気を付けること
- 2018.02.26
- 採用の自由と公正な募集
- 2017.12.17
- 事業所の社会保険適用状況がWEBで検索できる?
- 2017.11.12
- パートの制約条件
- 2017.08.27
- 賃金の注意点
- 2017.08.13
- 健康診断の費用負担とその間の賃金
- 2017.08.06
- 会社が行うべき健康診断の種類
- 2017.07.30
- 雇入れ時の健康診断
- 2017.06.18
- 賃金の5原則
- 2017.05.28
- アルバイトやパートにも雇用契約書が必要か?
- 2017.04.17
- 労働関係の書類の保存期間
- 2017.03.14
- 会社の都合で社員に休んでもらった時に給料を払う必要があるか?
- 2016.12.13
- 賃金の直接支払原則
ついに51人以上の企業のパートに社会保険の適用が拡大されます
事業主の皆さん、今年の10月からパート労働者への社会保険の適用拡大が更に進むのを御存じですか?
2022年10月から101人以上の企業に対して適用拡大が行われましたが、今度は51人以上の企業に対して適用拡大が行われます。
まずはこの従業員数51人のカウント方法が気になりますね。
従業員数=フルタイムの労働者数+週所定労働時間がフルタイムの3/4以上の労働者数
よくある勘違いはこれですね↓↓↓
従業員数=その会社の全ての労働者数
普通は従業員数といったらこちらを思い浮かべるのではないでしょうか。
週所定労働時間がフルタイムの3/4以上の労働者のことを仮に準フルタイムと呼ぶことにします。
労働基準法での週所定労働時間は40時間が限度なので、準フルタイムは週30時間以上の人と考えればイメージしやすいと思います。
なので、フルタイムと準フルタイムは適用拡大前から社会保険に入るべき人です。
では適用拡大とは何かというと、週20時間~30時間の労働者も社会保険に入れるということです。
2024年10月からの適用拡大をわかりやすく言うと、
フルタイム+準フルタイムの人数が51人以上の企業に在籍している週の労働時間が20時間以上の人も社会保険に入らなくてはならなくなる、ということです。
ある程度の規模の企業では、それらの労働者を社会保険に加入させる(保険料を負担させ、会社も保険料を負担する)しか仕方ないでしょう。
ですが、フルタイム+準フルタイムの合計人数がギリギリで51人になってしまったり、100人弱までの企業なら、もう一社法人を作るという手もあります。
厚生労働省のパンフレットによれば、人数のカウントは法人番号が同一の企業を合計するということですので、法人番号が別の法人をもう一社作って人数を振り分けて、別会社からの派遣や請負という形にするのも可能だと思います。
(ただし、専ら派遣は禁止されていますので、派遣を行う場合には派遣法を遵守する必要があります)
この改正に伴い、2024年10月以降は年金事務所の調査も増えると思われます。会社にとってもパート労働者にとっても大きな影響があると思われますので、注意が必要です。
派遣業の書類管理、大変ですよね?
派遣業は許可事業です。
国の許可が無ければ業務を行うことができません。許可を取るためには財産要件など厳しい基準をクリアする必要があります。
許可が取れても実際の業務運営がきちんとできていなければ、調査が入って、注意指導、それでもダメなら最悪の場合、許可取り消しになってしまいます。
結局、派遣業を続けていくためには、書類整備は避けては通れないのです。
それに加えて近年は派遣元を悩ませる新しい制度が続々と施行されてきました。
・キャリアアップに資する教育訓練
・同一労働同一賃金(労使協定の締結など)
これらひとつひとつは本気で取り組めばできることばかりですが、役所に問い合わせてもなかなか親切には教えてもらえませんし、長くて眠い講習会に行っても、実際に何をどうすればいいかはなかなか掴めないという方も多いと思います。
そこで当事務所では、派遣業安心パックと題して派遣業の方へのサービスプランをご用意いたしました。
《派遣業安心パック》
当事務所への顧問料にプラス月1万2千円で派遣業の書類作成を徹底指導いたします。
アフターコロナで労働局の調査も増えてくることが予想されます。
調査で問題になると、派遣先へも迷惑が掛かる可能性があります。
特に、派遣業の経験がない方が初めて派遣業務を行う時は不安ですよね。
確実な事業運営のために、派遣のプロをご活用ください。
労働時間の把握ガイドライン(自己申告の場合の措置)
自己申告制により行わざるを得ない場合、 厚労省のガイドラインによると以下の措置を講ずることとされています。
(ア) 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、 労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
(イ) 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
→これらは、当事者たる労働者及び使用者(会社)に対して「自己申告制については注意すべきだからガイドラインをしっかり説明するように」という牽制がなされているものです。
(ウ) 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の 労働時間の補正をすること。
→ここでは使用者に対して、自己申告制により労働時間が適正に把握されているか否かについて「定期的に実態調査を行い、確認すること」を求めています。 特に、労働者が事業場内にいた時間と、労働者からの自己申告があった労働時間との間に著しい乖離が生じているときは、労働時間の実態を調査するようにしてください。
(エ) 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
→(エ)については、会社からの「なんでそんなに時間オーバーしたんだ!?内容を報告せよ」という行為そのものが労働時間を短く申告させる原因になり得るということに言及しています。時間が乖離している理由を報告させること自体は悪くないですが、プレッシャーを与えて事実を捻じ曲げることのないように注意しなさいということが述べられています。
(オ) 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的 に行われていないかについても確認すること。 自己申告による労働時間の把握については、あいまいな労働時間管理となりがちであるため、やむを得ず、自己申告制により始業時刻や終業時刻を把握する場合に講ずべき措置を明らかにしたものです。
→これは「時間外労働は◯◯時間までで、その後は認めない」「固定残業手当以上の残業代は払わない」などといった社内ルールがあることが正確な時間管理を阻害する可能性があることについて言及しています。
労働時間の把握ガイドライン(把握の方法)
労働時間の適正な把握は使用者(会社)の義務です。自己申告に任せて出勤時間管理をするだけでは十分ではないことに注意が必要です。以下厚生労働省が示したガイドラインをもとに解説します。
2、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
①始業・終業時刻の確認・記録
使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。
労働時間の適正な把握を行うためには、単に1日何時間働いたかを把握するのではなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定する必要があります。
つまり、会社は労働者の時間管理を「日毎に」「いつからいつまで働いて」「休憩をいつからいつまでとったか」を確認しておかなければならないということです。
始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によることとされています。
(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
(イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
(ア)について 「自ら現認する」とは、使用者自ら、あるいは労働時間管理を行う者が、直接始業時刻や終業時刻を確認することです。なお、確認した始業時刻や終業時刻については、該当労働者からも確認することが望ましいものです。
(イ)について タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を 基本情報とし、必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを突き合わせることにより確認し、記録して下さい。
労働時間把握のガイドライン(労働時間とは)
労働時間の適正な把握は使用者(会社)の義務です。自己申告に任せて出勤時間管理をするだけでは十分ではないことに注意が必要です。以下厚生労働省が示したガイドラインをもとに解説します。
1、労働時間とは
使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示的・黙示的な指示により労働者が業務を行う時間は労働時間にあたります。労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されるとガイドラインでは定めています。
たとえば、ガイドラインによると次のような時間は労働時間に該当するとされます。
①使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
→労働紛争においてしばしば争点になりますが、営業開始前の掃除時間は労働時間と判断される可能性が高いものです。
②使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間 (いわゆる「手待時間」)
→昼休憩中に電話番を兼ねている場合などがこれにあたります。また、美容室など接客業における待機時間も労働時間と判断されます。
③参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
→会社が実質的に強制している研修や社内イベントは労働時間と判断されます。
割増賃金計算に算入すべき手当、除外可能な手当の実態とは
割増賃金計算に算入すべき手当と除外可能な手当は限定的に列挙されていますが、たとえ列挙されている手当であっても実態によって除外できないことがあります。
通勤手当
通勤手当については、一定額までは距離にかかわらず一律に支給するような場合には、この一定額部分は通勤手当ではないとされ、割増賃金の算定基礎に含まれることになります。
別居手当
別居手当は、通勤の都合により単身赴任など同一世帯の扶養家族と別居を余儀なくされる労働者に対して、世帯が二分されることによる生活費の増加を補うために支給される手当を指し、単身赴任手当・子女教育手当等と呼ばれることもあります。別居手当、単身赴任手当については「別居・単身赴任をしているか否か」というわかりやすい支給基準がありますので、その条件に合っている限り割増賃金算定に加えなくても良いでしょう。
住宅手当
住宅手当について基礎賃金から除外するためには、「実費に応じた手当であること」を満たす必要があります。つまり、住宅に要する費用に応じて①費用に定率を乗じた額とすることや、②費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多くすることなどでなければなりません。
典型的なN Gの例としては「実費用に関わらず一律に支払われる住宅手当」や、「賃貸住宅2万円、持ち家居住者1万円という定額支給」などで、この場合は基礎賃金から除外することはできません。(この点給与計算の間違いは多く見られます)社宅であるか、賃貸であるか、持ち家であるかといった住宅の形態ごとに一律に定額で支給されるものや、あるいは、管理職であるか、一般社員であるかといった住宅以外の要素に応じて支給されるものは該当ないことに注意が必要です。
割増賃金計算に算入すべき手当、除外可能な手当の概要
通常の労働時間の賃金の中には、家族手当、通勤手当のように、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて「実費弁償的に」支払われる賃金があり、これらをすべて、割増賃金の基礎にするとすれば、家族数、通勤距離等個人的事情に基づく手当の違いによって、それぞれに差が出てくることになります。
例えば通勤手当も割増賃金計算に算入した場合、遠くから通い通勤手当を多くもらっている労働者の方が近場の労働者よりも多くの残業代を受け取ることになります。
このことから、労働基準法施行規則21条では、割増賃金の時間単価を計算するときの基礎賃金から、除外することができる手当について次のように規定されています。
「法第37条第5項の規定によって、家族手当及び通勤手当の他、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第4項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。」(労働基準法施行規則21条)
・家族手当
・通勤手当
・別居手当(単身赴任手当)
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらは単なる例示ではなく「限定列挙」と呼ばれ、これらに該当しない賃金は逆に全て割増賃金の基礎賃金としなければなりません。また、上記の手当が支払われていた場合であっても、実際にこれらの手当を除外するにあたっては、単に名称によるものでなく、その実質によって取り扱うべきものとされている点に注意が必要です。
家族手当
家族手当とは「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」を指し、被扶養配偶者一人◯◯円、子供一人◯◯円などと定められているものを言います。そのため、扶養家族がいなくても一律に支給されている家族手当は残業割増単価から除くことができません。
育児を理由とする短時間勤務制度の内容
育児を理由とする短時間勤務制度について、どのような短時間勤務制度を定める必要があるでしょうか。
時間
短時間勤務は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。ただし、1日の所定労働時間を6時間とする措置を設けた上で、そのほか、例えば1日の所定労働時間を7時間、4時間などとする措置や、出勤日数を柔軟にしたり隔日勤務等を認めたりといったその他の短縮措置をあわせて設けることも可能であり、労働者の選択肢を増やす望ましいものといえます。
なお、日々の残業については規制されているものではありませんが、子育ての時間を確保するこの制度の趣旨からすると、望ましいことではありません。
対象期間
対象期間は、原則子どもが3歳に達するまでですが、小学校就学の始期(6歳になった日以降の最初の3月31日)のまで対象とすることが努力義務とされています。
育児短時間勤務中の給与や賞与
育児短時間勤務中は、短縮している労働時間に応じて給与は減額となり、賞与に労働時間や給与が考慮されている企業においては賞与も減額となります。ただし、労働時間の短縮分を超えて減額することは禁止されており、例えば短時間勤務となったことにより手当が無くなったり、実質時給単価が減少するような給与の減額は認められないことに注意が必要です。
不利益な取扱は禁止
前述の短縮時間を超える給与の減額のように、育児短時間勤務中の労働者への不利益な取扱は禁止されています。正社員から非正規社員に変更を求めたり、不当に低い評価をすることも不利益な取り扱いとみなされる可能性があります。
育児を理由とする短時間勤務制度の対象者
育児介護休業法により事業主は、3歳未満の子を養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる育児のための短時間勤務制度を設けなければなりません。
短時間勤務制度の対象となる従業員
短時間勤務制度の対象となる従業員は、以下のいずれにも該当する男女労働者です。(女性だけでなく男性も短時間勤務制度の対象となる点に注意が必要です。
① 3歳未満の子を養育する従業員であって、短時間勤務をする期間に育児休業をしていないこと。
② 日々雇用される従業員でないこと。
③ 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと。
④ 労使協定により適用除外とされた従業員でないこと。
以下のア)~ウ)の従業員は、労使協定により適用除外となる場合があります。
ア)当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない従業員
イ)1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
ウ)業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する従業員
短時間勤務制度に向かないケース
上記ウについて、「短時間勤務制度が馴染まない業務に従事している場合は除外対象となる」という意味ですが、具体的には以下のような業務が挙げられます。
・国際線のパイロットやC Aなど、業務の性質に照らして制度の対象とすることが困難と認められる業務
・労働者数が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない場合など
・流れ作業方式による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務など
・交替制勤務による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務など
・個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な営業業務など
なお、ウに該当する従業員を適用除外とした場合、事業主は、代替措置として、以下のいずれかの制度を講じなければなりません。
(a)育児休業に関する制度に準ずる措置
(b)フレックスタイム制度
(c)始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤の制度)
(d)従業員の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
複数の事業所で雇用される場合の社会保険
過去に厚生労働省が副業・兼業の促進に関するガイドラインを出した経緯もあり、複数の事業所で雇用されている人が増えてきたと思います。また、令和4年10月からは短時間労働者への社会保険適用が拡大されますので、短時間労働者=保険未加入者ではなくなっていきます。各保険の取り扱いについて見ていきます。
例:A社で週30時間勤務、B社で週10時間勤務のケース(両社とも雇用契約)
1、労災保険について
労働者が、副業・兼業をしているかにかかわらず、事業所ごとに労災が適用されます。よって、A社で被災した際はA社の労災、B社で被災した際はB社の労災が適用されます。また、A社からB社への移動時に起こった災害については、B社においての通勤災害として扱われます。
2、雇用保険について
労働者が週20時間以上勤務する場合(その他にも要件あります)等で、該当事業所で雇用保険に加入します。今回のケースで言えば、A社のみで加入をすることになり、B社では加入しません。仮にB社でも週20時間以上勤務する場合は、「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用保険関係にある会社での加入」となりますので、やはりA社のみで加入をするのが妥当でしょう。
3、社会保険(健康保険・厚生年金保険)について
労働者が週30時間以上勤務する場合(その他にも要件あります)等で、該当事業所で社会保険に加入します。今回のケースで言えば、A社のみで加入をすることになり、B社では加入しません。仮にB社が「特定適用事業所(短時間労働者でも社会保険加入)」に該当し、かつ、週20時間以上勤務する場合(その他にも要件あります)等で、B社でも社会保険加入義務が生じる可能性があります。この場合、両社で社会保険に加入することとなり、主たる事業所の選択や、両社の報酬額に応じた保険料を納付することになります。
従業員が副業や兼業をしている場合、他社で何時間働く契約になっているかの把握や適切な保険加入を進めていけるとよいでしょう。
定年後継続雇用期間の「無期転換ルール」の例外
原則として、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できます。(通算5年のカウントは、平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象)
しかし、定年後再雇用などをされている労働者についてもこの無期転換ルールを適用すると矛盾が生じるため、無期転換ルールの例外が定められています。
例外の内容
無期転換ルールの適用により、通常は、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者についても無期転換申込権が発生しますが、有期雇用特別措置法により、
- 適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、
- 定年に達した後、引き続いて同じ会社等に雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)
については、無期転換申込権が発生しないとする特例が設けられています。
特例の適用に当たり、事業主は本社・本店を管轄する都道府県労働局に認定申請を行う必要があります。わかりやすくいうと、労働局に「定年後の継続雇用者については無期転換ルール適用しないことにしたいので認めてください」と申請すれば、対象者の無期転換申し込みを会社は拒否できるようになります。
社宅を貸したときの所得税
従業員に対して社宅や寮などを貸与する場合には、従業員から1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)以上を受け取っていれば給与として課税されません。逆に言うと、一定以上の家賃を取っていなければ「住宅という形で給与を受け取ったとして」所得税が課税されてしまいます。
賃貸料相当額とは
課税の基準となる賃貸料相当額は次の(1)~(3)の合計額をいいます。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
課税のルール
1、従業員に無償で貸与する場合には、この賃貸料相当額が給与として課税されます。
2、従業員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。
3、従業員から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。賃貸料の50%を天引きしていれば所得税の面で問題はなくなりますが、上記の原則計算の方が賃貸料の50%より低くなることが多いです。
なお、現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担は、社宅の貸与とは認められないので給与として課税されます。なお、看護師や守衛など、仕事を行う上で勤務場所を離れて住むことが困難な従業員に対して、仕事に従事させる都合上社宅や寮を貸与する場合には、無償で貸与しても給与として課税されない場合があります。
労災保険の費用徴収
労働者を1人でも雇用した企業については、労災保険に加入する義務があります。この義務があるにも関わらず労災に加入しない会社において労災事故が発生した場合、ペナルティーとして発生した費用の一部を会社が負担する場合があります。
費用徴収とは
費用徴収とは、労災保険給付した後において、保険加入者又はその他の者から保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を徴収する制度であり、労災保険法第12条の3の「不正受給者からの費用徴収」と同法第31条第1項の「事業主からの費用徴収」があります。
1、不正受給者からの費用徴収
偽りその他不正の手段によって、保険給付を受けた者は、その不正受給部分に相当する額を徴収することとなります。
2、事業主からの費用徴収
⑴事業主が労災保険の加入手続きを怠っていた期間中に労災が生じ、労災保険給付を行った場合、事業主から遡及して労災保険料を徴収するほかに、その保険給付に要した費用の全部または一部を徴収することとなっております。
具体的には以下の通りです。
①労災保険の加入手続きについて、行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、手続きを行わない期間中に労働災害が発生した場合、保険給付額の100%が費用徴収となります。
②労災保険の加入手続きについて、行政機関から指導等を受けていないものの、労働者を雇用したときから1年を経過して、手続きを行わない期間中に労働災害が発生した場合、保険給付額の40%が費用徴収されます。
⑵事業主が労災保険料を滞納している期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合、事業主からその保険給付に要した費用の一部 (最大40%)を徴収することとなっております。
(3) 事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害について、労災保険給付を行った場合、事業主からその保険給付に要した費用の一部を徴収することとなっております。この場合、保険給付額の30%が費用徴収となります。
なぜ費用徴収をするか
不正による場合は当然として、事業主からの費用徴収については、事業主間の公平性(真面目に申告納付している会社とのバランス)の確保、事業主の労働災害防止、意欲の促進を図るために設定されています。
労災で休業した日に賃金を払ったら休業補償の計算は?
