MGコラム
わからない人同士での教え合い
MGの冒頭でお話することが多いのですが、教え合いー教えないー紙は自分で、という話があります。MGの特長として、理入<行入などと共に教え合いという文化が存在します。
MGは期数をこなしているベテランと期数の浅い初心者とが互いに教え合いながら学んでいくのが理想です。ベテランばかりだとお互いに手の内が分かってしまい、合理性追求の結果、予定調和なゲーム展開になってしまったりします。逆に初心者ばかりだとやってみせる人がいないせいで、どうすればうまくいくのかといったことを考えるヒントが足りず、成長に時間を要する結果となります。
初心者がベテランから学ぶのは想像しやすいと思いますが、実はベテランは初心者から学んでいます。初心者はセオリーを知りませんから、合理性の観点から言えば不合理な手を打ってしまったりするものです。例えばとんでもない安値で入札をして、ベテランがそれに足をすくわれたりします。卓全員が赤字に転落したりします。力のあるベテランはそういった場でも、うまく初心者をかわして、市場をコントロールすることができます。こうしたことは初心者が混ざっているから学べるのであって、ベテランばかりのゲームでは経験できない要素です。
また、教え合いは初心者と初心者の間でも可能です。分かっている人が分からない人に教えるのは当り前ですが、実際にやってみるとわからない人同士で教え合うことも案外できるものなのです。たとえばルールを初めて理解しようとしている時や、決算のやり方や手順を学ぶ時に、初心者同士がお互いのわからない部分を補完し合うことで、結果的に理解が深まったりするということはよくあります。確かに、最初から答えを知っているベテランやインストラクターが常にそばにいて、何を聞いても即答してくれる環境があれば初心者は楽でしょう。でも、それだと肝心の教え合いの文化は学べません。
受験や学校教育では常に正解を求められますが、ビジネスの現場や世の中には正解のある問題よりも正解の無い問題の方が多いものです。たとえばどうしたら製品が売れるか?とかどうしたら幸せな働き方ができるか?とか、キャリア選択をどうすればいいか?等々。正解を教えてもらうことしか考えられない受験エリートはこうした問題を解くことはできません。
そうした中、わからない人同士での教え合いという体験が正解のない問題を考える時のヒントになるのではないかと私は考えています。それは知っているか知らないかで区別できるような単純な知識とは異なる知的財産です。それはロジックというよりはプロセスであり、演繹よりも帰納的なものです。
正解の無い問題に直面した時に、それをひとりで抱え込んでしまう社員ばかりの会社と、とりあえずどうなるかわからないけれどもその問題をシェアして一緒に考えてみようとする社員のいる会社とどちらが早くイノベーションを起こすことができるでしょうか。それは社員一人一人のスキルというよりも、行動様式に掛かっていると思います。一人一人異なる人生経験を持っていて、お互いがそれらを補完し合いながら正解の無い問題に立ち向かう方が、独りで考える人よりもより良い結果を導くことができるのではないかと思います。
MG研修では、ぜひわからない人同士でお互いの不明点を話し合ってみるということを試して頂きたいです。インストラクターは、自分が答えを知っていてもすぐにそれを教えるばかりでなく、他の参加者も巻き込んで「あなただったらどう考える?」という問いを通して「わからない人同士での教え合い」を促進してみると文化の醸成につながると思います。
・わからないことがあったら、わかる人に聞く
という文化と
・わからないことがあったら、仲間と相談する
という文化とはまったく異なります。
前者は上下関係であり、後者はヨコの繋がりです。
学級では先生はひとりですが、クラスメイトは30人います。
今の時代、正解のある問題の答えはGoogle先生で調べれば済みます。
今、世の中で必要とされているのは、正解の無い問題ばかりです。
それに立ち向かうために必要なのは、対話力だと思います。
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