GOLGOのひとりごと
【制度を上手に活用】記事一覧
- 2023.01.23
- 社保適用拡大に合わせたパートタイマーへのヒアリングについて
- 2022.11.30
- 外国人が帰国した際の年金はどうなる?
- 2022.07.11
- 労働審判という制度について
- 2022.06.06
- 新型コロナの影響による特例月額変更の延長
- 2021.10.04
- 労災で休業した日に賃金を払ったら休業補償の計算は?
- 2021.08.23
- 育児休業中の就労
- 2021.03.12
- 産休中の国民年金保険料免除
- 2021.03.05
- 出産や育児にかかる社会保険料の免除
- 2021.03.01
- マイナンバーカードの健康保険証利用について
- 2021.02.22
- 労働保険料等の納付猶予
- 2021.02.15
- 入社直後に傷病手当金を申請できるか?
- 2021.02.12
- 離職票の発行義務について
- 2021.02.08
- 高齢者医療制度
- 2020.12.21
- 年金の脱退一時金
- 2020.12.07
- 新型コロナウイルス感染時の傷病手当金受給について
- 2020.11.01
- 源泉所得税の甲欄乙欄
- 2020.10.22
- 第1子育児休業中に第2子を妊娠した場合
- 2020.10.19
- 別居している被扶養者の認定
- 2020.10.12
- 男性の育児休業の注意点
- 2020.09.12
- 休業手当を支給した月が含まれる場合の離職証明書の書き方
- 2020.09.10
- 雇用関連の助成金
- 2020.09.07
- 社会保険の住所変更
- 2020.09.01
- 休業等があった場合の算定基礎届の考え方
- 2020.08.18
- 非常勤役員の社会保険加入
- 2020.07.21
- 教育訓練給付の拡充
- 2020.05.07
- 労働保険事務組合って何?
- 2020.04.22
- 育児休業中に仕事に出た場合の給付金はどうなるか?
- 2020.04.09
- 海外在住親族の健康保険の扶養手続
- 2020.03.18
- 新型コロナウイルス感染時の傷病手当金
- 2019.12.13
- 振替休日と代休
- 2019.12.09
- 有給休暇の基準日の設定
- 2019.11.15
- 月額変更の年間平均を用いた申し立て制度
- 2019.11.11
- 療養費の払い戻し請求
- 2019.11.01
- 育児休業支援コース助成金
- 2019.10.28
- 育児休業給付
- 2019.10.18
- 労災発生時の対応
- 2019.08.30
- 災害時における労働時間及び休日出勤
- 2019.08.23
- 両立支援等助成金の出生時両立支援コース
- 2019.07.29
- 育児休業中の社会保険料免除
- 2019.07.19
- 未払い賃金建て替え払い制度
- 2019.07.08
- 教育訓練給付金
- 2019.06.16
- 海外療養費
- 2019.06.13
- 高額療養費と限度額適用
- 2019.04.28
- 雇用保険の適用拡大(その2)
- 2019.04.09
- 労災保険の特別加入
- 2019.04.02
- 傷病補償年金とは
- 2019.03.19
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
- 2019.02.01
- 在宅勤務のみなし労働時間
- 2019.01.22
- 産前産後休業の保険料免除制度
- 2019.01.08
- 年金の受給資格期間
- 2018.12.10
- 再就職手当
- 2018.11.30
- 失業時の給付が手厚くなる条件
- 2018.11.05
- ストレスチェックの 助成金
- 2018.10.29
- 雇用保険の基本手当日額
- 2018.10.22
- 在宅勤務中の労災
- 2018.10.15
- 高額な医療費がかかった時にもらえる給付
- 2018.09.24
- 雇用保険の再就職手当
- 2018.09.17
- 労災保険のメリット制
- 2018.07.09
- 建設業の労災保険
- 2018.07.02
- 健康保険の給付
- 2018.06.04
- ユースエール認定制度
- 2018.04.02
- 健康保険の被扶養者
- 2018.01.09
- 労災保険はどこまで使えるか?
- 2017.12.25
- 高額療養費と限度額認定
- 2017.10.29
- 確定拠出年金
- 2017.07.23
- 育児休業給付
- 2017.07.16
- 退職後の健康保険給付
- 2017.05.21
- 退職後の傷病手当金
- 2017.05.14
- 保険証が届く前に病院にかかるとき
- 2017.01.24
- 1か月単位の変形労働時間制
- 2016.12.27
- フレックスタイム制をわかりやすく
- 2016.11.23
- 高額の医療費が掛かった時に受けられる制度
- 2016.11.16
- 健康保険は会社を辞めた後も続けられる?
- 2016.11.09
- 労災給付の種類
- 2016.10.11
- 育児のために短い時間働きたい場合。
- 2016.09.27
- 労災の最初の3日は補償されない?
- 2016.07.26
- 役員の雇用保険
- 2016.07.05
- どんどん手厚くなる育児休業給付!
- 2016.06.28
- 高年齢雇用継続給付を活用しましょう。
- 2016.03.15
- 1ヶ月単位の変形労働時間制
- 2016.03.08
- 介護休業
- 2016.03.02
- 育児休業
- 2016.01.05
- 労災の休業補償
- 2015.05.21
- 退職後の社会保険手続き
- 2014.09.24
- フレックスタイム制の注意点
- 2014.05.25
- 休憩時間中のケガと労災保険
- 2014.05.20
- 仕事中の交通事故
- 2014.04.28
- 在宅勤務者の労働時間
- 2014.04.24
- 在宅勤務について
- 2013.03.01
- 高額療養費制度の話
- 2013.02.28
- 出産・育児にかかる給付金
- 2013.01.20
- 国民年金の免除
- 2013.01.19
- 国民年金保険料を滞納した場合の障害年金の話
- 2013.01.17
- 失業保険と年金の話
- 2013.01.14
- 国民年金の被保険者の種類
- 2013.01.09
- 再就職手当の話
- 2012.12.25
- 社会保険の被保険者について
社保適用拡大に合わせたパートタイマーへのヒアリングについて
2022年10月からパートタイマーへの社会保険の適用がさらに進み、従業員数100人超(101人以上)規模の会社が「パート社保加入対象企業」に仲間入りしました。今まで週20時間以上30時間未満などで社保加入対象外としていたパートタイマーが新たに加入対象となることで様々な影響が考えられます。
・適用拡大後の社会保険料の算出
適用拡大後の企業負担の社会保険料を算出し、増加した保険料分が、経営にどの程度影響をもたらすのか把握していきましょう。
単純計算でいくと、新たに加入対象となるパートタイマーの代替の月額給与総額×15%程度が会社の社会保険料負担増加となります。
・本人の意向の確認
社会保険の適用は、要件に当てはまれば、本人の意思にかかわらず社会保険に加入するのが原則です。しかし実際には
「天引きされて手取りが減少するのが嫌だ」
「配偶者控除内で働きたいので社会保険への加入したくない」
など加入したくない従業員がいるかもしれません。今回の適用拡大によって該当するパートタイマーに対しては場合、従業員本人に法改正についてしっかりと説明し、今後の意向を確認しておくべきでしょう。そして、説明してもなお加入したくない場合は「週の所定労働時間を20時間未満に変更する必要があること」を説明し、勤務シフト並びに手取り給与が減少することに同意してもらう必要があります。そして、同意を得た新たな労働条件で雇用契約書を締結し直すなどの対応をしていった方が良いでしょう。
・雇用管理の徹底
社会保険加入をしたくないパートタイマーについては、今後さらに労働日数や労働時間などの雇用管理をしていく必要があります。週の労働時間を20時間未満に抑えるように工夫していきましょう。
外国人が帰国した際の年金はどうなる?
社会保険適用に国籍要件はないため、外国人であっても日本の法人で働く人には社会保険(健康保険・厚生年金)が適用されます。しかしながら、数年だけ日本で働いて自国に帰国する外国人にとっては年金の受給資格を得る前に帰国することになるため、掛け捨てとなる問題が出てきます。
脱退一時金とは、日本国籍を有しない方が、国民年金、厚生年金保険(共済組合等を含む)の被保険者(組合員等)資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。
支給要件
1、国民年金
国民年金の脱退一時金の支給要件は以下のとおりです。
・日本国籍を有していない
・公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない
・保険料納付済期間等の月数の合計(※)が6月以上ある(国民年金に加入していても、保険料が未納となっている期間は要件に該当しません。)
・老齢年金の受給資格期間(厚生年金保険加入期間等を合算して10年間)を満たしていない
・障害基礎年金などの年金を受ける権利を有したことがない
・日本国内に住所を有していない
・最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない(資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していない)
脱退一時金の計算式
(①最後に保険料を納付した月が属する年度の保険料額)×2分の1×(③支給額計算に用いる数)
つまり、最大で掛けた額の半額程度が脱退一時金として支給されることになります。なお、③については最低6から最高60(5年分)となります※。
※2021年(令和3年)4月より(同年4月以降に年金の加入期間がある場合)、月数の上限は現行の36月(3年)から60月(5年)に引き上げられました。
労働審判という制度について
労働審判とは、労働者と事業主との間で起きた労働問題を労働審判官1名と労働審判員2名が審理し、迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする非公開の裁判手続きで、2006年から始まった比較的新しい制度です。
解雇や残業代請求などの労働紛争について、裁判官1名と労働関係の専門的知識と経験を有する労働審判員2名(1名が企業の人事部に長年所属していた人など、もう1名が労働組合の活動を行ってきた人などが選任されているようです。)で構成される労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で事件を審理し、調停を試み、又は審判を行う制度です。
原則として3回以内というところがポイントで、従来の通常訴訟だと1年単位で解決までに時間がかかることと比較すると迅速な手続きを目指しています。短期間での解決を目指すことから、申立の約8割が金銭解決を中心とした和解的解決となります。
出頭は拒否できない
労使トラブル解決手段の一つである都道府県労働委員会の「あっせん制度」は、行政サービスのため出頭義務はありませんが、そのため相手方(多くは会社側)が出頭しないと話し合いが進まないという問題がありました。労働審判では出頭が強制され、拒否した場合は罰金が科されます。
労働審判後
調停が成立しない場合、審判が言い渡されます。これに対し、適法な異議申立がない場合、審判は裁判上の和解と同一の効力を持ちます。なお、審判内容に不服であれば、異議を申立てることが可能です。異議申し立てをした場合、労働審判は効力を失い,訴訟手続に移行します。
新型コロナの影響による特例月額変更の延長
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業により、著しく報酬が下がった場合の健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定が令和4年6月まで延長されております。
標準報酬月額の特例改定について
令和2年4月から令和3年7月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業により著しく報酬が下がった方について、事業主からの届出により、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定が可能となっておりますが、令和3年8月から令和4年6月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した方や、令和2年6月から令和3年5月までの間に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている方についても、特例措置が講じられることとなりました。
特例改定の該当者について
次の(1)から(3)のすべてに該当する方が対象となります。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和3年8月から令和4年6月までの間に、著しく報酬が下がった月が生じた方
(2)著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方(固定的賃金の変動がない場合も対象となります)
(3)本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している
通常の月額変更の場合は、報酬が下がった月から4か月目に改定となりますので、改定までの数か月間は従前の社会保険料が続くため負担が大きいです。特例措置は、その期間が短くて済みますので、該当者には適用してあげた方が良いでしょう。ただし、届出により標準報酬月額が下がることで各種手当金も下がる可能性がありますので、必ず本人に同意を得たうえで進めてください。
労災で休業した日に賃金を払ったら休業補償の計算は?
労災が原因で休む労働者に対しては労災制度から休業補償給付が出ますが、その計算は休業1日につき、給付基礎日額の80%(休業(補償)給付=60%+休業特別支給金=20%)となります。たとえ給付基礎日額が10,000円の場合、労災の休業補償給付は1日あたり合計8,000円となります。
・半日働いた場合
なお、所定労働時間の一部について労働した場合には、その日の給付基礎日額から実働に対して支払われる賃金の額を控除した額の80%(60%+20%)に当たる額が支給されます。
例えば給付基礎日額が10,000円の被災労働者が半日働いて5,000円の賃金を受けた場合は、(10,000-5,000)×80%=4,000円の休業補償給付がなされます。
・働いていないが給与補償した場合
上記のように働いた分が通常通り支給されるのは言わば当たり前ですが、「働いていないが会社が給与保証をした場合」はどうでしょうか。
労災の支給基準として「給付基礎日額の60%以上をもらう人かどうか」があります。60%以上の補償が受けられる場合労災の休業補償給付は支給されなくなります。
逆に、60%未満の補償を受けたとしても労災は満額支給されます。例えば前述の給付基礎日額が10,000円の被災労働者に対して、働かなくても5,000円の補償をした場合、この金額と労災による休業補償8,000円の合計13,000円を受給することができます。
・給付基礎日額とは
給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、事故が発生した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額のことです。(「賃金」には、臨時的支払われた賃金、賞与など3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません。)
育児休業中の就労
育児・介護休業法上の育児休業は、子の養育を行うために休業期間中の労務提供を消滅させる制度であり、休業期間中に就労することは想定されていません。
しかし、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、「一時的・臨時的に」その事業主の下で就労することができます。その場合、就労が1か月で10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されます。
一方で、恒常的・定期的に就労させる場合は育児休業をしていることにはなりません。
以下は一時的・臨時的な就労に該当するケースです。
【1】育児休業開始当初は、労働者Aは育児休業期間中に出勤することを予定していなかったが、自社製品の需要が予期せず増大し、一定の習熟が必要な作業の業務量が急激に増加したため、スキル習得のための数日間の研修を行う講師業務を事業主が依頼し、Aが合意した場合
【2】労働者Bの育児休業期間中に、限られた少数の社員にしか情報が共有されていない機密性の高い事項に関わるトラブルが発生したため、当該事項の詳細や経緯を知っているBに、一時的なトラブル対応を事業主が依頼し、Bが合意した場合
【3】労働者Cの育児休業期間中に、トラブルにより会社の基幹システムが停止し、早急に復旧させる必要があるため、経験豊富なシステムエンジニアであるCに対して、修復作業を事業主が依頼し、Cが合意した場合
【4】災害が発生したため、災害の初動対応に経験豊富な労働者Dに、臨時的な災害の初動対応業務を事業主が依頼し、Dが合意した場合
【5】労働者Eは育児休業の開始当初は全日を休業していたが、一定期間の療養が必要な感染症がまん延したことにより生じた従業員の大幅な欠員状態が短期的に発生し、一時的にEが得意とする業務を遂行できる者がいなくなったため、テレワークによる一時的な就労を事業主が依頼し、Eが合意した場合
また、以下は恒常的・定期的な就労に該当するケースです。
労働者Fが育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務する場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合
一時的な就労と認められるには、事業主の一方的な指示による就労ではなく、労働者との合意が前提になります。育児休業中の一時的な就労を求める場合は、上記ケースを参考にして判断すると良いでしょう。
産休中の国民年金保険料免除
第1号被保険者(自営業者やその家族)が、平成31年2月1日以降に出産した際、産前産後の国民年金保険料が一定期間免除される制度です。
・対象者
第1号被保険者:20歳以上60歳未満の自営業者・農林漁業者とその家族、学生、無職の人等。
※会社の社会保険に加入している人(第2号被保険者)や加入者の配偶者(第3号被保険者)は対象になりません。
・保険料免除期間
出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間の国民年金保険料
(令和2年度の国民年金保険料は、1か月16,540円です)
・届出先
お住いの市役所、区役所等の国民年金窓口(郵送での手続きも可能)。
届出に必要な書類は年金機構のホームページからダウンロードなさってください。
産前産後の保険料免除制度は、以前までは第2号被保険者(会社で社会保険に加入している人)のみ適用されておりましたが、上記免除は社会保険に加入していないアルバイトやパート勤務者も対象になる可能性があります。
届出をしないと免除は受けられませんので、該当しそうであれば早めに届出したほうが良いでしょう。
出産や育児にかかる社会保険料の免除
妊娠、出産、育児については社会保険上手厚い保護がなされています。
出産手当金、育児休業給付金などの休業補償のほか、社会保険料関係が免除になる特例があります。
1、産前産後休業期間中の保険料免除
平成26年4月30日以降に産前産後休業が終了となる被保険者が対象となります。
産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、被保険者が産前産後休業期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより被保険者・事業主の両方の負担が免除されます。
申出は、事業主が産前産後休業取得者申出書を日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出することにより行います。
なお、この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。
2、育児休業期間中の保険料免除
(1)育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業および育児休業に準ずる休業)期間について、被保険者は、事業主へ申出を行い、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
(2)申出により、健康保険・厚生年金保険の保険料は被保険者・事業主両方の負担が免除されます。
(3)この申出は、被保険者が次のア~エの育児休業等を取得する度に、事業主が手続きします。
また、この申出は、現に、申出に係る休業をしている間に行わなければなりません。
ア.1歳に満たない子を養育するための育児休業
イ.保育所待機等特別な事情がある場合の1歳6カ月に達する日までの育児休業
ウ.保育所待機等特別な事情がある場合の2歳に達する日までの育児休業
エ.1歳(上記イの場合は1歳6カ月、上記ウの場合は2歳)から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業の制度に準ずる措置による休業
(4)保険料負担が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までです。免除期間中も被保険者資格に変更はなく、保険給付には育児休業等取得直前の標準報酬月額が用いられます。
マイナンバーカードの健康保険証利用について
令和3年3月より、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる制度が始まりました。
医療機関や薬局の窓口等でマイナンバーカードをカードリーダーにかざすことで、医療保険の資格確認ができるものです。
利用メリット
・就職や転職、引っ越しをしても、マイナンバーカードを健康保険証として利用し続けることができる
・限度額適用認定証が無くても、限度額適用が受けられる
・マイナポータルを通じて、確定申告の医療費控除手続き時の医療費情報が自動入力できる
等があります。
申し込み方法
マイナンバーカードの交付を受けてない方は、まずは交付申請から始める必要があります。
また、マイナンバーカードを持っていれば当たり前に使えるわけではなく、事前にマイナポータルから利用登録が必要となります。
詳しくは以下をご参照ください
↓
https://myna.go.jp/html/hokenshoriyou_top.html
転職時等は、新しい健康保険証の発行にどうしても時間がかかってしまいます。また、高額な医療費を見越して発行する限度額適用認定証も、申請を出してから届くまでにある程度の日数を要します。
これらが解消されるのは便利な制度だと思いますので、興味ある方は申請してみてはいかがでしょうか。
労働保険料等の納付猶予
新型コロナウイルス感染症の影響により、事業に係る収入に相当の減少があった事業主の方にあっては、申請により、労働保険料等の納付を、1年間猶予することができます。
この納付猶予の特例が適用されると、担保の提供は不要となり、延滞金もかかりません。
猶予の要件
以下のいずれも満たす事業主の方が対象となります。
① 新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業に係る収入が前年同期に比べて(※1)概ね 20%以上減少していること
② ①により、一時に納付を行うことが困難であること(※2)
※2 「⼀時に納付を行うことが困難」かどうかの判断については、少なくとも向こう半年間の事業資金を考慮に入れるなど、申請される方の置かれた状況に配慮し適切に対応します。
③ 申請書が提出されていること
なお、「前年同期比概ね 20%以上の収入の減少」という基準の適用については、現に収入の減少が 20%に満たないことのみをもって一概に特例の適用を否定するものではなく、収入の減少が 20%に満たない場合でも、今後、さらに減少率の上昇が見込まれるときなどは、これを勘案して総合的に判断されます。
猶予対象となる労働保険料等
令和2年2月1日から令和3年2月1日までに納期限が到来する労働保険料等が対象となります。
なお、特例猶予が認められない場合であっても、他の猶予制度(換価の猶予等)を利用できる場合がありますので、都道府県労働局にご相談ください。
入社直後に傷病手当金を申請できるか?