労災が原因で休む労働者に対しては労災制度から休業補償給付が出ますが、その計算は休業1日につき、給付基礎日額の80%(休業(補償)給付=60%+休業特別支給金=20%)となります。たとえ給付基礎日額が10,000円の場合、労災の休業補償給付は1日あたり合計8,000円となります。
・半日働いた場合
なお、所定労働時間の一部について労働した場合には、その日の給付基礎日額から実働に対して支払われる賃金の額を控除した額の80%(60%+20%)に当たる額が支給されます。
例えば給付基礎日額が10,000円の被災労働者が半日働いて5,000円の賃金を受けた場合は、(10,000-5,000)×80%=4,000円の休業補償給付がなされます。
・働いていないが給与補償した場合
上記のように働いた分が通常通り支給されるのは言わば当たり前ですが、「働いていないが会社が給与保証をした場合」はどうでしょうか。
労災の支給基準として「給付基礎日額の60%以上をもらう人かどうか」があります。60%以上の補償が受けられる場合労災の休業補償給付は支給されなくなります。
逆に、60%未満の補償を受けたとしても労災は満額支給されます。例えば前述の給付基礎日額が10,000円の被災労働者に対して、働かなくても5,000円の補償をした場合、この金額と労災による休業補償8,000円の合計13,000円を受給することができます。
・給付基礎日額とは
給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、事故が発生した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額のことです。(「賃金」には、臨時的支払われた賃金、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません。)
資格喪失後の保険給付(健康保険)
協会けんぽなどの健康保険給付の一部について、退職した後も請求できるものがあります。
どのような給付があるかを以下解説します。
1、傷病手当金
被保険者期間が資格喪失日の前日までに継続して1年(任意継続被保険者であった期間は含まれません)以上あり、退職時に傷病手当金の支給を受けている(受けられる状態であった)場合は、支給開始日から1年半の範囲内で資格喪失後も引き続き傷病手当金を受けられます。
例えば、病気療養のため3ヶ月休職し、傷病手当金を受給していた被保険者が休職期間満了で退職した場合、退職後も病気療養の必要がある状態であれば最大で残り1年3ヶ月の間傷病手当金を受給することができます。
2、出産手当金
被保険者期間が資格喪失日の前日までに継続して1年(任意継続被保険者であった期間は含まれません)以上あり、退職時に出産手当金の支給を受けているか、または出産日・出産予定日が資格喪失日の前日から42日以内(多胎:98日以内)の場合は、資格喪失後も引き続き出産手当金を受けられます。
例えば退職する被保険者が妊娠しており、退職日から42日以内に出産予定だった場合、出産手当金を受けることができることになります。ただし、退職日に働いている場合は資格喪失後の給付を受けることができません。
3、出産育児一時金
被保険者期間が資格喪失日の前日までに継続して1年(任意継続被保険者であった期間は含まれません)以上あり、資格喪失後6ヶ月以内に出産したとき、資格喪失後でも出産育児一時金を受けられます。
4、埋葬料(費)
被保険者であった方が、下記のいずれかに該当する場合は、資格喪失後でも埋葬料(費)を受けられます。
・資格喪失後3ヶ月以内に亡くなられたとき
・資格喪失後の保険給付(傷病手当金・出産手当金)を受けている間に亡くなられたとき
・資格喪失後の継続給付(傷病手当金・出産手当金)を受けなくなった日から3ヶ月以内に亡くなられたとき
64歳と65歳の失業保険の違いは?
老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられていることに伴い、60歳以降の高齢者就労場所の確保は引き続き社会的な課題となっています。60歳以降も、週20時間以上で働いている限り雇用保険(いわゆる失業保険)には加入継続しますが、辞めるタイミングによって失業保険給付の内容が異なることに注意が必要です。
64歳までに退職する場合
64歳までに退職する場合は「基本手当」という失業保険が支給されます。基本手当は、雇用保険をかけていた期間により、基本手当の支給が基本手当日額の90日分(被保険者期間10年未満)、120日分(被保険者期間1年以上20年未満)、150日分(被保険者期間20年以上)と変わります。雇用保険の加入期間が長いほど給付日数が多くなります。
65歳以降に退職する場合
一方で、65歳以降に退職した場合、基本手当でなく「高年齢求職者給付金」という失業給付がなされます。「高年齢求職者給付金」は、雇用保険をかけていた期間により、30日分の一時金(被保険者期間1年未満)か50日分の一時金(被保険者期間1年以上)となります。
両者を比較すると、同じ「失業者」でも給付日数に差があることがわかります。
64歳までに退職して失業保険をもらった方がいいか?
失業保険だけを見ると64歳までに退職した方が得に見えますが、「会社からの給与」「老齢厚生年金」「退職金」などその他の金銭にも影響するため一概に得とは言い切れません。
例えば早めに退職することでもらえる給与は少なくなりますし、64歳未満の基本手当を受給している間老齢厚生年金が支給停止になるという制度もあります。また、在籍年数が退職金に影響することもあるでしょう。退職時期がある程度コントロールできる場合、これらを多方面から考えてベストなタイミングを決めていくと良いでしょう。
70歳までの就業確保
現状、高年齢者雇用安定法では、60歳を定年と定め65歳までの雇用確保措置を企業に義務づけております。この法律が改正され、2021年4月から70歳までの就業確保が努力義務となります。
70歳までの就業確保について、対象となる事業主や措置は以下の通りとされています。
【1】対象となる事業主
・定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
・65歳までの継続雇用制度(70歳まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主
【2】対象となる措置
以下のいずれかの措置を講じるよう努める必要があります。
1、70歳までの定年引き上げ
2、定年制の廃止
3、70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む
4、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
4および5については、過半数労働組合等の同意を得た上で、措置を導入する必要があります。
今までの65歳までの雇用確保(義務)に加え、70歳までの就業確保(努力義務)が企業には課せられるようになります。将来的には年金の支給開始年齢の引き上げも予想されますので、より一層高齢者の就業確保が求められるようになることでしょう。
育児休業中の就労
育児・介護休業法上の育児休業は、子の養育を行うために休業期間中の労務提供を消滅させる制度であり、休業期間中に就労することは想定されていません。
しかし、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、「一時的・臨時的に」その事業主の下で就労することができます。その場合、就労が1か月で10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されます。
一方で、恒常的・定期的に就労させる場合は育児休業をしていることにはなりません。
以下は一時的・臨時的な就労に該当するケースです。
【1】育児休業開始当初は、労働者Aは育児休業期間中に出勤することを予定していなかったが、自社製品の需要が予期せず増大し、一定の習熟が必要な作業の業務量が急激に増加したため、スキル習得のための数日間の研修を行う講師業務を事業主が依頼し、Aが合意した場合
【2】労働者Bの育児休業期間中に、限られた少数の社員にしか情報が共有されていない機密性の高い事項に関わるトラブルが発生したため、当該事項の詳細や経緯を知っているBに、一時的なトラブル対応を事業主が依頼し、Bが合意した場合
【3】労働者Cの育児休業期間中に、トラブルにより会社の基幹システムが停止し、早急に復旧させる必要があるため、経験豊富なシステムエンジニアであるCに対して、修復作業を事業主が依頼し、Cが合意した場合
【4】災害が発生したため、災害の初動対応に経験豊富な労働者Dに、臨時的な災害の初動対応業務を事業主が依頼し、Dが合意した場合
【5】労働者Eは育児休業の開始当初は全日を休業していたが、一定期間の療養が必要な感染症がまん延したことにより生じた従業員の大幅な欠員状態が短期的に発生し、一時的にEが得意とする業務を遂行できる者がいなくなったため、テレワークによる一時的な就労を事業主が依頼し、Eが合意した場合
また、以下は恒常的・定期的な就労に該当するケースです。
労働者Fが育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務する場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合
一時的な就労と認められるには、事業主の一方的な指示による就労ではなく、労働者との合意が前提になります。育児休業中の一時的な就労を求める場合は、上記ケースを参考にして判断すると良いでしょう。
産業医の選任
労働安全衛生法第13条では、業種にかかわらず常時使用する労働者が50人以上の事業場は、産業医を選任しなければならないことになっています。
この「常時使用する労働者」について、正社員だけでなくパートタイマー、アルバイト、契約従業員、派遣従業員も労働者数にカウントします。雇用形態や契約期間の定めの有無は問いません。また、カウントは「事業場ごと」に行います。
1、産業医の仕事
産業医の職務は主に次の事項(A~Gについては、医学に関する専門的知識を必要とするもの)です。
A健康診断及び面接指導等の実施並びにその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
B作業環境の維持管理に関すること
C作業の管理に関すること
D労働者の健康管理に関すること
E健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
F衛生教育に関すること
G労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
H少なくとも毎月1回作業場を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、必要な措置を講じること
また、労働者の健康を確保するため必要があるときは、事業者に対し労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。
2、産業医の選任人数
業種にかかわらず常時使用する労働者が50人以上の事業場は、産業医を1人選任しなければならなりません。また、3001人以上の場合は2名の選任が必要です。
なお、一定規模(1000人以上)の事業場、一定の有害な業務に500人以上の労働者を従事させる事業場は、「専属の」産業医とする必要があります。
アルバイトの有休
有給休暇の時季指定義務制度が始まり1年以上経過しました。
それによって世間の有給休暇に対する関心が高まり、従来よりも有給取得実績は増加しています。
パート・アルバイトについても、週4日かつ3年半以上勤務した者に対しては時季指定義務の対象となりますが、週によって労働日数がバラバラのアルバイトの場合、有給付与日に「何日有給休暇を付与すればいいか」がわかりにくくなります。
週によって所定労働日がバラバラのアルバイトの場合の有給付与日数については次のように行政通達があります。
「年次有給休暇が比例付与される日数は、原則として基準日において予定されている今後1年間の所定労働日数に応じた日数であるが、予定されている所定労働日数を算出し難い場合には、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えないこと。したがって、例えば、雇入れの日から起算して6箇月経過後に付与される年次有給休暇の日数については、過去6箇月の労働日数の実績を2倍したものを「1年間の所定労働日数」とみなして判断することで差し支えないこと。」
例えば、あるアルバイトが欠勤なく半年で100日出勤した場合、その2倍の200日が「1年間の所定労働日数」となり、それを比例付与の表に当てはめて「週所定労働日数が4日の人」という区分に応じた有給休暇を与えれば良いことになります。
障害者の法定雇用率引き上げについて
障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。この法定雇用率が、令和3年3月1日から以下のように変わりました。
・民間企業 2.2% ⇒ 2.3%
・国、地方公共団体等 2.5% ⇒ 2.6%
・都道府県等の教育委員会 2.4% ⇒ 2.5%
つまり、民間企業の場合、来年3月からは原則として「100人あたり2.3人」障害者を雇用する義務があるということになります。これを「少なくとも1人、障害者を雇用しなければならない」人数に換算すると、民間企業の場合「従業員45.5人以上」から「43.5人以上」に変わります。
また、その事業主には、以下の義務があります。
◆ 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。
◆ 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。
なお、法定の人数を上回る障害者を雇用する場合、障害者雇用納付金を納付する制度があります。
常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率を未達成の場合は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額5万円の障害者雇用納付金を納付する義務があります。
逆に、常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、その超えて雇用している障害者数に応じて1人につき月額2万7千円の障害者雇用調整金が支給されます。
士業事務所の社会保険の適用要件が変わります
厚生年金保険法の一部改正(令和2年6月5日法律第40号〔第4条〕 令和4年10月1日から施行)について説明します。
1、厚生年金保険の適用拡大
⑴弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業の事業所又は事務所であって、常時五人以上の従業員を使用するものについて、厚生年金保険の適用事業所とすることとした。(第六条第一項第一号レ関係)
→今までは弁護士や税理士、社労士、司法書士、行政書士、公認会計士などの個人事務所は加入対象者が5人いても適用除外となっていましたが、今回の改正により適用事業所となることになります。
2、適用要件の変更
⑴事業所に使用される者であって、その一週間の所定労働時間又は一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間又は所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者に係る厚生年金保険の適用除外の要件について、当該事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこととする要件を削ることとした。(第一二条第五号ロ関係)
→雇用契約期間にかかる要件が削除されることにより、今までよりもシンプルに「4分の3要件」で適用を判別することとなります。
⑵二月以内の期間を定めて使用され、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれる者について、厚生年金保険の被保険者とすることとした。(第一二条第一号ロ関係)
→今までは2ヶ月以内の有期雇用契約の場合は適用除外とする定めがありましたが、それが単なる試用期間のようなもので、その後も雇用されることが見込まれる場合は「最初から」適用となる旨変更されます。
接骨院で保険は使えるか?
