GOLGOのひとりごと
【法律守ってますか?】記事一覧
- 2016.08.02
- パート、アルバイトの有給休暇
- 2016.06.07
- 最低賃金を破るとどうなるか?
- 2016.05.31
- 零細企業でもわざわざ36協定を出さなくてはならないのか?
- 2016.05.24
- 健康診断は会社の義務って本当?
- 2016.04.09
- 掃除時間は労働時間か。
- 2016.04.02
- 割増賃金
- 2016.01.20
- 妊産婦に関する労働基準法 その2
- 2016.01.12
- 妊産婦に関する労働基準法 その1
- 2015.08.16
- ストレスチェックの義務化
- 2015.08.02
- 研修時間に給与を支払う必要があるか
- 2015.07.07
- インターンの学生は労働者と何が違うか
- 2015.06.17
- 台風などの天災で公共交通機関がマヒした場合、給与を支払うか?
- 2015.06.02
- 定期健康診断やってますか?
- 2015.04.26
- フルコミッション給与制度の問題点
- 2015.03.10
- 失業保険の話
- 2015.02.03
- 労働法の全体像は・・・
- 2014.12.05
- 労働時間の原則と例外
- 2014.11.30
- 労働時間管理についての重要な通達「46通達」
- 2014.11.10
- 派遣と出向
- 2014.09.29
- 正社員とパートの格差は違法か?
- 2014.07.10
- 国民健康保険+厚生年金の社会保険
- 2014.06.30
- 労災保険に入ってないのに労災事故が起きたら?
- 2014.06.20
- 学生をアルバイトに雇う時の注意点
- 2014.06.10
- 管理職には残業代を支払わなくてもよい?
- 2014.06.05
- 健康診断の義務
- 2014.05.30
- 妊娠を理由に解雇してはいけません
- 2014.04.10
- 雇用保険の手続を忘れてしまったら?
- 2014.02.14
- 必ず会社に保管しておかなければならない労務帳簿
- 2013.12.24
- 会社の「安全配慮義務」
- 2013.11.30
- 親の介護で休みたいとの申し出があったら?
- 2013.11.18
- 「退職証明書」の話
- 2013.11.12
- ノーワーク・ノーペイの原則とは
- 2013.11.09
- 賃金や労働時間などの労働条件は口頭の説明だけでよいか?
- 2013.11.04
- 社会保険の調査で調べられること
- 2013.11.02
- 試用期間と契約期間
- 2013.10.12
- 社員が裁判員となった時の取り扱い
- 2013.09.28
- 会社から一方的に給与を下げることはできるか?
- 2013.09.23
- 外部の労働組合から団体交渉を申し込まれたら?
- 2013.09.14
- 減給の上限
- 2013.06.02
- なぜ裁判になると休業手当を100%支払うことになるのか?
- 2013.03.10
- 従業員の健康診断
- 2012.12.30
- 社会保険に加入しなければならない会社とは
- 2012.12.28
- 休業手当の未払いにご用心
- 2012.12.25
- 労働時間の原則
- 2012.10.10
- 妊産婦雇用の話
- 2012.09.30
- 年少者雇用の話
- 2012.09.10
- 36協定の話②
- 2012.09.09
- 36協定の話①
- 2012.09.05
- 社会保険の加入要件の話
- 2012.02.01
- 定年と再雇用の今を知る
パート、アルバイトの有給休暇
中小企業の労務管理の実態として「有給休暇は社員だけの特典」という誤解をされることがありますが、法律上はパート・アルバイトにも6か月以上の勤務をしていれば有給休暇を与えなければなりません。ただし、正社員よりも短い働き方をしているため、正社員とは付与日数に差をつけることはかまいません。
正社員の有給休暇
正社員の有給休暇法定付与日数は以下の通りです。
勤続6か月→10日
勤続1年6カ月→11日
勤続2年6カ月→12日
勤続3年6カ月→14日
勤続4年6カ月→16日
勤続5年6カ月→18日
勤続6年6カ月以上→20日
※全出勤日の8割以上出勤していることが条件
パート・アルバイトに対する有給休暇は、週当たりの所定労働日数が4日以下、週労働時間が30時間未満の場合に以下のように付与されます。
①週当たり4日勤務の場合
勤続6か月→7日
勤続1年6カ月→8日
勤続2年6カ月→9日
勤続3年6カ月→10日
勤続4年6カ月→12日
勤続5年6カ月→13日
勤続6年6カ月以上→15日
①週当たり3日勤務の場合
勤続6か月→5日
勤続1年6カ月→6日
勤続2年6カ月→6日
勤続3年6カ月→8日
勤続4年6カ月→9日
勤続5年6カ月→10日
勤続6年6カ月以上→11日
①週当たり2日勤務の場合
勤続6か月→3日
勤続1年6カ月→4日
勤続2年6カ月→4日
勤続3年6カ月→5日
勤続4年6カ月→6日
勤続5年6カ月→6日
勤続6年6カ月以上→7日
①週当たり1日勤務の場合
勤続6か月→1日
勤続1年6カ月→2日
勤続2年6カ月→2日
勤続3年6カ月→2日
勤続4年6カ月→3日
勤続5年6カ月→3日
勤続6年6カ月以上→3日
パート・アルバイトが有給休暇を取った場合の賃金については、「その日に働くはずだった時間数分」を支払う必要があります。
最低賃金を破るとどうなるか?
最低賃金制度とは、国が賃金の最低限度を決め、会社はその最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。つまり、会社が労働者に支払わなければならない、賃金額の最低限値を定めているのです。
最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
・地域別最低賃金→産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその会社に対して適用される最低賃金です。
・特定(産業別)最低賃金→「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されています。
○最低賃金額より低い賃金で契約した場合
最低賃金額より低い賃金を労働者と会社の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額で契約したものとみなします。
○会社が最低賃金を支払っていない場合
会社が労働者に最低賃金額を下回る額の賃金しか支払っていない場合には、会社は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。差額を支払わない場合、50万円以下の罰金に処される恐れがあります。
○最低賃金計算時に除外する項目
①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
②1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
③会社で決められた労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃
金など)
④会社で決められた労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時
間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
最低賃金制度について
最低賃金制度とは、国が賃金の最低限度を決め、会社はその最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。つまり、会社が労働者に支払わなければならない、賃金額の最低限値を定めているのです。
最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
・地域別最低賃金→産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその会社に対して適用される最低賃金です。
・特定(産業別)最低賃金→「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されています。
○最低賃金額より低い賃金で契約した場合
最低賃金額より低い賃金を労働者と会社の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額で契約したものとみなします。
○会社が最低賃金を支払っていない場合
会社が労働者に最低賃金額を下回る額の賃金しか支払っていない場合には、会社は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。差額を支払わない場合、50万円以下の罰金に処される恐れがあります。
○最低賃金計算時に除外する項目
①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
②1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
③会社で決められた労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃
金など)
④会社で決められた労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時
間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
零細企業でもわざわざ36協定を出さなくてはならないのか?
1週40時間、又は、1日8時間(これらを「法定労働時間」と言います)を超えて勤務させることは、法律により禁止されています。従いまして、法定労働時間を超えて勤務させると、労働基準法違反として6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられることになっています。
法定労働時間を超えて勤務させる場合は、書面による協定、いわゆる36協定(サブロク協定)というものが必要で、これを作成して、労働基準監督署に届け出ないといけません。
36協定を労働基準監督署に届け出ることによって、この罰則が免除されます。
社員数1名の零細企業でも36協定の届出は必要です。
つまり、本来は労働基準法違反だけど、この協定を届け出れば、労働基準法違違反でなくなるということです。このことについて、労働基準法第36条に規定されていることから、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。
○36協定の限度時間
36協定では、法定労働時間を超えて勤務させることができる時間を決めるのですが、その上限の時間が次のように定められています。
1週間→15時間
2週間→27時間
4週間→40時間
1ヶ月→45時間
2ヶ月→81時間
3ヶ月→120時間
1年→360時間
なお、これらの限度時間は、法定労働時間を超えて勤務させることができる時間のことで、会社で定めた労働時間を超えて勤務させる時間ではありません。
この規定は働き過ぎの防止、健康確保を目的としたものですので、どこの会社でも共通する「法定労働時間」を基準として決められています。
○36協定で決めた時間を超えて勤務させてしまった場合
36協定で協定した時間を超えて勤務させると違法になります。また、超えた時間に対する残業手当はきちんと支払わないといけません。もし、超えた時間に対する残業手当を支払わないと、二重で労働基準法違反になってしまいます。
健康診断は会社の義務って本当?
