MGコラム
私とCFMG
●キャッシュフローMGとは
通常のMGは仕入と販売は現金決済ですが、キャッシュフローMGでは売掛、買掛(信用取引)を使います。
●私とCFMG
CFMGは元々(株)マスト21の横田さんという方がMGの発展形として考案されたと聞いていますが、私はその方には直接お会いしたことはありません。MGをはじめてしばらくたった頃に、愛環MGでヴァンガード経営研究所の板東秀行さんがCFMGを復活させるという案内をされた時に初めてこれを知りました。当時の私は会計のことは素人で、何もわかっていませんでしたが、何やら面白そうだと思って参加してみたところ、とてもハマりました。
当時の私はまだMGを100期もやっていない頃でしたが、売掛と買掛が入ることで複式簿記の意味がおぼろげながら見えてきたのでした。そして、この複雑な仕組みを制すれば、それを経営の武器にすることもできるのではないかという直感があり、それを確かめてみたいという知的好奇心が湧きました。
その後しばらくは、板東さんのインストするCFMGに繰り返し参加しました。毎回、直接法のCF計算書を試作しながら、実際のMGのデータをそれに入れてみて、結果が一致するような違い棚の形を模索し、ついに完成した時の喜びは忘れられません。研究開発の日々はとても楽しい思い出です。
また、CFMGではルールを変えるとゲームがどう変わるかということにとても興味を持ちました。最初のCFMGのルールでは、一回にひとつの売掛金しか回収できないというルールだったのですが、ある時、他の参加者が懇親会の席で「セールスマンがふたりいる時は2行分回収できればいいのに」と言い出して、それがとても面白いアイデアだったせいか2日目からすぐそのルールが導入されたのでした。セールスマンの人件費と回収の時間コストのどちらを取るか?というジレンマになっていて、一概にどちらが得とも言えないために、プレイヤーをとても悩ませる面白いルールでした。実にMGらしいルールだと感じたものでした。
そのような体験を経て、自然と「新しいルールを考案してみたい」と思うようになりました。
そのため、ゴルゴCFMGでは、信用取引だけでなく、様々な現実的なルールが織り込まれおり、新しいルールを通じて、MG経験者の方により深く学んで頂くことを目的としています。
最初に考えたのは「消費税」でした。
私自身も社労士事務所を開業してから数年が経ち、売り上げが1000万円を超えてきたために消費税が掛かる時期に差し掛かっておりました。そのために合同会社を立ち上げたり、社会保険に加入したり、色々なことがありました。MGができたのは1976年ですから、その当時は消費税はありませんでした。ところが現在では事業を行う上で消費税をどう取り扱うかという問題は避けては通れません。MGにも消費税があってもいいんじゃないか、そんな風に考えたルールでした。(ところが昨今、インボイス制度が導入されてしまい、起業したばかりの会社や小規模事業者への優遇措置が無くなってしまいました。弱い者からは厳しく税を取らないというルールは、社会の在り方としては好きだったので残念です)
「本当の景気変動」は我ながら傑作でした。
思いついたきっかけは、当時ちょうど円高から円安へ移行する時期で、ガソリン代が値上がりしたりしていたことでした。為替が変動するのだから、海外市場の材料も16円均一ではなく、変動するようにしてみたらどうだろう? そして変動と言えば景気変動。景気変動が出たらサイコロを振って円高か円安かが変わるようにしてみようと思い、それならばシニアのサイコロで決まる大阪市場のプライスと市場閉鎖も変えてみようと思ったのでした。
やってみると、景気変動がいつ起きるかは誰にもわからず、しかもゲームの途中で相場が変わってしまうために、常に変化に身構えなくてはならないことがわかりました。これぞ経営!という感じでゲームに絶妙なスパイスが加わりました。
緑色の教育チップ
これは、自分の事務所の事務員さんが退職してしまった時に思いつきました(泣)。社労士事務所の事務仕事というのは、誰でもすぐに覚えられるというものではありません。未経験者の場合、入って半年くらいは自分が代わりにやった方が早い時期が続きます。自分の仕事を後回しにして、根気よく仕事を教えて、やっとできるようになった頃に退職! また新しい人を教えなくてはなりません。私たち社会保険労務士にとって一番痛いリスクカードは退職なのです。それを痛感していた私は「よし、退職を引いたら教育チップも一緒に取られることにしよう」と思ったのでした。それなら一人に一枚教育を付けるようにしたいと思い、枚数が余計にある緑チップを教育チップとし、枚数が少ない黄チップをひとり1枚しか使わないコンピューターにすることにしました。
