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GOLGOのひとりごと

離婚時の年金分割

2020.01.20

離婚をする場合、相手に対して年金分割をすることが出来ます。この離婚時年金分割とは、婚姻期間中に収めた年金保険料に応じて、厚生年金等の保険料納付記録を按分する制度です。これは夫婦の婚姻中はお互い協力しあって財産形成するものであり、厚生年金の保険料に関しても夫婦が共同して負担したものであるという認識の上、制定されました。

離婚時の年金分割といっても、合意分割と3号分割の2種類があります。それぞれ適用要件や請求方法も異なってきます。

合意分割とは
合意分割とは、離婚等をした夫婦が、当事者の一方からの請求により、婚姻等をしていた期間の年金記録を当事者間の合意によって分割する制度となります。ただし、夫婦間にて、年金分割につき合意に至らない場合に関しては、当事者の一方の申し出により家庭裁判所に調停や審判申し立てることにより、年金分割をすることが出来ます。

3号分割とは

3号分割とは3号被保険者(専業主婦等)から請求があった場合に、平成20年4月1日以後の期間について(制度が施行したのが平成20年4月1日の為)年金記録を按分する制度です。按分割合は2分の1ずつと定められており、夫婦間での按分割合を決定することはできません。3号分割の場合は、相手の合意が必要ないため、請求する側が1人でも手続きが可能です。

まず、2種類の制度ですが、当事者の一方からの請求(請求は離婚日の翌日から起算して2年以内に行うこと)により、婚姻期間中の年金記録を当事者間で分割することができる制度です。

分割される年金記録の対象は?

この年金記録の対象とは、厚生年金・旧共済年金です(平成27年10月に厚生年金に一元化)。公的年金の中でも国民年金、国民年金基金、厚生年金基金(厚生年金の代行部分は除く)、確定給付企業年金および確定拠出年金(401k)は年金分割の対象となりません。また個々で加入している私的年金(生命保険等)も同様に年金分割の対象となりません。

合意分割と3号分割の相違点
相違点ですが、いくつか決定的な違いがありますので順を追ってみていきましょう。

請求方法

合意分割の場合
当事者双方のうち、どちらか一方からの請求によって分割することが出来ます。
3号分割の場合
どちらか一方、ではなく、必ず国民年金第3号被保険者であった方からの請求が必要です。

分割の決定について

合意分割の場合

厚生年金記録の分割に関し、原則的には当事者双方の協議及び合意のもとにより定める按分割合となります。
ちなみに按分割合のルールとして、下限は年金分割する前の夫婦の合計標準報酬総額における標準報酬の少ない方の割合、上限は50%と定められております。(下限を設けることで、少ない側が本来受け取るはずの年金額を下回らないよう保証し、上限を設定することで、年金分割の趣旨、夫婦の共有財産の平等な分割を実現させています。)

なお、合意に至らない場合、当事者の一方の申し出により家庭裁判所に調停や審判申し立てることにより、年金分割をすることが出来ます。(裁判所の按分になりますとおおよそ50%になります。平成27年司法統計では8396件中8269件が50%の決定が下っています)

3号分割の場合
一律50%になります。合意分割と異なり合意の必要はありません。

ただし、ここで注意が必要なのは、3号分割には期間の制限があるということです。具体的にいうと、3号分割が可能な期間は、平成20年4月1日からの第3号被保険者期間です。(3号分割の制度が平成20年4月1日に施行された為、かかるようにルール付けされました。)
平成20年3月31日までの第3号被保険者期間は合意分割に則り請求することになります。

・3号分割のみの婚姻期間で形成されている場合
・合意分割のみの婚姻期間で形成されている場合

この2ケースにおいては考え方は非常に明確ですが、3号分割の期間と合意分割の期間が混在する場合、どのように考えればいいのでしょうか?

結論としては結果は合意分割の結果と変わらない、ということになります。

3号分割と合意分割の期間が混在する場合、手続き上先に3号分割があったものとみなし、その後合意分割の手続きに移行します。

3号分割の結果、それぞれの標準報酬総額が異なったとしても、その結果を合意分割の按分割合に再分配するので、はじめから合意分割をした結果と変わらなくなります。
つまるところ、合意分割で請求した按分割合に必ず落ち着くのです。

文章のみですと、イメージしにくいので、実際の例で考えてみましょう。

事例
ある夫婦の合意分割の按分割合を妻45%、婚姻期間5年、夫の標準報酬総額3000万円、妻の標準報酬月額を1000万円、夫婦総額4000万円とする。

合意分割のみの期間の場合
合意分割前の割合は、夫が3000万÷4000万=0.75 すなわち夫75%、妻が25%ととなります。
按分割合の請求は妻45%と仮定しましたので、夫55%になるよう調整が必要となります。夫の総額は4000万×55%により、2200万円となります。分割前は3000万円でしたので、800万円を妻に移す必要があります。

3号分割と混在する場合
離婚前の2年を3号分割と仮定し、その間夫の標準報酬総額が1200万円だったとします。
4年間1800万円、2年間1200万円、妻の標準報酬月額が4年間1000万円、2年間0円になります。

年金分割前の割合に関しては、合意分割同様、夫75%、妻25%となります。
3号分割が含まれる場合は、先に分割を行いますので、まず1200万円の50%すなわち、600万円を妻に移行します。したがって、夫の総額は1800万円+600万円=2400万円、妻は1000万円+600万円=1600万円になります。(夫60%、妻40%になり合意分割をする上での下限が40%に引きあがります。)

この状態からさらに合意分割で定めた按分割合にて再計算することになります。妻が45%、夫が55%になるためには200万円の記録を妻に移行することが必要になります。

結果的には、夫の標準報酬総額が2200万円、妻の標準報酬総額が1800万円となり、合意分割のみのパターン同様となります。

以上が実際年金分割を行った場合の計算方法の基本的な考えとなります。
標準報酬総額の計算等は複雑ですが、実際の手続きの際には、「年金分割のための情報通知書」を請求することが出来ます。

3号分割を踏まえた正確な年金額を把握するためには、情報通知書での確認も併せて必要となるでしょう。

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