整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合は健康保険の対象になります。(骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。)
治療を受けるときの注意点
健康保険の「療養費」は、本来患者の方が費用の全額を支払った後、自ら保険者へ請求をおこない支給を受ける「償還払い」が原則ですが、柔道整復については、患者の方が自己負担分を柔道整復師に支払い、柔道整復師が患者の方に代わって残りの費用を保険者に請求する「受領委任」という方法が認められています。そのため、公正な保険請求がなされているかに注意が払われています。
・単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象になりません。このような症状で施術を受けた場合は、全額自己負担になります。
・柔道整復師が患者の方に代わって保険請求を行うため、施術を受けるときには、必要書類に患者がサインをする必要があります。
・保険医療機関(病院、診療所など)で同じ負傷等の治療中は、施術を受けても保険等の対象になりません。
近年の問題
整骨院・接骨院の請求の中には、健康保険適用とならない施術の請求や、架空・水増し請求といった不正請求も見られるようです。
不適正受診・不正請求防止のため、患者が白紙の「療養費支給申請書」に署名したり、柔道整復師に印鑑を預けたりすることのないようにしなければなりません。
実際に筆者の通っていた接骨院も、保険適用の問題があって閉院してしまわれた所がありました。レントゲンだけ撮って、あとは湿布を処方するだけで何もしてくれない整形外科と比べれば、患部の周囲を揉み解してくれたり温めたり電気治療したりと、とても良い施術をしてくださる先生でしたので、個人的には残念でしたが、上記のような問題があるため仕方が無いようです。
労働基準法上の賠償予定の禁止
労働基準法では、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしたりしてはならない、と定めてあります。
労働契約の不履行における違約金の例)
「途中で辞めたら、○○円の違約金を払え」
損害賠償額の予定例)
「会社に損害を与えたら○○円払え」
禁止の理由
その理由は、あらかじめ会社側から従業員に対して、業務の不履行について賠償額を定めることは、実際に発生した会社の損失よりも大きな損失を設定する可能性が高く、従業員にとって不利な契約となる恐れがあるからです。
また、場合によっては、従業員がその会社で働くことを強制することに繋がりかねず、従業員を不当に拘束する可能性もあります。
(注)あらかじめ金額を決めておくことは禁止されていますが、現実に労働者の責任により発生した損害について賠償を請求することまでを禁じたものではありません。
教育費用の返還について
会社負担で教育を受けさせた労働者が退職する際に、しばしばこの条文に関する問題が表面化します。会社としてはある程度の期間勤続して投資を回収したいわけですが、「辞めたら教育費用を返還せよ」という決まりがこの損害賠償の予定に該当するのではないか、という点で争われます。
ポイントとしては、⑴その教育を受けることが労働者の自由意思に基づいているか⑵会社が費用を「負担」したのか、それとも本人に「貸付」したのか、⑶その約束が労働者を不当に拘束する内容であるか、などがあります。これらに注意して教育費用負担については定める必要があるでしょう。特に⑶の部分が重要です。
平均賃金の基本的な考え方
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、休業手当や、雇用調整助成金申請にあたり、平均賃金の算出方法について、多くお問い合わせ頂いております。
計算方法につきまして、改めて整理させて頂きます。
(1) 原則
「平均賃金」(労働基準法12条)によりますと、基本的な算出方法は以下の通りです。
平均賃金=算定すべき事由の発生した日以前(=前日)3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3ヶ月間の総日数(総歴日数)
※賃金締切日がある場合は、起算日は算定事由発生日直前の賃金締切日になります。
(2) 最低保障額
ただし、日給制、時間給制、出来高払制、請負制の場合、以下の最低保障額を下回ってはいけません。
最低保障額=3ヶ月の賃金の総額÷3ヶ月の実労働日数×60%
前述の(1)原則に基づいて計算された「平均賃金」が最低保障額を下回った場合は最低保障額が「平均賃金」として採用されます。
(3) 入社3ヶ月未満の場合
雇入れ後3ヶ月に満たない労働者については、雇入れ後の期間とその期間中の賃金とで「平均賃金」を算出いたします。ただし、(1)原則同様、直前に賃金締切日がある場合には起算日は賃金締切日になります。
(4) 勤務実績がない等、どの方法によっても算出が難しい場合
新型コロナウイルス感染症により、こういったケースも多くみられるかと思います。労働基準法第12条第8項並びに労働基準施行規則第4条によりますと、平均賃金は、都道府県労働局長の定めるところによる、と記されております。ただし、具体的計算方法は定められておりません。
労働基準監督署に問い合わせたところ、通常、労災申請等の場合で、算出が難しい対象者につきましては、直接都道府県労働局長による決定通知が下りるそうです。
ただし、今回のコロナウイルスのように休業手当算出のために、平均賃金を計算したい等の場合、都道府県労働局長の決定を待つというのは、現実的とは言えません。
具体的計算方法につきましては、労働基準監督署でも統一の指針が確定していないようです。
実際に該当労働者がいる場合には、会社の管轄の労働局、労働基準監督署までご相談ください。
健康診断後の医師への意見徴収
会社は、会社が行う健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について聴取した医師又は歯科医師の意見を十分勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師等の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講ずる必要があります。
意見の内容
もらうべき意見の内容は次の2つです。
1、就業区分及び就業上の措置の内容
2、作業環境管理・作業管理について
1の就業区分とは、「通常勤務(通常の勤務でよいもの)」「就業制限(勤務に制限を加える必要のあるもの)」「要休業(勤務を休む必要のあるもの)」に分かれます。
就業上の措置とは、勤務による負荷を軽減するための、⑴労働時間の短縮、⑵出張の制限、⑶時間外労働の制限、⑷労働負荷の制限 、⑸作業の転換、⑹就業場所の変更、⑺深夜業の回数の減少、⑻昼間勤務への転換等を指します。
2について、健康診断の結果、作業環境管理及び作業管理を見直す必要がある場合には、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置・整備、作業方法の改善、その他適切な措置について意見を求めることとされています。
関連条文
◆労働安全衛生規則
(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
第五十一条の二
第四十三条等の健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 第四十三条等の健康診断が行われた日(法第六十六条第五項ただし書の場合にあっては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から三月以内に行うこと。
二 聴取した医師又は歯科医師の意見を健康診断個人票に記載すること。
2 法第六十六条の二の自ら受けた健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師からの意見聴取は、次の定めるところにより行わなければならない。
一 当該健康診断の結果を証明する書面が事業者に提出された日から二月以内に行うこと。
二 聴取した医師の意見を健康診断個人票に記載すること。
3 事業者は、医師又は歯科医師から、前二項の意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない。
フレックスタイム制における休日割増賃金
フレックスタイム制のもとでは、清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働としてカウントされます。
法定労働時間の総枠とは
1ヶ月ごとに清算期間を設定した場合、総枠は次の計算式で求めます。
1週間の法定労働時間×清算期間の週数(清算期間の暦日数÷7)
例えば週40時間の法定労働時間制の対象となる業種の、暦日数が31日の月における総枠は40時間*31日/7日=177.14となります。
フレックスタイム制を採用した場合には、この総労働時間の範囲内で、日ごとの労働時間については労働者自らの決定に委ねられます。したがって、フレックスタイム制においては、清算期間を単位として時間外労働を判断することになるので、36協定において「1日」の延長時間について協定する必要はなく、「1か月」「1年」の延長時間を協定します。
(フレックスタイム制において残業をする可能性がある場合は36協定の届け出がやはり必要になります)
先の例の場合、1ヶ月に177.14時間を超えて労働させた場合に割増賃金の支払いが必要になります。
休日労働は別計算
フレックスタイム制のもとで、休日労働(1週間に1日の法定休日に労働すること)を行った場合には、休日労働の時間は、清算期間における総労働時間や時間外労働とは別個のものとして取り扱われます。(35%以上の割増賃金率で計算した賃金の支払が必要)
割増率については、休日労働も含んだ総労働時間によって以下のようになります。
⑴法定休日が総労働時間の枠内である場合
⇒月給制の場合、法定休日労働を含む総労働時間がその月の総労働時間の枠内であれば、
すでに月給として100%の賃金が支払われていることになるのでその時間については35%のみの時間外手当を支払うことで足ります。
⑵法定休日が総労働時間の枠外である場合
⇒135%以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要です。
従業員が休憩を取らない代わりに、早く帰りたいと希望した時の対応
従業員が就業時間について、休憩を取らずに、終業時刻を早めたいと会社に要望した場合でも、従業員の同意があったとしても原則として認めることは出来ません。
労働基準法34条によれば、「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」と規定されています。
この法律は強行法規であり、違反した場合には罰則規定も定められています。
(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金:労働基準法119条)
したがって、基本的には、従業員から要望があったとしても、会社はそちらに応じる必要はありません。
ただし、6時間以下で働いている場合には、休憩を与える義務はありませんので、会社が一律で自主的に休憩時間を設定している場合等には休憩時間をカットすることも可能になります。
いずれにせよ、6時間を超える場合には、休憩を必ず与えなくてはなりません。強制的なものになりますので、取るか取らないかの判断の余地はありませんので注意しましょう。
従業員から休憩時間の相談を受けた場合には、長時間労働による業務非効率化、労働災害の可能性の増大等を説明していただき、法律の趣旨、休憩の主旨を伝え、納得してもらうようにしましょう。
労働安全衛生法の健康診断の種類
労働安全衛生法では、使用者(会社)に対して、健康診断の実施を義務付けています。その種類と内容は以下の通りです。
1、種類
(1)一般健康診断(法第66条第1項)
・ 雇入時の健康診断(則第43条)
・ 定期健康診断(則第44条)
・ 特定業務従事者の健康診断(則第45条)
・ 海外派遣労働者の健康診断(則第45条の2)
・ 結核健康診断(則第46条)
・ 給食従事者の検便(則第47条)
・ 自発的健康診断(則第50条の2)
(2)特殊健康診断(法第66条第2項及び第3項、じん肺法)
・ 高圧室内作業に係る業務、潜水業務、放射線業務、特定化学物質を取り扱う業務等の有害な業務に従事する労働者に対する健康診断(令第22条)
・ じん肺健康診断(じん肺法)
一般的な企業では、①雇入時の健康診断②定期健康診断の実施についてできているかを確認してください。定期健康診断は1年に1回です。
ただし、深夜業や坑内業務、その他著しく暑熱又は寒冷な場所における業務など一部の業務に従事する労働者に対しては、配置換えの際又は6ヶ月ごとに1回、特定業務従事者の健康診断を実施することが求められます。特に深夜業についてはコンビニの深夜勤務者なども対象となりますのでご注意ください。
又、有機溶剤を取り扱った業務、放射線業務など特に健康に被害を及ぼす可能性の高い業務につくものに対しては、特殊健康診断を定期に行う必要があります。
2、健康診断項目
健康診断項目としては主に次のようなものがあります。健康診断の種類によって求められる検査項目が変わります。
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④ 胸部エックス線検査及び喀痰検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 貧血検査
⑦ 肝機能検査(GOT、GPT及びγ-GTPの検査)
⑧ 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)
⑨ 血糖検査
⑩ 尿検査
⑪ 心電図検査
労働者の健康管理はこれからますます重要な労務課題となります。自社の実施状況を確認しましょう。
自動車通勤者の通勤手当
通勤に公共交通機関を使っている場合、通勤手当は定期券の金額で支払うことが一般的ですが、自動車通勤者についてはどのように支払えばよいでしょうか。
1、通勤手当は会社の自由
前提として、通勤手当を会社が支払うことは法律上の義務ではありません。「どれだけ遠くから通っていても通勤手当はゼロ」としてもかまいませんが、実際には通勤手当を支払う会社が多いことから、通勤手当の支給がないことが他社と比べ求人条件において不利になるため、何らかの手当支給をすることが多いでしょう。
2、非課税限度額
通勤手当は原則的に所得税非課税扱いになっていますが、それは「実費弁償的な性格のものであるから」です。
実際にかかる費用よりも多く渡した場合は、一部課税扱いになることがあります。
マイカーなどで通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額の表は以下の通りです。
片道の通勤距離と1か月当たりの限度額
2キロメートル未満 (全額課税)
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,100円
15キロメートル以上25キロメートル未満 12,900円
25キロメートル以上35キロメートル未満 18,700円
35キロメートル以上45キロメートル未満 24,400円
45キロメートル以上55キロメートル未満 28,000円
55キロメートル以上 31,600円
例えばマイカー通勤で片道8キロの距離から通う場合、非課税限度額は4200円とされているため、その従業員に通勤手当10000円を支給した場合は差額の5800円は課税扱いとなります。
3、マイカー通勤を認めるべきか否か
通勤方法についても会社が独自の取り決めをすることができます。
通勤中に交通事故で加害者となった場合、会社も運行供用者として責任を負うことがあるため、「対人無制限、対物○○円以上の任意保険に加入していない場合は許可しない」などのルールも定めておいた方が良いでしょう。
4、駐車場の取り扱い
職場に従業員用の駐車場がない場合、別途本人が契約する費用について、会社が負担する義務はありませんが、逆に言うと補助しても構いません。
先に説明した非課税限度額や、近隣の駐車場の相場も参考にしながら、駐車場の費用補助を検討するとよいでしょう。
別居している被扶養者の認定
別居している被扶養者認定の必要添付書類について、
健康保険において、扶養の手続きの際、別居している親族の認定の場合、
同居している場合に比べ、要件の他、別途提出書類が必要となりますので注意が必要です。
被扶養者の認定要件の違い
①同居の場合
年間収入(年間の見込み)が130万円未満かつ
被扶養者の収入が被保険者の収入の半分未満
②別居の場合
同居の場合と同様、年間収入が130万円未満ですが、
別居の場合は、それに加え、被扶養者の収入が、被保険者からの仕送り額未満であることが要件とされています。
提出書類について
通常、扶養認定の際、以下の
①続柄確認書類
⇒住民票・戸籍謄本等(マイナンバー提出により省略可能)
②収入要件確認書類
⇒所得税法上の扶養親族を証明する書類(事業主の証明により省略可能)・退職証明書・離職票(失業手当受給期間は扶養認定されないので注意)等
が必要となりますが、
別居の場合は前述のとおり、仕送り額を証明する為、
上記に加え、
③仕送り額が確認できる書類
の準備が必要となります。
③の書類ですが、こちらについて注意が必要となるのが、
必ず、振込や送金の場合は現金書留の記録を控えとく必要があることです。
手渡し等で仕送りしている場合、扶養の認定は原則的にはおりませんので注意が必要です。
調査で判明する社会保険の誤解
年金事務所は定期的に事業主に対して調査を実施します。この調査の目的は大きく分けて次の2つです。
1 社会保険に加入させるべき人を加入させているか
2 届出ている報酬額に誤りがないか
資格取得届などの社会保険にかかる手続きは簡易的で、事業主から申請があった通りに適用手続きがなされます。つまり、誤った報酬で登録しているか、または被保険者となるべき人を本当に届出しているかは取り立てて確認しません。そのため、定期的な調査でそのミスや不正を正そうとします。
年金事務所調査に当たった時には、次にあげるような誤解が指摘されがちです。
1 ×パートは社会保険加入させなくても良い
パートであっても週当たりの労働時間が通常の労働者の4分の3以上の場合は被保険者となります。(大企業の場合は週20時間以上)
2 ×社会保険は本人が希望しない場合は加入させなくて良い
社会保険加入・非加入は労働者が選択するものではありません。被保険者に該当する人は強制的に加入となります。
3 ×基本給だけを報酬として届け出て良い
基本給以外にも労働の対償として支払われた各種手当、残業代、通勤手当なども報酬に合算します。
4 ×二箇所以上の会社で報酬をもらっているが、主たる会社以外の報酬は関係ない
二箇所以上の会社の役員であるなど、複数の会社から報酬をもらっている場合、その報酬を合算しなければならないことがあります。
手続き漏れや誤りがあった場合、その時期に遡って修正をする必要があるため注意しましょう。
男性の育児休業の注意点
イクメンという言葉があるように、男性の育児参加は世の中の関心ごとです。育児休業については女性だけでなく男性も取得できまが、取得開始時期や育休プラス制度など、ルールが一部女性と違います。以下男性の育児休業について解説します。
対象者
育児休業の対象となる男性は原則として次のとおりです。
・同一事業主に1年以上雇用されている
・子供が1歳未満(1歳の誕生日を迎えていない)
・子供が1歳になった後も引き続き雇用予定
・子供が1歳6ヶ月になる日の前日までに雇用契約が終了する予定ではない
・週3日以上勤務をしている
雇用保険に加入している人であれば多くの男性が育児休業の取得対象となります。
期間
女性については産後56日経過した後に育児休業が始まりますが、男性については出産日当日から育児休業の取得が可能です。終了期は「子供が産まれてから1年(子供の1歳の誕生日の前日まで)」です。
届出
会社に対して育児休業の申し出をするのは原則として1ヶ月前など事前にする必要があります。ただし、出産日は予定日からずれることも多いため、取得時期を変更することもできます。
給付
育児休業給付の申請は、休業期間2ヶ月ごとに1回、ハローワークに対して行います。通常会社が申請を行います。当初6ヶ月は休業前賃金のおよそ67%、その後は50%です。
育児休業の延長
育児休業は最長で1年が原則ですが、パパ・ママ育休プラスという制度を利用すると、子供が1歳2ヶ月になるまで育休期間を伸ばすことができます。
また、保育園に入れない場合に限り特別に育休を延長する事ができます。この場合最長2年間の取得が可能です。
給与から控除できる項目
毎月の給与を支給する際、その全額を支給せず、所得税・保険料や住民税、会社によっては旅行積立金や社宅家賃等を控除したうえで支給しているところが多いと思います。この控除項目については、勝手に控除して良いわけではありません。法律によって控除することが認められている「法定控除」と、労使協定を結ぶ事で控除できる「協定控除」があります。
賃金支払いの5原則
まず、前提として、賃金の支払いは労働基準法第24条で定められている以下5つの原則に従わなければなりません
1、通貨払いの原則(賃金は、通貨で支払わなければならない)
2、直接払いの原則(賃金は、直接労働者に支払わなければならない)
3、全額払いの原則(賃金は、その全額を支払わなければならない)
4、毎月1回以上払いの原則(賃金は、毎月1回以上支払わなければならない)
5、一定期日払いの原則(賃金は、一定の期日を定めて支払わなければならない)
上記3の「全額払いの原則」に従うならば、賃金からは何も控除してはいけなくなります。
ただし、この原則には例外が設けられており、以下に該当する場合は控除しても良いとされています。
法定控除
法律で定められている控除項目です。所得税・住民税・健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料等が該当します。
協定控除
労働者の過半数で組織する労働組合がない場合、労働者の過半数代表者と書面による協定(労使協定)を結んだ控除項目です。例えば、旅行積立や社宅家賃等が該当します。
法律で認められている法定控除以外を控除したい場合は、労使協定を結んでいなければ本来控除してはいけません。また、労使協定をだいぶ前に結んでいる場合、現状の控除項目と一致してない可能性もあります。自社の控除項目、協定については改めて確認した方が良いでしょう。
労働保険料の再確定申告
労働保険料の確定保険料の申告が誤っており、既に納付が済んでいた場合、
確定保険料について労働保険料の再確定申告が必要となります。
具体的には、
雇用保険加入者を計算に加えていなかった場合や、賃金の集計誤り、労働保険適用対象外の従業員を計算に加えていた等、様々なケースが考えられます。
上記のように、労働保険料の修正が必要な場合、労働保険料の再確定申告手続きが必要となります。(2年以上遡及する場合は含みません。)
再確定申告に必要な書類は以下の通りです。
・労働保険料等再確定申告理由書(任意の様式)
・再確定申告書(通常の申告書の中央上部に「再確定申告」と朱書き)
・修正後の確定保険料算定基礎賃金集計表(修正箇所をマークすること)
・労働保険料還付請求書(還付が生じた場合に限る)
上記の書類は、再確定申告を申請する場合の必須提出書類になります。
一度受理されますと、再確定理由や審査状況に応じて、追加の書類を求められることもあります。
具体的には、修正対象者の賃金台帳や、雇用保険確認通知書、雇用契約書、登記簿謄本等が挙げられます。
提出が必要な場合には、労働局担当者より連絡が入ることになります。
育児休業中に有給休暇を取得可能か?
育児休業中に有給休暇を取得できるか
育児休業中等に有給休暇の有効期限が到来するなどで従業員より、育児休業中の有給休暇が取得できるのか、疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。
結論から申し上げますと、原則的には、育児休業期間中に有給休暇を申請することは出来ません。
この点について、厚生労働省より以下の通達が出ております。
「年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はないこと。(以下略)」
有給休暇の性質上、労働日に休みをもらうものであり、育児休業等で、予め労働義務が消滅している場合には、有給休暇は申請することすらできないということになります。
但し、いかなる場合にも有給休暇が取得できないわけではありません。
育児休業を申請する前に、予め、有給休暇の取得が決定している場合には、有給休暇が優先されます。(育児休業給付金の給付決定額の調整対象にはなります。)
参考:厚生労働省通達
「また、育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協力に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じるものであること。」
育児休業中の就労との関係
育児休業中、10日(10日を超える場合には80時間以下)であれば、一時的・臨時的に就労したとしても、育児休業として認めらます。
このような状況下で、1日4時間で月20日勤務するシフトをした場合、シフト日を有給休暇として、申請出来るのでしょうか?
結論から言いますと、このような場合でも、有給休暇を取得することは出来ません。
そもそも、短時間でのシフトを組んで仕事をした場合には育児休業でいう、一時的・臨時的に就労する場合とはみなされず、育児休業からの復帰とみなされます。
一時的・臨時的就労とは、
大災害で出社できない従業員の臨時対応で就労する場合や、突発的な事態に対応する為、休業中の本人にのみ対応可能な場合等の就労と認めているからです。
在宅勤務や時短での勤務は、恒常的・定期的労働と認められる可能性が高く、育児休業の終了とみなされる場合がございますので、注意しましょう。
労働者死傷病報告
労災事故が起きたとき、被災者のために療養保障給付や休業補償給付などの「給付」の申請を会社が行いますが、その他、監督署への「事故報告」も必要です。
労働災害等により労働者が死亡又は休業した場合には、遅滞なく、「労働者死傷病報告」を労働基準監督署長に提出しなければなりません。
提出が必要な場合
死傷病報告は以下の場合に提出が必要です。
(1)労働者が労働災害により、負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
(2)労働者が就業中に負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
(3)労働者が事業場内又はその附属建設物内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
(4)労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息又は急性中毒により死亡し又は休業したとき
ただし、休業が4日未満の労働災害の場合は、は四半期ごとに簡易的に報告すれば事足りるとされています。(ただし爆発や火災などの大きな事故の場合には休業がなくても事故報告が必要です。
基本的には「休業補償給付を申請するくらいの労災事故=4日以上の休業を伴う労働災害であるため、すぐに監督署への報告が必要」と覚えておくと良いでしょう。
なお、通勤災害の場合、それが会社の敷地内などの事業場内である場合を除いて、死傷病報告は不要です。
目的
労働者死傷病報告は、労働災害統計の作成などに活用されており、提出された労働者死傷病報告をもとに労働災害の原因の分析が行われ、同種労働災害の再発を防止するための対策の検討に生かされるなど、労働安全衛生行政の推進に役立てられています。
労働保険料申告手続きを忘れたら?