職場における健康診断は、有害物質などによる健康被害を早期に発見することや社員の総合的な健康状況を把握するために行うものです。この健康診断は労働安全衛生法上実施しなければなりません。
代表的な健康診断は主に2つあります。
- 雇入時の健康診断
会社は、常時使用する社員を雇ったときは、その社員に対して、医師による健康診断を受けさせなければなりません。
- 定期的な健康診断
会社は、常時使用する社員(満15歳以下の社員を除く。)に対して、1年以内ごとに1回、医師による健康診断を受けさせなければなりません。
○健康診断を受ける義務はあるか
社員(一部のパート社員等を除く)は、会社が行なう健康診断を受けなければなりません。ただし、会社が指定した医療機関での健康診断を希望しない場合、その他の医療機関で健康診断を受け、診断を受けるべき項目をきちんとやり、その結果を証明する書面を会社に提出することができれば問題ありません。
○健康診断結果の通知と記録について
会社は、遅滞なく診断結果を社員に通知し、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければなりません。
○健康診断実施後に会社がやるべきこと
会社は、健康診断の結果についての医師の意見を聴き、その必要があるときは、その社員の実情を考慮して、就業場所・業務の変更や、労働時間の短縮を行わねばなりません。また、特に必要な場合は医師や保健師による指導を社員に受けさせねばなりません。
○健康診断結果報告義務
定期的な健康診断を実施した際、常時50人以上の社員を使用する会社は、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を管轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。
健康診断を受けさせないからといって、直ちに罰則を受けるわけではありません。しかし、会社にとって特に欠けては困る社員が、診断が遅れたことで病気にかかり、長期の離脱を余儀なくされる可能性もゼロではありません。働きやすい職場環境を整える意味でも健康診断は実施する方がよいでしょう。
掃除時間は労働時間か。
社内の掃除や着替えなど、働く前の準備や後片付けの時間は労働時間なのでしょうか。
労働時間には次のような判断基準があります。
① 朝の掃除、準備
この場合、仕事前の掃除が会社に命じられていたり、当番制によってやらざるを得なくなっている場合など、会社からの命令だと考えることができる場合は労働時間となります。
ボランティアで行っている場合には労働時間になりません。
② 作業準備時間、後片付けの時間
仕事を進めるために必要な作業であれば、労働時間となります。
例:デパートなど、開店と同時に全員が職場につき、お客様を迎えるための開店準備作業をする場合や、閉店後、翌日の仕入れを決めるために後片付けを兼ねて売上と在庫を計算したりする場合など
この場合も労働者の意思で業務を行う場合は労働時間になりません。
③ 更衣時間
会社内において着替えを行うことを会社から強制されている場合には、
会社の命令であると考え、労働時間となります。
④ 仕事前の朝礼の時間
仕事前の朝礼の時間に関しても、「会社の命令なのかどうか」で判断されることになります。
また、命令ではないにしろ朝礼に参加するかどうかで会社からの評価が変わってくる場合は労働時間となります。朝礼で当日の仕事の説明をする場合にも同様です。
以上をまとめると、準備や後片付けを労働時間とするかどうかは、会社に命じられたことか、仕事を進めるために絶対に必要なことかどうかで変わってくるという事です。
仕事が始められる状態で始業時間になり、終業時刻になって後片付けを始めるのは当たり前のことのように思えます。
しかし、そのための準備や片付けの時間が労働時間に当てはまった場合、給料の支払いが必要になってしまいます。労働時間を決める時には、「世間一般の常識」だけではなく、このような「法律で決まっていること」があることに気をつけましょう。
割増賃金
労働者は労働が1日8時間を超えた時間(時間外)について、通常の賃金の計算方法よりも割増してお金を受け取ることができます。また午後10時~午前5時の深夜時間に働いた時間についても同様です。この場合の計算方法は以下の場合に分けられます。
① 1日8時間を超えた労働時間が1ヶ月60時間以内の場合→2割5分以上で計算
② 1日8時間を超えた労働時間が1ヶ月60時間を超えた場合→5割以上で計算
※中小企業については適用が猶予されているため2割5分以上
③ 午後10時~午前5時に働いた場合→2割5分以上で計算
④ 法定休日に労働させた場合→3割5分以上で計算
※法定休日:労働基準法などの法律で決められた休日のこと。
割増するお金の計算のベースとなる賃金には、家族・通勤手当などの賃金は入れません。
例:会社指定の労働時間が午前8時から午後5時(休憩1時間)までの実働8時間、
1か月45時間、1年360時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を3割
とする大企業の場合
○1か月45時間以内の時間外労働について
17時から22時→1時間当たり賃金×1.25 (時間外労働)
22時から5時→1時間当たり賃金×(1.25+0.25) (時間外労働+深夜労働)
5時から8時→1時間当たり賃金×1.25 (時間外労働)
○1か月45時間超~60時間以内又は1年360時間超の時間外労働について
17時から22時→1時間当たり賃金×1.30 (時間外労働)
22時から5時→1時間当たり賃金×(1.30+0.25)(時間外労働+深夜労働)
5時から8時→1時間当たり賃金×1.30(時間外労働)
○1か月60時間超の時間外労働について
17時から22時→1時間当たり賃金×1.50(時間外労働)
22時から5時→1時間当たり賃金×(1.50+0.25)(時間外労働+深夜労働)
5時から8時→1時間当たり賃金×1.50(時間外労働)
○法定休日労働の割増率
5時から22時→1時間当たり賃金×1.35(法定休日労働)
22時から5時→1時間当たり賃金×(1.35+0.25)(法定休日労働+深夜労働)
妊産婦に関する労働基準法 その2
妊娠中及び産後1年を経過しない女性に関して、労働基準法その他の法律では一定の保護を与えています。その1で紹介したルール以外のものを紹介します。
1、労働基準法上のルール
・妊婦の軽易業務転換(法第65条第3項)
妊娠中の女性が請求した場合には、今やっている業務から他の軽易な業務に転換させなければなりません。
・妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限(法第66条第1項)
変形労働時間制がとられる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1日及び1週間の法定時間を超えて労働させることはできません。つまり、妊産婦が求めた場合は変形労働時間を適用することができません。
・妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限(法第66条第2項及び第3項)
妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、又は深夜業をさせることはできません。
・育児時間(法第67条)
生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができると労働基準法で定められています。
2、その他の法律でのルール
男女雇用機会均等法において、「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」が決められています。会社は従業員が妊娠出産またはそれに付随して認められる権利を使ったことなどを理由として本人に不利益な取り扱いをしてはいけないと定めています。
※ 不利益な取り扱いと考えられる例
○ 解雇すること
○ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
○ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
○ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
○ 降格させること
○ 就業環境を害すること
○ 不利益な自宅待機を命ずること
○ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
○ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
○ 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと
妊産婦に関する労働基準法 その1
育児に関する関心がますます高まっている今、妊産婦への対応も重要な労務管理ポイントです。労働基準法で定められている妊産婦に関するルールは以下の通りです。
1、産前産後の保護
女性労働者が出産する場合、産前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)、産後8週間の休業が認められています。産前休業は労働者本人からの請求があれば休ませなければならないとなっていますので、出産直前ギリギリまで働くことを本人が選ぶことができます。
産後休業は本人の請求や意思を問わない強制的なものですが、産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が支障がないと認めた業務に就かせてもよいとされています。
産前産後休業中の賃金の支払いは使用者に義務付けられておらず、就業規則等に有給の定めのない限り無給でもかまいません。
2、母性機能に有害な業務への就業禁止
母体に有害であるとされる一部の業務について、女性を働かせてはならないとされているものがあります。
例えば坑内労働については、会社は、妊娠中の女性および坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性を、坑内で行われる全ての業務に就かせてはなりません。また、上記以外の満18歳以上の女性についても、坑内で行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるものに就かせることはできません。そのほか、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務、その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。
また、使用者には、妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させることが義務付けられています。
ストレスチェックの義務化
労働安全衛生法が改正となり、平成27年12月1日から一定規模の事業主に対してストレスチェックが義務化されます。ポイントは以下の通りです。
1、概要
常時使用する労働者に対して、医師、保健師等※1による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック※2)を実施することが事業者の義務となります。ただし、労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務とされています。
※1 ストレスチェックの実施者は医師、保健師のほか、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士を含める予定。
※2 検査項目は、「職業性ストレス簡易調査票」(57項目による検査)を参考とし、今後標準的な項目を示す予定。検査の頻度は、今後省令で定める予定で、1年ごとに1回とすることを想定。
○検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。
○検査の結果、一定の要件※3に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務となります。また、申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されます。
※3 要件は、今後省令で定める予定で、高ストレスと判定された者などを含める予定。
○直接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置※4を講じることが事業者の義務となります。
※4 就業上の措置とは、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を行うこと。
労働者のメンタル部分のケアについてもますます重要度が高まります。快適な職場づくりのため、法律に先駆けて対策を検討するとよいでしょう。
研修時間に給与を支払う必要があるか
会社が従業員に対して時間外に研修を行った場合、たとえその時間に作業をしていなくても給与を支払わなければならない場合があります。給与支払いの必要があるかどうかついては、以下の点によって決まります。
- 強制参加の研修であれば給与支払いの必要あり
強制的に参加をさせている研修であれば、会社の「指揮命令」によるものですから、その時間は労働時間となり、給与支払いの義務が出てきます。
- 強制参加としてなくても「参加が暗黙のルール」であれば給与支払いの必要あり
任意で参加する研修であったとしても、「実質的には強制されているのと同じ」状態であれば、その研修時間はやはり労働時間となります。過去の裁判では「会社の黙示的な指示があると認められるときには、労働時間として取り扱う」と言う解釈がなされています。黙示的指示があったかどうかを判断する基準は以下のものがあります。
l 参加する従業員の仕事内容とどれだけ関連しているか
l 労働安全衛生法など法令に基づいて実施するものであるかどうか
l 参加しないことにより不利益な取り扱いがあるかどうか
研修に参加しないことが給与査定に影響したり、罰金などペナルティーがあった場合、表向きは強制でなくても実質的に参加を強制されていると見なされます。
逆に言うと、研修時間を「労働時間」としないためには、就業規則上の制裁等の不利益取り扱いによる出席の強制をせず、「従業員側から自発的に申し込む書類を提出してもらう」など、自由参加であることを示す状況を整えましょう。
インターンの学生は労働者と何が違うか
昔に比べてインターンシップ制度が一般化してきました。インターンシップは学生にとって在学中にリアルな職業体験ができること、会社の社風や雰囲気が体験できることなどから、今や就職活動の一環として積極的に使われています。
また企業側も、CSR(社会的責任)の面から、またはミスマッチによる早期退職などを防ぐためなどの理由からインターン学生受け入れを積極的に行うことが多くなっているようです。ところが、中には「職業体験」とは名ばかりで、実態は労働者として作業をさせているケースもあり、社会的に問題視されています。
インターンシップにおける学生の労働者性の有無の判断基準は、厚生労働省が以下のような通達を出しています。
『一般に、インターンシップにおいての実習が見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者には該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は、個々の実態に即して行う必要がある』(平成9・9・18 基発636号)
つまりインターン中にやっていることが「直接生産活動をしている」と見なされる場合は、もはや職業体験でなく、「労働」であるという解釈になっています。人事の担当者はインターン内容が「労働であるかどうか」を慎重に検討しなければなりません。
労働者であるか否かによって、以下の点で違いがあります。
1、賃金の支払い義務
労働者であれば労働基準法や最低賃金法による給与の制約があります。労働者であれば「無給」や「最低賃金以下」の給与で働かせることができません。
2、労災の適用
労働者の場合は、労災保険の適用となります。インターン中のケガや通勤途中でのケガなどについて労災保険の補償が受けられることになります。
インターン学生受け入れについては、専門家の意見を聞きながら適法に行ってください。
台風などの天災で公共交通機関がマヒした場合、給与を支払うか?
台風などの天災で電車などがストップした結果通勤できない従業員に対しての給与の支払いは原則として必要ありませんが、一定の場合には労働基準法の「休業手当」を支払わなければならないことがあります。
休業手当とは:
労働基準法では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定めてあります。例えば
・不景気で工場の操業を止めた
・採用内定者について、経営悪化により自宅待機を命じた
などの場合は、会社側の事情による休業であるため、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければなりません。
台風で電車がストップした場合はどうか:
台風で公共交通機関がストップしたことは天災という外部の要因によるものであり、会社ではどうしようもない不可抗力です。ですから、一般的には「使用者の責に帰すべき事由」には当たらないとされています。
ところが、公共交通機関のストップによって出勤できない従業員が一部のみであり、近隣の従業員は自転車などで通勤できた場合は事情が違います。通勤をできる従業員も含めて休業を命じた場合には、通勤可能な従業員に対しては休業手当を支払わなければならないでしょう。
台風などの天災の場合、子供の学校が休校になったり、通所介護施設がストップしたりといった家庭事情も発生します。従業員の安全と家庭事情を考慮して自社に合ったルールづくりをしましょう。
定期健康診断やってますか?