傷病手当金は、社会保険に加入する大きなメリットのひとつです。これは私傷病により会社を休む場合の休業補償金のことです。
この傷病手当金は、入社して間もない被保険者でももらえるでしょうか。
基本的な要件
傷病手当金の基本的な要件は以下の通りです。
- 業務外の理由による病気やケガの療養のために休業していること(ただし、業務上の災害や通勤災害による療養や保険対象外の治療(正常分娩、美容整形、歯列矯正、妊娠中絶、自由診療等)は、除きます。)
- 会社から給与が支払われていないこと
- 傷病手当金の支給申請書に、医師による労務不能の証明をしてもらえること
この要件を満たしていれば、たとえ入社したばかりの被保険者であっても申請は可能です。ただし、入社したばかりの場合、「本当は前から持ってた持病でないか?」などの確認をされることになります。
・前職における状況確認
傷病手当金の支給申請を受けた保険者(協会けんぽや健康保険組合など、手当金を支給する側)は、さまざまな観点から審査を実施します。その審査には、
⑴同じ傷病ですでに支給を受けていないか、
⑵受けている場合には1年6ヶ月に達していないか、という事項もあります。
この点において、転職者の場合、転職前に支給を受けていて、この1年6ヶ月にかかる可能性があります。そこで、中途入社後、間もない被保険者については、前職で加入していた保険者に、支給の有無等を確認することになります。
ちなみに傷病手当金は退職後も貰うことができますが、その場合は一年以上の被保険者期間が必要となります。入社直後の方が退職後も傷病手当金を受けられるというのはさすがにありませんが、ある程度継続勤務されていた方であれば退職後も受給可能ということです。逆に入社直後の方は退職してしまうと傷病手当金を受けられなくなるので注意が必要です。
離職票の発行義務について
雇用保険の被保険者が退職した時、退職者から「離職票を発行して欲しい」と頼まれることがあります。これは必ず対応しなければならないものでしょうか。
1、離職票とは
離職票は、会社でなく「ハローワーク」が発行するものです。会社が
・退職日
・退職理由
・生年月日
・退職前の給与額や出勤日数
を離職証明書という書類でハローワークに申請し、帰ってくる書類が離職票です。
2、何に使用するか
離職票には、「退職者がその会社にどのくらいの期間勤めていて、いくら給料をもらっていたか。どんな理由で辞めたか」などが記載されてあります。
その内容によって、基本手当等の給付(いわゆる失業保険など)の内容が決まります。
よって、失業保険をもらわない場合は、離職票を使う場面はあまりありません。
3、発行は原則必要
基本的に離職票の発行は必要です。
ただし、退職者本人が離職票の交付を希望しない時は発行しなくても大丈夫ですが、59歳以上の被保険者が離職した場合は必ず発行しなければなりません。また、退職時には不要と言った社員が後日離職票を求めてくるケースもありますので会社としては全員に対して発行するものとしておくほうがいいでしょう。
4、離職票のその他の使い道
離職票は、その他国民健康保険や国民年金の免除手続きに必要なことがあります。つまり、「失業をしてお金の余裕がないから保険の免除を受けたい」と申請する際の証拠書類になったりします。
高齢者医療制度
我が国では現在、75歳以上を「後期高齢者」と位置づけ、医療制度を区分しています。
そもそも日本では、「国民健康保険」と「被用者保険」の二本立てで国民皆保険を実現していますが、所得が高く医療費の低い現役世代は被用者保険に多く加入する一方、退職して所得が下がり医療費が高い高齢期になると国保に加入するといった構造的な課題があります。このため、高齢者医療を社会全体で支える観点に立って、75歳以上について現役世代からの支援金と公費で約9割を賄うとともに、65歳~74歳について保険者間の財政調整を行う仕組みを設けています。これを後期高齢者医療制度と言います。
旧老人保健制度において「現役世代と高齢者の費用負担関係が不明確」といった批判があったことを踏まえ、75歳以上を対象とする制度を設け、世代間の負担の明確化等を図っています。
特徴
・現役世代と高齢者の分担ルールを明確化している(現役世代が給付費の4割、高齢者が1割)
・保険料を納める所とそれを使う所を都道府県ごとの広域連合に一元化し、財政・運営責任を明確化している
・都道府県ごとの医療費水準に応じた保険料を、高齢者全員で公平に負担する仕組みとなっている。
後期高齢者医療の保険料について
被保険者が負担する保険料は、条例により後期高齢者医療広域連合が決定し、毎年度、個人単位で賦課されます(2年ごとに保険料率を改定)。
○ 保険料額は、①被保険者全員が負担する均等割と、②所得に応じて負担する所得割で構成されます。
※平成30年度・令和元年度全国平均保険料率 均等割 45,116円/所得割率 8.81%
○ 世帯の所得が一定以下の場合には、①均等割の7割/5割/2割を軽減する(7割軽減の対象者には、更に国費を投入し、8.5割、8割軽減としている)。
○ 元被扶養者(※後期高齢者医療制度に加入する前日に被用者保険の被扶養者(被用者の配偶者や親など)であった者)については、75歳に到達後2年間に限り、所得にかかわらず、①均等割を5割軽減しています。また、②所得割は賦課さません。
年金の脱退一時金
脱退一時金とは、日本の年金制度(国民年金・厚生年金)に加入(納付済み)した期間が6ヶ月以上ある外国人(日本の国籍を有しない)が受給資格要件(10年間の年金加入)を満たさずにのんの年金を受け取ることが出来ない場合で、帰国(一時帰国等、日本国内に住所を有する場合※は除く)した際に国民年金保険料を納付した又は厚生年金の加入期間に応じてそれぞれ一時金を受けることが出来る制度です。
【脱退一時金の支給額】
- 国民年金保険料を納付していた場合
国民年金保険料の脱退一時金の支給額は、国民年金保険料を納めた期間に応じて支給されることとなります。脱退一時金の支給額は最後に保険料を納付した月の属する年度により、支給額が異なります。
最後に納付した保険料が令和2年度であった場合は以下の通りです。
保険料納付済期間 |
受給金額 |
6ヶ月以上12ヵ月未満 |
49,620円 |
12ヵ月以上18ヵ月未満 |
99,240円 |
18ヵ月以上24ヵ月未満 |
148,860円 |
24ヵ月以上30ヵ月未満 |
198,480円 |
30ヵ月以上36ヵ月未満 |
248,100円 |
36ヵ月以上 |
297,720円 |
(参照:日本年金機構より)
- 厚生年金保険に加入していた場合
脱退一時金の支給金額は以下の計算式で算出されます。
被保険者であった期間の平均標準報酬額×支給率
支給率ですが、加入期間の最終月(資格喪失月の前月)の前年の10月(最終月が1~8月の場合前々年の10月の保険料率)の保険料率に2分の1に乗じた保険料率に以下の表の数を掛けるものをいいます。
保険料納付済期間 |
掛ける数 |
6ヶ月以上12ヵ月未満 |
6 |
12ヵ月以上18ヵ月未満 |
12 |
18ヵ月以上24ヵ月未満 |
18 |
24ヵ月以上30ヵ月未満 |
24 |
30ヵ月以上36ヵ月未満 |
30 |
36ヵ月以上 |
36 |
(参照:日本年金機構より)
保険料率は年度によって変更される場合があるので、申請の際は必ず確認するようにしてください。
また、この度、法改正により国民年金・厚生年金の脱退一時金計算の上限年数が3年から5年に延長されることとなりました: (施行は2021年・令和3年4月1日から)
【申請期限】
最後に日本に住所を有しなくなってから2年以内
脱退一時金は制度上あまり、浸透していない場合もあり、外国人労働者に説明が難しい場合もあります。日本年金機構より、各国の言語の申請書もダウンロードできます。
支給金額も年度ごとに異なる場合がありますので、都度確認することが必要でしょう。
新型コロナウイルス感染時の傷病手当金受給について
新型コロナウイルスの感染が広がっております。
感染症で会社を休んだ場合、健康保険の傷病手当金を受給できるかについて、厚生労働省よりQ&A方式で健康保険組合等へ連絡がされました。いくつかピックアップしてご紹介します。
【Q1】 被保険者が新型コロナウイルス感染症に感染しており、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
【A】 被保険者が業務災害以外の理由により新型コロナウイルス感染症に感染してい
る場合には、他の疾病に罹患している場合と同様に、療養のため労務に服すること
ができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができ
ない期間、直近 12 か月の標準報酬月額を平均した額の 30 分の1に相当する額の3
分の2に相当する金額を、傷病手当金として支給することとなる。
【Q2】被保険者には自覚症状はないものの、検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」と判定され、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
【A】傷病手当金の対象となりうる。
【Q3】被保険者が発熱などの自覚症状があるため自宅療養を行っており、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
【A】傷病手当金の対象となりうる。
【Q5】発熱などの自覚症状があるため自宅療養を行っていた方が、休職して4日目以降に帰国者・接触者相談センターに相談したものの、体調悪化等によりその日には医療機関を受診できず、結果として、その翌日以降、医療機関を受診せずに病状の改善が見られた場合には、傷病手当金は支給されるのか。支給される場合、医師の意見書を添付することができないが、何をもって労務不能な期間を判断するのか。
【A】傷病手当金の支給対象となりうる。
本問のように、医療機関への受診を行うことができず、医師の意見書を添付でき
ない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、
被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等に
より、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとす
る。
傷病手当金の申請として、通常時と大きく違うのはQ5におけるA医師の意見書の添付が無くても受給対象になりうる点かと思います。感染者が休業した場合は、休業中の所得補償として積極的に活用した方がよいでしょう。
詳細は以下よりご確認くださいませ。
新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A
源泉所得税の甲欄乙欄
給与計算の際、社員の給与から所得税を引きますが、区分が「甲乙丙」に分かれています
国税庁が定める源泉徴収税額表には、上部に「甲」、「乙」、「丙(日額表のみ)」と書かれてあります。
1、甲欄
「甲」欄は、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がある方に適用されます。
「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した会社が、主たる給与の支払先となり、その会社の源泉徴収税額は「甲」欄が適用されます。
複数の会社で働いている場合、この書類は一箇所のみに提出します。この書類を出すことは、「ここの会社がメインの給与なので、甲欄で所得税を引いてください」という給与所得者の意思表示であるともいえるでしょう。
ちなみに、給与所得者の扶養控除等申告書には税法上の扶養家族の情報を記入します。所得税計算の際には、税法上の扶養家族がいるほど所得税が安くなります。
2、乙欄
「乙」欄は、「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がない方に適用されます。
2か所以上から給与を貰っていて、別の会社で「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している方の場合に適用して下さい。甲欄と比べて、乙欄の方が税率・税額が高く設定されています。つまり、「副業の給与など乙欄控除の場合高めに所得税を取るから、正直に確定申告しないと取られ損になる」という仕組みなっていると言えます。
3、丙欄
「丙」欄は、日額表だけにあり、日雇いの人や短期間雇い入れるアルバイトなどに一定の給与を支払う場合に適用します。課税対象額9300円未満の日額の場合源泉徴収はありません( 2020年1月時点)。
第1子育児休業中に第2子を妊娠した場合
第1子育児休業中に第2子を妊娠した場合の取り扱いについて
第1子育児休業中に、第2子を妊娠した場合、社会保険や雇用保険の給付はどのようになるのでしょうか?
一番気になる点としては、第1子育児休業と第2子産前産後休業の時期が重複した場合、
育児休業給付金と出産手当金、保険料免除等が併用出来るのか、という点かと思います。
具体的には、産前休業と産後休業で取扱が異なります。
第1子育児休業と第2子産前休業が重複する場合
産前休業を申請した場合
第1子育児休業中に第2子の産前休業を請求する場合、第1子に係る育児休業は自動的に終わることになります。(育児介護休業法第9条3項)
したがってかかる場合には、第1子の育児休業給付金ならびに社会保険料免除は終了します。
新たに、第2子に係る出産手当金並びに社会保険料免除ができます。
産前休業を申請しない場合
実は、第2子妊娠が判明した場合、産前休業を申請しないという選択肢も労働者にあります。法律において、産前休業を申し出るかは労働者の裁量にゆだねられているからになります。(労働基準法65条1項)
この場合、第1子に係る育児休業給付金は継続し、第1子に係る保険料免除も継続することになります。
一方で、健康保険から支給される第2子に係る出産手当金も受給できます。出産手当金の支給要件としては、産前休業を申請していることは要件ではない為、出産以前6週間において、労務に就いていなければ出産手当金も併給することが可能となります。
ただし、第2子の産後休業についての取扱については異なる為注意が必要です。産前休業と異なり、産後休業は労働者の権利ではなく、請求に関らず取得することが法律で義務付けられております。
したがって、第2子の出産をもって、第1子のに係る育児休業給付金及び社会保険料免除は終了いたします。
別居している被扶養者の認定
別居している被扶養者認定の必要添付書類について、
健康保険において、扶養の手続きの際、別居している親族の認定の場合、
同居している場合に比べ、要件の他、別途提出書類が必要となりますので注意が必要です。
被扶養者の認定要件の違い
①同居の場合
年間収入(年間の見込み)が130万円未満かつ
被扶養者の収入が被保険者の収入の半分未満
②別居の場合
同居の場合と同様、年間収入が130万円未満ですが、
別居の場合は、それに加え、被扶養者の収入が、被保険者からの仕送り額未満であることが要件とされています。
提出書類について
通常、扶養認定の際、以下の
①続柄確認書類
⇒住民票・戸籍謄本等(マイナンバー提出により省略可能)
②収入要件確認書類
⇒所得税法上の扶養親族を証明する書類(事業主の証明により省略可能)・退職証明書・離職票(失業手当受給期間は扶養認定されないので注意)等
が必要となりますが、
別居の場合は前述のとおり、仕送り額を証明する為、
上記に加え、
③仕送り額が確認できる書類
の準備が必要となります。
③の書類ですが、こちらについて注意が必要となるのが、
必ず、振込や送金の場合は現金書留の記録を控えとく必要があることです。
手渡し等で仕送りしている場合、扶養の認定は原則的にはおりませんので注意が必要です。
男性の育児休業の注意点
イクメンという言葉があるように、男性の育児参加は世の中の関心ごとです。育児休業については女性だけでなく男性も取得できまが、取得開始時期や育休プラス制度など、ルールが一部女性と違います。以下男性の育児休業について解説します。
対象者
育児休業の対象となる男性は原則として次のとおりです。
・同一事業主に1年以上雇用されている
・子供が1歳未満(1歳の誕生日を迎えていない)
・子供が1歳になった後も引き続き雇用予定
・子供が1歳6ヶ月になる日の前日までに雇用契約が終了する予定ではない
・週3日以上勤務をしている
雇用保険に加入している人であれば多くの男性が育児休業の取得対象となります。
期間
女性については産後56日経過した後に育児休業が始まりますが、男性については出産日当日から育児休業の取得が可能です。終了期は「子供が産まれてから1年(子供の1歳の誕生日の前日まで)」です。
届出
会社に対して育児休業の申し出をするのは原則として1ヶ月前など事前にする必要があります。ただし、出産日は予定日からずれることも多いため、取得時期を変更することもできます。
給付
育児休業給付の申請は、休業期間2ヶ月ごとに1回、ハローワークに対して行います。通常会社が申請を行います。当初6ヶ月は休業前賃金のおよそ67%、その後は50%です。
育児休業の延長
育児休業は最長で1年が原則ですが、パパ・ママ育休プラスという制度を利用すると、子供が1歳2ヶ月になるまで育休期間を伸ばすことができます。
また、保育園に入れない場合に限り特別に育休を延長する事ができます。この場合最長2年間の取得が可能です。
休業手当を支給した月が含まれる場合の離職証明書の書き方
退職時の離職票発行や育児休業をこれから迎える従業員がいる際、
休業手当額は賃金の算定に含まれるか?