毎年7月10日までに労働保険料の申告納付をします。
通常は5月下旬から6月上旬にかけて労働保険申告のための書類が会社宛に届いて、その申告書を用いて申告します。
申告時には、
もし、
1、申告しないと勝手に決められる
労働保険法19条4項と5によれば、
つまり労働保険料の前年度の確定額と今年度の見込額を申告しない
政府が労働保険料の前年度の確定額と今年度の見込み額を決定(
納入告知書により通知が行われ、通知を受けた日より、
例えば、
2、追徴金が課せられることもある
この認定決定により、
認定決定された労働保険料の10%の『追徴金』が科せられ、
これを通知書に指定された納期限までに納付しなければならなくな
3、実務上の処理
実際に追徴金の処分が下されることは多くありません。
未提出事業所に対して、労働局から催促通知が行われます。
催告に定める期限までにきちんと手続きを済ませれば追徴金はかか
令和2年度、被扶養者資格の再確認について
毎年度、協会けんぽでは、健康保険の被扶養者となっている人が現在もその状況にあるかの確認のため、被扶養者資格の再確認を実施しております。今年度の実施内容については以下通りです。
1)実施時期
令和2年10月上旬から下旬にかけて、順次「被扶養者状況リスト」が事業主宛に送付されます。
2)再確認の対象となる被扶養者
令和2年4月1日において18歳以上である被扶養者の人。ただし、令和2年4月1日以降に被扶養者となった人は確認の対象外です。
3)確認方法
事業主が、被保険者の人に対して、対象の被扶養者の人が健康保険の被扶養者要件を満たしているかを確認のうえ、被扶養者状況リストに確認結果の記入及び同封の返信用封筒にて提出します。
4)確認書類の提出
今年度は、被保険者と別居している被扶養者、海外に在住している被扶養者については、被扶養者状況リストに同封されている被扶養者現況申立書に記入の上、被扶養者要件を満たしていることが確認できる下記書類を提出します。
〇被保険者と別居している被扶養者→仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類
〇海外に在住している被扶養者→海外特例要件に該当していることが確認できる書類
5)扶養解除となる被扶養者がいる場合
確認の結果、扶養解除となる被扶養者がいる場合、同封の被扶養者調書兼異動届を記入のうえ、解除となる人の保険証を併せて提出します。
6)提出期限
令和2年11月30日
例年の被扶養者再確認と違うところは、上記4)の確認書類の提出が求められることになったことです。該当者がいる場合は、速やかに書類提出ができるように事前案内ができていることが望ましいでしょう。
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金について
7月10日にかねてから公表されていた、企業から休業手当が支給
原則的には労働者が申請する様式ですが、一部事業主が記入するべ
支給要件
(1) 令和2年4月1日から9月30日の間に事業主の指示を受けて休業
(2) 上記(1)による休業に対し、休業手当が支給されていないこと
(3)会社が労災保険に加入していること(雇用保険加入対象者が
(4)会社が申請に協力すること(申請書等の署名、捺印箇所があ
支給金額
休業前の1日当たり平均賃金※×80%(上限日額11,000円
※原則過去6ヶ月の内、任意の3か月を90で除して算定する(少
例:4月10日から休業した場合の平均賃金日額計算について
給与(3月:30万、2月:25万、1月:28万、12月:26
(30万+28万+26万)÷90日=9,333円
申請方法
(1)原則、郵送申請(オンライン申請準備中)
(2)労働者本人の申請(事業主経由の申請も可能※)
※労働者が複数事業書で働く場合は別途申請書が設けられているの
必要書類
(1)申請書※
※複数事業所で働く労働者は複数事業所分、まとめて申請する必要
別々に申請した場合、あとから申請した分は無効となるので注意が
(2) 支給要件確認書(事業主及び労働者の署名が必要)
(3)本人確認書類(顔写真等がある免許証、マイナンバーカード
→ただし学生証等の場合は顔つきでも本人確認書類が2種類必要と
(4) 口座確認書類(労働者本人の通帳の写し等)
(5) 休業開始前賃金および休業期間中の給与を証明できるもの
→賃金台帳、給与明細、振り込み通帳の写し等
詳しい情報については、厚生労働省の以下のリンクを参照してくだ
記入方法の解説動画も掲載されているようです。
< https://www.mhlw.go.jp/stf/kyu
休業等があった場合の算定基礎届の考え方
新型コロナウイルス感染症の影響により、休業を余儀なくされた企業等も多いかと思います。従業員に休業手当をお支払いした場合等の場合、算定基礎届の提出方法、算出方法についてみていきます。
通常の定時決定についてですが、
原則的には4月、5月、6月に支払われた報酬によって、算定基礎届を提出します。
ただし、4月~6月の間に、休業等があり、本来の出勤日等に休業手当等が支給された場合、通常通りの算定基礎届の提出では正しい等級決定が出来なくなることが想定されます。
日本年金機構によりますと、以下の表ように算出し、提出することになります。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 定時決定の算定対象月 | 随時改定月 | |
1 | ● | ○ | ○ | ☆ | ○ | ○ | 5月・6月 | |
2 | ● | ● | ● | ☆ | ○ | ○ | 従前等級で決定 | |
3 | ● | ● | ● | ★ | ○ | ○ | 7月改定 | |
4 | ○ | ● | ● | ★ | ○ | ○ | 4・5・6月 | |
5 | ○ | ● | ● | ★ | ● | ○ | 8月改定 | |
6 | ○ | ○ | ● | ★ | ● | ○ | 4・5・6月 | |
7 | ○ | ○ | ● | ★ | ● | ○ | 9月改定 |
・○:通常報酬が支給された月 (日本年金機構HPより引用)
・☆:休業等解消
・●:休業手当等が支払われた月
・★:休業等未解消
<パターン1・2>
パターン1・2はいずれも7月1日時点で休業状態が解消している場合です。
休業状態等が解消されている場合には、休業手当を含む月については算定の対象から除いて計算することになります。ただし、算定対象月全てが休業手当等支払っている月の場合、基本的には従前の等級から変動せず、保険料等級が決定します。
<パターン3以降>
パターン3以降は基本的には、休業状態が続いている場合です。
7月1日時点で休業状態が続いている場合には、原則的には休業手当支払い月を含め、通常通り4・5・6月の報酬をみて算定基礎届を提出することになります。
ただし、パターン3・5・7のように、休業手当支払い月が4ヶ月以上続く場合には、その都度保険等級の変更が必要になる場合もあるので注意が必要です。
新型コロナ感染症の見通しが立ちづらいことが容易に想像が出来ます。
通常通りの算定基礎届の提出が必要であるか、都度随時決定を行う必要があるのか確認する必要がありそうです。
届け出る際は、管轄の年金事務所までお問い合わせください。
非常勤役員の社会保険加入
非常勤役員がいて報酬が発生している場合、社会保険への加入義務はあるのでしょうか。
また、加入に報酬額の基準はあるのでしょうか。
こちらについては、過去に旧厚労省より以下通知が出ております。
・役員で、法人から労務の対象として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする。
(補足)役員には一般の労働者に適用される労働時間等の社会保険加入非加入の条件は適用されません。
労務の対象として報酬を受けている法人の役員かどうかについては、その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準に判断するとされています。
少しわかりづらいですが、日本年金機構からは以下具体例が挙げられており、該当数によっては社会保険加入義務があります。
1.当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか。
2.当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか。
3.当該法人の役員会等に出席しているかどうか。
4.当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか。
5.当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか。
6.当該法人等より支払を受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実務弁償程度の水準にとどまっていないかどうか。
つまり、非常勤かどうかは自社で勝手に決めるものではなく、上記項目の総合判断によって判定されます。こちらを見る限り、報酬額は明記されておりません。
なお、代表取締役は非常勤とは呼べませんので、報酬が発生している限りは社会保険に加入する必要があります。
役員で社保未加入者がいるようでしたら、上記1から6を客観的に証明できるように、役員会の議事録、役員の報酬(費用)規程、他の会社の常勤性を証する書類等を整えておくとよいでしょう。
育児休業終了日と雇用保険上の取り扱いについて
育児休業終了日と雇用保険の育児休業終了日の違いについて
育児休業を取得する場合、育児休業延長を請求する場合を除き、原則としては出産をしたお子さまが1歳になるまでとなっております。
出産を予定している労働者に対しては、お子様が1歳になるまで(厳密には1歳誕生日の前日※後述参照)休業出来るご案内をすることになります。
但し、手続きにあたっては、社会保険の保険料免除申請と雇用保険の育児休業給付申請において終了日が異なることになりますので、注意が必要です。
社会保険の保険料免除を申請する際は、終了日はお子様の1歳の誕生日の前日ですが、雇用保険の育児休業給付の終了日はお子様の誕生日の前々日となります。
何故、このように育児休業の取り扱いに違いがあるのか、根拠条文等みていきましょう。
まず、社会保険の免除申請の根拠となっているのは、
育児・介護休業法の第9条となります。
育児休業第9条によれば、育児休業期間は労働者本人が請求した期間が原則となりますが、「育児休業申し出に係る子が1歳に達した」場合は育児休業が終了すると規定されています。
冒頭で社会保険料免除は1歳の誕生日の前日と述べましたが、1歳に達したとき、というのは、1歳の誕生日まで休業を申し込める気もしてしまいます。
しかし、この点、「年齢計算二関する法律」によって、年齢の起算日について規定されています。同法律によりますと、「年齢の起算日は出生日とする」と明文されております。したがって、「子が1歳に達した」というのは、厳密に申し上げますと、「1歳の誕生日の前日」となります。
こういうわけで社会保険の育児休業保険料免除の終了日は1歳の誕生日の前日までということになります。
一方で雇用保険の場合、育児休業給付金について
雇用保険法第61条に以下のような規定があります。
(育児休業給付金)第六十一条の四 育児休業給付金は、被保険者(高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款及び次款において同じ。)が、厚生労働省令で定めるところにより、その一歳(その子が一歳に達した日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合として厚生労働省令で定める場合に該当する場合にあつては、一歳六か月)に満たない子を養育するための休業をした場合において、当該休業を開始した日前二年間(当該休業を開始した日前二年間に疾病、負傷その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上賃金の支払を受けることができなかつた被保険者については、当該理由により賃金の支払を受けることができなかつた日数を二年に加算した期間(その期間が四年を超えるときは、四年間))に、みなし被保険者期間が通算して十二箇月以上であつたときに、支給単位期間について支給する。
大事なところを抜粋すると、「育児休業給付金はその1歳に満たない子を養育するための休業」する期間について支給するとのことです。
「1歳に満たない子」とは具体的には、1歳(1歳に達した)に満たない(未満)子
と読み解くことが出来、前述の「年齢ニ関する法律」の起算日を同様に考えると
1歳の誕生日の前日未満の子すなわち、1歳の誕生日の前々日という風になります。
社会保険と雇用保険で育児休業に係る申請の終了日が異なることは混乱しがちですが、
こうした法律の解釈を把握することで、少しでも覚えやすくなりそうです。
障害者の法定雇用率
障害者雇用については、法定雇用率という最低限の障害者雇用条件が設けられています。
従業員のうち最低○%は障害者を雇用しなさい、と決まっているわけです。
すべての事業主は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。
法定雇用率は次のように定められています。
民間企業 2.2%
国・地方公共団体 2.5%
都道府県等の教育委員会 2.3%
民間企業は45.5人
2.2%の法定雇用率ということは、45.5人以上の労働者を常時雇用する場合は1名以上の障害者を雇用しなければなりません。今までは法定雇用率が2.0%で、平成30年4月から現行の律に上がったため、従業員45.5人以上50人未満の事業主の皆さまは特にご注意ください。
また、事業主には、以下の義務があります。
◆ 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。この報告書は毎年5月中旬くらいに事業主宛に郵送されてきます。
◆ 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。
法定雇用率を守らなかった場合
法定雇用率を達成できなかった企業(雇用率未達成企業。常用労働者100人超に限る)から納付金(5万円)を徴収し、雇用率達成企業に対しては逆に調整金、報奨金などを支給する仕組みになっています。
今後の予定
令和3年4月までに、民間企業の法定雇用率は2.3%になります。(国等の機関も同様に0.1%引上げになります。)
未払い残業代請求訴訟における「付加金」
働き方改革により残業についてますます厳しい目が向けられています。未払いの残業代請求の訴訟が起きるときには、未払い残業代以外にも「付加金」と言う制裁金を請求されることがあります。
付加金とは?
付加金について、労基法では以下のように定めています。
労働基準法 第114条
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。
付加金の対象となる手当は次の通りです。
解雇予告手当(労基法20条)
使用者の責に帰すべき休業の場合の休業手当(労基法26条)
時間外労働に対する割増賃金(残業代。労基法37条)
法定休日労働に対する割増賃金(休日手当。労基法37条)
深夜労働に対する割増賃金(深夜手当。労基法37条)
有給休暇中の賃金(労基法39条7項)
付加金の判断は裁判所が行う
付加金の支払いは必ず命じられるものではなく、あくまで、裁判所が支払いを命じることが「できる」と規定されています。裁判所が内容の悪質性や労働者の損害の程度などを検討して総合的に判断されるものと思われます(判断基準は明示されていません)。
いずれにせよ「未払い残業代と合わせて倍額支払わなければならない可能性」があることが会社側の抑制することになるので、裁判が長期化せず和解によって紛争解決をすることを促すために付加金があるとも考えられます。
外国人を雇用する際の注意点
近年、外国人労働者を街中で目にする機会が増え、都内のコンビニでは必ずと言ってよいほど見かけます。外国人労働者が日本で働くためには在留資格が必要ですが、今年の4月より新たな在留資格である「特定技能」が創設されたこともあり、今後も人数が増えていくと予想されます。雇用する際の注意点について見ていきましょう。
・まずは在留資格の確認を
事業主は、在留カード等により、日本での就労が認められる在留資格であるか確認をする必要があります。認められているのは、主に、技術・人文知識・国際業務・企業内転勤・技能等です。中華料理屋等のコックは技能にあたります。また、永住者や日本人の配偶者等は就労活動に制限がありません。留学や家族滞在は原則として就労が認められませんが、資格外活動許可を得ることで週28時間までの就労が認められています。
・外国人雇用状況の届出
在留資格の確認がとれ、雇入れた際は、外国人雇用状況届出書を管轄のハローワークに届出しなければなりません。届出をするタイミングは雇い入れ時と離職時です。届出を怠ると30万円以下の罰金が科されます。
・雇用保険や社会保険について
雇用保険や社会保険は、日本人と同じように、一定の要件を満たす場合には加入させる必要があります。外国人だからと言って取扱いに違いはありません。簡単に、週20時間以上の労働なら雇用保険加入、週30時間以上の労働なら社会保険の加入が必要です。また、雇用保険加入時には在留資格等の情報を記載する必要があります。
その他、雇入れ時には労働条件通知書の発行を忘れないようにしましょう。その際、日本ならではのルールもあると思いますので、丁寧に説明してあげたほうがいでしょう。日本語の文字理解が難しい場合は、外国語での各書類作成も検討のうえ、事後のトラブルに発展しないよう注意が必要です。
役員の社会保険加入
よく役員の社会保険の加入非加入についてご相談を頂きます。
非常勤役員は社会保険加入義務がないとお聞きしたことがある方も少なくないかと思います。
厳密に申し上げますと、単に「非常勤」というだけで自動的に加入の必要性がない、と断定することは出来ません。
なお、非常勤役員の定義や要件について、法令等で具体的に定められていない為、明確な判断基準がないのが実情です。
では、非常勤役員について、どのように判断すればよろしいでしょうか?
この点、日本年金機構のQ&Aにて判断具体例を以下のように記載しております。
1.当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか
2.当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか
3.当該法人の役員会等に出席しているかどうか
4.当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか
5.当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか
6.当該法人等より支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか
これらを総合的に考慮して判断するとのことです。
台風で休業した時の休業手当
台風などの異常気象時に会社を止むを得ず休業する場合、休業手当の支払い義務はあるでしょうか。
休業手当の決まり
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定められています。これが休業手当というものです。
この、「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、例えば取引先から材料が届かないため仕事にならないため工場の操業を止めたり、飲食店で客入りが悪いから早退させるような場合を指します。
自然災害はどうか
台風などの災害は「使用者の責に帰すべき事由による休業」と言えるでしょうか。
台風については、自然現象であり、会社とは関係なく発生します。そしてそれは人間の力では防ぎようもありませんから不可抗力と認められる可能性が高いでしょう。
つまり、労基法上の休業手当を支払う義務は使用者に発生しないことになります。
ただし、台風だったらなんでもいいかというとそうではなく、台風の予報だけで休業とし休業手当を支払わないことが違法とみなされるケースもあるでしょう。ケースバイケースとなります。
安全配慮との関係
暴風のなかで野外作業を命じて、労働者が落雷にあったり滑落事故を起こしたりした場合使用者は「安全配慮義務」違反に問われる可能性があります。安全と作業効率、休業手当の支払い義務の可能性を総合的に考えながら使用者は判断をしましょう。
対策の例
自然災害と休業手当の関係は判断が難しいことがあります。台風の可能性が高い時期、地域においては、⑴台風の時に備えて在宅勤務を認める仕組みを作る⑵有給休暇の取得を奨励するなどの対策も検討して良いでしょう。
試用期間の延長はできるか
多くの企業で採用の際、試用期間を設けているかと思います。期間の長さについて法的な制限等は特にありませんが、一般的には1ヶ月~6ヶ月程度として設けられており、最長でも1年限度と解釈されております。
試用期間それ自体は企業が独自に設定するものと考えられますが、仮に採用した人材の適正が判断しづらい場合、企業は試用期間を延長できるのでしょうか?
結論としましては、試用期間の延長は違法ではないが非常にハードルが高いものと言えるでしょう。
試用期間の延長が認められる要件は以下の通りです。
① 試用期間の延長について就業規則等に予め規定されていること
② 本人に採用時に予め延長について通知および合意を得ること
③ 試用期間を延長するに合理的な理由が存在すること
特に注意が必要であるのが、③合理的な理由があることです。
そもそも試用期間を設ける目的とは、労働者の適性を評価・判断するものであると解されます。試用期間中の労働者は通常よりも不安定な地位に置かれることから、適性を判断するのに度を越えた長期に試用期間に関しての基準は必然的に厳しいものとなってきます。そこで、試用期間の延長が認められる為には、そもそも合理的な正当事由が必要になります。
具体的には、欠勤日数が多い場合、試用期間中に業務違反や規律違反に当たるような行為をした場合、勤務成績が著しく悪く、注意・指導しても一向に改善されない場合には合理的な理由と認められるケースがあります。
ポイントとしましては
① 適性判断をするのに不十分と認められるかどうか
⇒欠勤期間が多く物理的に不十分といえるかどうか、即時不適格と断定できないとしても、適性に疑問があり適性判断に更に時間を要することが必要と認められるかどうか
② 既に不適格と認められていても本人の反省をみたいかどうか
⇒規律違反をした場合等、恩恵的に試用期間を延長する場合等
上記基準によって合理的理由と認められるかどうか検討する必要がありそうです。
従業員への罰金制度は違法か?