労働安全衛生法には、会社は定期健康診断を従業員に受けさせなければならない旨が定められており、労働者にも受診義務があります。
対象労働者:
「常時使用する労働者」が定期健康診断を受けさせる対象となります。なお、短時間労働者(パート勤務者等)に関しては、以下の2つの要件のいずれかを満たす場合に「常時使用する労働者」に該当します。
1、雇用期間の定めのない短時間労働者。なお、雇用期間の定めのある場合、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
2、1週間の労働時間数が、事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
頻度:
定期健康診断を行う時期は、原則として1年に1回以上(交代制で深夜業務を行う人は6ヶ月に1回以上)、そして入社時です。ただし、労働者が、入社3ヶ月前に健康診断を受けた結果を証明する書面を提出した場合は、その健診項目に相当する項目は省略する事ができます。
定期健康診断を怠ることによるリスク:
健康診断を受けずに元々の病気が悪化して死亡等に至った場合、遺族や家族に会社の責任を問われる可能性があり、損害賠償を請求されることも考えられます。また、労働安全衛生法に違反している為、労働基準監督署からの是正勧告の実施や、労働者の会社に対する信頼低下にもつながる恐れがあります。
健康診断を受けさせない事は、法律に違反するだけでなく、余計なリスクも抱えてしまいます。そうならないためにも、対象者には健康診断を受けさせる事を忘れないようにしてください。
フルコミッション給与制度の問題点
最近では実力主義・成果主義を重視する会社が増えてきました。 会社の本音としては利益を生む人材にしかお金を出したくないということでしょう。完全歩合とはつまり、働いて成果を上げた分だけ一定の計算によって給料が支払われるというものです。
しかし日本の法律に照らし合わせてみると、完全歩合給というシステムは労働基準法違反になってしまいます。
○完全歩合給は違法か
完全歩合給という労働条件で求人をかけている会社を見ると、ほとんどの募集条件が「営業」あるいは「販売」であるが、物が売れなければ給料もゼロにしたい、という会社の都合を表していると言えるでしょう。しかし、日本の法律では利益が全く得られなかったとしても、働いた労働者に給料を支払わないということは許されません。
法律では、「売っただけお金を得ることができるというルールで働いている労働者について、会社はその人が実際に働いた時間分についても最低賃金額以上支払わなければならない」という決まりがあります。従って、その人のおかげで会社が儲かったかどうかに関わらず、働いた人に対して会社はその分のお金を支払わなければならないのです。
○最低賃金額とはどのくらいの金額なのでしょうか。
上記における最低賃金は地域別・職種別に1時間あたりの最低額が決まっています。従って歩合給の仕事で成果を上げられなかったとしても、会社は労働時間×最低賃金という最低限の金額を労働者に対して支払う必要があることになります。
○「最低賃金」ではダメな場合も
会社は最低賃金さえ払っていればよいのかというと、必ずしもそうとは限りません。
なぜならば、国では「実際の給料とあまり差がないくらいの給料が保障されるように保障給の額を定めるべき」と決めているからです。
同じ会社の他の社員に比べて極端に低いような場合は、法的に問題ありと判断される可能性もあります。一般的には、休業補償と同じ通常の賃金の60%程度が給料の最低ラインと決められているようです。
失業保険の話
失業保険について
雇用保険に加入していた人(65歳未満)が、会社を辞めた際にもらえる「失業保険」と呼ばれているものは、正式には雇用保険の「基本手当」と言います。この基本手当をもらうには、下記の条件を満たしていることが必要です。
1、離職して、雇用保険の被保険者ではなくなっていること
2、失業していること
3、離職日以前の2年間に、賃金支払い基礎となった日が11日以上ある月が通算して12か月以上あること
上記2の失業とは、単に仕事を辞めただけではなく、「働く意思と能力」があり、仕事を探しているにも関わらず、仕事のない状態を言います。
基本手当を受給するためには、退職した会社から離職票を発行してもらい、住所地を管轄するハローワークで求職の申し込みを行う必要があります。
失業保険の金額
「基本手当日額」に、「所定給付日数」をかけて算出します。
「基本手当日額」とは、離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金合計を
180で割って算出した金額のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)の金額です。
「所定給付日数」とは、雇用保険に加入していた期間、年齢、離職理由等により決まる、「基本手当日額」をもらえる日数分のことを言います。
詳細な日数に関しては、ハローワークのHP等で確認できますので、ご覧ください。
基本手当を受給するためには、会社を辞める際に「離職票」を発行してもらっておくことが必要です。また、定期的にハローワークに通い、仕事探しを積極的に行う必要があります。次の就職先が決まるまでの生活保障として、有効活用してください。
労働法の全体像は・・・
人を雇うときに関連する法を総称して「労働法」と言いますが、具体的には以下のような類型に分かれています。
1、個別の労働関係にかかるもの
労働基準法
労働契約法
労働安全衛生法など
2、集団の労働関係にかかるもの
労働組合法
労働関係調整法など
3、雇用のマーケット(求人や求職)にかかるもの
職業安定法
雇用保険法
労働者派遣法
男女雇用機会均等法など
労働契約とは、「賃金を払うこと」と「労務を提供すること」を交換しあう契約ですので、原則論としては、給与を払う限り「会社の言うとおりに働きなさい」と命令することができます。
ただし、もちろん相手は人間ですから、その人権は尊重されなくてはなりませんし、ひどい労働環境を強いることがあってはなりません。そのため、使用者(会社)の行き過ぎた行動を抑制・制限する目的で労働法が整備されてきました。それぞれの類型ごとに定めてある制限内容例は以下の通りです。
1、個別の労働関係にかかるもの
一日などの労働時間の上限、休日の最低日数、有給休暇の最低付与日数、解雇のやり方、職場の衛生管理方法、雇用契約期間設定など
2、集団の労働関係にかかるもの
賃金やその他待遇について労働者側が集団で交渉することを拒否できないなど
3、雇用のマーケット(求人や求職)にかかるもの
求人条件の最低ライン、派遣方法のルール、性差別の制限など
現在は雇用形態の多様化や社会情勢の変動から、労働法も多岐にわたります。自分の会社に特に関連する労働法は何か、どのような点に注意すべきかについては、社会保険労務士など専門家に相談し、一緒に整備をすすめていくとよいでしょう。
労働時間の原則と例外
労働基準法では、労働時間について以下のように原則を定めています。
・1日8時間まで
・1週44時間まで
ただし、この原則を全ての会社に適用すると、業務そのものが円滑に進まないケースが出てくるため、いくつか例外が設けられています。
例外1:週44時間の業種
常時労働者数10人未満の商業・小売サービス業・保健衛生業などについては、週44時間まで認められます。
これらの業種については、手待ち時間が多く、少ない人員で店番などをする必要があることから、緩和措置そして設けられています。
例外2:変形労働時間制
変形労働時間制は、1日あるいは1週で見ると法定労働時間を超えていても、ある一定期間で「平均すると」法定労働時間を超えないならばよしとする例外規定です。
月の上旬、下旬などを比較して繁閑の差が大きい場合に導入により効果が見込まれます。
一定期間は「1ヶ月」「1年」などで区切られ、それぞれ就業規則での明文化または労使協定の締結が必要です。
例外3:みなし労働時間制
営業職などで1日中外出しており、労働時間を正確に算定することができない場合、「とにかく一定時間労働したとみなす」という例外です。
ただし、この制度はあくまで「会社が労働者の労働時間を算定するのが難しい」ことを条件に認められるものですから、携帯電話その他のモバイル機器で管理を用意にできる現代では中々認められないようになりました。安易に「営業職はみんなみなし労働時間だ」と考えないようにご注意ください。
例外4:専門業務型裁量労働時間制
デザイナーや法律の専門家など、労働時間で労働の価値を測ることに馴染まない一定の職種について、あらかじめ決めた労働時間働いたとみなす例外です。
対象業種が決められているうえ、労使協定の締結が必要です。
これら労働時間に関する例外規定を活用しながら、適切な労働時間管理を進めて下さい。
労働時間管理についての重要な通達「46通達」
残業時間についての実務上の管理方法について、平成13年4月6日に重要な通達があります。通達日にちなんで通称「46通達(ヨンロクつうたつ)」と呼ばれるこの通達の要旨は以下の通りです。
46通達の要旨
- 「会社側が」、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。
- 記録方法は以下のいずれかにすること。
(1). 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
(2). タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
- 「自己申告制」によりこれを行わざるを得ない場合、①労働者に十分な説明を行う②時々自己申告による労働時間と実際の労働時間が合っているかを会社が調査する必要がある。
つまり、出退勤を客観的に管理するのは「会社のやること」であるという解釈です。この通達に照らし合わせると、労働時間(始業・終業時刻、休憩時間、残業など時間)がキチンとわかるように管理していないこと自体に問題があることになります。
残業代の支払いをめぐる労使トラブルにおいては、実際の労働時間が重要な争点になります。会社がキチンと労働時間管理をしておらず、原告(労働者)が他の客観的証拠(パソコンのログインログアウト記録や、帰宅時間をメモした手帳など)を提出して実労働時間を主張した場合、争いが会社に不利に働くこともあります。
また、実際の労働時間を正確に知ることは、労働生産性を測る意味でも重要です。「面倒だから」「今まで時間管理なんて慣習で曖昧にしていたから」という理由で時間管理を避けず、しっかり正確に記録することをおすすめします。
派遣と出向
一般の方にはあまり知られていない法律ですが、職業安定法という法律があります。
職業安定法は、企業による労働者の募集・職業紹介・労働者供給について規制している法律です。
この法律では原則として労働者供給『事業』というものを禁止しています。
実は派遣も出向も、ここでいう『労働者供給』の一種です。
なのに、派遣や出向が違法でないのは、上記の原則の例外とされているからです。
派遣に関しては労働者派遣法という法律があり、そこで定められた手続を経て行えば違法ではありません。
派遣を『業として行う』つまり、派遣で利益を上げることも、禁止されてはいません。
一方、出向に関しては出向法という法律はありません。
ただし、出向という言葉には定義があり、事業性を持たないことが要件とされています。
つまり、出向そのものは『労働者供給』に該当するが、出向によって企業が利益を上げないものと定義されているため、労働者供給『事業』には該当しないということなのです。
よって、これらの例外を除けば、労働者供給事業(いわゆるピンはね屋)は違法行為であり、違反すれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則が適用されます。
この罰則は、供給元だけでなく、供給先(受け入れ企業側)にも適用されるので、要注意です。
たとえば、派遣労働者を受け入れる時などには、派遣元がきちんと派遣法上の手続きを踏んでいるかなどを、書類で確認する必要があります。
ちゃんとした派遣会社だと思って労働者を派遣してもらっていたら、それが後で偽装請負や二重派遣であったことが判明し、労働者供給事業とみなされてしまった場合、こちらも罰則を受けることになるかもしれません。
正社員とパートの格差は違法か?