原則として、休業手当は賃金と認められます。
従って、離職した際の基本手当額の算定や育児休業の際の給付金額
休業手当の支給期間を含む場合の特例
休業手当は賃金としては含まれますが、休業手当の支払いが含まれ
そこで、その場合は通常と異なる計算が採用されます。
通常賃金日額は、
(1)休業もしくは離職前6か月間の賃金総額/180※
で計算されますが、休業手当が当該期間に含まれる場合、
(2)(6ヶ月の賃金-休業手当)/(180-休業日数)
(1)(2)いずれかの高い方が採用されることになります。
※上記例は月給者を対象とした場合になります。日給・時給者の場
離職票等の記載の注意点
休業手当を含む月がる場合には、証明書等の記載において算定賃金
備考欄記載例(○/○~○/○、計○日休業 休業手当額○○円)
雇用関連の助成金
従業員を雇っていて、雇用保険に加入している事業所が一定の要件を満たした場合、申請をすることでお金をもらう事ができます。これを助成金と言い、毎年納付している雇用保険料が財源となっております。働く従業員にとって良いことをしたら、その種類によって申請できるのですが、主に以下のような助成金があります。
➤雇用調整助成金【休業・教育訓練・出向を通じて従業員の雇用維持】
➤特定求職者雇用開発助成金【就職困難者(高年齢者・障害者・母子家庭の母等)を雇用】
➤トライアル雇用奨励金【安定職業を希望する未経験者を試行的に雇用】
➤キャリアアップ助成金【有期契約労働者等を正規・無期雇用等に転換】
➤出生時両立支援助成金【男性労働者に育児休業を取得させる】
他にも、社会情勢に合わせて様々な助成金があります。
なお、助成金を申請するためには、事業所として労働関係法令を遵守していることが前提となります。
例えば、以下のようなところが確認され、満たしてない場合は不支給になることもあります。
➤出勤簿や賃金台帳が整備されているか
➤社会保険を適正に加入しているか
➤支給賃金が最低賃金額を下回っていないか
➤残業代の未払いはないか
➤有給休暇は付与しているか
また、書類偽造等で不正受給と判断された場合には以下ペナルティーがあります。
➤助成金の返還を求められる
➤事業所名の公表
➤将来の助成金申請ができなくなる(最低3年間)
➤会計検査院の調査もありえる
中小企業にとって助成金は魅力的ですので、助成金をもらうこと自体が目的になっているケースがあるように思います。年々、助成金の審査も厳しくなっており、不正をしているつもりがなくても不正受給と判断された場合には取り返しがつきません。申請要件をしっかり確認の上、無理のない程度で申請するようにしましょう。
社会保険の住所変更
従業員の引っ越し等により従業員の住所変更があった場合、
基本的には、年金事務所に対し、健康保険・厚生年金被保険者住所変更届を提出することになります。
本手続きにより、年金事務所での登録変更が行われ、年金定期便等、被保険者へ変更後の住所に送付されることになります。
但し、この住所変更手続きにつきまして、取扱が徐々に変わりつつあります。
今現在、市町村での住所変更お手続きに際しましてマイナンバーの提出が必須となっております。
原則としては、マイナンバーを通じて、市町村役場から年金事務所へと連絡が行き、連動して自動的に社会保険上の住所変更もなされるよう仕組みが変更されたようです。
但し、マイナンバーを通じた住所切替ですが、全て自動的に変更されるわけではないので、注意が必要です。
原則としては、マイナンバー情報と被保険者情報が紐づけされておりますので、自動変更されますが、被保険者取得時にマイナンバーで申請していない場合やマイナンバーを変更した場合等、稀に自動的に変更されない場合がございます。その場合には、従来通り、住所変更お手続きが必要となります。
住所変更がなされているかの確認方法について
①年金事務所へ問い合わせをする。
⇒事業所の整理記号・被保険者番号・対象従業員の基礎年金番号等をお伝えした上で、新住所をお伝えすると、新住所に変更がなされているかお答えいただけます。(マイナンバー反映には少々時間を要するそうなので、住所変更後1ヶ月ほどしてから問い合わせをすると確実になります。)
②年金事務所から事業所への通知書
⇒住所変更が正しく行われなく、年金事務所からの年金定期便等が送付出来ない場合、
事業所宛に対象従業員の住所不明の通知書が届きます。
通知書に従い、住所変更手続きを進めることで、住所変更が出来ます。
原則的には不要となった住所変更手続きですが、稀にマイナンバーで対応できないこともあります。
従業員に住所変更があった場合には、注意してお手続きするようにしましょう。
休業等があった場合の算定基礎届の考え方
新型コロナウイルス感染症の影響により、休業を余儀なくされた企業等も多いかと思います。従業員に休業手当をお支払いした場合等の場合、算定基礎届の提出方法、算出方法についてみていきます。
通常の定時決定についてですが、
原則的には4月、5月、6月に支払われた報酬によって、算定基礎届を提出します。
ただし、4月~6月の間に、休業等があり、本来の出勤日等に休業手当等が支給された場合、通常通りの算定基礎届の提出では正しい等級決定が出来なくなることが想定されます。
日本年金機構によりますと、以下の表ように算出し、提出することになります。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 定時決定の算定対象月 | 随時改定月 | |
1 | ● | ○ | ○ | ☆ | ○ | ○ | 5月・6月 | |
2 | ● | ● | ● | ☆ | ○ | ○ | 従前等級で決定 | |
3 | ● | ● | ● | ★ | ○ | ○ | 7月改定 | |
4 | ○ | ● | ● | ★ | ○ | ○ | 4・5・6月 | |
5 | ○ | ● | ● | ★ | ● | ○ | 8月改定 | |
6 | ○ | ○ | ● | ★ | ● | ○ | 4・5・6月 | |
7 | ○ | ○ | ● | ★ | ● | ○ | 9月改定 |
・○:通常報酬が支給された月 (日本年金機構HPより引用)
・☆:休業等解消
・●:休業手当等が支払われた月
・★:休業等未解消
<パターン1・2>
パターン1・2はいずれも7月1日時点で休業状態が解消している場合です。
休業状態等が解消されている場合には、休業手当を含む月については算定の対象から除いて計算することになります。ただし、算定対象月全てが休業手当等支払っている月の場合、基本的には従前の等級から変動せず、保険料等級が決定します。
<パターン3以降>
パターン3以降は基本的には、休業状態が続いている場合です。
7月1日時点で休業状態が続いている場合には、原則的には休業手当支払い月を含め、通常通り4・5・6月の報酬をみて算定基礎届を提出することになります。
ただし、パターン3・5・7のように、休業手当支払い月が4ヶ月以上続く場合には、その都度保険等級の変更が必要になる場合もあるので注意が必要です。
新型コロナ感染症の見通しが立ちづらいことが容易に想像が出来ます。
通常通りの算定基礎届の提出が必要であるか、都度随時決定を行う必要があるのか確認する必要がありそうです。
届け出る際は、管轄の年金事務所までお問い合わせください。
非常勤役員の社会保険加入
非常勤役員がいて報酬が発生している場合、社会保険への加入義務はあるのでしょうか。
また、加入に報酬額の基準はあるのでしょうか。
こちらについては、過去に旧厚労省より以下通知が出ております。
・役員で、法人から労務の対象として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする。
(補足)役員には一般の労働者に適用される労働時間等の社会保険加入非加入の条件は適用されません。
労務の対象として報酬を受けている法人の役員かどうかについては、その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準に判断するとされています。
少しわかりづらいですが、日本年金機構からは以下具体例が挙げられており、該当数によっては社会保険加入義務があります。
1.当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか。
2.当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか。
3.当該法人の役員会等に出席しているかどうか。
4.当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか。
5.当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか。
6.当該法人等より支払を受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実務弁償程度の水準にとどまっていないかどうか。
つまり、非常勤かどうかは自社で勝手に決めるものではなく、上記項目の総合判断によって判定されます。こちらを見る限り、報酬額は明記されておりません。
なお、代表取締役は非常勤とは呼べませんので、報酬が発生している限りは社会保険に加入する必要があります。
役員で社保未加入者がいるようでしたら、上記1から6を客観的に証明できるように、役員会の議事録、役員の報酬(費用)規程、他の会社の常勤性を証する書類等を整えておくとよいでしょう。
教育訓練給付の拡充
教育訓練給付金の拡充について 教育訓練給付金とは、 労働者の主体的な能力開発の取組を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする給付制度です。
教育訓練給付金には2種類あります。「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」になります。 一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付はともに厚生労働大臣の指定する教育訓練終了した場合に授業料等の一部が給付金として支給される雇用保険の給付金の一種です。
対象となる教育訓練は一般教育訓練給付金の場合は通信教育や英会話等比較的手軽に受講できるものなど多岐に渡りますが、専門実践教育訓練給付金は看護師や美容師等の専門学校やMBAなどの大学院講座等、より専門性・実践的訓練が対象となります。
主な改正点 この教育訓練給付金ですが、開始当初は一般教育訓練給付金のみでしたが、 2014年から拡充され、専門実践教育訓練給付金が支給されるようになりました。
また、平成30年・31年と専門実践教育訓練給付金の支給額が拡充されました。
・もともとの支給金額
一般教育訓練給付金:教育訓練経費の20%(ただし上限10万円・下限4000円)
専門実践教育訓練給付金:教育訓練経費の40%(ただし上限32万)+資格試験合格後20%(合格時48万) 合計60% (最大3年) 改正後の支給額
専門実践教育訓練給付金:教育訓練経費の50%(上限40万)+資格試験合格後20%(合格時56万) 合計70% (最大4年)
また、改正に伴い、支給対象要件が一般・専門実践教育訓練ともに雇用保険加入期間が3年以上(初回のみ1年以上で給付可能)となりました。
労働保険事務組合って何?
1)事務組合とは
事業主の委託を受け、事業主が行うべき労働保険事務の処理をすることについて、厚生労働大臣の認可を受けた中小事業主等の団体の事を言います。
労働保険の成立手続や労働保険料及び一般拠出金の申告・納付の手続、その他雇用保険の被保険者に関する手続などの労働保険事務は、中小企業にとってわずらわしく、負担となっている場合が多いです。そこで、事務組合が委託を受けて、労働保険料及び一般拠出金の申告・納付や労働保険の各種届出等をすることができるような仕組みがあります。
2)委託できる事業主
常時使用する労働数によってきまります。
・金融・保険・不動産・小売業にあっては50人以下
・卸売の事業・サービス業にあっては100人以下
・その他の事業にあっては300人以下
3)委託できる事務
委託できる労働保険事務の範囲は、おおむね以下通りです。
(1)概算保険料、確定保険料などの申告及び納付に関する事務
(2)保険関係成立届、任意加入の申請、雇用保険の事業所設置届の提出等に関する事務
(3) 労災保険の特別加入の申請等に関する事務
(4) 雇用保険の被保険者に関する届出等の事務
(5) その他労働保険についての申請、届出、報告に関する事務
4)どのような場合に委託を検討すべきか
上記委託範囲にあるように、単純に各手続のわずらわしさから解放されるために検討することももちろんありですが、(3)の特別加入をしたいかどうかが大きなポイントです。特別加入とは、通常労災が適用されない中小事業主等が特別に加入できる制度で、これは事務組合を通してでしか加入することができません。労災事故が起きやすい職種の場合は検討すべきでしょう。
その他、労働保険料の納付額にかかわらず3回納付が選択できるメリットもあります。ただし、委託範囲外(例えば、就業規則の届出・社会保険事務手続き、外国人の届出等)の労務手続きについては自身で行うか、別の委託先(社会保険労務士)を検討する必要があります。
育児休業中に仕事に出た場合の給付金はどうなるか?
育児休業中に従業員が一時的・臨時で仕事に出た場合、育児休業給付金はどのように支給されるのかお問い合わせを頂くことがあります。
育児休業中に仕事をした場合、必ずしも育児休業給付金が支払われないわけではありませんが、働く日数、賃金によってその給付額が減額されることとなります。
育児休業給付金の原則
開始時賃金月額×支給日数×67%※
※育児休業6か月後から50%
上記額が育児休業給付金として受け取れる満額となります。
次に働いた場合の給付金のルールについて説明します。
・10日かつ80時間以上働いた場合
⇒育児休業給付金支払いなし
・10日かつ80時間以下で働いた場合(10日以上働く場合は80時間以下)
開始時賃金月額×80%と賃金の差額が支給
※賃金月額の13%(6ヶ月以降は30%)以下である場合は全額支給。
少しわかりにくいので、事例で考えていきます。
仮に、育児休業前の賃金月額が240,000円の従業員が、育児休業を取得した場合の支給額
①出勤・賃金がともに0の場合(休業6ヵ月までの場合)
⇒原則通り、24万円×67%=160,800円
②休業中、5日出勤・50時間で賃金が10万円支給されていた場合(休業6ヶ月までの場合)
⇒24万×80%-10万円=92,000円
③休業中、賃金20万円支給される場合(休業6ヶ月まで)
⇒24万円×80%=192000円以上が支給されていることになるので、
給付金の支給はありません。
海外在住親族の健康保険の扶養手続
近年、扶養認定の審査が厳格化されてきており、必要な添付書類等、よくお問い合わせをいただきます。
今回はあまり注目されないものの、いざという時に対応に困る、海外在住の扶養親族がいる場合の従業員の手続きについて触れたいと思います。
従業員の家族の中に留学をしているお子様等いる場合、扶養には入れるのでしょうか?
この点、被扶養者の要件として、国内に居住していることは要件としておりません。
したがって、扶養の認定を受けることについては問題ありません。
ただし、扶養認定を受けるための提出物について、国内に住所を有する場合とは異なります。
準備が必要な書類について(被保険者と被扶養者が別居の場合)
① 現況申立書
⇒被保険者との続柄、仕送り状況等、被扶養者の収入状況等の情報を記入する必要があります。
② 身分関係の確認できる書類
⇒続柄が確認できる公的証明書(それに準ずるものでも可)
...Ex.戸籍謄本、住民票等
③ 生計維持関係の確認
⇒収入状況(被扶養者の年収が130万もしくは180万未満)を確認できる公的書類
...Ex.勤務先から発行される収入証明書、在学証明書等※
※収入がない場合の公的書類につきましては、管轄の年金事務所等により対応が異なる場合もあります。事前に確認するとよいでしょう。
④ 被保険者から被扶養者への仕送り額が確認できる書類(被扶養者の年間収入が仕送り額未満であることが必要)
Ex.振込依頼書や通帳の写し等
以上のような書類を準備する必要があります。なお、書類が外国語で作成されたものである場合、翻訳者署名付きに翻訳文を添付する必要があるので注意が必要です。
また、上記の書類はあくまでも、直系尊属、配偶者、子、孫及び兄弟姉妹が海外にて別居する場合を想定したものです。
被扶養者と海外で同居する場合、、直系尊属、配偶者、子、孫及び兄弟姉妹以外の三親等の扶養手続きの場合には別途添付書類が必要な場合もあります。
海外在住の扶養手続きにつきましては通常の添付書類よりも労力を使いそうです。しっかりと添付書類を準備・確認したうえで、申請しましょう。
新型コロナウイルス感染時の傷病手当金
新型コロナウイルスの感染が広がっております。
感染症で会社を休んだ場合、健康保険の傷病手当金を受給できるかについて、厚生労働省よりQ&A方式で健康保険組合等へ連絡がされました。いくつかピックアップしてご紹介します。
【Q1】 被保険者が新型コロナウイルス感染症に感染しており、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
【A】 被保険者が業務災害以外の理由により新型コロナウイルス感染症に感染してい
る場合には、他の疾病に罹患している場合と同様に、療養のため労務に服すること
ができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができ
ない期間、直近 12 か月の標準報酬月額を平均した額の 30 分の1に相当する額の3
分の2に相当する金額を、傷病手当金として支給することとなる。
【Q2】被保険者には自覚症状はないものの、検査の結果、「新型コロナウイルス陽性」と判定され、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
【A】傷病手当金の対象となりうる。
【Q3】被保険者が発熱などの自覚症状があるため自宅療養を行っており、療養のため労務に服することができない場合、傷病手当金は支給されるのか。
【A】傷病手当金の対象となりうる。
【Q5】発熱などの自覚症状があるため自宅療養を行っていた方が、休職して4日目以降に帰国者・接触者相談センターに相談したものの、体調悪化等によりその日には医療機関を受診できず、結果として、その翌日以降、医療機関を受診せずに病状の改善が見られた場合には、傷病手当金は支給されるのか。支給される場合、医師の意見書を添付することができないが、何をもって労務不能な期間を判断するのか。
【A】傷病手当金の支給対象となりうる。
本問のように、医療機関への受診を行うことができず、医師の意見書を添付でき
ない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、
被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等に
より、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとす
る。
傷病手当金の申請として、通常時と大きく違うのはQ5におけるA医師の意見書の添付が無くても受給対象になりうる点かと思います。感染者が休業した場合は、休業中の所得補償として積極的に活用した方がよいでしょう。
詳細は以下よりご確認くださいませ。
新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000604969.pdf
振替休日と代休
「振替休日」と「代休」、本来休みの日に出勤させる代わりに他の日に休みを与えるものであり、一見双方ともに同じ意味合いのように思えます。しかしながら、法律上の取り扱いが全く異なる「別物」となります。
振替休日とは?
「振替休日」とは「休日」を予め「労働日」と変更し、代わりに他の「労働日」を「休日」へと変更することを言います。
「振替休日」を行った場合、通常休日とされている日に社員を出勤させたとしても、休日出勤は「労働日」として取り扱われることになり、「休日労働」には該当しません。
振替休日における割増賃金について
「休日労働」には該当しない為、「休日労働」に対する割増賃金(3割5分以上)の支払い義務は発生しません。ただし、「振替休日」が週をまたぎ、勤務週の労働時間が40時間を超える場合、別途「時間外労働」としての割増賃金(2割5分以上)の支払い義務が生じますのでご注意ください。
代休とは?