原則としては罰金制度は「違法」の可能性が高い
以前、遅刻や従業員への罰金制度が話題になった時もそうですが、
そもそも労働基準法上において、罰金制度は原則として違法となります。
労働基準法上、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と明確に定めているためです。(16条)
つまり、「備品を壊したら罰金○○円」や「遅刻したら罰金○○円」等の実損害とは別に一定額を徴収する罰金制度は法律上で言う「不履行についての違約金」や「損害賠償の予定」に該当してしまうと考えられます。
例外とは?
原則としては罰金制度は違法ですが、
罰金制度が①賠償請求が目的でなく、社内秩序維持目的の②制裁による減給と認められる場合には罰金制度が合法と認められるケースもあります。
「不適切動画」防止策として罰金規定が「例外」として認められるか、その具体的検討については次回記事にて行いたいと思います。
監視または断続的労働従事者の取扱
警備員、宿直や専属運転手には残業代を支払わなくてよいか?
警備員、宿直や役員専属運転手など、拘束時間は長いものの、実際の労働時間は長く継続することなく、一作業(巡回や送迎)を終えると、待機(手待ち時間)し再び労働をする、といった場合、企業は労働者の労働時間についてどのように判断すればよろしいでしょうか?
実際に、待機時間(手待ち時間)もすべて労働時間とすると、時間外労働が膨大に増えることが予想され、残業代の負担も併せて気になさる方も多いでしょう。
行政官庁の許可を受ければ、労働基準法の「労働時間・休憩時間・休日」の規定を除外できる
結論から言いますと、宿直や専属運転手等の場合、労働基準監督署に許可を受けることで、労働時間・休憩時間・休日の規定を適用除外とすることが出来ます。
通常、労働者は1日8時間、週40時間を超えて労働した場合には割増賃金(残業代)が発生しますが
監視または断続的労働従事者とは?なぜ適用除外されるのか?
通常労働基準法は労働者を保護するために、労働条件の最低限度を設けております。ただし、労働基準法41条によれば、法41条該当者に対しては、労働時間・休憩・休日の規定を適用ないと規定しております。
この適用除外対象労働者として、「監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を受けたもの」が定められています。
「監視又は断続的労働に従事する者」の具体例ですが、
「監視」業務とは、しては、門番、守衛など
「断続的業務」とは寮父母や宿直・日直・役員専属運転手などが挙げられます。
上記の職種がなぜ適用除外の対象となるかといいますと、上記の労働者の労働は、
通常の労働と比較して、常態として身体の疲労又は精神的緊張が少ないもしくは小さいためと解釈されます。
したがって、身体疲労や精神的緊張度の高い業務が含まれる場合は適用除外の対象外となります。
具体的には、「監視」業務の場合に交通関係の監視業務や爆発物管理等危険な場所での監視業務などは、身体の危険性や精神的緊張度は高いと認められ、法41条該当者には当たらない、とされています。また、「断続的労働」業務の場合、ある1日は断続的労働であっても、ほかの日は通常労働である場合には、適用除外である断続的労働者には該当されません。
労働基準監督署に届け出る方法について
監視または断続的労働従事者に該当する社員がいた場合、労働基準監督署長の許可が必要であることは前述したとおりですが、具体的にはどのような手続きが必要でしょうか?
労働基準監督署に提出する必要がある書類として、
・監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請書
・該当労働者の過去の稼働実績が確認できる書類
が挙げられます。
この稼働実績の書類ですが、単に業務内容がわかるものでは足りず、具体的なルーティン、日々のルーティンがわかる書類が必要です。
稼働実績の書類が不十分である場合、補足資料として労働者の雇用契約書や同意書等が求められる場合もございますので、あらかじめ用意しておくと安心でしょう。
なお、実際の審査につきましては、書類審査の他、労働基準監督署より実態調査(労働者に対して簡単な聞き取り調査)が入ることが一般的になりますので、予め、対象労働者との日程調整を行う必要があります。
、労働基準監督署に許可を受けることで、たとえ、時間外労働をしたとしても、残業代を支払う必要がなくなります。また、休日規定も除外されるので、休日労働に対する割増賃金の支払いも必要がなくなります。(ただし、深夜業・年次有給規定は適用されますのでのでご注意ください。深夜業の残業代は必要となります。)
転籍は拒否できるか
転籍は拒否できるか?
子会社に転籍をさせたい従業員がいた場合、会社は無条件に社員に対し、転籍命令を出せるでしょうか? 従業員が拒否した場合にはどうなるでしょうか?
転籍とは、従来雇用関係のあった会社との労働契約を終了し、新たなに別の会社と労働契約を結びなおすことが同時に行われることを言います。
【転籍は本人の同意が必要】
「転籍」を命じる場合、法律上は労働者の同意(承諾)なくして別の会社の指揮命令下のもとで働かせることは出来ない、とされています。(根拠:民法625条)
就業規則、労働契約等で「転籍」に関する規定があったとしても、本人の個別の同意がない限り転籍をさせることが出来ないというのが、裁判所の見解です。
転籍には労働者個別の同意が必要、というのが大原則となります。
これはあくまでも、転籍は移転先との労働契約の成立を前提とするため、元の会社が規則等により定めていても、労働者は元の会社の規則で制限することは出来ず、元の会社規則等を根拠に転籍を命じることができない、という理論になります。
・労働者本人の同意が得られない場合は?
上記はあくまでも原則論になります。原則としては個別の同意が必要となりますが、以下の条件を満たす場合には個別の同意を必要としない、とされています。
① 親会社の入社案内に子会社が勤務地の1つして明示され、
② 採用面接時に転籍があり得る旨の説明、労働者がそれに同意、
③ 更に転籍によって労働条件が不利益にならず
④ 転籍といっても、実質的には親会社の一部門として扱われており、永年転籍も配転と同様に扱われてきた
上記要件を全て満たす場合には、個別の同意なく、転籍を命ずることが出来ると過去に認められた判例があります。
グループ会社であり、グループ内における雇用調整のための転籍が慣習的に定着している場合には、例外的に認められるケース場合があります。
ただし、この場合でも、転籍後の労働条件の保障は特に重要な要素となりますので、注意が必要です。
・まとめ
「転籍」を命令する場合、原則としては労働者の同意が必要不可欠です。同意が得られないまま、勝手に転籍をさせることは出来ません。
例外的に同意を必要としない場合もありますが、認められる余地は非常に小さいです。
実際に「転籍」命令の同意を得られなかった場合には、従業員との労働条件の擦り合わせをし、同意をもらう方向性に話し合いをする、もしくは出向や配転など別形態での人事異動を模索することになるでしょう。
振替休日と代休
「振替休日」と「代休」、本来休みの日に出勤させる代わりに他の日に休みを与えるものであり、一見双方ともに同じ意味合いのように思えます。しかしながら、法律上の取り扱いが全く異なる「別物」となります。
振替休日とは?
「振替休日」とは「休日」を予め「労働日」と変更し、代わりに他の「労働日」を「休日」へと変更することを言います。
「振替休日」を行った場合、通常休日とされている日に社員を出勤させたとしても、休日出勤は「労働日」として取り扱われることになり、「休日労働」には該当しません。
振替休日における割増賃金について
「休日労働」には該当しない為、「休日労働」に対する割増賃金(3割5分以上)の支払い義務は発生しません。ただし、「振替休日」が週をまたぎ、勤務週の労働時間が40時間を超える場合、別途「時間外労働」としての割増賃金(2割5分以上)の支払い義務が生じますのでご注意ください。
代休とは?
一方の「代休」とは、「休日労働」が実際に行われた後に、代わりに「休日」を設けることをいいます。事後に「休日」を与えたとしても「休日労働」の事実が消えたことにはならず、割増賃金の支払い義務が生じます。
代休における割増賃金について
「代休」の割増賃金支払い義務ですが、「休日労働」が「法定休日」(労働基準法で定められた「週1回または4週に4回」与えなければならない休日)に行われたか、「法定外休日」(会社が任意で制定した法定休日を上回る日数の休日)に行われたかによって割増率に差異が生じます。
「法定休日」の場合、割増賃金が3割5分以上の割増率で計算しなければなりませんが、「法定外休日」の場合、週40時間の労働時間を超える場合、「時間外労働」として2割5分以上の割増率が発生することになります。
産前産後の労働者への対応
妊娠中の女性労働者が軽易な作業への配置換えを申し出た場合、原則として他の軽易な作業へ転換させなければなりません。
また、妊娠中の女性労働者が時間外労働、休日労働、深夜労働をしないことを申し出た場合、時間外、休日、深夜に労働させてはなりません。
使用者は、女性労働者が妊娠、出産、及びその産前産後の休業をしたことを理由する解雇が禁止され、不利益な取扱いが禁止されています。
妊娠中の女性労働者から産前の休業を請求された場合、出産予定日の前6週(多胎の妊娠では14週)以内の産前休業を与えなければなりません。
産後8週間は就業させることが禁止されています。ただし本人に働く意思があり、産後6週間を経過していてかつ医師の支障がないと認めた範囲の業務では働くことができます。
産前産後休業中と、その後30日間は、労働者を原則解雇できません。
生後1年に達しない子を育てる女性労働者は休憩時間のほか、1日2回、各々少なくとも30分、育児時間を請求でき、使用者は育児時間を与えなければなりませんが1日の労働時間が4時間以内の場合は、1日1回の付与で足ります。
これらの請求はパートタイム労働者であろうと変わりはありません。
健康保険の被保険者は産前休業中、産後休業中に出産の日以前42日(多胎の場合は98日)出産の日後、休業中の56日間は「出産手当金」が受給できます。
産前産後休業取得者申し出者の提出により期間中の社会保険料を免除する事もできます。
外国人の雇用
都心部のコンビニでは多くの外国人労働者を目にします。
また、近年はコンビニ以外の分野でも外国人労働者は増加してきております。
外国人労働者については厚生労働省でも毎年6月に「外国人労働者問題啓発月間」として様々な取り組みをするなど重要視されてきております。
具体的には
・国籍で差別しない公正な採用選考を行っているか?
・労働法規を守り、外国人労働者も労働・社会保険に加入しているか?
・日本語教育や、生活上・職務上の相談に配慮しているか?
・安易に解雇をしていないか?
・外国人の雇入れ・離職時にハローワへ雇用状況の届け出をしているか? などの要点が挙げられております。
事業主は外国人労働者の雇入れ又は離職時には外国人雇用状況届出が義務付けられており 日本の国籍を有しないで在留資格「外交」「公用」「特別永住者」以外の人が対象となります。
日本人と結婚している「日本人の配偶者」の在留資格の人も届出が必要です。
正社員、アルバイト関係なく必要となります。
届出方法は雇用保険への加入状況により変わってきます。
雇用保険の被保険者となる場合は資格取得届を出す事により外国人雇用状況報告となり雇用保険の被保険者とならない場合に外国人雇用状況届出書の提出が必要となります。
外国人雇用状況届出の内容はと言いますと
① 氏名
② 在留資格
③ 在留期間
④ 生年月日
⑤ 性別
⑥ 国籍の属する地域
⑦ 資格外活動の有無
⑧ 雇入れ(離職)年月日 となっております。
子供を雇う時の注意点
労働基準法では、満18歳に満たない者の労働に関し、特別の保護規定を置いています。
・最低年齢
児童は満15歳に達した日以降の最初の3月31日までは原則として労働者として使用してはなりません。
ただし、健康・福祉に有害でない軽易な業務に限り、労働基準監督署長の許可を条件に、新聞配達など非工業的事業では満13歳以上、映画・演劇の子役では満13歳未満の児童でも、修学時間外に働かせることができます。
・年齢証明
年少者については、年齢証明書を事業所に備えつけなければなりません。年齢証明書は、住民票記載事項証明書でよい事とされています。許可を受けて使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者の同意書を事業所に備えておかなければなりません。
・年少者の労働時間及び休日
年少者は法定労働時間が厳格に適用されており、原則として時間外・休日労働を行わせる事ができません。また、各種の変形労働時間制のもとで労働させることもできません。
・年少者の深夜業
年少者については、原則として深夜時間帯に労働させてはなりません。
・危険有害業務の就業制限
年少者は肉体的、精神的に未熟であることから、危険有害業務に就業させることが禁じられています。
・未成年者の労働契約、賃金請求権
労働契約は、例え未成年であっても本人自身と結ばなければならず、親権者や代理人が未成年に代わって締結する事は認められていません。未成年者は独立して賃金を請求することができ、親権者または後見人は未成年の賃金を代わって受け取ってはなりません。
賃金台帳と労働者名簿
使用者は事業場ごとに各労働者の賃金台帳(法第108条)と労働者名簿(法第107条)を作成しなければなりません。 記入を必要とする事項は下記の通りです。
賃金台帳の記載事項・・・最後の記入をした日から3年間保存
① 氏名
② 性別
③ 賃金計算期間
④ 労働日数
⑤ 労働時間数
⑥ 時間外、休日労働時間数及び深夜労働の時間数
⑦ 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
⑧ 賃金控除の額
労働者名簿の記載事項・・・退職日から3年間保存
① 氏名
② 生年月日
③ 履歴
④ 性別
⑤ 住所
⑥ 従事する業務の種類(常時30人未満の事業場では不要)
⑦ 雇入れの年月日
⑧ 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合はその理由)
⑨ 死亡の年月日及びその原因
基本的に全ての記載が必要となります。 記載項目を満たしていれば様式は問われませんので例えば賃金台帳と源泉徴収簿を合わせて調製しても構いません。 いずれの台帳も電子データで記録・保存することができますが、労働基準監督官から求められたときはすぐに表示ができる事、写しを提出できるようにしておかなければなりません。
労働時間の適正な把握&措置
使用者には労働時間を適正に把握する責務がありますので下記のような措置を講じなければなりません。
使用者は労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること
原則的な方法
・使用者が自ら現認することにより確認すること
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する事 やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
・自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく設置等について、十分な説明を行うこと
・自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
・使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにも関わらず、記録上これを守っているようにすることが労働者等において慣習的に行われていないか確認する事。
賃金台帳の適正な調整
・使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間といった事項を適正に記入しなければならない事
労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間の事を言います。業務上義務付けられている研修、教育訓練等も該当しますのでしっかりと把握する責務を果たしましょう。
従業員代表の適法な選出
時間外労働に関する協定(いわゆる「36協定」)などの労使協定を締結する際、従業員の過半数を代表する者を従業員代表として締結することが定められています。 また就業規則を作成・変更する際にも、従業員代表の意見を求めなければなりません。
従業員代表の選出については、労基法の規定する監督または管理の地位にある者ではないこと、投票や挙手など民主的手続きによって選出された者であること、という2つの要件を満たす必要があります。
「監督または管理の地位」とは、経営者と一体的な立場にある状態を指し、肩書きや名称に関係なく、その実態で判断されます。また親族を選出する場合は労働者側から見ると使用者との関係性を強く感じてしまい労使間の締結の意味も薄れてしまいますので選出はできないでしょう。
使用者は選出された従業員代表に対して、過半数の代表であること、あるいは過半数代表になろうとしたことを理由に、不利益な取り扱いをしてはいけません。
こうして従業員代表を民主的手法で選出するのは、一義的には「法令で定められているから」であり、また「労使間の紛争やトラブルを適切に解決するため」です。しかしそうした“守り”のねらいだけでなく、過半数の代表を選ぶ過程を通じて、従業員に企業経営への参加意識を持ってもらうことにも大きな意味があります。従業員間はもとより労使間の風通しも良くなり、トラブルの未然防止というメリットも期待できるでしょう。
労働条件の調査
労働基準監督署が重点業種を選定して書面の通知書が届き労務の調査をします。
調査項目は労基法の基本部分でもある下記となります。
労基法第15条 労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間等の法定事項を書面の交付により明示していない事
労基法第89条 常時10人以上の労働者を使用しているにも関わらず、就業規則を作成(変更)し、所轄労働基準監督署に届出ていない事
労基法第108条 賃金台帳を調製していない事。
賃金台帳に労働時間、労働日数を記入していない事
労基法第32条 時間外労働に関する協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届出ていないにも関わらず法定労働時間を超えて労働させている事
労基法第35条 休日労働に関する協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届出ていないにも関わらず法定休日に労働させている事。
労基法第24条 書面による協定を締結していないにも関わらず●●を賃金から支払っている事
労基法第37条 ●●を割増賃金の基礎となる賃金に算入していない事
安衛法第66条 労働者に対し1年以内毎に1回、定期に健康診断を行っていない事(深夜業務に従事する労働者は6カ月以内毎に1回)
提出を要求される資料は下記となります。
・就業規則
・賃金台帳
・タイムカードや出勤簿等、労働時間の記録がわかるもの
・36時間外協定
・変形労働時間制の届け出
・雇い入れ通知書
・賃金が最も低い者の資料
・健康診断の結果報告書
労務の基本でもありますので調査に備えるのでは無く日頃からの整備を心掛けましょう。
サマータイムの導入に必要な届出
最近では「東京オリンピックにもサマータイムの導入を」という動きがあります。
サマータイムとは、夏は日が長いので、時計の針を早めようというものです。
夜の明るい時間が増える分、アフター5の充実が図れるというのがサマータイムの趣旨であり、近年の流れから導入を考えている企業も少なくないかと思われます。
では、「○月~○月は就業時間を繰り上げるぞ」という形で即座にスタートできるのでしょうか?