平成20年4月1日からパート労働法が改正され、パート社員の差別的取り扱いが禁止されましたので、パートタイム労働者の差別的な取扱いをすると労働基準監督署から是正指導を受ける可能性があります。
ただ、ここで差別的取扱いを禁止されているのはすべてのパートではなく、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に該当するものだけです。その「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に該当するかどうかは、以下の3点から判断されます。
① 職務内容が同じであるか
仕事の内容、責任の程度、期待される業務等から判断されます。
② 転勤やその他人事異動の取り扱いが同じであるか
正社員には転勤範囲に制限がなく、パートには制限が設けられていたとしても、実質的に差がない場合には同一と判断されます。
③ 契約期間に期間の定めがないか
有期契約であったとしても、何度も更新された場合には、期間の定めがない契約と判断されます。
3点ともすべて正社員と同じ場合は、パートであることを理由としての差別的取扱いが禁止されます。別の言い方をすれば、1点でも正社員と異なっていれば、差別的取扱いとはみなされないことになります。職務内容が同一であるパートがいたとしても、「人事異動の有無や範囲」までも正社員と同一ということはほとんど考えられません。そのため、パートと正社員に賃金格差があったとしてもただちに是正指導を受けることは少ないでしょう。
ただし会社は、処遇を公正にしようとするなら、仕事の能力に合わせて賃金設定をすべきでしょう。その意味では、「パートだから」という理由での賃金格差が本当にふさわしいことかを確認してみることは労務管理上必要であると言えます。
国民健康保険+厚生年金の社会保険
法人事業所、および、常時5人以上の従業員を雇用する事業所は強制的に「協会けんぽ等健康保険と厚生年金保険」=いわゆる社会保険が適用されます。従って、これらの事業所に勤務する場合には、本来は厚生年金にのみ加入することはできません。しかし、例外的に健康保険の適用除外申請を提出し、認可が下りれば厚生年金にのみ加入出来るケースもあります。
健康保険の適用除外申請が出来るのは、個人事業としてすでに国民健康保険組合に加入していて、法人成りをするケースです。この場合には、所属する国民健康保険組合から証明をもらった申請書を管轄の年金事務所へ提出します。承認が得られれば、「国民健康保険+厚生年金」のセットで加入が出来ます。
国保と健保は、それぞれ特徴があります。
健康保険は保険料が高い分、手厚い給付が受けられます。一方、国保組合運営の国保は、保険料が安く、従業員の保険料を会社が折半負担しなくてよいなどのメリットがあります。
<健康保険の特徴>
・保険料は給料に応じて変動する。高い。
・毎年改定される。給与変動に伴う改定もある。
・傷病手当金、出産手当金がある
・会社を辞めた後の任意継続制度がある
・健保組合の場合、上乗給付がある場合があり、給付が手厚い
<国民健康保険の特徴>
・保険料は保険者(市町村)の財政に左右される
・国保組合は保険料が安く、市町村は高い傾向にある
・傷病手当金と出産手当金がない。健保に比べると給付が少ない
市区町村が保険者の国民健康保険に加入している場合は、「協会健保健康保険+厚生年金保険」に加入しなければなりませんが、現在国保組合に加入しているのであれば、保険料が安い傾向にあるので、適用除外申請を検討してみても良いでしょう。
また、給付内容が健保と国保では違うため、適用除外申請を行う際は、社員へ国保組合へ引き続き加入することの説明を行いましょう。
労災保険に入ってないのに労災事故が起きたら?
労働者を1人でも雇っている事業主は労災保険の加入手続きを行わなければなりません。この労災保険手続きを行っていない場合、事故発生で思わぬ費用を払わなければならないことがあります。
労災保険の加入手続きとは、「労働保険関係成立届」を労働基準監督署に提出することですが、この手続きを行っていなかったとしても、労災事故が起きた場合は「労働者保護の観点」から保険は適用されます。つまり労働者は労災保険の給付を受けることができます。
では、事故が起きるまでは加入しなくても良いのではと思ってしまうかもしれませんが、未加入時に事故が発生した場合、会社に対してペナルティが課せられます。
パナルティは遡って保険料を徴収する他に、給付を受けた金額の40%又は100%を事業主から徴収します。
<「故意」に手続きを行わなかった場合>
労災保険の加入手続きについて行政機関から指導等を受けたにも関わらず、手続きを行わない期間中に事故が起きた場合、「故意」と判断されます。「故意」と判断された場合には、保険給付額の100%が徴収されます。
<「重大な過失」により手続きを行わなかった場合>
労災保険の加入手続きについて行政機関から指導等は受けていないものの、労災保険の適用事業となってから1年を経過し、手続きを行わずに事故が起きた場合、「重大な過失」と判断されます。この場合には、保険給付額の40%が徴収されます。
例:行政機関から加入の指導は受けていなかったが、労災加入手続きを行っていなかった会社で、賃金日額1万円の従業員が労災事故で死亡し、遺族に労災保険から遺族補償一時金が支給された場合。
遺族補償一時金(1万円(賃金日額)×1000日分)×40%=400万円
ペナルティの額が想像以上に高額になることもあるので、未加入の場合は早急に手続きを行いましょう。また、労災保険は場所ごとに適用になるので、支店を開設した場合の手続きも忘れずに行いましょう。
学生をアルバイトに雇う時の注意点
20歳未満では、未成年ということで両親や行政が関係する部分もあり、年齢区分ごとに(高校生と大学生の年齢による区分)特別の規制がありあす。
高校生ですと18歳未満で年少者となり、大学生は、20歳未満者で未成年者となります。
高校生のアルバイトについての制限:
高校生のアルバイトでは、
1、年少者の「年齢証明」の備付義務があります。
2、残業(時間外・休日労働)、深夜業(午後10時~翌朝5時)をさせることが原則としてできません。
3、一定の危険有害業務(重量物や安全・衛生上危険な業務)をさせることができません。
労働社会保険について:
また、学生の雇用保険と社会保険についてですが、「学生で、親の扶養に入っているのだからいずれも入らなくてよい」という訳ではありません。
学生アルバイトでも下記の条件を満たしていたら保険加入となります。
・雇用保険
夜間学生で、週20時間以上、31日以上の雇用見込みがある場合は加入します。
※ただし、昼間学生は、原則対象外となります。
・社会保険
通常勤務する正社員の労働時間、労働日数の4分の3を超えていること。
扶養家族の認定基準は収130万円未満なので、その金額を超えていること。
以上の場合は社会保険に加入しなければなりません。
・労災保険
また、学生アルバイトでも労災保険の対象になります。労災保険は保険料の個人負担はありませんが、労働保険年同更新時の労災賃金総額に学生アルバイトの賃金も加える必要があります。
管理職には残業代を支払わなくてもよい?
「管理職には残業代を支払わなくてもよい」と巷で言われていますが、本当にそうなのでしょうか。
この残業代支払いの必要性は、管理職の方が、労働基準法上の「管理監督者」に当たるかどうかによってことなります。
管理監督者は、経営の管理的立場にある者又はこれと一体をなす者をいい、労働時間や休憩、休日について適用除外が認められています。
しかし、実態としての権限がない「名ばかり管理職」には賃金の支払いが必要になります。また、法律で定められている管理監督者に該当する場合でも、深夜労働(午後10時から翌朝5時)には割増賃金の支払いが必要となります。
管理監督者として認められるか否かについては、次の4点から判断されます。
① 重要な職務内容を有しているか
② 重要な責任と権限を有しているか
③ 現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまないものか
④ 賃金について、その地位にふさわしい待遇がなされているか
①②については、人事考課を行う、業務の指示をする等も判断の要素になります。具体的な内容としては、労務管理を行う立場にある者であって「部下がいない課長」などは管理監督者に該当しないことが多いでしょう。
③については、遅刻や欠勤などで賃金を控除されたりしている場合には、同管理監督者に当たらないことが多いです。ただし、出退勤の時刻記載を義務付けていたことをもってすぐに管理監督者ではないというわけではありません。会社には安全配慮義務がありますので、管理者の健康に配慮して出退勤時刻の把握及び管理は必要だからです。
④については、一般社員と管理職の間で明確な賃金差が必要とされます。管理職昇格したら、残業手当が出なくなり、一般社員の時よりも給与が下がってしまったというような逆転現象がある場合はまず管理監督者として認められないでしょう。
現在の基準で管理監督者として認められる社員は。きわめて少ないと言えます。中でも、労働時間について出退勤の制約がないのは、役員クラスの一部だけです。
そのため、管理監督者として認められなかった場合を見越した対応が必要となります。一つの案としては、管理職には、残業代相当の管理職手当を支給することです。こうすることによって、管理監督者として認められなかった場合に未払い賃金を請求されたとしても、一定の残業代は支給していることになります。
健康診断の義務
会社に実施義務のある健康診断は、【一般健康診断】と【特殊健康診断】に分けられます。
<一般健康診断>
①雇入時の健康診断:労働者雇入れの時
②定期健康診断: 1年以内ごとに1回
③特定業務従事者の健康診断:深夜業に配置替えの際、6月以内ごとに1回
④海外派遣労働者の健康診断:海外に6ヶ月以上派遣するとき、帰国後国内業務に就かせる時
⑤給食従業員の検便:給食の業務に従事する労働者の雇入れの際、配置替えの際
<特殊健康診断>
石綿などの特に有害な業務に従事する労働者に実施
年1回の健康診断以外にも、会社には健康診断の実施義務があります。健康診断を実施しない場合、会社は労働安全衛生法違反によるペナルティーを科せられるほか、健康診断を受けさせなかった結果労働者が病気になった場合には損害賠償責任が生じる可能性があります。
また、たとえ健康診断を実施していても、健康に異常が見つかった社員を放置した場合は責任を問われる可能性があります。異常があった場合には、再検査や休暇などの措置を行う事が必要です。
【健康診断費用はだれが負担すべきか】
行政通達によると、労働安全衛生法により実施を義務付けている以上、健康診断の費用負担は当然会社がすべきとされています。
一般健康診断中の賃金の支払いについては、法律で定められていません。会社と労働者が協議して決めるべきとされています。しかし、実施義務が会社にある以上、給与は支給したほうが望ましいでしょう。
特殊業務従事者に対する特殊健康診断については、業務との関連性が強いため、労働時間内に行い、賃金を支払うべきとされています。
健康診断実施は法律上求められていることでもありますし、労働者の健康に配慮している会社の意思表示手段としても有効ですので、受診をしていない場合は今後の受診をしましょう。
妊娠を理由に解雇してはいけません
法律では、「妊娠や出産を理由とする解雇」を禁止しています。また、妊娠や出産を理由として女性労働者を不利益に扱うことも禁止されています。
解雇が禁止されているのは以下の期間・理由です。
・産前産後の休業中及びその後30日間の解雇
・女性労働者の婚姻、妊娠、出産を理由とする解雇
・妊娠中及び産後1年を経過しない女性労働者の解雇
・育児休業の申し出、取得を理由とする解雇
近年は、この「妊産婦への不利益取り扱い禁止」が社員側にも広く認知されてきていますので、乱暴な解雇や不当待遇はすぐトラブルになってしまいます。
妊娠や出産を理由とする解雇は禁止されていますが、産前産後休業中の給与は支払わなくて問題ありません。社会保険に加入していれば、産前産後休業時には給与の3分の2相当額が出産手当金として支給されます。この期間、会社の負担は社会保険料のみです。
また、産前産後休業後の育児休業も無給で問題ありません。雇用保険に加入していれば、原則子供が1歳になるまで育児休業給付金が受給出来ます。さらに、産前産後休業とは違い、育児休業時は社会保険料が本人、会社ともに免除となります。そのため、会社としては実質的な負担はありません。
問題はむしろ休んでいる間の「代替要員の確保」や「復帰」について起こりがちです。どのくらいの期間で復帰することを希望しているか、復帰後の労働時間はどうするかなど、子育てに関する予定を事前によくヒアリングしておきましょう。無理やり退職に追い込むことは、トラブルの原因になりますので、話し合いはあくまで慎重に行ってください。
雇用保険の手続を忘れてしまったら?