一方の「代休」とは、「休日労働」が実際に行われた後に、代わりに「休日」を設けることをいいます。事後に「休日」を与えたとしても「休日労働」の事実が消えたことにはならず、割増賃金の支払い義務が生じます。
代休における割増賃金について
「代休」の割増賃金支払い義務ですが、「休日労働」が「法定休日」(労働基準法で定められた「週1回または4週に4回」与えなければならない休日)に行われたか、「法定外休日」(会社が任意で制定した法定休日を上回る日数の休日)に行われたかによって割増率に差異が生じます。
「法定休日」の場合、割増賃金が3割5分以上の割増率で計算しなければなりませんが、「法定外休日」の場合、週40時間の労働時間を超える場合、「時間外労働」として2割5分以上の割増率が発生することになります。
有給休暇の基準日の設定
労働基準法39条1項によれば「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し前労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」としています。
原則としては労働者の入社日を基準にして有給休暇を付与します。その場合、社員一人一人を個別に管理する必要があり非常に煩雑かつ手間がかかります。そこで事務の簡素化の観点から一定の要件を満たした場合、全労働者に対し一律の基準日を定めて有給休暇を付与することを認めています。
一定の要件とは、
① 斉一的取扱により法定の基準日以前に付与する場合、付与要件である8割以上の出勤について短縮された期間は全期間出勤したものとみなすこと。
② 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰上げた期間と同じ又はそれ以上に期間法定の基準日より繰上げること。
つまり、基準日を設ける場合は労働者に不利益にならないよう常に前倒しして有給休暇を付与しなければなりません。
毎年4月1日を基準日とした場合
平成29年5月10日に入社した社員の事例を考えてみましょう。労働基準法上、1年6箇月経過する平成30年11月10日の時点に11日の有給休暇が付与されます。
したがって、上記要件を満たすためには、平成30年4月1日には11日の有給休暇が前倒しで付与されることになります。
年次有給休暇の基準日を設ける上で
基準日を設ける際、前述の通り前倒しをして有給休暇を与えるため、入社時期のずれによって不公平感が生じやすくなります。基準日を年2回設けることにより不公平感を軽減する策もあります。会社の実状に合わせ、管理の煩雑さ、労働者の公平を保てる方法を模索することが大切になります。
月額変更の年間平均を用いた申し立て制度
通常の方法の月額変更が著しく不当であると認められる場合は、新たに保険者算定の対象となります。通常の月額変更で算出した標準報酬月額と、昇/降給後の3ヵ月とその前9ヵ月の12ヵ月の月平均額で算出した標準報酬月額との間に2等級以上の差があり、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合で、かつ現在との標準報酬月額との差に1等級以上の差がある場合は、通常の月額変更ではなく、年間平均の標準報酬月額にすることができるというものです。
添付書類としては下記の物が必要となります。
1.年間報酬の平均で算定することを申し立てる場合
(様式1)年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用)
(様式2)健康保険 厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届・保険者算定申立 に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等(随時改定用)
2. 改定月の初日から起算して60日経過した後に届出をする場合、または 標準報酬月額が大幅に下がる※場合 ※ 「大幅に下がる場合」とは、原則、標準報酬月額の等級が5等級以上、下がる場合をいいます。
① 被保険者が法人の役員以外の場合
・賃金台帳の写し 固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで
・出勤簿の写し 固定的賃金の変動があった月から、改定月の前の月分まで
② 被保険者が株式会社(特例有限会社を含む。)の役員の場合
・所得税源泉徴収簿または 賃金台帳の写し、株主総会または取締役会の議事録
療養費の払い戻し請求
健康保険ではやむを得ない事由等で保険診療の療養の給付(治療等)を受けられなかった場合、後から療養費の請求ができます。
健康保険では私傷病で治療を受ける場合医療機関の窓口に健康保険の被保険者証を提示して自己負担の3 割分を支払う事で医療 サービス分 7 割を現物給付で受けるのが原則となっています。
やむを得ない事由により全額自己負担で受診した場合はその保険 診療費用について療養費の請求ができます。
保険診療が困難な時とは 次の様な時には医療費の全額を支払い、 後から保険者(協会けんぽや健康保険組合、 国民健康保険)に請求します。
①事業主が行う社会保険の取得手続き中に医療機関にかかり被保険者証が未発効の為、窓口に提示できなかった時
②療養の為医師の指示により義手、義足、義眼、コルセットの装着をした時
③生血液の輸血を受けた時
④柔道整復師等から施術を受けた時等
(支給対象となる治療用装具の例)
関節用装具、コルセット
小児の弱視、斜視及び先天白内障術後の屈折矯正の治療用として用いる眼鏡およびコンタクトレンズ(9歳未満の小児のみ対象)
リンパ節郭清術を伴う悪性腫瘍の術後に発生する四肢のリンパ浮腫の治療のために使用される弾性着衣等
眼球摘出後眼窩保護のために装用を必要とする義眼
症状固定前の練習用仮義足
などがあり、装具ごとに支給上限額があります。
育児休業支援コース助成金
育児休業支援コースとは育児休業の円滑な取得・職場復帰を支援する制度です。
支給要件
●育休取得時・・・支給額28.5万円
・対象者の休業までの働き方、引き継ぎのスケジュール、復帰後の働き方等について、上司又は人事担当者と面談を実施したうえで面談結果を記録すること。
・「育休復帰支援プラン」を作成すること。
・「育休復帰支援プラン」に基づき、対象者の育児休業(産前・産後休業から引き続き育児休 業を取得する場合は産前休業)開始日までに業務の引き継ぎを実施すること。 対象者に、3ヶ月以上の育児休業を取得させること(産後休業を取得する場合は産後休業を 含めて3ヶ月以上) 。
●職場復帰時・・・支給額28.5万円 ・対象者の休業中に育休復帰支援プランに基づき、職場の情報・資料の提供を実施すること。
・対象者の職場復帰前と職場復帰後に、上司または人事担当者が面談を実施し、面談結果を記 録すること。
・対象者を原則として原職等に復帰させ、さらに6ヶ月以上継続雇用すること。
●代替要員確保時・・・47.5万円 ・育児休業取得者の職場復帰前に、育児休業が終了した労働者を原職等に復帰させる旨を就業規則等に規定すること。
・対象者が3ヶ月以上育児休業を取得し、事業主が休業期間中の代替要員を新たに確保すること。
・対象者を上記規定に基づき原職等に復帰させ、さらに6ヶ月以上継続雇用すること。
制度の整備から育休開始、終了までの一連の実施により支給申請となります。
育児休業給付
育児休暇中、給与が支払われないかわりに支給されるのが「育児休業給付金」です。
取得できる期間は産休終了日の翌日から子どもの1歳の誕生日の前々日までです。
これは民法上、誕生日の前日をもって満年齢とされる為です。
認可保育園に、保育の実施を希望し申請しているが入園できない場合などは、支給期間の延長をする事ができます。
受給資格としては雇用保険に加入していることは大前提です。
正社員、パートなどの雇用形態は関係ありません。
期間の要件としては育児休業をとる前にどのくらい勤務していたかが重要であり、その期間は育休前の2年間です。
この2年間で、1ヶ月に11日以上働いた月が12ヶ月以上あることが必須条件となります。
2年間は24ヶ月あるわけですが、このうち半分程度の月に、11日以上働いているかどうかがポイントです。
支給額算出方法は 育児休業開始日から6か月までは休業開始時賃金日額×支給日数×67%
育児休業開始日から6か月経過後は休業開始時賃金日額×支給日数×50%
となっており休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前6か月分の賃金(給与の総支給額)合計を、180で割った額をいいます。
育児休業給付金の申請は、2ヶ月に1回です。
申請時に揃えておくべき書類は以下の通りです。
・育児休業給付金支給申請書
・賃金の金額や支払われている状況を証明することができるもの(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など)
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・母子健康手帳
労災発生時の対応
災害時における労働時間及び休日出勤
災害などの緊急時には労働時間の大幅な延長が必要となる場合が起こりえます。しかしながら、労働基準法では、労働時間の原則として1日8時間以内、1週40時間以内を定めています。また、休日についても週1日以上与えなければならないことを事業主に課しています。36協定においては1日に延長することができる時間数の上限を定めており、原則としてはその時間を超えて労働させることはできないこととなっています。
しかし有事の際には労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。
ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。
災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。
ただし、必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。
当然ながら、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要となります。
また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。
両立支援等助成金の出生時両立支援コース
従業員に子どもが生まれた場合、多くは女性労働者が産前産後の休業をとり、その後、育児休業を取る事が多かったと思います。
しかし、最近では男性が育児に参加することも増えてきています。そのような中で、女性労働者だけではなく男性労働者が育休を取得しやすい職場作りの取り組みを行い、男性労働者に一定期間の育休を取得させた事業主に両立支援等助成金が支給されます
事業主は、男性労働者が1人目の育休を取得する前に以下のいずれかに取り組んで実施することが必要です。
1.男性労働者に対する育休制度の利用促進のための資料等の周知
2.子が産まれた男性労働者への管理職による育休取得勧奨
3.男性の育休取得についての管理職向けの研修の実施
男性労働者が育休を取得しやすい職場風土づくりのために上記のいずれか1つ以上への取り組みを実施し、さらに、男性労働者が子の出生後8週間以内に始まる連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育休を取得することが支給条件になっています。
ただし、過去3年以内に男性の育休取得者(連続14日以上、中小企業は連続5日以上)がいる企業が対象外であること、それから、支給対象は1年度につき1人までという点に注意が必要です。
・支給金額
|
中小企業 |
中小企業以外 |
取組・育休1人目 |
57万円 <72万円> |
28.5万円 <36万円> |
育休2人目以降 |
14.25万円<18万円> |
男性も仕事と育児の両立を目指せる企業づくりを推奨している制度であります。
育児休業中の社会保険料免除
育児休業中の社会保険料は事業主の申し出により免除となるのですが、どうしても対象の従業員でないと処理できない業務、やむを得ない理由による労働の要請、又は従業員からの申し出などに対応する場合にはどのようにすればいいのでしょうか
基本的には育児休業中には育児に専念する事原が則とされていますが、ある程度のスポット的な労働をしても社会保険料免除が解除にならないように認められています。
ではどのような労働があてはまるのか?
●【休業→労働→休業】というような労働の後に必ず休業がやってくるスポット的な労働
●その人でないとできない属人的な仕事を育児の空いている時間にこなす労働
●決まった曜日、決まった時間といった定期的なものではなく、たまに労働しているといった不定期な労働
上記のような臨時的に復帰しているような働き方であれば免除が継続しますが、安定的に勤務している場合は復帰とみなされ免除適用がなくなることがあります。
また「何日間、何時間働いたら復帰とみなして保険料免除がダメになる」という明確な基準値も決まっていません。
とにかく“復帰とみなされない”というポイントを抑えての労働が前提となりますが基準も曖昧で管轄ごとに判断がわかれてしまう可能性も有りますので、判断がつかないといった場合には管轄の年金事務所に労働サイクルを相談する事が必要となりそうです。
未払い賃金建て替え払い制度
未払賃金立替払い制度は、企業が倒産して賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、その未払賃金の一定範囲について国(労働者健康安全機構)が事業主に代わって払うものを言います。「賃金の支払の確保等に関する法律」に定められています。
立て替え払いの要件は次の通りです。
<事業主(会社)の要件>
(1)労災保険の適用事業の事業主で、1年以上事業を実施していること
(2)倒産したこと
[1] 法律上の倒産(破産手続開始決定、再生手続開始決定、更生手続開始決定等)
[2] 事実上の倒産(労働基準監督署長の認定)
などがあります。
<労働者の要件>
(1)破産手続開始の申立等(事実上の倒産の認定申請)の6か月前の日から2 年の間に退職したこと
(2)未払賃金額等について、法律上の倒産の場合には、破産管財人等の証明を 受けること(事実上の倒産の場合には、労働基準監督署長の確認が必要)
(3)破産手続開始決定等(事実上の倒産の認定)の日から2年以内に立替払請 求を行うこと
などがあります。
対象となる賃金と金額:
立替払の対象となる賃金は、退職日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金です。(定期給与と退職金(ボーナスは含まれません)。ただし、総額2万円未満のときは対象外となります。)
立替払の額は年齢によって変わり、未払賃金総額の8割(限度あり)が支払われます。
退職日における年齢 |
未払賃金総額の限度額 |
立替払の上限額 |
45歳以上 |
370万円 |
370万円×0.8 296万円 |
30歳以上45歳未満 |
220万円 |
220万円×0.8 176万円 |
30歳未満 |
110万円 |
110万円×0.8 88万円 |
教育訓練給付金
海外療養費
海外療養費制度は、海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合、申請により一部医療費の払い戻しを受けられる制度です。(ただし、海外で仕事中あるいは仕事が原因で怪我や病気をした場合はこの限りではありません。)
・給付の範囲
海外療養費の支給対象となるのは、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。そのため、美容整形など、日本国内で保険適用となっていない医療行為や薬が使用された場合は、給付の対象になりません。
また、療養(治療)を目的で海外へ渡航し診療を受けた場合は、支給対象となりません。日本で実施できない診療(治療)を行った場合でも、保険給付の対象とはなりません。
・支給金額
日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額を支給します。
日本と海外での医療体制や治療方法等が異なるため、海外で支払った総額から自己負担相当額を差し引いた額よりも、支給金額が大幅に少なくなることがあります。
外貨で支払われた医療費については、支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いて円に換算して支給金額が算出されます。
・手続きに必要な書類
海外療養費の申請については、以下の申請書と添付書類が必要です。海外の場合、翻訳文なども添付しなければならず、手続きは煩雑になります。
1.海外療養費支給申請書・・・ア
2.診療内容明細書(様式A)・・・イ
3.領収明細書(様式B)・・・ウ
4.現地で支払った領収書の原本
5.各添付書類の翻訳文
※翻訳文には、翻訳者が署名し、住所および電話番号を明記してください。
6.受診者の海外渡航期間がわかる書類
(パスポート・ビザ・航空チケットなど当該渡航期間がわかる部分のコピー等)
※パスポートの場合は、①氏名・顔写真と②出入国スタンプのページの両方のコピーを添付して下さい。(診療を受けた期間に渡航先に滞在していたことが分かるよう目印をつけて下さい。)
7.同意書(様式D)…オ
具体的な診療内容等について、診療等を受けた医療機関に照会するため、療養を受けた方の同意書を添付して下さい。
その他 (条件に該当する場合に必要)
高額療養費と限度額適用
医療保険制度の加入者が入院などで同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、高額療養費としてあとで払い戻されます。自己負担限度額は、収入や年齢により決められています。
70歳未満の場合:
標準報酬月額83万円以上の方→252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
標準報酬月額53万~79万円の方→167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
標準報酬月額28万~50万円の方→80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
標準報酬月額26万円以下の方→57,600円
被保険者が市区町村民税の非課税者等→35,400円
70歳以上の場合、別の基準があります。また、複数回該当した場合、多数該当扱いとして限度額基準が下がることがあります。
限度額適用認定申請
高額療養費制度は、医療費を先に支払い、あとから申請いただくことにより自己負担限度額を超えた額が払い戻されます。しかし、あとから払い戻されるとはいえ、一時的な支払いは大きな負担になります。
そのため、70歳未満の方が「限度額適用認定証」を保険証と併せて医療機関等の窓口に提示すると、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口でのお支払いが自己負担限度額までとなります。言い換えると、入院などで医療費が増えそうな場合、事前に限度額適用認定証を申請しておけば、先の自己負担限度額までしか医療費を窓口負担しなくてよくなるということです。
雇用保険の適用拡大(その2)
平成28年12⽉末までは、「⾼年齢継続被保険者」となっている場合を除き雇用保険は適用除外でした。65歳以降は恒例であるため、雇用保障の対象でないとみなされていたのでしょう。しかし、近年の労働力人口の減少や「1億総活躍社会」の流れから、平成29年1⽉1⽇以降、65歳以上の労働者についても、「⾼年齢被保険者」として雇⽤保険の適⽤の対象となりました。
・平成29年1⽉1⽇以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合
雇用保険の適用要件に該当する場合は、事業所管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」(以下「資格取得届」という。)を提出してください。
・平成28年12月末までに65歳以上の労働者を雇用し平成29年1⽉1⽇以降も継続して雇⽤している場合
雇用保険の適用要件に該当する場合は、平成29年1⽉1日より雇用保険の適用対象となります。事業所管轄のハローワークに「資格取得届」を提出してください。
・平成28年12⽉末時点で⾼年齢継続被保険者である労働者を平成29年1⽉1⽇以降も継続して雇用している場合、ハローワークへの届出は不要です(⾃動的に⾼年齢被保険者に被保険者区分が変更されます。)。
高年齢継続被保険者とは、65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されている被保険者です。
雇用保険の適用条件とは、①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、②31⽇以上の雇⽤⾒込みがあること、の二つです。
高年齢者の活用の場を企業として今後ますます考えていかなければなりません。
労災保険の特別加入
労災保険は、本来、労働者つまり「雇われている人」の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度ですが、中小事業主や自営業主など労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の人には特別に任意加入が認められています。これが、「特別加入制度」です。
特別加入の対象としてイメージしやすいのは、例えば小規模の建設業などでしょう。社長自身が現場に入って作業をしている場合、事故のリスクがあるため特別に保護を受けることを選択できるというわけです。
この特別加入制度は、労働保険事務組合に事務委託をしている場合に利用することができます。
特別加入制度は以下4種類に分けられます。
⑴中小事業主の特別加入 (第1種特別加入)
中小事業主とは、労働者を常時使用する事業主及び、労働者以外で当該事業に従事する方(業務執行権を有する役員、家族従事者など)をいいます。
⑵一人親方の特別加入(第2種特別加入)
一人親方とは、労働者を使用しないで事業を行うことを状態とする方、その他の自営業者及びその事業に従事する方をいいます。
⑶特定作業従事者の特別加入(第2種特別加入) 特定作業従事者とは、「特定農作業従事者」「指定農業機械作業従事者」「国又は地方公共団体が 実施する訓練従事者」「家内労働者及びその補助者」「労働組合等の常勤役員」「介護作業従事者」の 6種類の作業に従事する方のことをいいます。
⑷)海外派遣者の特別加入(第3種特別加入)
海外派遣者とは、日本国内で行われる事業(建設の事業などは除きます)から派遣されて、海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業等海外で行われる事業に従事する労働者のことを言います。
加入者の範囲、加入要件、加入手続き、加入時健康診断、業務上外の認定基準(保険給付の対象となる災害の範囲)などそれぞれの条件がありますので、当てはまるものをよく理解し加入することが良いでしょう。
傷病補償年金とは
傷病補償年金とは、労働者が業務上による負傷や疾病で、療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治らず、厚生労働省が定める傷病等級1級から3級に該当する場合に支給される保険給付の事を言います。また労働者が、出勤中に負傷した場合は傷病年金が支払われます。
傷病補償年金の額は、傷病の状態によって以下のようになっています。
-
第1級 給付基礎日数の313日分
-
第2級 給付基礎日額の277日分
-
第3級 給付基礎日額の245日分
傷病補償年金の受給権者には、特別支給金である傷病特別給付金と、ボーナス特別支給金である傷病特別年金も支給されます。
傷病特別支給金
傷病補償年金(労働災害で支給)又は傷病年金(通勤災害で支給)の受給権者に対して支給される一時金です。
傷病特別年金
傷病補償年金又は傷病年金の受給権者に対して支給される年金です。
給付金額は、算定基礎日額を用います。
傷病(補償)年金の手続について
手続きについては、労働基準監督署の権限によって支給・不支給が決定されるため、特にありませんが、療養開始から1年6ヶ月を過ぎても、傷病が治っていないときは「傷病の状況等に関する届」を管轄の労働基準監督署に届出る必要があります。
また、療養開始後1年6か月を経過しても傷病(補償)年金の支給要件を満たしていない場合は、毎年1月分の休業(補償)給付を請求する際に、傷病の状態等に関する報告書(様式第16号の11)をあわせて提出する必要があります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制
・労働基準法の原則の不都合
労働基準法において、「1日8時間、1週間40時間」という法定労働時間を厳格に適用すると営業上支障をきたす場合があります。例えば旅館業や飲食店などの接客商売では、予約状況に応じて労働時間を変動させた方が都合が良いでしょう。そんな場合を想定している仕組みが「1週間単位の非定型的変形労働時間制」です。
忙しい日にはある程度長く働く代わりに比較的忙しくない日は休日とする労働時間を短くすることで、労働者にとっては、メリハリのある勤務ができ、経営者にとっては割増賃金の削減ができるといった効果を得ることが期待されます。
・対象業種
対象となる事業は小売業・旅館・料理店・飲食店で、常時使用する労働者数が30人未満の事業であること。「30人未満」とは常態として30人未満の労働者を使用しているという意味であり、時として30人以上となる場合は除かれます。
・労使協定が必要
労使協定において、1週間の所定労働時間として40時間以内の時間を定めることを要件とし、その労使協定を所轄の労働基準監督署に届け出ることとします。
また、各日の労働時間は(1週40時間の範囲内で)1日10時間を限度とします。「1日10時間」とは事前通知によって労働させることができる時間の限度であり、時間外労働をさせる場合には、別途36協定を締結することが必要となってきます。
・各日の労働時間はいつ決めるか
各日の労働時間については、その前週末までに書面で通知します。つまり1週間を暦週で区切ってる場合、その1週間がはじまる前日、遅くとも前の週の土曜日までにその週の各日の労働時間を定めて、労働者への通知が必要となります。
在宅勤務のみなし労働時間
在宅勤務者は、プライベートな場所である家で仕事をするわけですから、労働時間を明確に区分する事が難しいでしょう。そんな時には「みなし労働時間制」による労務管理が適しているかもしれません。
労働基準法
法律では次のようにされています。
労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときには、所定労働時間労働したものとみなされます(労基法38条の2第1項)。ただし、その業務を遂行するためには所定労働時間を超えて労働することが通常必要になる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされることになります(同項但書)。
かつては営業や外回りの社員に対して適用されてきましたが、インターネット・スマートホンが普及した今では営業社員の労働時間を「算定し難い」場合ばかりでもなくなってきました。
みなし制の適用要件
①事業場の外、つまり会社でない場所で労働がなされることです。労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし計算がなされます(昭63.3.14基発150号)。