労働時間は変わらないからいいのではと思われがちですが、始業・終業時刻は労働者にとって重要な労働条件であり、労働契約を構成する要素の1つです。出勤時間を早めることによって不利益を感じる労働者もいるということを前提に考えなくてはなりません(幼児の送り迎えが必要な場合など)。
そこで就業規則等の変更が必要となってくるかと思われます。
就業規則の多くに通常記載されている労働時間規定にある「業務の都合により、始業・就業時刻、休憩時間を繰り上げ、または繰り下げることがある。」
という条文の解釈によって、就業規則を改定せずにサマータイムを運用できないかということですが、この規定の解釈によって運用できるのは気象悪化などを例にしたスポット的な就業時間の変更の範囲と捉えた方が自然だと思います。
また、従業員への周知の意味でも労使合意のもと就業規則の変更届を所轄の労働基準監督署へ届出することが必要になります。
最低賃金と労働時間
最低賃金は各都道府県で設定されています。正社員はもちろん、パート、学生アルバイト関係なく、とにかく働く人に対し経営者は、設定以上の額を支払わなければ、最低賃金法違反となります。この違反には、50万円以下の罰金が定められています。
最低賃金は時給での提示となっているので、時給制の人は違反かどうか一目瞭然で分かりやすくいいのですが月給制の人は、いろいろ計算する必要があります。特に、基本給15万円~17万円(東京都参照)くらいの従業員は確認をしておいた方がいいでしょう。
「時間あたりの賃金」(時給)を計算するには。まず、会社の「年間所定労働日数」、つまり1年間のうち、何日間の出勤日があるのかを確認します。こちらの確認方法は年間休日日数を算出して365日から年間休日日数を引くのが分かりやすいかと思います。
「年間所定労働日数」に「1日の所定労働時間数」をかけます。これで、1年間の労働時間が計算されます。この数字を12ヶ月で割れば、「1ヶ月あたりの平均所定労働時間」となります。
あとは月給額を、この「1ヶ月あたりの平均所定労働時間」で割れば、時給が算出されます。この金額が、各都道府県で設定されている最低賃金より多ければ大丈夫ですが少なければ、違法状態ですから、会社は対策を取らなければなりません。
対策といっても賃金を上げるか休日を増やすかのどちらかになりますが、繁閑の差がある場合などは閑にあたる時期の業務時間を少なめに調整するなどの処置も考えられます。
36協定
法定時間外・法定休日労働をさせる場合にあらかじめ「時間外労働・休日労働に関する協定」を事業所を管轄する労働基準監督署に届ける必要がでてきます。この協定を通称「36協定」と呼んでいます。
労働基準法36条に規定されていることから通称で「サブロク協定」と呼ばれています。
会社と労働者の過半数を組織している労働組合(過半数労働組合)が協議の上締結します。過半数労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する過半数代表者が会社と協定を締結します。
36協定は事業場単位で締結し届け出る必要があります。工場・支店などがある場合は、その工場・支店などがそれぞれ 1つの事業場になりますので工場・支店ごとに 36 協定を締結し、それぞれの所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出る必要があります。
36協定は労働者に見やすい場所への掲示、書面の交付等が必要となります。
業務の繁忙など臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない「特別の事情」が予想される場合には、特別条項付き協定を締結することによって限度時間を超える時間延長をすることができます。
法定休日に労働させる必要がある場合には具体的自由、業務の種類、労働者数、労働させることのできる休日、始業及び終業の時刻を協定します。
36協定を締結せずに残業や休日労働をさせた場合は労働基準法違反になり、会社に6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
算定基礎届について
健康保険料と厚生年金保険料は、「標準報酬月額」で決まります。
その「標準報酬月額」を1年に1回届け出ることを「算定基礎届」と言います。
7月1日現在、在職している社会保険加入者が算定の対象者です。
6月1日以降に新たに社会保険に加入した方は、標準報酬月額を届け出たばかりなので算定の対象外となり、4月~6月の固定的賃金の変動により、標準報酬月額が2等級以上の差が生じ、随時改定に該当した人も対象外となります。
毎年4月~6月の3ヶ月間の平均給与月額から標準報酬月額をもとにどの等級に当てはまるかによって決まります。
しかし入院による欠勤などの理由で、ある月の労働日数が他の月よりも少なくなっているという場合も考えられます。給与計算の対象となる労働日数を「支払基礎日数」と呼び、その数が17日に満たない月は標準報酬月額の計算から除外され該当する月のみを計算します。
算定に用いる報酬は被保険者が事業主から労務の対償として受けるもので原則として金銭、現物の別を問わず全てをいいます。
ただし、臨時に支給されるものや労務の対償とはいえないもの、3ヶ月を超える期間ごとに支給されるものは報酬から除かれます。
7月1日から7月10日の間に年金事務所(又は健康保険組合)へ届け出ます。
算定基礎届は、手続きや内容が少々複雑なものになっていますが、保険料と将来受け取る年金を決定する大切な届出です。
労働保険の年度更新
労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険の2種類の社会保険の総称です。以上の保険は給付などにおいては別々に取り扱われますが、保険料の徴収は、「労働保険」として取り扱われています。
労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を「保険年度」として、すべての労働者(雇用保険については、被保険者のみ対象)に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じた額に一般拠出金を足して算定します
一般拠出金とはアスベスト健康被害救済のために全事業主に課されます
労働保険を計算する上で注意が必要なのは役員で雇用保険の資格がある人や、免除対象高年齢労働者がいる場合です。
取締役であって、同時に部長や支店長、工場長など、従業員としての身分を有する人は
雇用保険の被保険者となっている場合がありますこのような使用人兼務役員が受けている給与のうち、実質的な役員報酬は労働保険の算定基礎賃金には算入しません。
免除対象高年齢労働者は、保険年度初日(4月1日)において、満64歳以上の高年齢者です
最終的に前年度に納付した概算保険料と今回の確定保険料との差額の過不足による調整を行います。
年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行います。申告・納付が遅れると延滞金がかかる場合もありますので、期日までに手続きが完了できるように対応しましょう。
公正な採用
日本では日本国憲法(第22条)により、基本的人権の一つとして全ての人が「職業選択の自由」を保障されています。
これは、誰でも自由に自分の適正・能力に応じて職業を選べるということであり、これを実現するために雇用する側(会社側)が応募者に広く門戸を開いた上で、適正・能力のみを基準とした「公正な採用選考」を行うことが求められています。
「公正な採用選考」を行う基準は
①応募者に広く門戸を開くこと
②応募者の持つ適正・能力以外のことを採用基準にしないこと
適性・能力に関係のない事項は、それを採用基準としないつもりでも、 応募用紙に記載させたり面接時に尋ねたりすれば、その内容は結果と してどうしても採否決定に影響を与えることとなり、就職差別に繋がる恐れがあります。
具体的にどんなことに配慮すれば公正な採用選考を行えるのか
公正な採用選考をする上では、下記のような事項を質問することについて注意が必要です。
<a.本人に責任のない事項>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、病歴、地位、学歴、収入など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)>
・宗教や思想に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
上記に例示した全てを杓子定規に適用するばかりでは有意義な選考ができないこともあるでしょう。例示した項目を参考にしつつ、差別的な意図を持って採用選考をしない心構えが重要だと思います。
定期健康診断の報告
ダブルワーカーを雇用した場合の時間外割増の計算
副業をしている場合、ダブルワークをしている場合の労働時間について、労働基準法第38条第1項では次のように定めています。
労働基準法第38条第1項
事業場を異にする場合も、労働時間の適用に関する規定の適用については通算する
ここで「事業場を異にする」とは、「事業主を異にする場合を含む」(昭23.5.14基発第769号)と解されています。2つ(以上)の事業主相互にはまったく資本・商業関係がなく、労働者本人の独自判断で複数の勤め先を確保する場合でも、労基法第38条は適用されます。ですから、2つの事業場で働いた時間を「通算して」、1週40時間、1日8時間を超えたら、割増賃金の支払い義務が生じます。
どちらが残業代を払うか
また、割増賃金の支払義務については、「時間外労働についての法所定の手続を採り、割増賃金を負担しなければならないのは、通常は、時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すべき」とされています(労基法コンメンタール)。後から契約する事業主は、「労働者が他の事業場で労働していることを知りながら、契約を締結する」立場にあるからです。
とはいうものの、労働者が副業を正直に申告してくれるとは限らないこともありますから、取扱には曖昧な部分が残ります。副業を認める流れにある中、法整備が求められる箇所でしょう。
パートタイマーへの労働条件の通知
労働基準法では、パートタイム労働者も含めて、労働者を雇い入れる際には、労働条件を明示することが事業主に義務付けられています。特に、「契約期間」「仕事をする場所と仕事の内容」「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無、休憩・休日・休暇」「賃金」「退職に関する事項」などについては、文書で明示することが義務付けられています。(違反の場合は30万円以下の罰金に処せられます。)
パートタイマーに特に注意する3つの明示事項
近年、パートタイマーやアルバイトなど多様な働き方も増えていることから、パートタイム労働法では、「昇給の有無」「退職手当の有無」、「賞与の有無」の3つの事項を文書の交付など(3つの事項についてはパートタイム労働者が希望した場合は電子メールやFAXでも可能)により、速やかに、パートタイム労働者に明示することが義務付けられています。
昇給と賞与について
昇給や賞与の支給を事業所の業績やパートタイム労働者の勤務成績などによって支給するケースで業績などによっては支給されない可能性がある場合や、退職手当を勤続年数に基づき支給するケースで、所定の年数に達していない場合は支給されない可能性がある場合は、制度は「有り」とした上で、「業績により不支給の場合あり」や「勤続○年未満は不支給」など支給されない可能性があることを明記してください。
罰則
違反の場合、行政指導によっても改善がみられなければ、パートタイム労働者1人につき契約ごとに10万円以下の過料に処せられます。
パートタイマーについては、上記のうち「契約期間の定めと更新の有無、判断基準」は注意して記載し、明示してください。契約更新についてはよくトラブルになります。
人事労務関係の書類の保管義務
記録の保存について、労働基準法第109条で次のように定められています。
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければなりません。
この規定は、労働者の権利と労働に関する紛争の解決と監督する上での必要性から使用者=会社の義務として定められているものです。後から揉め事が発覚した場合に「書類を処分した」と言い訳できないようにするためという意味がありそうです。
保存方法は紙でないといけないか
保存方法については、労働基準監督署の臨検時等、保存文書の閲覧、提出等に直ちに対応できるシステムになっていて、画像情報の安全性の確保、正確性かつ長期間にわたって復元できる等の要件を充たしていれば電子媒体に保存することも認められています。
保存すべき書類
保存すべき書類は次のものです。
・労働者名簿
・賃金台帳
・労働契約における労働条件を明示した書類等(雇入れ通知書等)
・解雇予告通知書、その他解雇に関する書類
・災害補償及び賃金に関する書類
・業務災害等の災害に関する書類等
・賃金に関する書類
・労働の対償として使用者が労働者に支払ったすべてのものに関する書類
・その他労働関係に関する重要な書類
その他の書類として、出勤簿やタイムレコーダーの記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、残業命令書及びその報告書、労働者が記録した労働時間報告書など並びに労使協定書、各種許認可に係る書類等。
記録の保存三年間の起算日
三年の起算日については、以下のとおりです。
労働者名簿→労働者の死亡、退職又は解雇の日
賃金台帳→最後の記入日
雇入又は退職(解雇を含む)→労働者の退職又は死亡の日
災害補償→災害補償がおわった日
賃金その他労働関係に関する重要な書類→完結した日
夜勤者の健康診断
コンビニや一部の飲食店など夜勤業務をさせる場合、会社は一般の労働者よりも頻繁な健康診断を行わなければなりません。これは、深夜労働が人間の本来の生活リズムと違うため、健康に特に注意すべきとみなしているからでしょう。
深夜営業をする場合、労働者の健康診断コストもあらかじめ見込む必要があるので注意してください。
頻度
次の表に示した深夜業などの特定業務に従事する労働者に対しては、当該業務への「配置換えの際」及び「6月以内」ごとに1回、定期的に、定期健康診断と同じ項目の健康診断を行わなければなりません(ただし、胸部X線検査については、1年以内ごとに1回、定期に行えば足りることとされています)。
ちなみに、一般の労働者の場合、定期健康診断は1年に1回の頻度で行うよう義務付けられています。
特定業務一覧(労働安全衛生規則13条 第1項第2号に掲げる業務)
・深夜業を含む業務
・多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所に置ける業務
・多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
・ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務
・土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
・異常気圧下における業務
・さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
・重量物の取り扱い等重激な業務
・ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
・坑内における業務
・水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
・鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭酸、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
・病原体によって汚染のおそれが著しい業務
・その他厚生労働大臣が定める業務
試用期間中の社会保険
「試用期間中だから社会保険や雇用保険をかけなくて良い」というのは誤解です。
正社員、アルバイト、パートタイマー、契約社員などの呼び名はたくさんありますが、その呼称や給与額に応じて社会保険が適用されるものではありません。
社会保険は「原則は全員被保険者となる、ただし労働時間や労働日数が通常の労働者(常用労働者)と比べて一定以上短い(4分の3未満)場合、または臨時の雇用の場合は対象から外すことができる」という形になっています。
臨時の雇用の場合とは、次の通りです。
・日々雇い入れられる者(1ヶ月を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く)
・2ヶ月以内の期間を定めて使用される者(2ヶ月を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く)
・事業所又は事務所で所在地が一定しない者に使用される者
・季節的業務に使用される者(継続して4ヶ月を超えて使用されるべき場合を除く)
・ 臨時的事業の事業所に使用される者(継続して6ヶ月を超えて使用されるべき場合を除く) 等
試用期間中は本採用を前提に設けられており、2か月を経過した後に正社員として雇用することを前提にしているのであれば、最初から社会保険に加入することになるのが通常でしょう。
短い場合も対象となる場合
法改正により、勤務時間・勤務日数が、常時雇用者の4分の3未満であっても、以下の①~⑤全ての要件に該当する場合は被保険者になります。
① 週の所定労働時間が 20 時間以上あること
② 雇用期間が 1 年以上見込まれること
③ 賃金の月額が 8.8 万円以上であること
④ 学生でないこと
⑤ 被保険者数が常時 501 人以上の企業に勤めていること
休業手当
休業手当を簡単に説明すると「会社のせいで(労働者は働けるのに)休ませた場合は、一定額の保障をしなければならない手当」のことを言います。
例えば製造業において生産調整をするために工場の稼働を停める場合や、業績不振で休ませる場合などが当たります。これらの休業に対しては、労働基準法により平均賃金の6割以上の休業手当の支払いを強制的に使用者に義務づけられています。
休業手当を払うべきか払わなくても良いかについては、その休業の事情がどのようなものであるかにより異なります。
経営上の障害
労基法26条でいう「帰責事由:会社の責めに帰すべき事由」の範囲には、使用者側に起因する「経営上の障害」を含むものとされています(ノース・ウェスト航空事件・最二小判昭和62年7月17日)。
経営上の障害の例として以下のような事情があります。
・親会社の経営難のため、そこから資金や資材の提供を受けて操業している下請工場が操業を停止せざるをえなくなったような場合
・会社の設備が壊れたなどの設備の欠陥等に基づく休業
・行政官庁の勧告や業務停止命令による休業
・採用内定者に対して、経営状況が悪化したから自宅待機を命じる休業
天災地変の場合
地震や火災などの災害の場合、その災害が不可抗力で使用者側がどうしようもない事情だった場合は、休業手当の支払い義務は発生しません。ただし、普通に考えて会社の防災対策が足りていない場合など会社の体制に問題があった場合は休業手当の支払い義務が発生することがあります。
休業手当の額
労働基準法では、平均賃金の6割以上の休業手当の支払いを規定しています。
平均賃金とは、休業前3ヶ月の給与総額を暦日数で割って求めます。
健康診断を実施後に会社がするべき事
労働安全衛生法において、従業員に原則として年1回定期健康診断を行わなければなりませんが、健康診断実施後も場合によってその後の対応が必要です。以下内容を整理します。
1. 健康診断の結果の記録
健康診断の結果は、健康診断個人票を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間、保存しておかなくてはなりません。( 安衛法第66条の3)
2.健康診断の結果についての医師等からの意見聴取
健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に異常の所見のある労働者について、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。( 安衛法第66条の4)
3. 労務管理上の措置
上記2による医師又は歯科医師の意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。(安衛法第66条の5 )
4. 健康診断の結果の労働者への通知
健康診断結果は、労働者に通知しなければなりません。( 安衛法第66条の6)
5. 健康診断の結果に基づく保健指導
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。 ( 安衛法第66条の7)
6. 健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告
健康診断(定期のものに限る。)の結果は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。 (安衛則44条、45条、48条の健診結果報告書については、常時50人以上の労働者を使用する事業者、特殊健診の結果報告書については、健診を行った全ての事業者。)( 安衛法第100条)
会社には、従業員が安全で衛生的な状態で働くことに配慮する義務(安全配慮義務と言います)があるため、健康診断の結果、労働時間の軽減やサポートをしていきましょう。
障害者雇用率制度
1 障害者雇用率制度とは
身体障害者及び知的障害者について、一般的には雇用の機会が狭められます。障害者についても一般労働者と同じ水準において常用労働者となる機会を与えるために、各企業の規模ごとに「◯人の障害者を雇用しなさい」という数が決められています。
障害者雇用率とは、常用労働者の数に対する割合(障害者雇用率)を指します。
2 現行の障害者雇用率
現行の障害は雇用率は以下の通りです。平成30年4月からは改定になる予定です。
<民間企業>
一般の民間企業 = 法定雇用率 2.0%
特殊法人等 = 法定雇用率 2.3%
<国及び地方公共団体>
国、地方公共団体 = 法定雇用率 2.3%
都道府県等の教育委員会 = 法定雇用率 2.2%
つまり、民間企業であれば従業員100人に対して2人の障害者を雇用する義務が課せられています。
3 一般民間企業における雇用率設定基準、計算の方法
一般企業については以下の算定式による割合を基準として設定されています。
障害者雇用率 = ① ÷ ②
①身体障害者及び知的障害者である常用労働者の数+ 失業している身体障害者及び知的障害者の数
②常用労働者数 + 失業者数
※ 短時間労働者は、1人を0.5人としてカウント。
※ 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウント。ただし、短時間
の重度身体障害者、重度知的障害者は1人としてカウント。
※ 精神障害者については、雇用義務の対象ではないが、各企業の実雇用率の算定時には障害者数に算入することができる。
→平成30年4月からは雇用義務の対象と変更になりました。
労務関係の書類保管
雇用に付随して発生する書類については法律で保存期間が定められています。保存期間を守って管理しましょう。
1 労働基準法第109条
(記録の保存)
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければなりません。
この規定の目的は主に紛争の解決と監督です。やめた社員について紛争が起きたり、過去の労務管理を監督する上での必要性から会社の義務として定められているものです。
2 保管方法
保存方法については、必ずしも紙でなくても良いとされています。安全性の確保などの要件を充たしていれば電子媒体に保存することも認められています。
保存対象の書類
・労働者名簿
・賃金台帳
・(雇入れ通知書等)
・解雇予告通知書、その他解雇に関する書類
・災害補償及び賃金に関する書類
・業務災害等の災害に関する書類等
・賃金に関する書類
・その他労働関係に関する重要な書類
その他の書類として、出勤簿やタイムレコーダーの記録、使用者が自ら始業・終業時刻を記録した書類、残業命令書及びその報告書、労働者が記録した労働時間報告書など並びに労使協定書、各種許認可に係る書類等。
3 いつから起算するか
労働基準法関係の書類保管については、基本的には「終わった日」を基準にします。
労働者名簿→労働者の死亡、退職又は解雇の日
賃金台帳→最終の給与を払った日
雇入又は退職(解雇を含む)関係の書類→労働者の退職又は死亡の日
災害補償→災害補償がおわった日
賃金その他労働関係に関する重要な書類→完結した日
アルバイトにも有休?