●どんなことが学べるか
①資金繰り
会社は赤字になってもすぐには潰れませんが、お金が払えなくなったら信用が無くなり、実質的に倒産してしまいます。現金残高だけを見て状況把握ができる通常のMGとは違い、CFMGでは売掛、買掛の管理を行いながら、必要な時に必要な額のキャッシュを確保する必要があります。「資金ショート=倒産」ですから、それは何よりも怖いのですが、資金ショートを恐れるあまり投資が疎かになっては強い会社は作れません。キャッシュポイントを踏まえつつ、回収の時期や投資のタイミング、借入の確保などを複合的に考えてマネジメントする必要があります。CFMGでは、資金ショートが実際にどのようにして起こるかを肌感覚で理解することができます。
②キャッシュフロー計算書
通常のMGで使用するMX会計表には間接法のキャッシュフロー計算書しか付いてませんが、営業キャッシュフローの本当の意味を理解するためには直接法の計算を体験するのが近道です。ゴルゴオリジナルのキャッシュフロー計算書では、直接法と間接法の両方を相対的に比較しながらキャッシュGを計算するプロセスを体験することができるため、それが何を意味するものなのかが自ずと理解できます。
「利益は意見、キャッシュは事実」と言われるのはなぜか?
BS、PLと並んで財務三表のひとつと言われるCF計算書は何を意味しているのか?
こういった疑問が毎期毎期のオリジナルCF計算書の記入によって、行入の形で浸透していきます。
③MX会計表のより深い理解
CFMGではMX会計表で普段使わないいくつかの欄を使用します。それによってMX会計表の拡張性や本当の意味が理解できるようになります。
特に、現金売りと掛け売りの売上が、金額のワルツで自動的に合算される仕組みは素晴らしいと思いました。これも最初は現金売りをいったん掛けにしてから同時に回収するというやり方で記帳していたために気付かなかったのですが、ある時初心者の参加者が何もわからずに現金売りをマル無しで、掛け売りをマルで囲って記帳してしまったのを見て、その場では訂正を指示しつつ、「(なんとなく)このままでもやれるんじゃないか?」と思い、帰ってからそのやり方でやってみて初めてそれでもできることに気が付いたのでした。
分かっている人が分からない人に教えるのではなく、初心者からインストラクターが教わるという、何ともMGらしい出来事でした。
●ローカルルールの数々
「魔の消費税」
「本当の景気変動」
「退職で消える、ひとり一枚の教育チップ」
「少子化&人材不足」
「正社員と派遣社員」
「資金ショートで次繰りチップ没収」
参加した方からは、「初MGを思い出す」という感想をよく聞きます。初めて経験するルールが存在するために、最適解をその都度考えなくてはならず、たとえMGの経験者であっても相手が何をしてくるかはなかなか読めません。相手の手の内が読めない中で、先にルールに適応した人が有利になるというのは、手の内を知り尽くしたゲームでは体験できない新鮮さがあります。また、インストラクターもできる限りゲームに参加し、テストプレイを行っていますので、CFMGのゲームバランスには常に気を配っております。
最近は、MGのオフィシャルルール表では行数が少なくなる傾向にあるようですが、ゴルゴCFMGでは、5期は50行使います。それでも自己資本グラフが正規分布になるのは、新ルールによって過剰適応が起こりにくくなっているのではないかと思います。
現代は変化のスピードがとても速い時代です。ルールを知り尽くして過剰適応できるような業界はどこにもありません。
手の内を知り尽くした者同士でゲームをして、その中で一番運が良かった人が勝つゲームと、新ルールへの適応法を必死になって考え知恵を絞り、人よりも先にそのルールへの適応方法を思いついた人が勝つゲームとどちらが面白いでしょうか? また、その体験が現実に生きるのはどちらのゲームでしょうか?
最後に、良い事ばかりではなく、ゴルゴCFMGの欠点もお伝えしておきます。それは「メチャクチャ疲れる」ことです。新しいルールがあり、手の内が読めず、考えるべきことが山のようにあり、しかも行数も多いため、本当に疲れます。くれぐれも前日は早めに就寝して、体調を万全にしてご参加ください。
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