雇用保険の資格取得(入社手続き)を忘れていた場合、過去に遡って手続きを行うことはできますが、原則として2年間しか遡ることができません。
2年以上前から入社をしていた場合、本人の雇用保険加入期間が少なくなり、本人が退職した時に失業給付の額に影響が出る可能性があります。(失業給付は、加入期間によって支給額が変わります。)
ただし、例外として2年以上遡って手続きすることも可能です。
この場合は、当該2年以上前の期間について雇用保険料を天引きしていた事実が必要となります。つまり、過去の賃金台帳を提出して「前から雇用保険に加入しているという前提で保険料天引きをしていたが、たまたま手続きを忘れていただけだ」という状態でなければ2年以上の遡り手続きはできません。
加入手続きが済んでいるかどうかを確認するには:
管轄のハローワークで「事業所被保険者台帳提供依頼書」を届け出ることで、現在の被保険者一覧表が観覧できます。
現在の被保険者一覧表で雇用保険の加入漏れかどうか確認できます。
加入漏れは会社への信頼感を損なうことにもなりかねませんし、社員にとって失業保険給付に関わる一大事となりますので注意してください。
できれば2年に1回は加入漏れがないかを確認するような体制を整えておくとよいでしょう。
必ず会社に保管しておかなければならない労務帳簿
【法定帳簿とは】
労働基準法上、会社に必ず備えておかなければならない書類があります。これを法定帳簿と言います。
法定帳簿とは特に
①労働者名簿
②賃金台帳
③出勤簿(タイムカードなど)
この3つをいいます。
労働基準法で、どんな規模の会社であっても作成することが義務付けられている書類です。
法定帳簿は、その終了の日から3年間会社で保存しなければいけません。
※終了の日とは、退職日や死亡の日等を指します。
では、それぞれの書類にはどんな内容が記載されている必要があるでしょうか。
【法定3帳簿に記載されているべき内容】
◆労働者名簿には、労働者の
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 履歴
- 雇用した年月日
- 退職した場合、退職年月日とその事由
が記載されていなければなりません。
◆賃金台帳には、給与支払いの都度(つまり毎月の給与を支払う度に)、労働日、労働時間(残業時間等を含む)、給与や天引き額などを記載します。
賃金台帳には、この「労働日」「労働時間」の記載が漏れていることが多く、これが労基署の臨検の際に是正を受けやすい事項ですので注意しましょう。
◆出勤簿とは、従業員の働いた日数、働いた時間、時間外労働等を把握するために作成します。単に出勤印のみを押印するだけでは、始業・終業の時刻が明確でない為、臨検の際には是正指導を受けてしまいます。
【それ以外の書類の保存期間】
法定帳簿以外も、一定期間保存します。
退職金に関わる書類 5年間
雇用保険の資格得喪に関する書類 退職日から4年間、できれば7年間
労働保険のお金に関する書類や労災保険に関する書類 3年間
健康診断個人票 5年間
自社で必要な書類が備え付けられているか、今一度確認してみましょう。
会社の「安全配慮義務」
会社には、従業員の安全や健康に気を付けなければいけないという「安全配慮義務」があります。
・安全配慮義務違反とは
安全配慮義務とは、従業員が安全で健康に働くことができる環境を確保できるように配慮しなければならないという会社の義務を言います。
危険な作業で怪我をしないように気を付けることはもちろん、怪我以外でも長期間の残業や過度のストレスがかかるような状況がある場合には、会社はその状況を改善するように配慮しなければなりません。
もし、安全配慮をすべき状況であるとわかっていながら会社が何も対策をせずに放置して、従業員が倒れてしまうようなことになってしまえば、会社は「安全配慮義務違反」として従業員やその家族から訴えられて、多額の損害賠償を請求されてしまう可能性もあります。安全配慮義務違反は、労働者側からの訴えの一つの拠り所となるものです。
安全配慮で特に注意すべき事項:
長時間勤務や残業・休日出勤時間に特に注意すべきです。
長時間働いていたために心疾患や脳疾患を患い、またはうつ病を発症したり、最悪の場合、病気による死亡や自殺に至ってしまうケースなどがあります。
従業員がストレスを溜め込んで体調を崩すのは、その原因の全てが会社にあるとは限りませんが、長時間労働やパワハラが無関係とも言えないでしょう。
特に、月80時間超える時間外労働は「過労死」との因果関係が出てくるため注意が必要です。
行政では、過労死について仕事との関連性が高いかどうかを一定の判断基準を設けています。
・過労死の確認基準
発症前1ヶ月から6ヶ月にわたって、1ヶ月あたりおおむね45時間を超えた時間外労働があった場合
⇒仕事との関連性が徐々に強まる
発症前1ヶ月間におおむね、100時間の時間外労働または発症前2ヶ月から6ヶ月にわたって、1ヶ月あたりおおむね80時間を超えた時間外労働があった場合
⇒仕事との関連性が強い
長時間労働を抑制しつつ、生産効率を高めるための取組に注力することは簡単ではありませんが、「安全配慮」の面からも「労働生産性」の面からも大切なことです。
親の介護で休みたいとの申し出があったら?
育児介護休業法により、一定の労働者には介護休業を取得する権利があります。
会社へ介護休業の申し出が出来るのは、育児休業と同じく日雇い労働者を除く男女すべての従業員です。
正社員だけではなく、下記の要件を満たしていれば期間契約社員、パート、アルバイトも介護休業の申し出が出来ます。
1、 勤続年数1年以上
2、 介護休業開始予定日から93日を超えて引き続き雇用が見込まれること
つまり、上記に該当するパート、アルバイトにも介護休業を取る権利があることになります。
介護休業の期間:
介護休業ができる期間は、対象家族1人につき、「要介護状態」になるごとに1回、通算93日までの介護休業をすることができます。
要介護状態とは:
介護休業を取れる「要介護状態」とは、病気や身体・精神上の障害により、2週間以上常時介護を必要とする状態をいいます。
休業中の給与は支払うべきか:
育児休業中と同じく、介護休業中もやはり「ノーワーク ノーペイの原則」で、休んだ分について給与を支払う必要はありません。
雇用保険から介護休業基本給付金について:
従業員に給与が支払われない期間の補償として、雇用保険から給与の約40%をカバーする介護休業給付金が支給されます。
介護休業期間中の社会保険料について:
育児休業とは違い、介護休業期間中は社会保険料の免除はありません。
介護休業にかぎったことではありませんが、病気やケガなどで長い欠勤が続く場合も含め、休んでいる期間の社会保険料をどのように徴収するか、会社で約束ごとをつくっておくとよいでしょう。
休業が明けた後の給与から控除するか、毎月期日を決めて会社に振り込みかなど会社独自で決めておきましょう。
・介護休暇制度について
長期の休業は必要はないけれど、直接の介護だけでなく、対象家族の通院の付き添いのためなどに休みがに必要な場合で従業員が「この日に介護休暇をほしい」と会社に申し出た場合は、対象家族が1人であれば年5日まで、2人以上であれば年10日まで、1日単位で介護休暇を取得させなければなりません。
介護休暇の申し出か出来るのは、日雇い労働者を除く、男女全ての従業員です。
また、労使協定がある場合は「子の介護休暇」と同じく次の従業員からの申し出は断ることができます。
1、 勤続年数6ヶ月未満の従業員
2、 週の所定労働日数が2日以下の従業員
「退職証明書」の話
会社では、退職者や退職願を受理した従業員から請求があった場合には、すぐに「退職証明書」を発行しなければならないということが義務付けられています。
この「退職証明書」とは、労働基準法で以下の様に定められたものです。
根拠となる条文:
(退職時等の証明)
第22条
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
つまり、前職で働いていた条件などを証明するものです。労働力の移動への障壁が低くなりつつある現在では、再就職先でこの退職証明書の提出を求めるケースもそう多くはないと思われますが、それでも「退職者本人が求めれば」会社はこれらを証明しなければならないという決まりになっています。
退職証明書に記載する内容:
退職証明書に記載する内容は下記のとおり法律で決められていますが、「退職者が請求していない項目は記載してはいけない」という点に注意が必要です。
1、 勤務していた期間
2、 業務の種類
3、 会社での地位
4、 給与
5、 退職の事由(解雇の場合はその理由も含む)
例えば、5、退職の事由について「書いてほしくない、証明してほしくない」と退職者から申出があれば、その内容は記載してはいけないことになります。
ちなみに、退職証明書を請求できる期間が決まっています。
請求できる期間は退職後2年以内です。
この点で、退職しても2年間は、元従業員の情報は保管しておかなければならないということになります。
ノーワーク・ノーペイの原則とは
労働者の労働に対して、会社は給与の支払い義務があります。逆に労働がなかった部分に関しては、会社は給与を支払う必要はありません。これをノーワーク・ノーペイの原則といます。従業員が遅刻や欠勤をした場合、会社はその部分に関し、給与を支払わなくても良いのです。
公共交通機関が原因で遅刻をした場合は、遅刻扱いにしないという会社もありますが、法律でそのように取り扱うことが定められているわけではありません。従って、どのような理由であれ、遅刻分の給与を支払わないことに問題はありません。
しかし、「遅延証明書があれば遅刻扱いにならない」と考えている場合が多いので、事前に周知させておくことが大切です。
しかし、このノーワーク・ノーペイの原則にも例外があります。「働けない原因」が会社にある場合です。もともと、出勤予定であったのに働けなくなると、従業員は1日分の給与を受け取ることが出来ず、給与がもらえないことは従業員の生活を脅かすこととなります。よって、休業の責任が会社にある場合には、1日につき平均賃金の60%以上を「休業手当」として支給しなければなりません。
「休業手当」の支払い義務が生じるのは、「働けない原因」が会社にある場合にのみです。地震や台風などの天災事変の不可抗力によるものや、法令に基づく休業(新型インフルエンザに罹患した従業員を休ませる等)は、会社の責任ではないので、「休業手当」の支払いは必要ありません。
では、経営悪化によって従業員を休ませる場合はどうでしょうか。原料や資金不足による休業、親会社の経営難により資材が獲得できず休業、監督官庁の勧告による操業停止、いずれも原因は会社にあるとされます。したがって、経営悪化の休業は「休業手当」の支払い義務が生じます。
以上、ノーワーク・ノーペイの原則についてでした。
賃金や労働時間などの労働条件は口頭の説明だけでよいか?