時給で働く事が多いアルバイトやパートは、有給休暇が馴染みにくいと思われがちですが、パートアルバイトであってもにも有給休暇を付与しなければなりません。
有給休暇とは、以下の2つを満たす休暇のことを指します。
・心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される
・「有給」すなわち取得しても賃金が減額されない
パートアルバイトであっても心身の疲労を回復する必要はあるというわけです。
要件
①雇い入れの日から6か月以上経過していること
②全労働日数の8割以上出勤(出産・育児・労災・有給取得を除く)
②について、8割の算定は「本来働くべき日だったかどうか」が基準となります。パートアルバイトだと、労働条件通知書やシフトによって「働くべき日」を決めます。
週1日のアルバイトであれば、そのシフトの日をきちんと出ていれば、半年後には有給休暇の権利が発生するというわけです。
アルバイト・パートの有給休暇付与日数
有給休暇について、アルバイトとパートとは「週に30時間未満かつ、週4日以内又は年間216日以内で勤務している労働者」を指します。
週に30時間以上勤務する場合や、一日4時間勤務でも週5日又は217日以上勤務する場合は、フルタイムと同じ有給休暇が付与されます。
パート・アルバイトの有給休暇付与日数は、以下の表にまとめられます。
パートアルバイトの場合は、正社員と比べて少ない日数の有給休暇を与えるということです。
ちなみに、パートアルバイトへの有給休暇の表を見る上で、所定労働日数は「基準日直前の勤務実績を用いる」ということになります。例えば入社後半年が経過した時点の場合。勤務実績が80日だとすると、2倍して年換算した160日が1年間の所定労働日数になります。そのうち欠勤が2割以内であれば、有給休暇が5日付与されます。
社員旅行は労働時間か?
これは実際にあったご相談です。ここに書いても問題は無い内容だと判断いたしましたので掲載させていただきます。
ある会社で社員旅行を企画されているとの事でした。社員全員参加で費用は会社が負担して旅行に行きたいということです。それにより、社員の方にはリフレッシュして頂き、また親睦も深めて頂き、今後のお仕事により一層励んで頂きたいというのが社長の考えでした。
ところが、社員に参加を強制してしまうと社員旅行は業務となってしまい賃金を払わざるを得ません。それでも、全員参加でやりたいというのが社長の考えです。もちろん、会社から社員へのプレゼントなのですから、給料まで払うというのは社長の本意ではありません。また、社員のモチベーションから見ても、給料を頂いて旅行に参加するというのは、楽しさが損なわれてしまう感じがすると思います。
人間というのは、自発的にやれば楽しい事でも、お金が発生して仕事になってしまうと楽しめなくなるという不思議な性質があります。トムソーヤのペンキ塗りの逸話が有名ですね。
さて、ここからは企業規模が関係してくる話になります。その会社は10人ほどの会社でした。社員全員が同じ部屋で毎日顔を合わせて働いています。このような会社の場合は比較的簡単に解決することができます。まず、社員全員で社員旅行について話し合いの時間を持ちます。10人の社員がいれば、そのうち何人かは社員旅行に気が進まないという人がいるかもしれません。それでも10人程度であれば、その場で意見を聞くことができるはずです。そして、その人の意見を受けて内容に修正を加えることも可能です。例えば宴会で夜遅くなるのが嫌だというのであれば、スケジュールを決めて何時からは自由時間としておくことで、問題は緩和されるはずです。人数が少なければこのようなプロセスを経て、社員の合意を作り出すことは比較的容易です。でも、人数が多くなればなるほど、合意形成は難しくなります。
合意形成さえできれば、参加を強制しなくても全員に参加してもらうことは可能になります。ある意味、それが中小企業の強味だとも言えますね。
合意形成ができれば、労使協定を作成して社員旅行を労働時間として取り扱わない旨を書き、再度社員にその内容を周知しておけばいいでしょう。ただし、この労使協定は一回作成すれば永遠に有効ではなく、社員旅行の都度、話し合いを行うか、せめて意見収集のプロセスを経て合意形成する必要があると思います。
夏休みや冬休みを有休消化日にできるか
有給休暇の取得率を上げるために、夏休みや冬休みを「有休消化」として処理することはできるのでしょうか。
法律で定める休日
法律的にはお盆も年末年始も休日にする義務はありません。労働基準法で規定しているのは「1週間に1日、または4週間に4日以上の休日を与えなければならない」ということに過ぎず、たとえ祝日でもお盆でも、年末年始でも労働日とする事ができます。
有給休暇の原則
一方で有給休暇は、「労働日だけれど働く人の権利として休める日」です。この考え方に基づくと、会社が一方的に「夏休みの代わりにお盆時期に有休を使え」「年末年始に有休を使え」と決めることには問題がありそうです。
計画有休という仕組み
労働基準法では「有給休暇の計画的付与」という制度を定めています。
有給休暇の計画的付与制度は、有給休暇の取得率を高め年間労働日、年間労働時間を短縮することを目的として導入された制度です。年次有給休暇の5日を超える部分については、労使協定により事業所全体で一斉にとる等の計画的付与ができます。
具体的には次の手順が必要です。
1 就業規則に定めること
2 労使協定を締結すること
3 労働者が持っている有給休暇の権利のうち、少なくとも5日は本人に「いつ取得するかを決める自由」を与えること
今まで年末年始やお盆が会社の休日だった場合は、計画有休の導入の際に
①休日を労働日とする
②その上で、「もともとは休日だった労働日」を計画有給の指定日とする
という順序になるため、①が労働者に不利になるため労働条件の不利益変更となります。
不利益変更は労働者の同意が必要になりますので注意してください。
在宅勤務のみなし労働時間
在宅勤務者は、プライベートな場所である家で仕事をするわけですから、労働時間を明確に区分する事が難しいでしょう。そんな時には「みなし労働時間制」による労務管理が適しているかもしれません。
労働基準法
法律では次のようにされています。
労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときには、所定労働時間労働したものとみなされます(労基法38条の2第1項)。ただし、その業務を遂行するためには所定労働時間を超えて労働することが通常必要になる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされることになります(同項但書)。
かつては営業や外回りの社員に対して適用されてきましたが、インターネット・スマートホンが普及した今では営業社員の労働時間を「算定し難い」場合ばかりでもなくなってきました。
みなし制の適用要件
①事業場の外、つまり会社でない場所で労働がなされることです。労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし計算がなされます(昭63.3.14基発150号)。
②労働時間を算定しがたいことが第二の要件となります。労働時間を算定しがたいかどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより判断されます。行政解釈によれば、
a.業務を行うグループの中に時間管理者が含まれる場合
b.通信手段を用いて随時使用者の指示を受ける場合
c.訪問先や帰社時刻などにつき具体的な指示を受けてその指示どおりに業務を行い、その後事業場に戻る場合
会社の時間管理が及ばないとは言えないという事です。
在宅勤務については、前述のbに該当するか否かという点がポイントでしょう。在宅勤務のメリットは「子育てや家事などプライベートの用事と並行できる」ことですから、時間管理を厳格に行いすぎると在宅の良さを消してしまいます。労働量を計測して、ふさわしい労働時間を「みなし労働時間」として規定する事も一つの方法だと思います。
社員を雇った時の書類
近年、働く社員からの権利主張をされる事が多くなりました。「言った 言わない」で揉めないように、雇った時に書面を交付してトラブルを予防しましょう。
労働基準法第15条
労働基準法15条によると、会社が労働者を雇用するときは、賃金や労働時間等の労働条件を書面などで明示しなければならないとされています。明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。さらに労働条件が違う場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければならないと決められています。
内容として、「書面で交付するもの」と「口頭で良いいもの」があります。
書面の交付による明示事項
(1)労働契約の期間
(2)就業の場所・従事する業務の内容
(3)始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項
(4)賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む)
中小企業では、特に有給休暇、労働時間、賃金が揉め安い箇所でしょう。
転勤があるかないか、賞与についても気をつけたほうが良さそうです。
口頭の明示でもよい事項
(6)昇給に関する事項
(7)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払時期に関する事項
(8)臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
(9)労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
(10)安全・衛生に関する事項
(11)職業訓練に関する事項
(12)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(13)表彰、制裁に関する事項
(14)休職に関する事項
なお、(1)~(6)は必ず明示しなければならない事項で、(7)~(14)は制度を設ける場合に明示しなければならない事項です。
最低賃金に関する法律
最低賃金は、「人を雇う時は最低でもこれだけのお金を払いなさい」と言う賃金の最低基準額の事をいい、最低賃金法(1959年公布)に基づき、労働者に保障されているものです。労働条件を改善し、労働者の生活の安定や労働力の質的向上を図ることなどが目的とされています。
基本的には都道府県ごとに定められる地域別最低賃金と、特定の産業について設定される特定最低賃金の2種類があり、最低賃金は基本給や諸手当などが対象となります。残業代や賞与などの臨時的なものは対象とはなりません。
地域別最低賃金は、産業や職種に関係なく、パートタイマーや学生アルバイト、外国人労働者などを含めた全ての労働者に適用されます。
派遣労働者には派遣先の最低賃金が適用されるため、例えば派遣元の企業が埼玉県にあっても、東京都にある企業に派遣されて働く場合には、東京都の最低賃金が適用されることになります。
特定の産業について、関係労使が基幹的労働者を対象として、地域別最低賃金より金額水準の高い指定賃金を定めることが必要と認めた場合に設定される最低賃金をいいます。これは、産業別または職種別に分類されますが、現在は、産業別の最低賃金のみが設定されています。各都道府県の特定の産業ごとに設定されており、当該産業において、年齢・業種・業務などの条件で労働者の一部を除外した基幹的労働者にのみ適用されます。
たとえ当事者同士で合意していたとしても、最低賃金を下回る金額で結んだ雇用契約は無効となります。ただし、宿直勤務など一定の条件下では、最低賃金適用が例外的に認められることもあります。
管理監督者の条件
労働基準法によると、「労働時間、休憩及び休日に関する規定は、『事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者』については適用しない。」と決められています。
この規定により、「役職が付いている人には残業代の支払いが不要であるという誤解が世の中にありますが、実際にこの条文で示す「管理監督者」の要件は容易ではありません。
厚生労働省の通達(S63.3.14)で示された管理監督者に該当するポイントは以下の3点となります。
1.職務内容、権限、責任
労務管理について、経営者と一体的な立場にあること
重要な仕事をしていることがまず求められます。採用や企業全体の戦略策定など、管理者としてふさわしい業務を行い、権限があることが必要です。
2.勤務態様、労働時間管理の現況
労働時間、休憩、休日等に関して厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について裁量性が認められていることが必要です。
端的にいうと、タイムカードなどで時間管理をされたり、遅刻したり欠勤したら給与が減らされるという取り扱いをしているときには、管理監督者として認められにくくなります。
3.給与が高い
賃金などの面で、一般労働者と比較してその立場に相応しい優遇を受けていることが必要です。管理監督者として認められる給与水準は「○○万円以上」などと明確には決められていません。年収1000万円でも管理監督者と見られないこともありますし、年収500万円でも管理監督者と判断されることもあるでしょう。
休憩時間中の「電話番」
小規模の事業であれば、休憩時間中も事務員に電話番を頼むことがありますが、労働法から考えると注意が必要です。
労働時間とは
労働時間と休憩時間の違いとはなんでしょうか。労働時間とは、「使用者の指揮命令下にある時間帯」であり、休憩時間とは、使用者の指揮命令下にない時間帯のことをいいます。
つまり休憩時間とは、使用者が労働者に対して、業務上の指示をしてはいけない時間帯ということになります。電話番は「電話がなったらでなければならない」わけですから、休憩時間とは厳密に呼べないことになります。
休憩の原則
労働基準法では、休憩の3原則があります。
① 休憩時間は自由に、
② 労働時間の途中に、
③ 一斉(業種によっては一斉に取得しなくてもいい業種もあります。たとえば販売業など)
に取得させることが明示されています。
休憩時間数
法律上付与しなければならない休憩時間は次のように決まっています。
労働時間8時間越え→60分以上
6時間越え8時間以下→45分以上
6時間以下→なくてよい
近年の労働裁判においては、「休憩時間か労働時間か」を巡って争いになることも少なくありません。例えば、「休憩1時間となっているが、実際は昼ごはんも食べられないほど忙しく、30分しか取れていなかった」という主張をされ、その主張が認められることもあります。1日30分の休憩時間が労働時間とみなされるだけでも積もり積もると大きな賃金不払いとなってしまいますので、休憩中の業務指示には注意しましょう。
社員の健康診断
従業員の健康状態は仕事のパフォーマンスに影響を与えます。逆にいうと、健康状態が悪い社員がいると、病欠による人員補充の必要が出たり、他の社員への業務負担が増えるなどの問題が起こったりするかもしれません。そのため健康診断の実施は大切な労務課題でしょう。
法律では、従業員が1人でもいると健康診断を実施しなければならなりません。また、健康診断の実施義務を怠ると50万円以下の罰金が科せられます。
健康診断の実施義務があるのは正社員だけでなく、従業員がパートやアルバイトだったとしても、条件を満たしているのならば、健康診断を受けさせなければいけません。
パートアルバイトの実施義務は以下のように決まっています。
要件1 期間の定めがないか、期間の定めがあったとしても更新により1年以上の使用が予定されているか、継続して使用されていること
要件2 週間の労働時間が正社員の1週間の労働時間の4分の3以上であること✳
✳要件2に関連して、「おおむね2分の1以上」の場合には健康診断を受けさせるのが望ましいと定義づけられています。
健康診断の種類
事業の種類により実施規程が異なります。主なものは下記のとおりです。
・通常の場合は雇い入れ時・および年1回
・深夜業や坑内労働など特定業務従事者は年2回
・6カ月以上の海外派遣労働者が国内勤務となったとき
実施費用は事業主負担が原則
実施費用は事業主が負担しなければなりません。健康診断時に労働賃金を支払う義務はありませんが、健康診断の時間中は、賃金を支払うことが「望ましい」とされています(厚生労働省労働基準局・行政解釈より)
36協定について
36協定とは「時間外労働・休日労働に関する協定届」のことで労働基準法第36条に規定されていることからこのように呼ばれています。
何故、36協定が必要なのかですが、労働基準法では1日8時間及び1週40時間(一部44時間)の法定労働時間ならびに週1回の法定休日を定めており、法定労働時間を超えての労働や法定休日の労働は原則禁止されています。但し、36協定を結び労働基準監督署へ届け出ることを要件として法定労働時間を超える時間外労働や法定休日における休日労働を認めています。
つまり、36協定の届出をせずに法定労働時間を超える時間外労働や法定休日に労働させた場合は処罰の対象となります。
36協定は就業規則とは異なり、1人でも労働者がおり法定時間を超える時間外労働や法定休日に労働させる場合は届出が必要になります。
また、36協定は有効期間があり、更新をする場合は必ず届出が必要となりますので、期間を確認し毎回締結して届出を行いましょう。
36協定で必要な協定事項は下記の通りです。36協定は時間外労働や休日労働を無制限に認める趣旨のものではありませんので、労使間で十分協議して締結しましょう。
・時間外労働をさせる必要のある具体的な事由
・時間外労働をさせる必要のある業種の種類
・時間外労働をさせる必要のある労働者の数
・1日について延長することができる時間
・1日を超える一定の期間について延長することができる時間
・有効期間
尚、36協定を届出ている場合でも時間外割増賃金や休日割増賃金の支払い義務は発生します。
平成29年10月施行 育児・介護休業法改正
厚生労働省より「平成29年10月1日から改正育児・介護休業法がスタート」のリーフレットが公表されました。
改正内容は下記の通りです。
① 最長2歳まで育児休業の再延長が可能になります。
1歳6ヶ月以後も保育園等に入れない場合には会社に申し出ることにより最長2歳まで再延長可能となり、育児休業給付金の給付期間も2歳までとなります。
② 子どもが生まれる予定の方などに育児休業等の制度のお知らせ
事業主は、働く方やその配偶者が妊娠・出産したこと等を知った場合、その方に個別に育児休業等に関する制度を知らせる努力義務が創設されます。
③ 育児目的休暇の導入を促進
未就学児を育てながら働く子が子育てしやすいよう、育児に関する目的で利用できる休暇制度を設ける努力義務が創設されます。
育児休業が最長2年となると産前休業と合せておおよそ2年1ヵ月半の休暇を取得する方も出てきます。
その際、会社としては従業員が円滑に復帰できるよう職場復帰支援プランや休業中の代替要員の確保等、これまで以上に対策を立てることが必要となってきますので、社会保険労務士やキャリアコンサルタント等の専門分野に相談されるのも一つの方法かと思います。
宿直・日直で気を付けること
宿直や日直といった「作業よりも待機を基準とした時間」については、労働基準法上の例外が認められています。労働基準法施行規則23条は「宿直又は日直の勤務で断続的な業務(断続的な宿日直勤務」について労働基準監督署長の許可を受けた場合には,当該労働者について労働時間・休憩時間・休日の規定の適用が除外される旨を定めています。
労働時間・休日の規定が適用されないということは、つまり時間外労働に対する割増賃金(残業代)や休日労働に対する割増賃金(休日手当)は発生しなくなるということです。企業側としては人件費を節約する目的で、宿直などの業務について「断続的な労働だ」という主張をすることがあります。
法律の要件を満たす宿日直勤務としては,以下のポイントがあります。
① 宿直又は日直の勤務で断続的な業務であること
② 所轄労働基準監督署長の許可を受けたこと
断続的な宿日直勤務の一般的許可基準
① 実態
ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり,定時的巡視,緊急の文書又は電話の収受,非常事態に備えての待機等を目的とするものに限って許可するものであること。
② 基準を満たす宿日直手当を払うこと
③ 宿日直の回数
許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については,宿直勤務については週1回,日直勤務については月1回を限度とすること。
採用の自由と公正な募集
会社には原則として採用の自由があります。どんな人を採用するかは会社が独自のルールをもっていても良いとされます。ただし、どんな独自ルールでもOKというわけではなく、差別につながるものは問題視されます。
厚生労働省が出している基本的な公正採用のポイントは以下のものです。
l 募集・採用時に、本籍や家族のことを聞いていませんか?
l 障害を理由に、障害者を排除したり、不利な条件を付したりしていませんか?
l 公正な募集・採用を行うために、従業員を採用するときは、職務遂行上必要な適性や能力だけを採用基準にしましょう。適性や能力と関係のない下の表のような事項を求職者にたずねたり、採用選考に取り入れたりすることは、就職差別につながる恐れがあります。就職差別につながらないよう、自社の採用基準や選考方法を確認しましょう。
配慮項目
公正な募集・採用のために、「就職差別につながる恐れがある14事項」について配慮するよう厚労省では呼びかけています。
就職差別につながる恐れがある14事項
●本人に責任のない事項
1 本籍・出生地
2 家族
3 住宅状況
4 生活環境・家庭環境
●本来自由であるべき事項
(思想信条に関わること)
5 宗教
6 支持政党
7 人生観・生活信条など
8 尊敬する人物
9 思想
10 労働組合・学生運動などの社会運動
11 購読新聞・雑誌・愛読書など
●採用選考の方法
12 身元調査など
13 全国高等学校統一応募用紙・ JIS規格の履歴書
(様式例)に基づかない事項を含んだ応募書類の使用
14 合理的・客観的に必要性がない健康診断
その他、障害者に対する差別も禁止されています。
<禁止されている募集・採用事例>
1 単に「障害者だから」という理由で、求人への応募を認めないこと
2 業務遂行上必要でない条件を付けて、障害者を排除すること
3 採用の基準を満たす人の中から障害者でない人を優先して採用すること
とはいえ、雇用のミスマッチは双方にとってストレスとなり、あとあと問題になることもあります。自社の採用基準を明確にし、トラブルを未然に防いでください。
事業所の社会保険適用状況がWEBで検索できる?
