MGコラム
MG for studentsはクリティカルビジネスたり得るか
MG for studentsは一見馬鹿げた取り組みと思われるかもしれません。
何しろ、学生相手とはいえ、無料で地域の参加者を招待するのですから!
山口周の「クリティカルビジネスパラダイム」という書籍をご存知でしょうか?
因みに山口周は下記のコラムにあるように、西順一郎先生の「人事屋が書いた経理の本」を絶賛しています。ご本人にお会いしたことはないので、MGについて知っているかは分かりませんが。
https://note.com/shu_yamaguchi/n/n28f0557b4ba6
クリティカルビジネスとは?
社会運動、社会批判をビジネスと融合させることを意味しています。
つまり既存の価値観を破壊しながら、新しい価値を提案する試みをビジネスとして行うという、一見矛盾するような取り組みの事をクリティカルビジネスと山口氐は定義しました。
例えばMGに無料で人を招待するのは、それを作られた方への冒涜ではないかという価値観。
それとも子供への教育というものは、学校が文部科学省が定めたやり方で行うべきと言う価値観。
一見正しそうに見える(かもしれない)これらの価値観に新たな問いを投げかける行為。
MG for studentsは、様々なきっかけを経て実現しましたが、明らかにクリティカルビジネスとしての要件を備えているのではないか?というのが本稿のテーマです。
山口氏の書籍に痛烈に書かれているのは、安全・快適・便利を目的とした取り組みには、現在もう事業化可能なフロンティアは存在しないのではないかという問いです。
安全・快適・便利という価値観からはもう意味のあるビジネスは不可能で、後はひたすら同じ事を繰り返す過当競争しか残されていないのではないか?
たしかに私も、MGの主催者が増える毎に、そのような未来を予見した事はありました。
限られた需要を供給過多の主催者が取り合ってしまうのではないか?
これまでと同じコンテンツではMGは存在価値を失ってしまうのではないか?
ですが私はそんな低次元の価値観でMGが語られてしまうことに違和感も抱いてました。
MGにはもっと知られていない深く意味のある価値があるのではないか?
私は子供相手のMGこそがそれに該当するのではないかと思ったのです。
それに気づいたきっかけは、長男をMGに参加させた時でした。
当時小学校5年生の長男は西研の子供MGに二度参加したばかりでしたが、たまたま運に恵まれたようで入賞して帰って来ました。一度目(4年生)の時はまだ訳も分からずという感じだったのが、今回は何かを掴んだようで、当時の会話からもMGへの意欲が増したことを感じておりました。
そんな息子をゴルゴMGに誘う時には実は私の中で葛藤がありました。
それは大人の参加者にどう思われるか?という危惧でした。
「こんな幼い子供をMGに参加させるとは何事だ!」とか
受講料を払えない子供がMGに参加することを許して貰えないのではないか?とか、
決算の遅い子供が足手まといになるのではないか?とか。
確かにこれらはMGという神聖な場に対する未規定のリスクに思えました。
当時の私はそれまでそのような前例を見たことがありませんでした。
ですが、結果的にそれらの危惧は全て杞憂に終わりました。
確かに子供がMGに参加することには、多少のマイナス面もありましたが、それを上回るプラス面があったからです。
いやむしろマイナス面=プラス面だったと言っても良いかも知れません。
それは明らかにその時参加してくださった大人の方からの反応でしたし、私自身もその場に居合わせて感じた事でした。
それ以前に開催したMGでは、当時の私の指導力不足もありましたが「もう疲れた!」とか「まだやらせるの?」といった後向きの言動をする人がいて、場の雰囲気に影響することが度々ありました。
ところが息子を参加させたMGでは、そうした言動が一切見られなくなったのです。
それどころか、期数の浅い大人の参加者が例外なく気力が増したのを感じました。
要するに頑張りが効くようになったのです。
私の初MGがそうでしたが、モチベーション高く参加していても、初めてのMGには想像以上に高い壁が存在します。
そういう時、ちょっと油断すると気持ちが切れてしまうのは仕方ない事だと思います。
ところがその場に子供が混ざっているだけで不思議と頑張れるようなのです。
これはインストラクターの教え方の技術なんかよりよほど効果があります。
そしてその頑張りの効果は、頑張った当人の財産になるのですから満足度にも繋がります。
では既に経験を積んでいるベテランにとってはどうでしょうか?
実は子供に教える事は本当に骨の折れる作業です。
何しろ大人なら分かっていて当然の常識が子供には全く通用しないからです。
実は私も彼らのおかげでかなり鍛えられました。
読める文字を書かせるには、いくら口を酸っぱくして言っても効きません。
それよりも太い芯のシャープベンを渡して実際に書かせてみる事で本人も自分の字が見やすくなったことを実感します。
これもまた「まずやる」事でその意味が理解できるのでしょう。
それ以外にも、彼らは大人を困らせる事をいくらでも生み出してくれます。
調教されていない野生馬を前にすると、ベテランの経験者も鼻をへし折られること請け合いです。
受講料払ってこんなに働かされるの? と思っても不思議ではありませんが、流石はMGの経験者はそんな状況をむしろポジティブに受け止めて下さるようです。
実際の参加者からも感想文に「これまでは教えてもらう側だったのが、否応無く教える側になってしまって、本当に勉強になりました」というコメントを頂きました。
ベテランばかりのMGは面白くないという事は、実は西先生自身も仰っている事です。
最近ではMG for studentsでMGを始めた子供たちが50期を超え、大人の初心者に指導する役割を担うようになってきました。
そうなってくると更に子供効果が増します。
大人でも字が薄い初心者はよくいるのですが、子供から言われると本当に皆、素直に聞いてくれるのです。
盤を回してカードを投げないといったマナーに関する事などは特に効果的です。
インストラクターが指導するより子供から言われた方が素直に聞いて貰えるというのは複雑な気分ですが笑
大人への効果ばかり書きましたが、そのような場で学ぶ子供には知らず知らずのうちに西式の思想がインストールされて行きます。
結局のところ、大人と子供が共に切磋琢磨して向上するというMGの理想的な場が生まれるようになります。
最近では御子息がMGをやるようになったことがきっかけで、親御さんがMGに参加するという例も増えて参りました。その方たちはMG for studentsが無ければ決してMGと出会う事は無かったはずです。様々な人が混ざり合って学ぶ場になりつつあります。
クリティカルビジネスにはどんな可能性があるか?
「クリティカル・ビジネスのパラダイムにおいては、顧客は欲求を満たす対象ではなく、むしろ批判・啓蒙の対象となり、ステークホルダーは経済取引の対象ではなく、社会運動を一緒に担うアクティヴィストという位置付けになります。」
—『クリティカル・ビジネス・パラダイム――社会運動とビジネスの交わるところ』山口 周著
https://a.co/bu3ThN4
MGを自社の利益の為にやるというのがこれまでの常識でした。
ところがクリティカルビジネスのアクティビストとして、子供たちと共に学ぶことはそれだけの意味に留まりません。
次世代の学生達に学びの場を提供するという社会的意義も同時に担うことになるからです。
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