労働条件の書面通知義務:
労働条件のうち、勤務時間、契約期間、給料といった重要な事項については、雇入れ時に書面での条件通知をしなければなりません。後々に労働条件を巡る労使トラブルが起こらないためにも、書面の交付または取り交わしをしましょう。
書面で通知しなければばらない事項
1、労働契約の期間(契約期間がある場合は、労働契約を更新する場合の基準)
2、就業の場所・従事する業務の内容
3、労働時間に関する事項(始業・終業時刻、早出や残業など所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合の就業時転換に関する事項
4、賃金の決定、計算、支払い方法、賃金の締切・支払いの時期
5、退職に関する事項(解雇となる事由も含む)
また、パートタイマーには下記3つの内容も書面にて通知しなければなりません。
1、昇給の有無
2、退職手当の有無
3、賞与の有無
※口頭でも構わないが、必ず通知しなければいけない事項
・昇給に関する事項
会社で決まりがある場合には書面で通知しなければならない事項
・退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払い方法および支払い時期
・臨時に支払われる賃金、賞与および最低賃金額に関する事項
・労働者に負担される食費、作業用品などに関する事項
・安全・衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰・制裁に関する事項
・休職に関する事項
労働条件通知書の保管方法
労働条件通知書は写しをとって会社に保管しておきましょう。
また、労働条件通知書は会社から労働者への一方的な通知ですが、その説明を労働者が受けたことを記録するために、労働者の署名などをもらっておくと尚良いでしょう。
社会保険の調査で調べられること
社会保険調査とは、年金事務所が会社に対して社会保険料を適切に納めているかを確認する調査です。この調査は、加入漏れや給与変更に伴う保険料変更手続きのし忘れなどの不適切な処理を発見し、正しい保険料を徴収するために行われます。
調査で確認される主なポイントは、①加入漏れと②報酬金額です。
(①加入漏れの確認)
まず、タイムカードから出勤状況がチェックされます。社会保険の加入基準は正社員の4分の3以上ですので、基準を超えて働いているパートがいないかチェックされます。一般に正社員は法定労働時間上限の「週40時間労働」のことが多く、この4分の3である「週30時間以上」働いている形跡がある場合、加入漏れの可能性を指摘されるでしょう。
さらに、源泉税納付書、賃金台帳、算定基礎届などの過去の届け出書類から、社会保険に加入すべき社員がきちんと加入しているかチェックされます。例えば源泉所得税納付書で30人の給与支払実績がありながら、社会保険加入者が10人であるなら、残り20人が社会保険非該当であるかを説明できなければなりません。
(②報酬金額の適性の確認)
また、報酬金額が正しく届出されているかも要チェックです。例えば給与額が30万円でありながら社会保険の標準報酬月額が20万円であるなら、その10万円の差額は指摘を受ける事項となるでしょう。
未加入者が発見された場合、過去2年遡って保険料負担が発生することがあります。保険料は本来、会社と社員が折半するものですが、会社の不手際で未加入であった場合、社員から折半の同意を得られるかはわかりません。
調査で指摘されたことを無視し続けた場合は、最悪財産を差し押さえられることがあります。無視をした以後は立ち入り調査の対象となり、ずっと目を付けられます。調査の結果、多額の保険料納付義務が発生したものの支払を無視し続ければ、差し押さえの可能性もあります。
会計検査院の調査
また、年金事務所が独自に行う調査のほかに、会計検査院の調査もあります。会計検査院の調査は、年金事務所が適切に業務を行っているか調査するため、非常に厳しくなります。社会保険調査の案内通知書を見れば、年金事務所か会計検査院のどちらの調査かが判断できます。会計検査院の場合、「今後加入を検討します」という回答は通りません。その場で書類を書かされる場合もあり、経営が苦しい会社にとっては死活問題となります。
社会保険調査に当たった場合上記の調査項目を中心に事前確認をしてください。
試用期間と契約期間
【試用期間】
試用期間は必ず設定しなければいけない項目ではありません。しかし、会社に適性があるか見極める期間として、多くの会社で試用期間を設けています。
この試用期間の長さは、会社で独自に決めることができます。しかし、あまりに長すぎると、従業員はいつ正社員になれるのか、不安を抱えたまま仕事をすることになります。一般には1年未満、できれば3~6か月が一般的でしょう。また、従業員の適正に応じて、試用期間を短縮・延長できるような制度をつくると良いでしょう。
【雇用契約期間】
期間を定めた雇用契約は、原則3年以内でなければなりません。契約期間を最大の3年とした場合、会社は3年間必ず雇用しなければなりません。従業員側は、3年間は働ける保障になります。
では、会社側に3年の雇用義務が生じる場合、従業員は3年間退職出来ないのでしょうか。法律では、従業員は契約開始から1年間を過ぎれば、退職の申し出が可能となっています。
有期雇用契約の場合は、試用期間というものは定めることができません。
たとえば1年間の有期雇用契約のうち、最初の3か月間を試用期間とするなどです。
試用期間とはそもそも、無期雇用に移行する前に有期の雇用期間を置いているのと同じようなことです。
上記のような例では、雇用契約期間が3か月なのか1年なのか分からなくなってしまいます。
このような場合は、最初に3か月の有期雇用期間を設定し、3か月が経過したら再度契約を更新して、残りの9カ月の契約を結ぶ方がいいでしょう。
雇用契約の原則は3年以内ですが、満60歳以上の労働者、医師や税理士等の例外的な職種の人は5年以内での契約期間が認められています。しかし、この例外となる人の場合、通常の契約社員と違い、雇用契約から1年間を過ぎても退職の申し出はできません。
また、道路工事などの事業の完了に5年を超える期間が必要な場合は、5年を超える契約期間が認められています。
契約の更新を繰り返している場合は、注意が必要です。更新を繰り返し、通算で5年を超えて更新した場合、従業員からの申し込みがあれば、期間の定めのない契約に転換しなければなりません。会社が認めるか認めないか問わず、従業員の申し込み時点で会社が承諾したとみなされます。
契約を更新するときは注意しましょう。
社員が裁判員となった時の取り扱い
平成21年5月から、裁判員制度が始まりました。
裁判員に選ばれた場合、裁判所から「呼び出し状」が送付されます。呼び出し状が届いた場合、辞退が認められなければ、指定された期日に裁判所に行かなければなりません。理由もなく欠席した場合は、10万円以下の過料に処せられる場合があります。
つまり、出社日と呼び出し期日が重なれば、会社を休まなくてはなりません。そして、会社はこれを拒否できません。なぜなら、裁判員に選ばれて裁判所に行く時間というのは、選挙の投票と同じ、労働基準法7条の「公民権行使の時間」にあたるからです。
公民権行使の時間を、有給とするか、無給とするかは会社の就業規則等で定める方法によります。労働基準法では、公民権行使の時間に対する賃金の取り扱いは特に定められていません。統計によると、現状では裁判員として参加した場合「有給扱いとする」会社が8割を占めます。また、特別休暇制を導入している会社は6割です。
裁判員として公務に当たった日については日当が支給されますが、それに加えて有給で処理する予定のケースが多いようです。
社員のだれもが裁判員になる可能性があります。そのためにも、社員が気兼ねなく裁判所に行けるよう、裁判員に選ばれた場合の休暇等取り扱いを明確にした方が良いでしょう。そのために、裁判員等の休暇規定を作成してみてはいかがでしょうか。
休暇に関する規定を作成する場合、1日単位の付与でなくても、裁判員として要した時間分だけ休暇を与えても問題ありません。
同時に、慣れない裁判員の仕事について精神的に負担があるかもしれません。裁判員休暇明けの勤務には一定の配慮をできると尚いいのではないでしょうか。
会社から一方的に給与を下げることはできるか?
労働契約は「労働者が労務を提供し、使用者が賃金を支払う」という約束事を指します。労働者は一定のお金が支払われることが条件で働いているので、会社からの一方的な賃金減額を認めてしまうと、労働者側からすれば「契約されていない賃金で働く」状態になってしまい、不合理です。つまり、特別な事情がなければ一方的な賃金減額は認められません。
弊所の事務所だよりにこういった記事を記載したところ、顧問先である安城市のスーパーからお問い合わせをいただきました。
「ではどのような場合がその"特別な事情"と認められるのでしょうか?」
特別な事情には以下のようなものがあります。
① 懲戒処分としての減額
ペナルティーを与える目的で行う場合
② 職能資格引き下げによる賃金減少
例えば役職者が降格し、その役職に対応する役職給が減額する場合など
③ 配転を行った結果としての賃金減少
営業職から事務職に配転し、営業手当がつかなくなる場合など
以上のような場合が特別な事情に当たります。
しかし、たとえどのような事情があったとしても、給料を下げるには就業規則などによる事前の取り決めが必要とされていますので注意が必要です。
「会社の業績低下による賃金引き下げ」はこの特別な事情に含まれるのでしょうか。
会社が存続するために賃金引き下げがやむをえない場合、会社は社員に賃金引き下げの必要性を説明して同意を得る努力をしなければなりません。会社としては、まずは賃金減額をしなくてもすむような措置を講じることが必要ですが、経営状態によっては難しい場合もあるでしょう。やむをえない時は、社員に賃金カットの必要性を理解してもらうことが大切です。社員も会社が倒産して職を失うよりは、賃金が下がっても雇用を維持してもらう方が良いと考えてくれるかもしれません。
なお、引き下げに同意を得られた場合は、新たに引き下げた賃金での雇用契約締結をする等して、合意があった旨記録しておくとよいでしょう。
スーパーマーケットも大手モールの台頭などで苦戦されているところが多い中、安城のクライアントは、なるべくこういった措置無く、士気高く経営されています。するかしないかは別として、法律を知っているということは武器になるものです。
もちろん、深く知る必要はなく、我々専門家にご質問されることで学びがあるよう常にお答えするように心がけています。
外部の労働組合から団体交渉を申し込まれたら?