②労働時間を算定しがたいことが第二の要件となります。労働時間を算定しがたいかどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより判断されます。行政解釈によれば、
a.業務を行うグループの中に時間管理者が含まれる場合
b.通信手段を用いて随時使用者の指示を受ける場合
c.訪問先や帰社時刻などにつき具体的な指示を受けてその指示どおりに業務を行い、その後事業場に戻る場合
会社の時間管理が及ばないとは言えないという事です。
在宅勤務については、前述のbに該当するか否かという点がポイントでしょう。在宅勤務のメリットは「子育てや家事などプライベートの用事と並行できる」ことですから、時間管理を厳格に行いすぎると在宅の良さを消してしまいます。労働量を計測して、ふさわしい労働時間を「みなし労働時間」として規定する事も一つの方法だと思います。
産前産後休業の保険料免除制度
産前産後休業保険料免除制度とは、出産前後の休業期間の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除される制度を言います。
今までも育児休業中の保険料免除はありましたが、それに加えて出産前後の期間についても会社、本人共に社会保険料が免除される制度が始まりました。以下制度について詳しく解説します。
産前産後休業期間
法律上、産前産後休業期間は以下の通りとなります。
・単胎妊娠の場合は、出産日以前42日(実際に出産した日が予定日を過ぎていた場合は、出産予定日以前42日)から、出産日後56日
・多胎妊娠の場合は出産日以前98日(実際の出産日が予定日を過ぎていた場合は、出産予定日以前98日)から、出産日後56日
育児休業期間
ちなみに、育児休業期間はこの「産後休業」が終わる日の翌日からスタートし、原則として子供が1歳まで(保育園には入れない、またはその他の事情により延長する事が可能)です。
免除期間・申し出期間
産前産後休業保険料免除は「産前休業が始まった日の属する月」から「産後休業の最終日の翌日が属する月の前月」までとなります。その期間中、申請により「会社負担分」「本人天引き分」がいずれも免除となります。なお、この申出は、産前産後休業をしている間に行わなければなりません。
免除の効果
免除された期間については、従前の標準報酬月額で保険料を納めたことと同じように取り扱われます。具体的にいうと、免除期間中も被保険者資格に変更はなく、将来、年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。
産前産後休業保険料免除制度は自動的に免除処理が行われるわけではありません。免除を受けるためには被保険者自身が事業所へ免除のを受けるための申し出を行う必要があります。
会社から、免除制度がということを産休前の被保険者に伝え、手続きをリードしてあげましょう。
年金の受給資格期間
平成29年8月1日より、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律(年金機能強化法)」が開始され、老齢年金の受給資格期間が25年から10年に短縮されました。この法改正により、今まで「加入期間が足りないから」という理由で年金の受給を諦めていた人の中から、新たに受給資格を得る者が出ることになります。
受給資格期間とは
年金の受給資格期間とは「保険料納付済期間」「保険料免除期間」「合算対象期間」の合計期間を指します。簡単な言葉で言い換えると「①保険料を納めた期間、そして②保険料を経済的理由などから納められないことを届出して免除された期間、そして③年金が任意加入任意加入でよかった人が加入しなかった期間などを足した合計の期間」ということになります。
25年から10年への短縮がもたらすもの
受給資格期間が25年だとすると、極端な話保険料の納付期間が24年と11か月以下の人は、受給年齢に達していても年金を原則1円たりとも受け取れず、今まで支払ってきた保険料は全て掛け捨てになっていました。
年金受給資格者期間が短縮されることで、今までより年金を受け取れる国民が増え、貧困から逃れることができると言われています。月に使えるお金の量が増えると、何かしら経済活動が行われるため、その分経済効果も期待することができます。
滞納防止の意味もある
期間が25年であった時は、「払ってもどうせ25年に足りないから無駄」と保険料を滞納する方がいたのに対して、10年に短縮することによってより多くの方が保険料を支払うようになることも期待されています。
対象になりそうな労働者を雇用している場合は、会社側としても保険料納付を促すことがオススメです。
再就職手当
「再就職手当」とは雇用保険の失業等給付の就職促進給付の1つです。
失業中の方により早く再就職してもらえるように作られた制度で、失業手当の所定給付日数を残した状態で再就職した場合でも、ある一定の条件を満たしていれば、残りの失業手当の一部が再就職手当として支給されます。
また、再職手当にはいくつかの条件があります。
例えとして
・ 待機期間(7日間)を終了している。
・ 受給資格が決定した後に再就職が決定した。
・ 所定給付日数が残り1/3以上ある。
・ 再就職先で雇用保険に加入し、1年以上の雇用が見込める。
・ 自己都合退職などで給付制限がある場合には、待機満了後の1ヶ月については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介業者の紹介による就職であること。(給付制限期間を1ヶ月経過していれば、ハローワーク等以外の紹介による就職でも大丈夫)
・ 再就職の日前の3年間において再就職手当をもらっていないこと
などがあり、この他、すべての条件を満たしていれば再就職手当を受給できる可能性が高いようです。
※もちろん再就職手当を受け取るのは会社ではなく再就職された方です。
再就職手当が受給できる可能性がでれば、再就職者はいくつかの書類を提出することになるのですが、その中に再就職手当支給申請書と再就職手当調査書があり、その2つは、事業者も記入し捺印する欄があります。
再就職者を雇用した会社はその書類の記入や雇用保険への加入をしてください。
失業時の給付が手厚くなる条件
雇用保険の被保険者が退職した時、次の職を見つけるまでのつなぎとして「基本手当」、いわゆる失業保険が給付されます。
この基本手当は、失業者の状況によって給付の日数に差がつけられています。別の言い方をすると、手厚い保護が必要な人に対して多くの給付を、そうでない人に少ない給付をするように設計されています。
中でも、辞めた理由が「本人の責任とはいえず保護が必要な」人のことを「特定受給資格者」として手厚い保護をすることになっています。
特定受給資格者の種類は以下の通りです。なお、以下の退職理由でない者に対して事実と違う理由を書いて特定受給資格者とする行為は違法であり、会社がその違法行為に関与した場合は手当の返還やペナルティーの罰金の適用もあり得ます。
「倒産」等により離職した者
(1) 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等) に伴い離職した者
(2) 事業所において大量雇用変動の場合 (1か月に30人以上の離職を予定) の届出が されたため離職した者(※)及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が 離職したため離職した者
(3) 事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
(4) 事業所の移転により、 通勤することが困難となったため離職した者
「解雇」等により離職した者
(1) 解雇 (自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
(2) 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
(3) 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者
(4) 賃金が、 当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した (又は低下することとなった) ため離職した者 (当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
(5) 離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
(6) 事業主が法令に違反し、妊娠中若しくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度の利用の申出をし、若しくは利用をしたこと等を理由として不利益な取扱いをしたため離職した者
(7) 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行って いないため離職した者
(8) 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上 引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないことと なったことにより離職した者
(9) 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(8)に該当する場合を除く。)
(10) 上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者
(11) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者 (従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」 等に応募して離職した場合は、 これに該当しない。)
(12) 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
(13) 事業所の業務が法令に違反したため離職した者
ストレスチェックの 助成金
政府が社員へのストレスチェックを義務化したことに合わせて、一定規模以下の企業のストレスチェック実施に関する助成金が創設されています。
1、助成金の概要
派遣労働者を含めて従業員数 50 人未満の事業場が、ストレスチェックを実施し、また、産業医からストレスチェック後の面接指導等の活動の提供を受けた場合に、費用の助成を受けられるもの
2、助成金を受けるための要件
□ 1 労働保険の適用事業場であること。
□ 2 常時使用する従業員が派遣労働者を含めて50人未満があること。
□ 3 ストレスチェックの実施者が決まっていること。
□ 4 事業者が産業医資格を持った医師と契約し、ストレスチェックに係る医師による活動の全部又は一部を行わせること。
□ 5 ストレスチェックの実施及び面接指導等を行う者は、自社の使用者・労働者以外の者であること。
3、必要な活動
(1) ストレスチェック 年1回のストレスチェック
(2) ストレスチェックに係る医師による活動
ストレスチェックに係る医師による活動について、実施回数分(上限3回)の費用が助成されます。
【ストレスチェックに係る医師による活動とは】
産業医の資格を持った医師が
・ストレスチェック実施後に面接指導を実施すること
・面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること
4、助成額
次の費用が助成されます。
ストレスチェックの実施→1従業員につき500円
ストレスチェックにかかる医師による活動→1事業場あたり1回の活動につき 21,500 円(上限3回)
※500 円と 21,500 円はそれぞれの上限額ですので、実費額が上限額を下回る 場合は実費額が支給されます。
雇用保険の基本手当日額
雇用保険の被保険者が退職した場合、一定の条件を満たせば基本手当(いわゆる失業保険)を受給することができます。この基本手当ですが、辞める直前6ヶ月の給与を平均した額を基に決定するのですが、世間の給与水準を見ながら毎年8月に改定されるルールになっています。
今回も、平成 29 年 8 月 1 日から賃金日額・基本手当日額が変更となりました。
具体的には、賃金日額について年齢ごとに「上限額と下限額」を設定しており、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の 増減により、毎年8月1日にその額を変更します。今回は、平成 28 年度の平均定期給与額が前年比で約 0.4%増加したことから、上限額・下限額ともに引き上げになります。
これに伴い、基本手当日額の算定基準が変わり、支給額が増額になる場合があります。対象になる方には、平成 29 年8月2日以降の認定日にお返しする受給資格者証に新「基本手当日額」を印字して、お知らせします。
◆年齢区分に応じた賃金日額・基本手当日額の上限額
賃金日額の上限額(円)
29 歳以下 12,740→13,420
30~44 歳 14,150→14,910
45~59 歳 15,550→16,410
60~64 歳 14,860→15,650
基本手当日額の上限額(円)
29 歳以下 6,370→6,710(+340)
30~44 歳 7,075→7,455(+380)
45~59 歳 7,775→8,205(+430)
60~64 歳 6,687→7,042(+355)
在宅勤務中の労災
在宅勤務をしている社員が怪我をしたら、労災の適用になるのでしょうか。
例えば、仕事のファイルを取りに行く時に転んで怪我をした場合、労災の対象として認められるかがきになるところです。
回答
在宅勤務中であっても労働者である以上、労災保険の補償対象となります。
ただし、私的行為との境界線が見えにくいので、オンオフがわかりやすい管理をした方が良いでしょう。
解説
労災保険法の適用に関しては、 「業務が原因である災害については、 業務上の災害として保険給付の対象となる」 とされる一方で、 「自宅における私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはならない」とガイドラインで定められています。 私的な行為をしている場合は労災対象外になってしまうので、仕事中の事故であることを証明できるように準備が必要ということになります。
例えば、時間的に「仕事時間」と「指摘時間」を区別するよう管理すること。これは日報やタイムシートなどで作業時間の報告管理をするようにする必要があります。
また、場所的な管理も場合によっては必要かもしれません。「自宅以外の作業を禁止する」というルールがあれば、自宅作業の業務遂行性を証明しやすくなります。
予想される労災
在宅勤務をしていて起こりうる労災は次のようなものがあります。
・文房具で手を切る
・転倒する
・郵便物を出しに行く時に交通事故にあう
・座りっぱなしで腰痛になる
・パソコンの画面を見続けることによる目の疲労
このうち、腰痛や目の疲労については業務との因果関係を証明するのが簡単でありません。
高額な医療費がかかった時にもらえる給付
高額な医療費を支払ったときは高額療養費で払い戻しが受けられます。
健康保険に加入している人は、高額な医療費に対する払い戻しを受けることができます。
この制度を高額療養費制度と言います。
仕組み
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。70歳未満の方で、医療費が高額になることが事前にわかっている場合には、「限度額適用認定証」を提示する方法が便利です。
自己負担限度額とは
自己負担限度額は、年齢および所得状況等により設定されています。
つまり、同じ医療費がかかったとしても所得によって負担感が違うため、所得が高い人は、自己負担限度額も高く、所得が低いまたは高齢の人は自己負担限度額も低く設定してあるというわけです。
70歳未満の方の区分
平成27年1月診療分から
①区分ア (標準報酬月額83万円以上の方)(報酬月額81万円以上の方) → 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
②区分イ (標準報酬月額53万円~79万円の方)(報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方)→ 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
③区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方→80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
④区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)(報酬月額27万円未満の方)→ 57,600円 44,400円
⑤区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等) 35,400円
注)「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または「区分イ」の該当となります。
注)高額療養費に何度も該当した場合、多数該当の特例として限度額が下がります。
払い戻しについて
払い戻しは、医療機関等から提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行いますので、診療月から3ヵ月以上かかります。払い戻しまで時間を要するため、医療費の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付する「高額医療費貸付制度」もあります。
雇用保険の再就職手当
雇用保険に一定期間以上加入していた者がハローワークで失業の認定を受けた時、その人は基本手当、いわゆる「失業保険」を受給する権利があります。
この基本手当は、辞める前の給与を基準に単価が決まり、90日ぶん(離職状況によっては日数が異なる)支給されますが、その権利を使い切る前に再就職した場合に、ご褒美として一時金が支給されます。その一時金を「再就職手当」と言います。
再就職手当は、基本手当の受給資格がある方が安定した職業に就いた場合(雇用保険の被保険者となる場合や、事業主となって、雇用保険の被保険者を雇用する場合など)に基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。支給額は、所定給付日数の支給残日数×給付率×基本手当日額((注意3) 一定の上限あり)となります。
給付率については以下のとおりとなります。
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の方は、所定給付日数の支給残日数×70%(注意1)×基本手当日額((注意3)一定の上限あり)。
・基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の方は、所定給付日数の支給残日数×60%(注意2)×基本手当日額((注意3)一定の上限あり)。
タイミングによっては「ハローワークなどを経由した再就職」出ないと対象にならないことがあります。
労災保険のメリット制
自動車保険では、事故により等級が変化することがあります。安全運転でゴールド免許の優良ドライバーは事故を起こす可能性が少ないので、保険料を安く抑えるご褒美があるということです。
一方、労災保険においては、事業の種類ごとに災害率等に応じて保険料率が定められていますが、実際には事業の種類が同一であっても①作業工程、②機械設備あるいは③作業環境の良否、④事業主の災害防止努力の如何等により事業ごとの災害率に差があるため、事業主負担の公平性の観点から、さらに、事業主の災害防止努力をより一層促進する観点から、当該事業の災害の多い少ないなどの状況に応じ、労災保険率又は労災保険料を上げたり下げたりする制度があります。これを「労災保険のメリット制」と言います。
継続事業のメリット制
メリット制が適用される会社とは
連続する三保険年度中の各保険年度において、次の(1)~(3)の要件のいずれかを満たしている事業であって、当該連続する三保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日(以下「基準となる3月31日」という。)現在において、労災保険に係る保険関係が成立した後3年以上経過している事業についてメリット制の適用がある。
(1). 常時100人以上の労働者を使用する事業
(2). 常時20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、その使用労働者数に、事業の種類ごとに定められている労災保険率から非業務災害率(通災及び二次健診給付に係る率:0.9厘)を減じた率を乗じて得た数が0.4以上であるもの
(3). 一括有期事業における建設の事業及び立木の伐採の事業であって、確定保険料の額が100万円以上であるもの
メリット収支率
労災保険率を上げ下げする基準は、基準となる3月31日において当該連続する三保険年度の間における当該事業の一般保険料の額から非業務災害率に応ずる部分の額を減じた額に調整率を乗じて得た額と、業務災害に係る保険給付及び特別支給金の額との割合により算出される収支率(メリット収支率)によります。
メリット収支率
(当該連続する三保険年度間における業務災害に対して支払われた保険給付及び特別支給金の額)÷(当該連続する三保険年度間における保険料額(非業務災害分を除く)
つまり、払った保険料と、労災事故によりかかった費用を比べるわけです。
効果
収支率の結果により、保険料率が4割の範囲で上下します。
建設業の労災保険
建設業の労災保険料を決める時には、一般の事業と異なる取り扱いをします。
ルール1:継続一括と単独労災
労災保険における単独有期事業と一括有期事業の違い
建設業の労災は、現場ごとにかかります。マンションAの工事現場と河川B
の土木工事現場は別々に保険料を計算して納付します。
一括有期事業とは、有期事業のうち労災保険料の概算見込額が160万円(または確定保険料100万円)未満で、かつ、請負金額1億9千万円未満のものをいいます。この場合、下記の要件を満たせば、それらの工事を取りまとめて一つの保険関係で処理することができます。つまり、小規模の工事現場を継続的に複数行う場合、労災保険料は年度ごとにまとめて申告することができます。
一方、単独有期事業とは、一括有期事業に該当しない有期事業をいい、工事ごとに工事現場の所在地を管轄する労働基準監督署において保険関係を成立させ、工事終了の都度、保険料の精算を行います。
ルール2:建設工事の労災保険料の計算方法
建設業における労災保険料の計算方法は、一般事業とは異なり、下記の計算式で算出することになっています。
労働保険料=請負金額×労務費率×労災保険率(注1)
労務比率とは、「請負金額の何%が人件費か」という比率です。労災保険料率は、危険度の高い現場ほど高く設定されています。
健康保険の給付
健康保険というと一般的には病院にかかった際に健康保険証を持っていくと3割負担で受けられるだけものといったイメージが強く、病院に縁がない方ですと高い保険料を払っているのがもったいないと感じていらっしゃるかと思います。
健康保険は「保険」というだけに、いざという時に役立つ給付もたくさんあります。今回はその中から傷病手当金をご紹介します。
傷病手当金は生活保障のための給付金で、被保険者が業務外の病気やケガでお休みをして、賃金が支給されなかった場合に支給されるものです。
会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。
1日当たりの支給額の計算方法は下記の通りです。
支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)
*支給開始日の以前の健康保険加入期間が12ヵ月に満たない場合は別途算出方法あり。
支給期間は支給開始日から1年6カ月の範囲です。
つまり、簡単に言ってしまうと月給30万円の人が病気により長期休暇をしてお給料をもらえない場合は月々20万円の傷病手当金が最長で1年6カ月間も給付されることになります。(支給要件に該当した場合)
民間の生命保険等でも給与額を保障してくれる商品も出ているようですが、そのような保険に加入していなくても健康保険給付で生活保障があるのはとても助かりますね。
尚、傷病手当金は原則として申請を行わないと給付されません。該当した場合には忘れずに給付手続きを行いましょう。
注)被扶養者の方及び国民健康保険加入の場合、傷病手当金の給付はありません。
ユースエール認定制度
ユースエール認定制度の認定基準が平成29年4月1日から変更になりました。
ユースエール認定制度とは若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。
「労働時間」、「離職率」、「有給休暇」の3つの基準が変更予定です。
◎労働時間
変更前(旧基準)⇒直近事業年度の①正社員の所定外労働時間月平均が20時間以下又は➁正社員のうち、週平均の労働時間が60時間以上の者の割合が5%以下
変更後(新基準)⇒直近事業年度の①正社員の所定外労働時間月平均が20時間以下かつ➁月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員ゼロ
◎離職率
変更前(旧基準)⇒直近3事業年度の正社員の新規学卒等採用者の離職率が20%以下
変更後(新基準)⇒直近3事業年度の正社員の新規学卒等採用者の離職率が20%以下
ただし、採用者が3人又は4人の場合は、離職者数が1人以下
◎有給休暇
変更前(旧基準)⇒直近の事業年度の正社員の有給休暇の①平均取得率が70%以上又は②平均取得日数が10日以上
変更後(新基準)⇒直近の事業年度の正社員の有給休暇の①平均取得率が70%以上又は②平均取得日数が10日以上(有給休暇に準ずる休暇として職業安定局長が定めるものを含み、その日数は労働者1人当たり5日が上限)
今回の変更では労働時間の基準において特に厳しくなっておりますが、その背景には大手広告代理店の社員が過労自した件の影響もあるようです。
健康保険の被扶養者
健康保険における被扶養者といえば、妻子や父母などが想像されますが、それ以外にも扶養になれる対象者はいます。
以下、健康保険被扶養者の要件について整理します。
被扶養者
- 被保険者の直系尊属(父母、祖父母など)
- 配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上婚姻関係と同様の人を含む)
- 子、孫、弟妹、兄姉で、主として被保険者に生計を維持されている人
※「主として被保険者に生計を維持されている」とは、被保険者の収入により、その人の暮らしが成り立っていることをいい、 かならずしも、被保険者といっしょに生活をしていなくてもかまいません。
- 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人 ※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。
生計維持とは
「主として被保険者に生計を維持されている」、「主として被保険者の収入により生計を維持されている」状態とは、以下の基準により判断をします。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
労災保険はどこまで使えるか?