平成28年10月よりパートタイマーへの社会保険適用拡大が始まりました。 対象事業所は被保険者数が501人以上の規模であり、「特定適用事業所」として分類されます。
一方で、本来社会保険に加入すべき事業所については、 日本年金機構より継続的に加入促進の案内が行われており、適正加入の促進が行われています。
このような背景もあり、10月31日より事業所の社会保険の適用事業所がイン ターネット上に掲載されることになりました。
https://www.nenkin.go.jp/do/search_section/
掲載内容は以下の通りとなっています。
適用事業所に係る事項
1、事業所の名称及び所在地
2、特定適用事業所であるか否かの別
3、当該事業所に係る日本年金機構の業務を分掌する年金事務所
4、事業主が国、地方公共団体又は法人であるときは、法人番号
適用事業所に該当しなくなった事業所に係る事項
1、事業所の名称及び所在地
2、適用事業所に該当しなくなった年月日
3、当該事業所に係る日本年金機構の業務を分掌する年金事務所
4、事業主が国、地方公共団体又は法人であるときは、法人番号
今回、ホームページに掲載されたことにより、事業所の社会保険適用状況を 従業員含め誰でもインターネットから把握することができるようになりました。また、求職者の方でも事業所の社会保険加入状況を事前に判断できるようになっていますので、会社の社会保険適用有無は、求人応募にますます影響がでてくるのではないでしょうか。
ちなみに労働保険の適用状況もこちらのサイトから検索することができます。
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/daijin/hoken/980916_1a.htm
パートの制約条件
多様な働き方が認められる現在において、正社員以外にもパートタイマーとして活躍する人もたくさんいます。しかし、公的ルールによって働きが制限されることがあります。それは、「収入が少ないことを根拠に税金や健康保険・年金上の優遇を受けられる」ことに起因します。
優遇措置1:税法上の扶養
まず税法上の扶養という措置が挙げられます。これは所得税に関する基準で、基礎控除38万円、給与所得控除65万円、この2つを合わせると103万円になり、この103万円の枠内でパートタイマーが収入を調整すれば、配偶者などに「税法上扶養されている」とみなされることになります。
税法上の扶養であれば、配偶者側が扶養控除を受けることができ、当人は所得税が非課税となります。
優遇措置2:健康保険上の扶養
次に健康保険上の扶養という措置です。一般に「130万円の壁」と表現されますが、これは「年収が130万円以下であれば配偶者が加入している健康保険の被扶養者になれること」を指します。健康保険上の被扶養者となれば、当人の健康保険料は扶養者が加入して居る健康保険の保険料によってまかなわれるためかかりません。※国民健康保険など、被扶養者概念がない制度もあります。
優遇措置3:国民年金の3号被保険者
健康保険上の扶養と同じ収入要件で、厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者は国民年金の3号被保険者となることができます。これは、「国民年金保険料を当人が納付しなくても、保険料をかけたことにしてもらえる」という優遇を言います。
これらの仕組みから、パートタイマーの方は自らの収入を調整しなければならず、有能なパートタイマーの活躍が制限されているとも言えます。この被扶養者基準について法改正の議論もなされています。
賃金の注意点
賃金は多くの労働者にとって唯一の生活の糧であるため、払い方や金額について様々な法律上のルールがあります。以下、代表的なものをご紹介します。
1、 最低賃金
まず、毎年定められる地域別または職種別の最低賃金以上を支払う必要があります。例えば、「著名な作家の下でアシスタントとして働けるなら、時給10円でいいです」と労働者が申し出たとしても、その労働契約は最低賃金法違反となり、少なくとも最低賃金で契約を結んだとみなされます。
2、 支払いの5原則
賃金は①通貨払いの原則があり、現物で支払うことは基本的に認められていません。②また、直接働いた本人に支払う必要があります。さらに③その月分の全額を支払わなければなりません。勝手に給与から費用を天引きしてはいけないことになっています(労使協定により天引きが認められることがあります)。④毎月1回以上支払う必要があります。⑤一定期日に支払う必要があります。先月は15日に、今月は月末に支払うと言う支払い方は許されません。
3、 減給の制裁
何か悪いことをした社員に制裁(ペナルティー)の意味で減給をする場合でも、その減給額は平均賃金の半額まで、1か月単位で見ても給与の10%までと決まっています。※減給という懲戒処分をするためには、就業規則などの根拠を必要とします。
4、 休業手当
会社の都合で労働者を休ませた場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。会社都合の休業とは、生産調整のために工場を休業する場合などを指します。
健康診断の費用負担とその間の賃金
会社は、常時使用する労働者に対し、健康診断を実施する義務を負っています。パートやアルバイトなどの雇用形態によらず、この条件に当てはまる場合は、受診させなくてはなりません。
健康診断には大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断があります。一般健康診断とは、職種に関係なく、労働者の雇入れ時と、雇入れ後1年以内ごとに一回、定期的に行う健康診断です。特殊健康診断とは、法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。
労働者にとっても、健康診断を受けることは、労働者自身の権利ではなく義務といえます。
では、健康診断にかかる費用は、労使のどちらが負担すべきなのでしょうか。行政通達によれば、「健康診断の費用については法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然会社が負担すべきもの」と解釈されています。また、ここでいう費用には、労働者が健診の医療機関へ移動する交通費も含まれると考えられています。
受診する間の賃金についても、整理しておきましょう。
定期健康診断は、通常の業務とは関係なく受けるものですから、その間は労働していないと考えられます。よって、その間の賃金について払わない、あるいは有給休暇扱いとすることは違法ではありません。ただし、円滑な受診を目指すことを考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。
一方、特殊健康診断は業務の遂行に関して、労働者の健康確保のため当然に実施しなければならない健康診断です。特殊健康診断の受診に要した時間は、労働時間であり、賃金の支払いが必要とされています。注意しましょう。
会社が行うべき健康診断の種類
会社は労働安全衛生法に基づき、労働者に対して医師による健康診断を実施させなければなりません。また、労働者は健康診断を受けなければならない義務があります。ここでは一般健康診断について紹介します。
一般健康診断は主に5種類あります。
法律上規定されている一般健康診断は以下の通りです。
1、雇入れ時の健康診断
2、定期健康診断
3、特定業務従事者の健康診断
4、海外派遣労働者の健康診断
5、給食従業員の検便
1、雇入れ時の健康診断
いわゆる新入社員が受診対象となるものです。労働安全衛生規則43条「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない。」に基づき、雇入時の健康診断の実施を義務付けています。
2、定期健康診断
毎年定期的に行っている診断です。労働安全衛生規則43条「事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、医師による健康診断を行わなければならない。」に基づき、雇入時の健康診断の実施を義務付けています。
※パートやアルバイトであっても、継続1年以上雇用する場合は定期健康診断を行なう必要があります。
3、特定業務従事者の健康診断
深夜業務などの特定業務に従事する労働者に対して、当該業務への配置替えの際及び6ヶ月以内ごとに1回、定期的に、定期健康診断と同じ項目の健康診断を行わなければなりません。
4、海外派遣労働者の健康診断
労働者を日本国外の地域に、6か月以上派遣しようとするとき、ならびに6か月以上派遣した労働者を日本国内における業務に就かせるときは、その労働者に対して、医師による健康診断を行わなければなりません。
5、給食従業員の検便
事業に附属する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際、検便による健康診断を行なわなければなりませn。
健康診断を実施しない場合、会社は労働安全衛生法違反によるペナルティーを科せられるほか、健診を受けさせなかった労働者が病気になった場合、損害賠償責任が生じる可能性があります。
そのようなリスクを避けるため、また従業員に健康上の不安なく働いてもらうためにも、実施を忘れないようにしましょう。
雇入れ時の健康診断
新しく人を雇い入れる場合、健康診断を実施することが労働安全衛生法上義務付けられています。どのような人にどんな健診を受けさせなければならないか確認していきましょう。
対象者
常時使用する労働者を対象としており、正社員のみでなくパートやアルバイトであっても以下要件のいずれにも該当する場合は実施する必要があります。
①期間の定めのない者や、契約期間が1年以上である者、契約の更新により1年以上使用されることが予定されている者、既に1年以上引き続き使用されている者
②1週間の労働時間数が、その事業場の通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である者
雇い入れ時とは、雇い入れの直前または直後を指していますので、入社前に受診させることのほか、入社直後に受診させることも可能です。
健診項目
健康診断の実施項目については定期健康診断の項目とほぼ同じで、以下のとおりとされています。
①既往歴及び業務歴の調査
②自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④胸部エックス線検査
⑤血圧の測定
⑥貧血検査
⑦肝機能検査
⑧血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
⑨血糖検査
⑩尿検査
⑪心電図検査
雇い入れ時の健康診断については上記すべての項目を実施する必要があります。ただし、医師による健康診断を受けた後、3ヶ月を経過しない者がその健康診断の結果を証明する書類を提出したときは、その項目については省略することが可能です
健診費用について
行政通達によると、「法で事業者に健康診断の実施義務を課している以上、当然事業主が負担すべきものである」とされています。事業主が支払うのが無難でしょう。
心身の健康状態が仕事に影響を与えることは言うまでもありません。健康状態が悪い時は仕事も捗らないことがほとんどですので、会社にとっては痛手でしょう。そのような観点からも健康状態の管理を個人の責任とせず、会社も負うべきです。その第一歩として入社時の健康診断は実施するようにしましょう。
賃金の5原則
賃金を支払う場合、労働基準法では以下5つの原則が定められています。
1、通貨で支払う
2、直接支払う
3、全額を支払う
4、毎月1回以上支払う
5、一定の期日を定めて支払う
通貨で支払うとは
賃金は通貨で支払う必要があり、現物給与は禁じられています(ただし、労働協約等に定めている場合は可)。なお、金融機関の預金口座への振込については、①労働者の同意があること、②労働者の指定する本人名義の預金口座に振り込むことを要件として許容されています。
直接支払うとは
使用者が労働者に直接賃金を渡すということで、いわゆるピンハネ行為を防止することも一つの目的です。
全額を支払うとは
その時期に支払うべき義務のある賃金は、全額労働者に支払わなくてはなりません。
毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うとは
賃金は労働者の生活の基本となるため、毎月1回以上支払わなければなりません。また、「毎月25日支払」・「月末払い」のように、支払う日を決めなければなりません。なお、賃金支払日が休日に当たる場合は、繰下げても繰り上げて支払っても、一定期日払いの原則には違反しません。
ただし、「毎月末日」払いで、その日が休日に該当した場合には必ず繰り上げて支払わなければなりません。もし繰下げて支払うとなると、翌月1日の支払いとなってしまい毎月1回以上の支払いの原則に違反してしまうためです。
賃金は、数ある労働条件の中で労働者が最も重視し、同時に最も労使でのトラブルが発生しやすいといえるでしょう。労働トラブルを未然に防ぐためにも、賃金支払いの5原則が守られているか自社の支払い方を見直してみましょう。
アルバイトやパートにも雇用契約書が必要か?
週に数日しか働かないアルバイトや時間の短いパートタイマーに対しても雇用契約書を取り交わすことが必要です。
根拠は、まず労働基準法第15条に、「労働条件の明示義務」が定めてあるからです。雇用契約期間や業務内容、勤務場所、賃金や退職に関する事項は、書面によりどのような従業員に対しても交付しなければなりません。逆に言うと、その書類を交付していないことで労働基準法違反になるということです。
また、その法律のあるなしに関わらず、雇用契約書は働く条件を記した書類ですから、トラブル防止のために取り交わすことをお勧めします。近年では、パートやアルバイトであっても残業代や休日休憩、解雇についてトラブルが多くなっています。
非正規雇用の割合が増えている今にあっては、パートやアルバイトでも労基法をはじめとした権利関係を知っており、その権利主張を強くするタイプの従業員と感情的な対立をしてしまうと、退職時に思わぬトラブルに発展してしまうかもしれません。
パートやアルバイトに対しては、とくに「契約期間及び更新の有無」「更新の判断基準」「職務内容」についてトラブルとなることが多いでしょう。専門家の力を借りながらしっかりとした書面を取り交わしてください。
ちなみに、労働条件の明示は会社側が一方的に行っても問題ありませんが、お互いが内容に合意したことを証拠として残すためにも、双方の署名や記名押印がなされた「雇用契約書」の様式になっていたほうがベターでしょう。
労働関係の書類の保存期間
労働基準法109条によると、使用者(会社)は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければなりません。逆に言うと、3年経過したものは保存義務はなく廃棄してもよいわけですが、だからといって在職者の昔の書類を何でも捨ててよいわけではありません。書類の保存について、それぞれの書類ごとに「起算日」が定められていまいす。
起算日
1.労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は解雇の日
2.賃金台帳については、最後の記入をした日
3.雇入れ又は退職に関する書類については、労働者の退職又は死亡の日
4.災害補償に関する書類については、災害補償を終った日
5.賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その完結の日
つまり、労働者の関係の書類については、「辞めた後」3年間の保存義務があります。
労働者が多くなるとその保管も大変になってきますので、賃金台帳や出勤簿などかさばるものについては電子的に記録をして省スペース化に努めてはいかがでしょうか。
ちなみに労働基準法以外の法律に関連する書類の保存義務は以下の通りです。
健康診断結果 5年 (安全衛生法)
雇用保険書類(被保険者関係) 4年 (雇用保険法)
その他の雇用保険書類 2年(雇用保険法)
労災保険 3年(労災保険法)
社会保険 2年(健康保険法及び厚生年金保険法)
保存義務期間が書類によって異なりますので注意して管理してください。
会社の都合で社員に休んでもらった時に給料を払う必要があるか?
会社の都合で休ませた場合の休業手当について
労働者本人の体調不良や家庭の事情で会社を休む場合、多くは「ノーワークノーペイ:働いていない部分の給与支払いはなくてよい」という原則の通り無給として処理しますが、その休みの原因が会社にある場合は、少し違う対応をする必要があります。
会社の都合による休みとは、例えば以下のようなケースがあります。
1、不景気だから工場の稼働を一時的に停める場合
2、社内の不正について調査するとき、証拠隠滅防止のため関係者に自宅待機を命じる場合
3、採用内定者について、業績の悪化のため予定通りの日付から勤務開始させられず、自宅待機をさせる場合
このような場合は、労働基準法の定めによる「休業手当」を支給しなければなりません。
休業手当の計算式は以下の通りです。
平均賃金 × 60% 以上
平均賃金は、原則として事由発生日前3カ月の給与総額を暦日数で割って計算しますが、その額の6割以上を「働いていなくても」負担しなければならないということです。
ちなみに、「伝染病にかかった社員に自宅待機させる場合」、「台風などで交通機関がストップした場合」「大きな災害があった場合」など、会社側の都合かとうかの判断に迷う場面については、有給の取得を奨励するか、社労士などの専門家に意見を求めるとよいでしょう。
賃金の直接支払原則
賃金を受け取る時、会社と労働者との間に仲介人等が間に入ると、労働者に対する賃金が本人に渡らない可能性が出てきます。そこで労働者の「賃金をもらう権利」を守るために、この「直接払いの原則」が設けられています。
例えば労働者が未成年の場合など、親権者などの大人によってお金が消費され、本人の手に渡らないなどの問題が出てくるかもしれません。直接払いの原則はこのようなことを防ぐ目的があると言えるでしょう。
賃金の支払いにおいては,直接払いの原則により,親権者などの法定代理人はもとより,労働者の任意代理人に賃金を支払うことも禁止されています(ただし、労働者の妻に手渡すなど、単なる使者である場合、賃金債権者が税金の滞納などにより差し押さえ処分を受けた場合など、一部例外的に認められることもあります)。
ちなみに賃金をもらう権利(賃金債権)を債権譲渡することはできます。しかし,その場合であっても,使用者は労働者に対して賃金を直接支払わなければならないとされています。したがって、賃金はあくまで労働者本人に渡すものと心得ていた方がトラブルが少ないでしょう。
直接払いの原則に違反した場合
使用者が直接払いの原則に違反した場合,刑事罰としては,使用者は30万円以下の刑罰を科されます(労働基準法120条1号)。
賃金については、それがたいていの労働者にとって唯一の収入源であるため、それが本人の手に渡らないことがあればその人の生活が脅かされてしまいます。そのため厳しくルールが定められていると覚えてください。