まず、労働組合とはどのような団体かを説明します。
「労働組合」とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他の経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合会」と労働組合法で定められています。つまり、労働者の権利保護や働く環境の改善のために団結した集団ということになるでしょう。また、「団体交渉」とは、労働組合が会社と労働条件等について交渉する行為を指します。
通常は「団体交渉申入書」という書面が会社に送られることで団体交渉が始まることになります。
交渉拒否ができるか:
団体交渉を求められた場合、使用者は正当な理由なく拒むことができません。団体交渉を特に理由なく拒むことは「不当労働行為」として法律上禁止されているからです。
さらに、労働組合の構成員は自社単一の社員に限るという定めはないので、加入者に自社社員がいれば、外部の労働組合の交渉も応じなければなりません。
では、解雇された元従業員が労働組合に加入し、団体交渉を求めた場合はどうでしょうか。元社員なので「雇用する労働者」とは言えません。
しかし、不当解雇で争っている場合や、未払い賃金等で争いがある場合には、その範囲で「雇用する労働者」とされます。よって元社員であっても、使用者は団体交渉に応じる義務があります。
団体交渉を拒否した場合:
団体交渉を拒否すると、労働組合は労働委員会に団交応諾の救済申立が出来ます。この申立を受けた労働委員会は、労働組合が法に適した団体であり、当該会社の労働者がその組合に加入していれば、会社に対して救済命令を出します。
したがって、結局、団体交渉に応じなければならなくなります。
団体交渉のすすめかた:
会社側は最初から弱腰にならず、法律違反事実を確認し、改善策を見出す努力が必要です。法律違反については正す努力をしつつも、あまり感情的にならず、論理的に話を進めるように心がけましょう。なかなか交渉がまとまらない場合は、ADR等、第三者の専門家も交えての紛争解決手段を利用するのも良いでしょう。
減給の上限
刈谷市のホームページ業者さまでトラブルが発生し、以下のご質問をいただきました。
【Q】
減給制裁に上限はないのか。
【A】
上限はあります。平均給与の1日分の範囲内で、かつ月給の10分の1以内でなければなりません。
(解説)
【ノーワーク・ノーペイの原則】
ノーワーク・ノーペイの原則とは「労働なければ賃金なし」という原則です。会社は社員に給料を支払っています。社員は給料をもらう代償として、労務を提供します。このような双務契約ですから、労務の提供がない部分については、賃金を支払う必要はありません。
しかし、減給には上限があります。なぜなら、給料は社員の生活基盤を支えるものだからです。無制限に減給をしてしまうと、社員の生活が不安定になってしまいます。
減給の上限(労働基準法91条)
①1回の額が、平均賃金の一日分の半額を超えないこと
②一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の合計が総額の10分の1を超えないこと
※法定の上限を超える制裁は、超えた部分につき無効とされます。なお、遅刻や早退の時間に対する賃金を支払わないことは、「制裁」とならないので、制限はありません。
【例】20分遅刻した場合に月給の3分の1を減給した。
労働基準法違反で無効な処分となります。しかし、すべて無効ではなく、法定内の部分の減給は有効です。平均賃金の1日分の半額以内で、月給の10分の1以内の減給は可能となります。
→減給は効果的な制裁方法ですが、運用は慎重に行う必要があります。就業規則等制裁規定を設ける場合は、制裁される具体的な項目の適否を事前に調べておくと良いでしょう。また、減給規定については、その額についてきちんと定めておくことも大切です。
幸いにも刈谷市のホームページ業者さまのトラブルはそれほど大事にならず、再発防止策をマニュアル化することで解決出来そうでした。
トラブルは発生しそうな時、直後にご相談いただければ最善手が打てます。こういった相談を専門家にできるかどうかも経営者の手腕だといえますね。
なぜ裁判になると休業手当を100%支払うことになるのか?
本来、労働日である日に、会社の都合で労働者を休ませた場合は平均賃金の60%の休業手当を支払わなければなりません。
ところが、これを支払わずに、労働者から裁判を起こされると会社は60%ではなく、100%分の給与を支払わなくてはならなくなります。
なんだか、交通事故の補償基準と似てますね(交通事故でも裁判上の保障基準と保険会社の保証基準はかなり差があるため、被害者が裁判を起こすアクションをとりかけた時に慌てて保険会社が保証額を妥協するといったことがあるようです)。
【民法536条2項】
債権者の責めに帰すべき事由に因りて、履行を為すこと能はざるに至りたるときは債務者は、反対給付を受ける権利を失わず。
但し、自己の債務を免れたるに因りて利益を得たるときは、之を債権者に償還することを要す。
ここでいう債権者とは、使用者(会社)のことです。
債務者とは、労働者(社員)のことです。
つまり、労働者は労働することを約束して、その反対給付として賃金を受け取るという契約を使用者との間に結んでいる債務者なのです。
ところが、債権者である使用者側が「やっぱり今日は働かなくてもいいよ」と言ってきたときに、債務者の受け取る反対給付(賃金)の権利まで無くなってしまうかというと、そうはいかないということをこの条文は意味しています。
ですから、実際に民事裁判を起こされれば、この条文に基づいて100%の賃金を補償することを要求されることになります。
労働基準法第26条の休業手当6割とは矛盾すると思われるかもしれませんが、同じ「使用者の責めに帰すべき休業」でも、労基法と民法とではその範囲が異なると解されています。
民法536条→(使用者の故意・過失、または信義則上これと同一視すべき事由)
労働基準法第26条→(上記の事由に加えて、経営管理上の障害による事由も含む)
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従業員の健康診断
会社は、従業員の健康に配慮しなければなりません。自らの健康を測るための健康診断について、法律ではどのように決まっているのでしょうか。
【労働安全衛生法上の健康診断】
労働安全衛生法という法律では、以下の健康診断を実施することが義務付けられています。
1.雇入れ時の健康診断
従業員を雇い入れる際、健康診断を受診させなければなりません。ただし、従業員が入社日前3ヶ月以内に健康診断を受診している場合、受診結果を証明する書面を提出すれば、受診させる必要はありません。
2.定期健康診断
1年に1回、定期に健康診断を受診させなければなりません。この場合の健康診断は、原則として会社の負担で行わなければなりません。この健康診断は、従業員の一般的な健康維持増進を目的としているため、健康診断中の賃金の支払いは義務ではなく、労使の話し合いで決められます。
必要な受診項目は、以下の通りです。
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
④ 胸部エックス線検査及び喀痰検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 貧血検査
⑦ 肝機能検査
⑧ 血中脂質検査
⑨ 血糖検査
⑩ 尿検査
⑪ 心電図検査
3.特定業務(深夜業など)を含む勤務をしている従業員の健康診断
労働者が深夜業を含む勤務形態、または坑内や著しい寒冷地や暑熱地で働いている場合など特定の業務形態の場合は、その業務への配置換えの際、ならびに6ヵ月に1回の頻度で健康診断を受けさせなければなりません。
この場合、前述の定期健康診断と違い、業務遂行のために特殊な環境下での労働を求めている以上、その費用を会社が負担するのはもちろんのこと、健康診断中の賃金も会社が負担するべきとされています。
4.有機溶剤や石綿などを取り扱う有害業務従事者に対する特殊健康診断
有機溶剤や石綿など特定の化学物質等を取り扱う業務に従事する労働者には、それぞれ特殊な項目による特殊健康診断を受診させなければなりません。この健康診断についても、特定業務の健康診断と同様に会社費用負担、ならびに受診中の賃金支払いが必要です。
Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?
A.
(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)
(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
上記(1)と(2)のどちらも満たす場合、常時使用する労働者となりますが、上記の(2)に該当しない場合であっても、上記の(1)に該当し、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。なお、労働者派遣事業法に基づく派遣労働者についての一般健康診断は、労働者の派遣元の事業場で実施し、有害業務従事労働者についての健康診断は派遣先の事業場で実施することとなります。
社会保険に加入しなければならない会社とは
社会保険といえば、通常は健康保険と厚生年金保険の総称として使われます(これに対して労働保険は労災保険と雇用保険の総称です)。この社会保険は、どのような会社が加入しなければならないのでしょうか。以下、加入条件について説明します。
【原則】
① 法人企業で、常時従業員を雇っている会社は強制加入。
(たとえ社長1人の会社でも強制加入となります。)
② 個人事業で、常時5人以上の従業員を雇っている会社は強制加入。
【例外】
③ 個人事業で、常時5人未満の従業員を雇っている会社は強制加入ではないが、加入したければ任意に加入もできる。
④ 個人事業のうち、以下業種は従業員数に関わらず強制加入ではないが、加入したければ任意に加入できる。
- 第一次産業:農業、水産、畜産業
- 接客娯楽業:旅館、料理店、飲食店、理容業等
- 法務業:弁護士、税理士等
- 宗教業
保険制度である以上、加入者が多いほうが制度維持のためになるので、従業員5人以上の個人事業または法人企業は強制適用となっています。一方で、個人事業のうち、上記の一部業種においては、社会保険は任意適用となっています。
【強制加入なのに加入していない場合はどうなるか】
日本年金機構による適用促進調査などにより、強制的に加入となる場合があります。なお、場合によっては適用時に遡って加入することもあります。平成24年度現在、日本年金機構による適用促進が厳格化している傾向があります。
休業手当の未払いにご用心
●休業手当未払いで日野自動車に労基署が是正勧告
減産などの影響により工場の操業を数日間停止した際、期間従業員に支払うべき休業手当を支払っていなかったとして、日野自動車が、八王子労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けました。
★使用者の責に帰すべき事由により休業する場合は、休業期間中は平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならない。(労基法第26条)
上記の事例に対し、顧問先である安城市の運送業の経営者さまから追加でご質問をいただきました。
内容は、「日給月給や日給の社員の出勤日を減らして、その分給与を減額してもいいのでしょうか?」です。
答え:×
給与の計算方法が日給月給制であれ、日給制であれ、<u><b>労働契約上労働義務がある時間</b></u>について、<u><b>使用者の指示により</b></u>労働者が労働できなくなった場合は、休業手当の支払義務が発生します。
(例)所定休日を土曜日と日曜日と労働契約で定めた日給1万円の社員を、仕事の発注量が少なかったために、ある週に3日しか働かせなかった場合、
日月火水木金土
休休休出出出休
この場合、月曜日と火曜日については「使用者の責に帰すべき事由により休業する場合」に該当しますので、平均賃金の60%以上の休業手当の支払義務が発生します。
ちなみに、同じように月曜日と火曜日を休業した場合でも、本人が風邪をひいて休んだ場合には、休業手当を支払う必要はありません。
休業手当を支払う義務があるかないかは、その休業が、使用者の指示によるものか、労働者の意志によるものかで決まります。
では、平均賃金の60%とはこの場合いくらになるのでしょうか?