休憩時間、外で過ごす従業員もたくさんいると思います。そんな時に怪我をしてしまったら労災保険の適用されるのでしょうか。
休憩中の外出時について
休憩時間については労働基準法第34条第3項により、労働者が自由に行動することが許されており、その間の個々の行為自体は労働者の私的行為といえます。
そのため、休憩時間中に外出して怪我をしたとしても業務との因果関係が認められず、労災保険給付は受けられないと考えられます。
退勤後について
では、退勤後についてはどうでしょうか。退勤後はそれが通勤中とみなされるかがポイントです。
終業後直ちに住居へ向かう場合は問題ありませんが、逸脱・中断の場合、労災保険(通勤災害)の対象とならない可能性があります。
また、通勤と関連のない私的行為については、誰もが行うような「ささいな行為」を除き、一般には「逸脱・中断」とみなされ、逸脱・中断の時点から通勤として取り扱わないことになります。
ささいな行為とは、経路の近くにある公衆便所を利用する、経路上の店でタバコ、新聞等を購入する等をいい、スーパーで日用品を購入する行為は、「ささいな行為」とはいえず、通勤行為の中断と判断され、中断後は一切通勤災害とは認められません。
ただし、労災保険法第7条第3項ただし書きにおいて、(通勤の経路の)「逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りではない」と規定されており、日用品の購入その他これに準ずる行為はこれに該当することとされていますので、その後通常の通勤経路に戻った場合には、通勤として取り扱われます。
従業員が事業所の外で怪我をし、労災が適用されるかの判断に迷った場合は、労働基準監督署や社労士に相談するようにしましょう。
高額療養費と限度額認定
病院に長期入院した場合、治療が長引く場合に医療費の自己負担が高額になることがあります。その場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分の払い戻しが受けられる制度が健康保険上にあります。
自己負担額について
自己負担限度額は、年齢および所得状況により以下のように設定されています。ここでは70歳未満の限度額について紹介します。
1、所得区分(標準報酬月額83万以上)
自己負担額:252600円+(総医療費-842000円)×1%
2、所得区分(標準報酬月額53万~79万円)
自己負担額:167400円+(総医療費-558000円)×1%
3、所得区分(標準報酬月額28万~50万)
自己負担額:80100円+(総医療費-267000円)×1%
4、所得区分(標準報酬月額26万以下)
自己負担額:57600円
5、所得区分(低所得者)、被保険者が市区町村民税の非課税者等
自己負担額:35400円
例えば、標準報酬月額36万円の方で医療費が60万円かかった場合
自己負担額:80100円+(600000円-267000円)×1%=83430円となります。
限度額認定について
70歳未満の方で、あらかじめ長期入院により医療費が高額になることが分かっている場合、一医療機関での窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。
ただし、この制度を利用するには、事前に「健康保険限度額適用認定申請書」を提出し、「健康保険限度額適用認定証」の交付を受けたうえで窓口にて提示する必要があります。
高額療養費と限度額認定は、医療費の自己負担を一定に抑えてくれる同じ趣旨の制度です。ただ、限度額認定が窓口での支払いを自己負担限度額に抑えられるのに対し、高額療養費は、自己負担限度額の超過分を後から取り戻す申請をしなければならないため、一時的にでも費用負担が大きいです。
また、高額療養費の審査には3ヵ月以上かかるので払い戻しまでに時間もかかります。従業員から長期入院することを事前に聞いている場合は、「限度額認定」が受けられるよう便宜を図ってあげられると良いでしょう。
確定拠出年金
「確定拠出年金」が話題となっています。多くの金融機関でも商品として取り扱いを始めているようです。これは平成29年の1月から法改正が行われ、確定拠出年金に加入できる対象者の範囲が広がるからなのですが、そもそも中小企業では確定拠出年金制度そのものに馴染みがなく、そのメリットが理解されていません。
公的年金との比較
確定拠出年金とは、強制加入である国民年金・厚生年金と比較するとわかりやすいでしょう。国民年金・厚生年金は世代間の助け合いの仕組みで、「今のお年寄りなどの年金に充てるため、現役世代が大きな貯金箱に共同でお金を入れている」構造になっています。つまり、誰がいくらお金を入れたかは記録されているものの、個人ごとにお金が積み立てられているわけではありません。その大きな貯金箱に入った莫大な資金は、政府機関が運用方針を決めて運用していますので、個別の被保険者はそのお金をどのように運用するかを決めることができません。
一方確定拠出年金は、「掛けている本人が掛け金額及び運用方法を決めることができる年金」です。掛け金は個人ごとに明確に区分して積み立てられ、本人の運用方法を選択できます。つまり、各個人ごとに貯金箱を持つ構造になっているわけです。本人の運用次第で将来の年金給付が増えたり減ったりします。
現行の法律では、老後などのための資産形成は「公的年金は強制加入させ、その上で、企業または個人の任意で確定拠出型年金などを上乗せして掛ける」という構造になっています。
確定拠出年金のメリット
確定拠出年金(特に個人型)の大きなメリットは「税制面の優遇措置」でしょう。掛け金として拠出した金額が「全額」所得控除となり、課税所得が減額されます。民間の生命保険などの保険料は一部しか損金扱いにならないことを考えると税制面でのメリットは小さくありません。また、運用に対する利益に対しても非課税となり、給付を受ける際にも、年金として受ける場合は公的年金等控除が適用され、一時金として受ける場合は、退職所得として税制上の優遇措置が取られています。
確定拠出年金のデメリット
逆にデメリットは、「原則として60歳までお金を引き出すことができない」ことでしょう。流動性が低くなるため、本当に余剰なお金がある場合に確定拠出年金を検討したほうが良いかもしれません。
育児休業給付
育児休業給付は、文字通り育児休業を取った人に対する給付です。この給付は雇用保険の仕組みから行われますので、当然に一定の要件を満たした雇用保険の被保険者に対して支給されます。雇用保険加入をしていない役員やパートアルバイトは対象外となります。
前提
被保険者が1歳又は1歳2か月(注意1)(支給対象期間の延長に該当する場合は1歳6か月)未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に、休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある完全月(過去に基本手当の受給資格決定を受けたことがある方については、その後のものに限ります。)が12か月以上あれば、受給資格の確認を受けることができます。
つまり、実質的な雇用保険の加入期間が1年あれば、育児休業給付の対象となりえます。
月ごとの支給条件
育児休業給付金は、育児休業期間中の各1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないことを条件とします。つまり、ちゃんと休んでいる実績をもとに支給されるということです。
支給額
育児休業給付金の支給額は、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額となっています。
申請は原則として2か月に1度、所轄のハローワークに対して行います。
育児休業給付金は所定の用紙に①会社から給与が出ていないこと②休んでいることを会社が証明し、本人名義で申請します。ただし実態としては本人から委任を受けて会社がハローワーク申請をすることが多いでしょう。
退職後の健康保険給付
健康保険の保険給付は、原則として被保険者に対してのみ行われますが、退職などにより被保険者でなくなった(資格喪失)後においても、一定の条件のもとに保険給付が行われます。
1、継続給付
資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者であった人は、資格を喪失した際に現に受けていた「傷病手当金」及び「出産手当金」を引き続き受けることができます。つまり、被保険者でいる時にもらっていた給付は、同じ事情で働けないならば辞めた後ももらえるということです。
傷病手当金は同一傷病について支給開始から1年6か月間、出産手当金は出産前後合わせて原則98日間の範囲内で、支給を受けることができることになっていますが、この期間から被保険者である間にすでに支給を受けた残りの期間について受けることができます。
具体的には、在籍中に私傷病にかかり休職し、傷病手当金を受給していたが、休職期間満了により退職となった場合などがこれに該当します。
2、資格を喪失した後に保険給付を受ける事由が生じた場合
A 死亡に関する給付
次の場合は、埋葬料か埋葬費が支給されます。
・1の継続給付を受けている人が死亡したとき
・継続給付に該当する人が継続給付を受けなくなってから3か月以内に死亡したとき
・被保険者が資格を喪失して3か月以内に死亡したとき
B 出産に関する給付
資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上被保険者であった人が資格喪失の日後、6か月以内に出産をしたときは、被保険者として受けられる出産育児一時金が支給されます。
退職後の傷病手当金
協会けんぽまたは組合健保などの被保険者である会社員が病気やケガで働けなくなった場合に支給されるのが「傷病手当金」です。業務上の怪我や病気が労災保険でカバーされることに対し、傷病手当金は私傷病による休業についての所得保障を目的にしています。
要件:
傷病手当金の要件は以下の通りです。
①病気やケガで仕事をすることができないこと(医師の証明が必要)
②病気、ケガの療養のために、4日以上欠勤していること。
③欠勤して4日目以降の給料を受けていないこと。
この要件を満たした場合、①、②、③を証明する書面などを添付して保険者に傷病手当金を申請することで受給できます。傷病手当金は同一の傷病について最大で1年半の間支給されます。
傷病手当金を申請するタイミング:
傷病手当金を申請する時、申請は数か月分を一度に申請しても大丈夫でが、毎月の所得保障であることを考えると1ヶ月毎に申請するとよいでしょう。
資格喪失後の継続給付:
傷病手当金を受給している途中に退職することになった場合であっても、場合によっては引き続き傷病手当を受け取ることは可能です。これを傷病手当金の継続給付といいます。
資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態(傷病手当金受給要件を満たしている)であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。ただし、一旦仕事に就くことができる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。
退職後の申請は、「給与をもらっていないこと」を証明する必要がありませんから、会社を通さず直接保険者に申請書を提出することになります。
保険証が届く前に病院にかかるとき
病気やケガで医者にかかるときには、窓口で健康保険証を提示する必要があります。
しかし、国民健康保険や健康保険などの公的医療保険には加入していても、さまざまな事情から保険証が手元にない場合があります。この場合はどのようにすればよいでしょうか。
保険証がない場合:
保険証がない場合とは以下のような場合があります。
1、単に保険証を忘れた、失くした
2、旅先で保険証を持たずに診療を受けた
3、就職したばかりで保険証がまだ交付・発行されていない(保険証が届かない)、
これらの場合であっても、被保険者であれば保険を使って医療を受けることができます。ただし、原則としてはいったん全額を自費で支払う必要があります。その上で、後ほど払い戻しを受けることになります。
手続きの流れ:
流れとしては以下のようになります。
1、医療機関の窓口に申し出る
まずは、医療機関で受診する際に、窓口に健康保険の手続き中などの事情のため、健康保険証がないことを伝えてください
2、いったん医療費を全額支払う
そして、医療機関の窓口で医療費の全額を支払います。自己負担割合が3割の人の場合、残りの7割の部分も一緒に払います。
3、療養費の支給申請手続きを行う
健康保険証が届いたら、協会けんぽ等へ「療養費支給申請書」を提出すると、全額自己負担した医療費のうち、保険者負担分が本人の口座に払い戻されます。
保険証の発行には多少時間がかかりますので、転職時期などは特に注意をしてください。
1か月単位の変形労働時間制
労働基準法では「1日8時間、1週40時間」を法定限度としてうたっています(一部週44時間が法定労働時間の場合もあります)。
週40時間を8時間で割ると「5」、つまり週40時間制は基本的に週休二日(週5日勤務)を想定していることがわかります。
ところが現実には完全週休二日でない働き方を認めたほうが都合の良い場面がたくさんあります。例えば「上旬は忙しいから週休1日、中旬は暇なので週休二日かつ1時間勤務時間を短縮する」などの柔軟性があったほうが労使双方のニーズに合うこともあるでしょう。
このように原則的な法定労働時間とは違う勤務体制をとることが法律で認められており、「変形労働時間制」と呼ばれます。
1ヶ月の単位で勤務日や勤務時間を柔軟にしたい場合は「1ヶ月単位で」変形労働時間制を採用するとよいでしょう。
変形労働時間制では、労使協定や就業規則で変形労働時間制についてうたっておいて、対象となる月の開始前までに
・休日
・日ごとの労働時間
・対象者
などを決めて運用します。
要は「特定の日や週で原則ルール(法定労働時間)を超えていても、1ヶ月単位で見ると週の平均労働時間が法定労働時間を下回っていればOK」ということです。
うまくいけば暇な時期に社員を拘束せずに済みますし、忙しい時期に残業となる時間を抑制できます。
柔軟な働き方を考えたい場合は変形労働時間制の導入を検討してはいかがでしょうか。
フレックスタイム制をわかりやすく
フレックスタイム制(労働基準法第 32 条の3)は、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1箇月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決めて、効率的に働くことができる制度です。
フレックスタイム制については、バケツもしくはプールで例えるとわかりやすいです。
原則として、1日は8時間、1週は40時間以内でなければならないと労働基準法で決まっています。容積8リットルのバケツの擦り切りいっぱいまで水(=労働時間)を注ぐことができるとイメージしてください。同様に1習慣は40リットルのドラム缶いっぱいまで入れることができます。
バケツやドラム缶から溢れた分については「残業」となるため、割増した追加の賃金=残業代を払わなければなりません。
フレックスタイム制とは、いわばこの「バケツの大きさ」を自由に決めてよいとする制度です。使うバケツの容量が6リットルだろうが10リットルだろうが構わないので、各自が自由なバケツを選んで水(=労働時間)をプールに入れていき、1ヶ月全体であるプールいっぱいまで水を入れるような仕組みです。忙しいときには10時間働いてもいいし、ヒマなときな3時間で帰ってもいい。でも1ヶ月の総労働時間は○時間になるように各自調整してください、ということですね。
このフレックスタイム制、一件自由度が高く利用しやすいように思いますが、実際にはうまく機能しているケースはそれほど多くないでしょう。国民性や経営者側の意識の特徴もあり、規則的な働き方を好むケースの方がまだ多いように思います。
高額の医療費が掛かった時に受けられる制度
重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となります。そのため家計の負担を軽減できるように、健康保険の精度には一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。
自己負担限度額とは
自己負担限度額は、所得区分によって段階的に以下のように設定されています。所得区分の他、年齢によっても自己負担限度額が細かく設定されています。
①所得区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
②所得区分イ
(標準報酬月額53万~79万円の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
③所得区分ウ
(標準報酬月額28万~50万円の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
④所得区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
57,600円
⑤所得区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円
自己負担額に算入するものとしないもの
保険外併用療養費の差額部分(高度医療にかかる差額金など)や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。
多数該当
同一世帯で1年間(診療月を含めた直近12か月)に3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、4回目からは自己負担限度額が低くなります。
健康保険限度額適用認定証
あらかじめ長期入院などにより医療費がたくさんかかることが分かっている場合、高額療養費を「現物給付化」し、一医療機関ごとの窓口での支払を自己負担限度額までにとどめることができます。この制度を利用するには、事前に全国健康保険協会の各都道府県支部に「健康保険限度額適用認定申請書」を提出し、「健康保険限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口に認定証と被保険者証を提出する必要があります。
健康保険は会社を辞めた後も続けられる?
会社を退職したとき、健康保険については、1.任意継続健康保険、2.国民健康保険、3.ご家族の健康保険(被扶養者)のいずれかに加入する手続きをする必要があります。任意継続とは、もともと加入していた健康保険制度に退職後も加入することを指します。
任意継続健康保険の要件
任意継続をするためには以下の要件があります。
(1)資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。
(2)資格喪失日から「20日以内」に申請すること。(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)
特に期限については十分に注意が必要です。
保険料
任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に基づいて決定され、保険料は原則2年間変わりません。また、扶養家族がいたとしても扶養家族の方の保険料はかかりません。
国民健康保険の保険料(税)は、前年の所得、世帯人数などに応じて決定されますので、前年の所得が多い、世帯人数が多いなどの場合には任意継続を選択したほうが保険料を抑えることができる可能性があります。
なお、任意継続の保険料は全額を自分が負担します(在職時には半額会社負担)が、標準報酬月額に上限が定められています(平成27年度は28万円となります)。例えば標準報酬が98万円の方が退職した場合でも、任意継続の保険料は28万円を基準に決められます。
給付の効果
在職中の保険証と同じように使用することができます。なお、傷病手当金および出産手当金は、任意継続の加入とは関係なく、在職中からの継続給付の要件を満たす場合に限り対象となります。
労災給付の種類
労災は、労働者の業務上の負傷、疾病、身体障害、または死亡に対して災害補償を行うことによって、労働者の保護をはかることを目的とした制度であり、通勤途上の災害もこの中に含まれます。保険加入者は事業主、保険給付を受けるのは労働者またはその遺族であり、労働者の保険料負担はありません。
療養の給付
労災が原因でケガや病気をし、病院で治療を受ける場合、治療費は原則として全額支給されます。この給付を「療養の給付」といいます。療養の給付を受けようとするときは、「療養補償給付たる療養の給付請求書」「様式第5号」を、指定病院の窓口に提出します。
ただし、療養の給付(現物給付)を行う医療機関として指定されている病院(労災指定病院といいます)以外で治療を受けた場合などは、いったん全額自己負担をしておいて、あとでかかった費用を請求します。これを療養の費用の請求といいます。
療養の費用の給付の種類
療養の費用の給付には以下の種類があります。
通常の病院の場合⇒様式7号(第16号の5)
柔道整復師から手当を受けた場合には様式7号(第16号の5)(3)を、はり師及びきゅう師、あん摩マッサージ指圧師から手当を受けた場合には様式第7号(第16号の5)(4)を、訪問看護事業者から訪問看護を受けた場合には様式第7号(第16号の5)(5)を提出します。
請求に係る時効
療養の給付は現物支給ですから問題ありませんが、療養費用の請求は、費用の支出から2年ですので、注意しておいてください。
育児のために短い時間働きたい場合。
3歳未満の子どもを育てる従業員は、育児介護休業法により所定労働時間を短縮する制度(原則として1日6時間)を利用できます。所定労働時間とは、就業規則等で定められた勤務時間のことです。
対象者:
3歳未満の子どもを育てる男女従業員
※期間を定めて雇用されている従業員も利用できます。※配偶者が専業主婦(夫)であっても利用できます。
ただし、日雇いの従業員や、そもそも1日の所定労働時間が6時間以下の従業員は対象になりません。また、勤続年数1年未満の従業員など一定の従業員については、労使協定などで対象外となることがあります。
短縮時間や利用できる期間:
短時間勤務の時間については、会社は必ず1日の所定労働時間を5時間45分~6時間 とする制度を作らなければならないとされています。それより長くても短くても(たとえば所定労働時間を5時間、7時間と定めること)法的な基準を満たしたことになりません。ただし、所定労働時間を6時間とする措置に加えて、5時間あるいは7時間とする選択肢を設け、労働者に選択させるのであれば問題ありません。
利用できる期間は子どもが3歳になるまでの間で従業員の申し出る期間となります。
社会保険適用:
社会保険の適用については、常用的使用関係にあり、労働時間と労働日数が、それぞれ一般社員の4分の3以上であるときは、原則として被保険者となります。逆に言うと、原則として一般の社員の4分の3未満であれば社会保険は加入しません。
ただし、短時間勤務者が正社員の場合は、上記とは別に、下記の事項を満たしている場合に社会保険の被保険者となる可能性があります。
ア.労働契約、就業規則、給与規程等に、短時間正社員に係る規定がある
イ.期間の定めのない労働契約が締結されている
ウ.給与規程等における時間当たりの基本給・賞与・退職金等の算定方法等が同一事業所に
雇用されるフルタイム正社員と同等で、かつ就労実態も諸規程に則している
労災の最初の3日は補償されない?
業務上の事由または通勤により怪我をして仕事が出来なくなった場合、休業の第4日目以降は労災保険から休業に対する補償(概ね給与の8割)があります。
別の言い方をすると、休業初日から3日間は労災保険から休業補償されないことになります。この3日間に関するケアについて、業務(仕事中の)災害と通勤(途中の)災害とで、取り扱いが違います。
◆業務災害の場合
休業初日から3日目については、労働基準法により「会社が」平均賃金の60%の補償をしなければなりません。
そもそも、労働基準法では労災で仕事が出来ないために賃金を受けない場合、会社が休業補償をしなければならないのですが、休業4日目からは、労災保険がその補償を行うので、3日目までは会社が支払い、4日目以降は会社からの休業補償は労災保険からされる、という関係になっています。
◆通勤災害の場合
通勤災害は労災ではないので、労働基準法上、事業主には休業に対する補償責任がありません。よって、業務災害と異なり休業初日から3日目までの休業に対する補償を事業主がする必要はありません。
ちなみに、この3日分の休業補償について所得税法上は非課税となっています(一方で、会社の都合で休ませた場合に市はらう「休業手当」については課税対象となります)。また、労働保険の年度更新をするときには賃金とはみなされません。
休業補償を支給する場合の給与計算については専門家に相談しましょう。
役員の雇用保険
会社の役員は原則として「雇われている人」ではないので雇用保険に入れません。ただし、代表でない取締役であって、同時に会社の部長職や工場長などを兼務している場合は例外的に雇用保険加入ができる場合があります。
つまり、役員という肩書になっているが実態は「雇われている」と言える場合は、引き続き雇用保険上の保護を受けることができるということです。
手続き方法
そのためには、ハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」を作成し届け出る必要があります。この際以下の書類を添付する必要があります。
1、取締役会議事録など、役員報酬額がわかるもの
2、過去3カ月分程度の賃金台帳、出勤簿(労働者としての実態があるかを確認するもの)
3、商業登記簿謄本など
実際に役員が雇用保険に入ることができるか否かの判断は、主に報酬額のバランスによります。
雇用保険加入のためには原則として「役員報酬」よりも「賃金」の方が多く支払われている必要があります。
ちなみに、雇用保険加入は「労働者としての賃金部分のみ」になります。
例えば、役員報酬20万円、賃金として50万円を支払っている場合、雇用保険料は50万円の部分に対してのみかかり、基本手当(いわゆる失業保険)などの各種給付も加入部分のみをもとに計算されます。言い換えると、役員に雇用保険をかけたい場合は、役員報酬よりも賃金を多く支払う必要があります。名目上役員にしているが実際には全額給与として支払っている場合は雇用保険加入ができます。
どんどん手厚くなる育児休業給付!
子育て中のママに対しては、雇用保険制度から「育児休業給付金」を受けることができます。
この給付は、雇用保険の「雇用継続給付」の一種で、文字通り「子育てをしやすい環境を整えて雇用を継続してもらうこと」を目的としています。
基本的な条件:
1、受給の資格
①育児休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある月(過去に基本手当の受給資格決定を受けたことがある方については、その後のものに限ります。)が12か月以上あれば、受給資格の確認を受けることができます。わかりやすく言うと、普通に1年出勤した雇用保険加入者が対象となります(1年未満の雇用期間しかなくても、前職の雇用保険加入期間を合算できることがあります)。
②実際に育児休業を取得しており、給与が8割以上支払われていないことが必要です。つまり、育児休業を取っていたとしても会社から給与が保障されている場合は給付を受けられないことがあります。
③就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)ごとに10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であることが必要です。(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)
つまり、月に11日以上働いている場合等は、「もはや育児休業をしていないとみなされる」ということです。
2、支給額
育児休業給付金の支給額は、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額となっています。
3、支給期間
原則として子が1歳になるまで支給されます。保育園に入園できないなどの事情によって延長されることがあります。
高年齢雇用継続給付を活用しましょう。
高年齢雇用継続給付とは・・・
高年齢雇用継続給付は、60歳になって給与が下がった社員に対して、下がった分のいくらかを補填する雇用保険の給付のひとつです。その名前の通り、高年齢者が引き続き働きやすい状況を整えるためにあります。
具体的には、60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。
この給付は「高年齢雇用継続基本給付金(60歳を超えて引き続き同じ会社に勤めるが給与が低下したケースの給付)」と「高年齢再就職給付金(60歳で退職して、その後別の会社に再就職したが給与が低下したケースの給付」とに分かれます。
基本的なルール:
1、対象者
①雇用保険の加入期間が5年以上の人が対象です。
②60歳以上65歳未満の間に支給されます。
2、支給額
高年齢雇用継続給付の支給額は、60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合は、各月の賃金の15%相当額となり、60歳時点の賃金の61%超75%未満に低下した場合は、その低下率に応じて、各月の賃金の15%相当額未満の額となります。(各月の賃金が一定額を超える場合は支給されません。(この額は毎年8月1日に変更されます。))
例えば、高年齢雇用継続基本給付金について、60歳時点の賃金が月額30万円であった場合、60歳以後の各月の賃金が18万円に低下したときには、60%に低下したことになりますので、1か月当たりの賃金18万円の15%に相当する額の2万7千円が支給されます。
3、支給期間
高年齢雇用継続基本給付金の支給対象期間は、被保険者が60歳に達した月から65歳に達する月までです。ただし、60歳時点において、雇用保険に加入していた期間が5年に満たない場合は、雇用保険に加入していた期間が5年となるに至った月から、この給付金の支給対象期間となります。また、高年齢再就職給付金については、60歳以後の就職した日の属する月(就職日が月の途中の場合、その翌月)から、1年又は2年を経過する日の属する月までです。(ただし65歳に達する月が限度)
中の「60歳」は「55歳」、「65歳」は「60歳」となります。
4、手続き
高年齢雇用継続給付の支給を受けるためには、原則として2か月に一度、支給申請書を提出します。
1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制とは1ヶ月を平均して1週間の労働時間が週40時間以下になっていれば、 労働時間が1日8時間、週40時間を超えても、時間外労働の扱いをしなくて済むという制度です。この制度は1ヶ月の中で繁閑に差がある場合に導入することが適しています。
○ 労使協定などに定めること
労使協定または就業規則その他これに準ずるものにより、この制度に関する規定を設ける必要があります。
この際、各日および各週の労働時間を具体的に定めておく必要があります。つまり、勤務カレンダーなどで勤務日やその日ごとの勤務時間を毎月決めなければならなりません。会社が業務の都合によって自由に労働時間を変更することはできません。
○ 時間外労働となる場合
1日または1週の法定労働時間を超えて労働させることができますが、以下の場合には時間外労働となります。
① 労使協定などにより8時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間。
② 労使協定などにより40時間を超える時間を定めた週はその時間を、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間。(①で時間外労働となる時間を除く)
③ 変形期間については、以下の式により計算される変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間。(①または②で時間外労働となる時間を除く)
→40(時間)×変形期間の暦日数/7
介護休業
家族を介護する必要がある場合、介護のための休業を取ることができます。この「介護休業制度」について解説します。
介護休業制度とは
労働者は、申し出ることにより、要介護状態にある対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態ごとに1回の介護休業をすることができます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。期間は通算して(のべ)93日までです。 2回目の介護休業ができるのは、要介護状態から回復した対象家族が、再び要介護状態に至った場合です。3回目以降も同様です。
介護休業の対象者
要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者です。日々雇用される者は対象になりません。
対象家族と介護の状態の定義
※要介護状態:負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のこと。
※対象家族:配偶者、父母、子、配偶者の父母並びに労働者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫。
しかし、法改正により、休業の取得によって
(1) 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、
(2) 介護休業開始予定日から93日を経過する日(93日経過日)を超えて引き続き雇用
されることが見込まれる(93日経過日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)
上記2つを満たす一定の範囲の期間雇用者(いわゆる契約社員)も介護休業がとれるようになりました。
介護休業にかかる給付
介護休業を取得する雇用保険被保険者について、一定の要件を満たすことで「介護休業給付」が受け取れることがあります。
育児休業
■育児休業制度
労働者は、会社に申し出ることにより、子が1歳になるまでの間、育児休業をすることができます。育児休業は法律で権利を認められたものであるため、企業側は「ウチの会社には育児休業制度はない」ということができません。
育児休業の対象者
育児休業の対象者は、原則として1歳に満たない子を養育する男女の労働者です。日々雇用される方は対象になりません(男性も育児休業をとることができます)。今までは正規の社員が主な対象者でしたが、法改正により、休業の取得によって雇用の継続が見込まれる一定の範囲の期間雇用者も、育児休業がとれるようになりました。
※1.一定の範囲の期間雇用者とは、申出時点において、次の(1)、(2)すべてに該当する労働者です。
(1) 同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること。
(2) 子が1歳に達する日(誕生日の前日)を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)
育児休業は原則として子が1歳になるまでですが、次の事情がある場合は1歳6か月まで育児休業ができます。
(1) 保育所に入所を希望しているが、入所できない場合
(2) 子を養育する配偶者で、1歳以降も子を養育する予定であったものが、死亡、負傷、疾病等の事情により養育が困難となった場合。
育児休業中の給与
育児休業中は働いていないため、給与を支払う必要はありません。休業期間中については雇用保険から一定の要件のもと給付金が支給されます。
■申請時期など
○1歳までの育児休業については、休業開始予定日から希望通り休業するには、その1か月前までに申し出ます。その際、対象の子の氏名、生年月日、労働者との続柄、休業開始予定日及び休業終了予定日を明らかにします。
○ 1歳~1歳6か月までの育児休業については、休業開始予定日(1歳の誕生日)から希望通り休業するには、その2週間前までに申し出ます。
労災の休業補償
従業員が仕事中の事故などで怪我をして会社を休む場合、労災保険から休業補償が支給されます。労災保険の休業補償を「休業補償給付」といいます。
休業補償給付の支給要件
休業補償給付の支給要件は以下の通りです。
①業務上の事由による負傷または疾病によって、療養していること
仕事と関係ない負傷や病気によって休んでも対象となりません。
②その療養のために労働することができないこと
労働することができない、つまり「労務不能」の証明は医師にしてもらいます。休業補償給付の医師証明欄に一定期間労働することができなかったと証明してもらう必要があります。
③賃金を受けていないこと
休業補償給付は、賃金が出ない日のみに支給されます。例え労災事故が原因で休んでいても給与が出ている場合は休業補償給付は出ません。ただし、一部のみ賃金を受けた場合は、減額して支給されることがあります。
④通算して3日間の待期期間を満たしていること
休業補償給付は休み始めて3日間は支給されません。待機期間中に休業状態を確認するという趣旨です。
上記を満たした場合、賃金を受けていない日の4日目から支給されます。支給額は休業1日につき、給付基礎日額(平均賃金)の100分の60です。また同時に労災の「特別支給金」という制度から給付基礎日額(平均賃金)の100分の20が支給されるため、合計として100分の80の休業補償が受けられます。
休業補償給付は任意の期間で支給申請をすることができますが、通常は給与締め日に合わせて請求することが多いでしょう。つまり、給与締め日が来て、その期間の賃金の支払いが確定してから請求した方が合理的であるためです。
退職後の社会保険手続き
退職後すぐに再就職先が決まっていない場合、会社で加入していた社会保険(健康保険と厚生年金保険)、雇用保険で必要な手続きは以下の通りです。
健康保険について:
①国民健康保険に加入する
②加入していた健康保険の任意継続被保険者となる。(一定の要件を満たせば、退職後も継続して健康保険に加入する事ができます。)
③家族又は親族の健康保険の被扶養者になる
厚生年金保険について:
①国民年金の第1号被保険者となる
②国民年金の第3号被保険者となる(扶養してくれる配偶者が、厚生年金や共済年金に加入している場合に、なることができます。)
また、退職後に国民年金の保険料を支払うのが困難な場合は、一定の要件を満たせば、支払いを免除してくれる制度を利用する事ができます。
雇用保険について:
①離職票を持って求職の申し込みをする
退職後に次の仕事を探す場合、失業期間中の生活保障として雇用保険から「基本手当」(いわゆる失業保険)を受給することができます。その為には、ハローワークに離職票を持って行き求職の申し込みをする必要があります。
ただし、基本手当を受給する為には一定の要件を満たさなければなりませんのでご注意ください。
従業員が退職した場合、その後の手続きについて、どんな事をやっておかなければならないのか、自分で調べるのは大変です。退職後の労使トラブルに繋げないためにも、会社側で必要な手続きを案内してあげられることが望ましいでしょう。
フレックスタイム制の注意点
フレックスタイム制とは、清算期間(通常1ヶ月)において、一定の労働時間数を労働することを条件として、始業・終業の時刻を労働者の判断に任せる「柔軟さ」を特徴とした制度です。
フレックスタイム制は、通常「コアタイム(絶対に勤務しなければならない時間帯)」と「フレックスタイム(裁量により勤務できる時間帯)」とに分けて定められますが、必ずしもコアタイムを設定する必要はありません。ただ、現実的に深夜にわたるフレックスタイム設定は割増賃金支払いの面からみても運用が複雑になるため、多くは昼間の時間帯をコアタイムとし、出社時刻あるいは退社時刻の融通をきかせ、効率化を図る目的で運用されることが多いようです。
メリット:
この制度のメリットは、労働者の家庭環境や生活リズムに対して柔軟に労働時間を設定できる点でしょう。子育てや介護中の労働者、居住地が勤務地から離れている労働者などが、効率よく労働時間を設定できること、個人ごとの繁閑に合わせて早く帰ったり、遅く出社したりできることが利点として考えられます。
また、企業側からしても、上手に運用すれば硬直した労働時間により発生する「暇な時期のムダな時間」「忙しい時期の残業による割増賃金の支払い」などを回避できます。
デメリット:
一方で、フレックスタイム制のデメリットは、時間管理が煩雑になり管理者側が大変になること、また勤務がいいかげんになる従業員が出る可能性があることでしょう。
誰が何時に出てくるかわからなければ来客や電話応対にも支障を来しかねませんし、出社時間をいちいち確認する作業にも手数がかかります。
仮に出社予定時刻を労働者に確認をしたとして、その出社予定時刻に遅れたからといって、それがコアタイムに間に合っていれば遅刻として取り扱うことができません。どのように規律を守っていくかが課題になってきます。
フレックスタイム制を導入する際には
・導入により業務上のオペレーションにどのような負担が生じるか
・導入によりどのようなムダが省ける可能性があるか
・社内の規律が守れなくなるリスクにどう対応するか
をあらかじめ考える必要があるでしょう。
休憩時間中のケガと労災保険
仕事中のけがであれば、労災保険が適用されますが、休憩中の場合は原則として労災保険適用外であり、健康保険が適用されます。
けがの原因にもよりますが、原因が「会社の施設の欠陥」等である場合は、例外的に労災適用が可能となることがあります。
労災の認定をするのは労働基準監督署ですので、
社員が会社内で休憩中にけがをした場合であっても、「休憩中の事故だから労災はムリだろう」と勝手に判断せず、労災保険の適用の手続きを行いましょう。
ちなみに休憩時間は、「労働時間の途中にとらせる」「一斉付与」「自由利用」という三つの原則があります。一定の業種などで例外は認められていますが、休憩時間にすぐに仕事に取り掛かれるよう待機させることは手待ち時間、つまり「労働時間」と解釈されてしまいます。
手待ち時間には賃金の支払い義務が生じる可能性があります。
待機させておく「手待時間」が多い業種の場合は許可申請をしましょう。
手待時間は労働時間となりますが、逆に拘束時間の大部分が手待時間の業種は、疲労や精神の緊張も少ないとされますし、労働基準監督署の許可を受けることを条件とし、労基方の労働時間、休憩、休日を適用除外にすることが可能になります。
手待時間自体は利益もないですが、会社から手待時間の給料を支払いはしたくない場合は、適用除外申請を活用しましょう。
仕事中の交通事故
自動車を使用して仕事をしていた過程での事故は、労災保険(業務災害)が適用になりますが、同時に車両にかかっている「自動車保険」も使えるため、本人がどちらの保険から給付を受けるかを「選択」することになります。補償対象が同一であるため、どちらも重複してもらうことはできません。
では、どんなときにどちらの保険を選択するのがよいでしょうか。
1、まずは自動車保険(自賠責保険)から:
交通事故については「自賠責保険優先」という考え方があります。これは行政通達であり、法的な拘束力はないものですが、一般的には当該行政通達に倣って自賠責保険を使うことを第一に考えるケースが多いと言えます。
自賠責保険はすべての車両に加入が義務付けられており、補償内容は以下の通りです。
治療費、文書料、休業損害、慰謝料について、合計120万円まで補償
後遺障害・死亡について 75万円~4000万円まで補償
被災者が無過失かつ治療費や休業補償の合計が120万円以内に収まる比較的軽微な事故では、自動車保険(自賠責保険)の適用を選択することが多いでしょう。
2、労災保険と自動車保険の比較
労災保険を選択する場合、以下のようなメリットがあります。
①被災者に過失があっても負担が発生しない
交通事故では過失割合が問題となりますが、労災保険では過失割合に関係なく治療費が全額保障され、休業補償についても過失相殺されません。過失割合について当事者間でトラブルがある場合、労災申請をしたほうが迅速に給付がなされます。
②治療費の限度金額がない
自賠責保険と異なり、労災保険には治療費の限度額がない点で有利です。
②公的保険のため治療費自体が安くなる
自動車保険を利用すると病院では自由診察の扱いとなります。公的保険である労災保険の診療報酬と比べて、自由診療部分は文字通り自由に治療費が設定できるため高くなります。
つまり、同じ治療を受けているにも関わらず治療費自体が2倍にも跳ね上がることもあります。
過失割合でトラブルになっている場合や、相手方が自賠責保険のみにしか加入していない場合などは、労災保険のメリットを選択したほうがよいでしょう。
在宅勤務者の労働時間
在宅勤務者の労働時間は把握が困難です。そのため、会社の所定労働時間を勤務したものとみなす「みなし労働時間制」を活用しましょう。みなし労働時間制は、就業規則に明記することで適用することが出来ます。
事業場外のみなし労働制の対象となるのは、「事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指示監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務」です。在宅勤務者の業務がすべて「労働時間を算定することが困難な業務」とされるわけではないので、注意が必要です。
みなし労働制の対象となるかの判断基準は、以下の通りです。
①業務が、起居寝食等の私生活を営む自宅で行われていること。
②業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置くとされていないこと。単に回線がつながれていて、情報通信機器から離れることが自由ならば、常時通信可能な状態には当たりません。
③業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。目的や期限等の基本的事項の指示は具体的な指示には含まれません。
また、みなし労働制によってみなすことが出来るのは、労働時間だけです。在宅勤務者に対しても原則として週1回以上の休日を与えなくてはなりませんし、1日の労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を付与する必要があります。さらに、深夜業を行った場合には割増賃金を支払わなくてはなりません。
みなし労働時間を導入したとしても、労働時間の把握は必要です。特に残業の取り扱いに関しては、トラブルになりやすいので事前に対策を行いましょう。
みなし労働制を導入する以上、在宅勤務者に残業はないものとし、業務上の必要が出た場合に限り報告させ、承認したもののみ残業として取り扱います。在宅勤務についてのルールブックを作成・配布し、個別に雇用契約を結びましょう。
在宅勤務について
在宅勤務は多様な働き方の選択肢を拡大するものとして注目されています。在宅勤務が企業や労働者にとって、どのようなメリットとデメリットがあるか紹介します。
【メリット】
・ワークライフバランスの実現
・優秀な人材の確保がしやすい
・必要な人材の退職を防ぎ、新たな社員を教育する手間が解消される
・通勤負荷の解消による効率性・生産性の向上
【デメリット】
・会社の情報漏えいのリスクが高まる
・労働時間の把握が困難
・業務上の指示をタイムリーに出せない
・業務評価が難しい
・自宅での私的行為での事故は労働保険の適用外だが、同じ場所なので区分があいまい
労働者が1つの事業場に勤務している場合は、災害等で事業所が機能しなくなったり、流行性疾患で外出が制限されたりした場合、業務が停止してしまします。事業存続性の確保の観点からすると在宅勤務は有効です。
しかし、上記で上げたようなデメリットも存在するので、導入の際はデメリットへの対策が重要となります。
具体的なデメリット対策は、次の通りです。
①対象業務、対象者の範囲を限定する
在宅勤務に向いているのは、以下の職種や仕事です。
・外部の顧客対応が少ない自己完結性の高い仕事
・対面によるコミュニケーションが少ない仕事
・成果の評価を客観的に行いやすい仕事
・自己の裁量で仕事を進められる立場の社員
②情報漏えい対策
会社所有のパソコンを業務専用とする方が安全です。また、最新のウィルスソフトを装備し、ソフトウェアのダウンロードは承認制としましょう。
③労災保険の適用を意識したルールを作る
・始業就業時刻を記載し業務日報の提出を義務づける
・自宅以外の場所では業務を行わない
高額療養費制度の話
入院などで医療費が高額になった場合、健康保険制度から給付が受けられるのをご存知ですか。
【高額療養費制度とは】
重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となります。そのため家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。
【自己負担限度額】
自己負担限度額の計算方法は以下の通りです。
-----------------------------------------------------------
<一般の被保険者の場合>
80,100 円+(総医療費-267,000 円)×1%
例)総医療費が100万円、自己負担額30万円の場合
80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円
30万円-87,430=212,570円が高額療養費として支給
-----------------------------------------------------------
<上位所得者の場合:標準報酬月額が53万円以上の者>
150,000 円+(総医療費-500,000 円)×1%
例)総医療費が100万円、自己負担額30万円の場合
150,000 円+(100万円-500,000 円)×1%=155,000円
30万円-155,000=145,000円が高額療養費として支給
-----------------------------------------------------------
【自己負担額に算入できるもの】
保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額が対象です。
【自己負担額に算入できないもの】
・ 差額ベッド代
・ 病衣代
・ 食費
・ 先進医療にかかる費用など
【いつ申請するか】
高額療養費の計算単位は暦月ですので、一ヶ月ごとに自己負担額を計算し、前述の基準額を超えるようであればその月ごとに申請することができます。また、この高額療養費の請求時効は2年ですので、過去のものを数ヶ月分まとめて申請することも可能です。
一方、長期入院などであらかじめ医療費自己負担が高額になることがわかっている場合、「健康保険限度額適用認定申請書」という書類を事前に出すことで、高額療養費基準額以上の窓口負担がないようにすることもできます。
出産・育児にかかる給付金
社員の方がご出産される場合、国からどのような給付金が出るかご存知ですか。
【健康保険】※協会けんぽの場合
① 出産育児一時金
この給付はいわゆる分娩費用として、出産時に一括で支給されます。金額は42万円で、産婦人科の窓口で本人が手続きをします。この出産育児一時金は、妊娠85日以上の出産に適用され、死産の場合等でも支給されます。また、当該出産した方が社会保険に加入している場合も、配偶者の扶養に入っている場合も支給されます。
② 出産手当金
この給付は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産の予定日)以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産の日の翌日以後56日目までの期間のうち「休んでいて且つ給与支払いがない場合」に支給されます。
--------------------------------------------------
金額は、出産した方の
標準報酬月額÷30日×2/3 × 休業日数
という計算式により計算されます。
--------------------------------------------------
たとえば、標準報酬月額20万円で98日休んだ場合は以下が支給されます。
20万円÷30≒6,670円
6,670円×2÷3×98=435,773円
【雇用保険】
出産した方が過去2年間に12ヶ月以上雇用保険に加入していた場合、雇用保険から「育児休業基本給付金」が支給されます。これは、「原則として子が1歳になるまでの期間」で、且つ「休業しており、給与支払いがない場合」に支給され、その金額は以下の計算式にて求められます。
-------------------------------------------------------
産前休暇前6ヶ月の平均給与月額×1/2×休業日数
-------------------------------------------------------
たとえば、休業前の平均給与月額が20万円、子が1歳まで全て休業した場合
20万円×1/2×約10ヶ月=約100万円
が支給されます。実際の申請は2ヶ月に1回、管轄のハローワークに行います。
これらの給付の恩恵があることを考えると、安易に寿退社をするともったいないということがわかります。
それから、もうひとつ大きなメリットとしてあるのが、育児休業期間中の社会保険料免除制度です。
これは、会社負担・本人負担ともに免除されるので、会社にとっても大きなメリットですね。
手続をしないと免除してもらえませんので、ご注意ください。
もちろん、当事務所ではこういったことは必ず提案させて頂いておりますので、ご安心ください。
国民年金の免除
国民年金には、保険料を支払うのが困難な人のために、届出や申請をして保険料が免除される制度があります。その制度を「免除制度」と言いますが、どのような制度なのでしょうか?
【国民年金の免除制度】
この制度は、自営業者・無職・フリーターなどの第一号被保険者にのみ適用されます。免除制度は、加入期間として計算されるだけでなく、保険料の一部を払ったことにしてくれる制度で、保険料の免除には①法定免除②申請免除があります。
① 法定免除
届出により、保険料が全額免除されます。対象者は以下の通りです。
- 生活保護法の生活扶助を受けている人
- 障害年金(1,2級)をもらっている人
② 申請免除
申請して認められることにより、保険料の全額または一部を免除されます。対象者は以下の通りです。
- 生活保護法の生活扶助以外の扶助を受けている人
- 障害者または寡婦(未亡人)で所得が125万円以下の人
- 経済的な事情で保険料の支払いが困難な人
【収入は世帯全体でみる】
経済的な事情の場合は所得制限があります。所得制限は本人だけでなく、配偶者や世帯主も見て判断し、このうち誰か一人でも所得が多い場合は免除は受けられません。ただし、失業した場合は特例があり、本人の所得を除外して、配偶者・世帯主の所得だけで判断されます。
また、震災や火災などによって財産のおおむね2分の1以上の損害を受けた場合も、同様の特例があります。(損害保険を受けた分は除く)
その他にも、学生納付特例や若年者納付猶予制度などさまざまケースで免除が受けられます。これらの申請は、住民登録をしている市区町村の国民年金窓口で行うことができます。また、手続きは郵送でも出来ます。
国民年金保険料を滞納した場合の障害年金の話
国民年金の保険料を滞納すると、万が一の事故等により後遺障害が残った場合、障害年金がもらえないことがあります。それはどのようなことなのでしょうか?
国民年金の障害年金(障害基礎年金)を受給するには、次の要件のどちらかを満たさなければなりません。なお、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている人は除きます。
- 初診日の前々月までの被保険者期間のうち、保険料給付済期間と保険料免除期間を合わせて3分の2以上であること。
- 初診日の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと。(平成28年3月31日までの特例)
この納付要件では、「初診日の前日」の時点の給付状況を判断します。例えば、交通事故に遭った場合、事故に遭った日の前日時点の納付状況を見るので、事故に遭った日にあわてて納付しても間に合いません。
障害基礎年金の要件に該当すれば、毎年以下が給付されます。
【1級】 786,500円×1.25+子の加算額
【2級】 786,500円+子の加算額
<子の加算額>
第1子・第2子:各226,300円
第3子以降:各75,400円
※平成24年度
免除制度を利用せずに何もせずに滞納することは、最も損な方法です。
【免除制度について】
年金を払うことが難しければ免除制度に該当しないか確認してみましょう。免除制度を利用すれば、滞納とは異なって、万が一の無年金を防ぐことができるのです。
このように、国民年金は、年をとった時だけでなく障害者になったときや死亡したときにも給付されます。ただし、要件がありますので、きちんと確認をしましょう。
失業保険と年金の話
65歳未満で退職した人は、失業保険と老齢年金の両方を受け取ることができるのでしょうか?
失業保険は、退職日以前の2年間に被保険者期間が12ヶ月以上ある人が、ハローワークに離職票を提出し「求職の申し込み」をして受け取る保険です。なお、解雇・倒産などは1年間に被保険者期間が6カ月以上ある人が対象となります。
【失業保険の受取り額計算例】
月額36万円、受給日数150日の場合
[賃金日額] (最後の6ヶ月の月額給与の合計)÷180 = 12,000円(最低限度、最高限度あり)
[基本手当日額] 賃金日額×45%=5,400円(給付日額1日あたり)
※給料に応じて、賃金日額の45~80%となります。また、給料が高いほど基本手当額は低くなります。
[合計額] 5,400円×150日=810,000円
[1ヶ月あたり] 5,400円× 30日=162,000円
基本手当日額は、給付日数1日あたりの金額です。給付日数を掛けた額の失業保険がもらえます。また、日数は退職日の年齢と勤続年数によって決まります。
【失業保険の申し込みで老齢厚生年金の支給が止まる】
60歳~64歳で老齢年金(特別支給の老齢年金)を受け取っている人は、失業保険(基本手当)を受け取ることはできません。失業保険と老齢年金、どちらかを選択することとなります。
具体的には、離職票をハローワークに持参して失業保険の申し込みをすると、翌日から特別支給の老齢厚生年金の支払が停止され、その後失業保険の受給が終了した月まで停止されます。支給停止されるのは、基本手当をもらっている期間だけで傷病手当などもらっても支給停止されません。
厚生年金基金に加入している人は、支給が停止されるかどうかは厚生年金基金それぞれの規約によります。
【失業保険を受け取らなかった月は、老齢年金を受給できる】
離職票を提出して年金の支給が停止された場合でも、失業保険を1日ももらわなかった月は年金を受け取ることができます。この分は、3カ月後に支給されます。
また、離職票を提出して申し込みをしても、すぐには失業保険をもらえない期間があります。この期間は、いったん年金の支給が停止されますが、他の失業保険をもらわなかった日とトータルして、後で精算されて支給されます。
国民年金の被保険者の種類
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、国籍に関係なく全員国民年金に加入することになっています。(強制加入)国民年金の被保険者には、どのような種類があるのでしょうか?
【年金の仕組み】
加入者は第1号~第3号の3つに種別され、それぞれ保険料やもらう年金の種類が異なります。
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<第1号被保険者>
対象者は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人で、第2号・第3号被保険者に該当しないすべての人です。
- 自営業者、その配偶者
- 学生農林漁業者
- 国会議員
- フリーター
- 無職の人
保険料は、直接社会保険庁に納めます。なお、手続きは各市区町村で行います。貰える年金は、国民年金のみです。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
<第2号被保険者>
対象者は、厚生年金または共済年金に加入している人です。
- サラリーマン、OL
- 公務員
- 私立学校の教職員
保険料は、毎月給与から天引きされる厚生年金保険料に含まれています。貰える年金は国民年金+厚生年金(共済年金)です。
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<第3号被保険者>
対象者は、被保険者に扶養されている配偶者で、20歳以上60歳未満の人です。
- サラリーマンの妻(専業主婦)もしくは夫(専業主夫)
保険料は「タダ」です。配偶者の保険料に上乗せされているわけではなく、配偶者が加入している厚生年金や共済組合が負担するので、自分で保険料を納める必要がありません。貰える年金は、第3号被保険者であった期間分です。
[第3号被保険者の要件]
第3被保険者とは「第2号被保険者に扶養されている配偶者」で被扶養配偶者といいます。被扶養配偶者と認められるには第二被保険者(配偶者)の収入で生活をし、年収が130万円未満であるという条件があります。
なお、ここで言う配偶者には、事実婚(内縁)も含まれます。事実婚が認められるには、住民票などの事実婚関係を証明する書類が必要となります。
----------------------------------------------------------------------------------------------------
再就職手当の話
雇用保険の「再就職手当」とは、どのようなものでしょうか?
【概要】
再就職手当は、失業保険(具体的には「基本手当」をもらっている(あるいはもらう資格のある))失業者が安定した職に再就職したときに、基本手当の残額の一部が「支度金」的に支払われるものです。
【前提】
再就職手当をもらうためには、基本手当をもらえる資格のある人(「受給資格者」といいます)である必要があります。離職後ハローワークで失業認定を受け、受給資格者証の発行を受けていなければなりません。また、基本手当の支給残日数が少なくとも全体の1/3以上残っていることが必要です。※その他、支給要件があります。
【いくらもらえるか】
再就職手当は次の計算式により計算されます。
A. 2/3以上を残して早期に再就職した場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 60%
B. 1/3以上を残して早期に再就職した場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 50%
例)基本手当日額 5,000円、支給残日数 90日の場合
5,000円 × 90 ×60% =270,000円
失業保険基本手当をもらい切る前に再就職が決まることは雇用情勢上も喜ばしいことであるため、この手当により早めの再就職を促しています。
【その他注意点】
自己都合退職により給付制限期間(3ヶ月の基本手当が出ない期間)がある場合、失業認定の待機期間の7日経過日後1ヶ月については、「ハローワークなどの紹介による」再就職である必要があります。言い換えると、当初1ヶ月は「知人の紹介などにより勝手に再就職せず、ハローワークを利用して決めないといけない」ということです。
社会保険の被保険者について
社会保険の被保険者とは、どのような働き方をする従業員を指すのでしょうか。
なお、社会保険とは【健康保険(介護保険)・厚生年金保険】のことです。
社会保険の被保険者となるには、以下の要件があります。
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【原則】
- 適用事業所に使用される者は、適用除外の者を除き、法律上当然に被保険者となる
この場合、法人の理事・監事・取締役・代表社員・無限責任社員など、法人の代表者または業務執行者であっても、法人から労働の対償として報酬を受けている者は、その法人に使用される者として被保険者の資格を取得します。
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【適用除外】
以下の従業員は適用除外となります。
- 正社員と比べて、労働時間か労働日数が3/4未満の者
いわゆるパートさん・アルバイトさんが社会保険適用除外となるには、上記の条件を満たす必要があります。
- 臨時に使用される者
・日雇いの者
・2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
- 季節的に使用される者
ただし継続して4ヶ月を超えて使用されるべき場合には、初めから被保険者となります。
- 臨時的事業の事業所に使用される者
ただし、継続して6ヶ月を超えて使用されるべき場合には、初めから被保険者となります。
- 国民健康保険組合など、他の保険制度に該当している者
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社会保険の調査がある場合、主に「加入すべき人がきちんと被保険者になっているか」を確認されます。その際、上記の適用除外項目に該当していないにもかかわらず加入していない場合、加入するよう指導されることになります。
多くは、以下のケースが問題になります。
- 勤務時間の長いパートアルバイトで社会保険に加入していない
- 正社員で「入社から〇ヶ月経ってから社会保険に入れる」というルールで
社内処理をしている
自社の条件を改めて確認してみましょう。