日給1万円だから6千円、ではありません。
平均賃金とは・・・・算定事由発生日以前3ヶ月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間中の総日数で除した金額
(例)
休業があった日を2008年の12月8日とします。
賃金締切日は毎月末日であったとします。
この場合は、直近の賃金締切日から3ヶ月間の給与を、その期間の総日数で割ります。
毎週土日が休みで、残業が一切無かったとすると、
9月分→22万円
10月分→23万円
11月分→20万円
合計→65万円
9~11月の総日数(休日も含んだすべての日数)は91日
65万/91=7142.8571円
これが平均賃金となります。
この60%ですので、4285.7142円
小数点以下を切捨てると60%を下回ることになってしまうため、小数点以下は切り上げる必要があります。
よってこの場合、休業手当は最低でも4286円が必要となります。
参考までにこれを支払わないことによるリスクを挙げておきます。
①労働者が労働基準監督署に訴えた場合
・30万円以下の罰金
②裁判所に民事訴訟を起こした場合
・使用者の責めに帰すべき事由による休業に対する賃金全額(100%)の支払
・上記金額と同一額の付加金
・上記金額に対する年率14.5%の遅延利息
なお、①と②はどちらか一方だけが発生するとは限りません。国からは罰金を取られ、その上本人に対しては60%ではなく100%の賃金プラス同額の付加金(併せて200%)とその遅延利息の支払を裁判所から命じられる可能性があります。
このようなリスクを回避するためには以下のような対策が考えられます。
・労働者の意志で休業させた場合には、書面で休暇願を書かせる
・会社側の都合で休業させた場合には、法定された分の休業手当を支払う
・労働者の過半数を代表する者(又は労働組合)との間で、休業手当の額などを定めた休業協定を締結しておく
・雇入の際に所定労働日と所定休日、所定労働時間を明確に定めた雇用契約書を交わしておく
・就業規則に所定労働日と所定休日、所定労働時間を明確に定めておく
なお、生産量の減少幅等が一定の基準を満たした場合には、雇用調整助成金により、休業手当相当額の一部を国から補助を受けることができますので、それらを活用することで会社の負担を軽減することが可能です。
このように安城市の運送会社さまにご説明しご納得頂きました。
労働時間の原則
会社は従業員を際限なく働かせることはできません。
労働時間については、次のような法律上の制限があります。
【原則】
- 使用者は労働者に、休憩時間を除き1週間40時間を超えて労働させてはならない。
- 使用者は労働者に、休憩時間を除き1日8時間を超えて労働させてはならない。
つまり労働時間は、[1週間40時間かつ1日8時間以内]でなければなりません。
これを法定労働時間といいます。この法定労働時間には次のような例外があります。
【例外】
常時10人未満の労働者を試用する次の事業については、1週間44時間が上限となる。
- 商業
卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、駐車場業、不動産管理業、
出版業(印刷部門を除く)、その他の商業 - 映画・演劇業
映画の映写、演劇、その他興業の事業(映画製作・ビデオ製作の事業を除く) - 保健衛生業
病院、診療所、保育園、老人ホーム等の社会福祉施設、
浴場業(個室付き浴場業を除く)、その他の保健衛生業 - 接客娯楽業
旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業
労働基準法は、昭和63年に大きな改正が行われ、
法定労働時間が「週48時間」から「週40時間」になりました。
1日の法定労働時間が8時間なので、法律が想定しているのが
「週休1日制」から「週休2日制」へ変わったとも言えます。
週44時間の例外は、いわば法改正の名残でしょう。
週40時間か、週44時間かによって、会社側からすれば残業代支払いや
休日に影響がありますので、あえて10人未満に抑える場合もあります。
労働時間については、様々な特例や複雑な計算方法などがあり、しかも労働者からの残業代請求の引き金となりますので、専門家の指導によるリスクヘッジがとても重要です。
妊産婦雇用の話
労働基準法では、母体保護の観点から、妊娠中の女性の労働について制限が設けられています。
<産前産後の就業制限>
•会社は、出産予定日の6週間前の女性が休みを申請した場合、就業させてはならない。
(双子以上の場合は14週間)
•会社は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。
ただし、産後6週間を経過した女性が申請した場合、
医師が問題ないと認めた業務に就かせることができる。
[出産前] 妊婦さんが休みを申請しなければ、産気づく直前まで就業させることができる。
[産後6週間] 産婦さんが休みの申請をしなくても、休ませなければならない。
[6~8週間] 本人が復帰を希望し、医者が大丈夫と認めた場合のみ、就業させることができる。
なお、この産前産後の日数カウントには、以下のようなルールがあります。
•産前6週間のカウントは、出産予定日を基準とする。
•産後8週間のカウントは、現実の出産日を基準とする。
•出産日当日は産前6週間に含まれる。
•出産予定日よりも遅れて出産した場合、
予定日から出産当日までの期間は産前の休業に含まれる。
例)出産予定日が7月1日、現実の出産日が7月3日だった場合
産前休業:5月21日~7月3日(6週間)
産後休業:7月4日~8月28日(8週間)
なお、育児休業期間は、「産後休業が終わった翌日~子供が1歳になるまで」を指します。
以上、妊産婦雇用についてでした。
年少者雇用の話
労働基準法では、労働契約を結ぶことができる年齢に制限が設けられています。
【中学校卒業までは原則雇用禁止】
原則として、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、
つまり中学校を卒業するまでは雇用してはならないことになっています。
ただし、次のような例外があります。
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<満13歳以上の児童を雇ってもいいケース>
以下のすべてを満たした場合。
•非工業的な業種であること
•児童の健康及び福祉に有害ではなく、労働が軽微なものであること
•労働基準監督署長の許可を受けていること
•修学時間外に使用すること
例えば、中学生を新聞配達員として雇うことは、
労働基準監督署長の許可を得た上であれば可能ということです。
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<満13歳未満でも雇っていいケース>
•映画の製作、演劇の事業であること
•児童の健康及び福祉に有害でなく、労働が軽微なものであること
•所轄労働基準監督署長の許可を受けていること
•修学時間外に使用すること
例えば、ドラマに出る子役やアイドルグループなどはこれに該当します。
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【高校卒業までは証明書が必要】
高校生以下を雇用する時は、以下のように規定されています。
•満18歳未満の人には、年齢確認のため、戸籍証明書を提出してもらうこと
•満15歳の年度末までの児童には、戸籍証明書に加え、
修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書および
親権者か後見人の同意書を提出してもらうこと
以上、年少者雇用についてでした。
36協定の話②
36協定の労働時間の限度については、厚生労働省によって以下の基準が設けられています。
【基準】
<原則>
1週間:15時間
4週間:43時間
1ヶ月間:45時間
3ヶ月間:120時間
1年間:360時間
<1年単位の変形労働時間制を採用する場合>
1週間:14時間
4週間:40時間
1ヶ月間:42時間
3ヶ月間:110時間
1年間:320時間
36協定を締結する時は、基本的にこの限度基準を守らなくてはいけません。
ただし、1ヶ月45時間ですと【1日あたり2時間程度】の残業しか認められない計算になるため、
繁忙期には限度を超えてしまいがちです。
限度基準を超えてしまう場合には、その旨をきちんと届け出ましょう。
届け出ることで、免罰効果が得られます。それが「特別条項付の36協定」です。
【特別条項付の36協定とは】
特別条項とは、簡単に言えば以下のようなことです。
「基本的には厚生労働省の定める限度基準を守るけれど、あまりに忙しい
◯◯のようなことがある時は、△△時間を限度としてさらに残業させることがあります」
なお、この内容については、経営者と労働者できちんと話し合う必要があります。
このように付記すると、36協定の限度時間枠を広げることができるのです。
【特別条項さえあれば、いくらでも限度枠を広げることができるか】
特別条項で限度時間を広げたとしても、それはあくまで一時的なことです。
「今後もずっと限度時間を超えてもいい」というわけではありませんので、注意が必要です。
超過には、1年間で半分までという回数制限が設けられています。
例)1ヶ月ごとに限度超過をする場合は、6ヶ月まで
また、健康配慮の観点から、月80時間を超える残業見込みは
労働安全衛生法において、行政指導の対象となる可能性があります。
36協定は、事業所ごとの特性に合わせて慎重に検討をしてください。
以上36協定について②でした。
36協定の話①
労働基準法では、「1日・1週間あたり●時間まで勤務させてよい」と定められています。
これを法定労働時間といいます。
【法定労働時間】
1日の限度 : 8時間
1週間の限度 : 40時間
※次の業種のうち、社員数が【9人以下】の場合、
特別に【1週間で44時間】まで勤務させることができます。
⑴小売・卸売・理美容などの商業
⑵映画館・演劇業など
⑶病院などの保健衛生業
⑷旅館、飲食店などの接客娯楽業
これを「法定労働時間」といいますが、法定労働時間を上回る労働時間を定めても
それは無効となりますので注意しましょう。
【36協定とは何か】
36協定という名称は通称であり、正式には時間外労働・休日労働に関する協定届といいます。
前述の法定労働時間を超えて労働をさせることがある場合(また休日労働をさせる場合)、
その詳細をあらかじめ労働基準監督署に届け出なければならない旨が労働基準法第36条
に定められているため、このように呼ばれます。
【36協定の要件と効果】
36協定では、以下の事項を定める必要があります。
(1)時間外(休日)労働をさせる必要のある具体的事由
(2)時間外(休日)労働をさせる必要のある業務の種類
(3)時間外(休日)労働をさせる必要のある労働者数(満18歳以上の者)
(4)時間外労働の上限
(a)1日あたり
(b)1日~3ヶ月あたり(起算日も必要)
(c)1年間あたり(起算日も必要)
(5)協定の有効期間
また、その他にも以下のような記載事項が必要になります。
•事業の種類
•事業の名称
•事業の所在地
•協定の当事者である労働組合の名称または労働者の職名・氏名
•協定の当事者の選出方法
•使用者の職名・氏名(記名押印もしくは直筆署名)
•協定の成立年月日
36協定は「法定労働時間を超える残業をしても『罰せられない』」という免罰効果があります。
別の言い方をすれば、36協定を届け出していない場合は(たとえ適法に残業代を支払っていたとしても)罰せられるということになります。
以上36協定について①でした。
社会保険の加入要件の話
以下の民間企業は、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する必要があります。
•個人事業(従業員5人以上)
•法人企業(従業員の数は問わない)
また、社会保険には「被保険者」となる基準が定められています。
その基準とは、どのようなものでしょうか。
まず、正社員は社会保険被保険者となります。
正社員以外は、主に以下2つの条件でしたら加入しなくてよいとされています。
【1.正社員と比べて「労働時間」か「労働日数」が3/4未満の者】
(a)正社員の週あたり所定労働時間が40時間の場合
【40時間 × 3/4 = 40時間】未満
(b)正社員の月あたり所定労働日数が22日の場合
【22日 × 3/4 = 16.5日】未満
パートタイマーの労働条件について、上記の「時間」または「日数」をひとつの基準として社会保険加入の有無を判断してください。なお、社会保険加入に関する行政調査の際には、契約上よりも実態を元に適用を判断されます。
つまり、たとえ契約上は社会保険に加入しなくてもよい場合でも、
実態として基準を超えていれば加入しなければならないことになります。
そのため、社会保険加入基準ギリギリのパートタイマーについては、
時間などの管理を厳格に行うことが必要です。
補足として、前述の労働時間(週30時間未満)を基準とする場合、
その30時間を月に換算すると概ね「130時間」となります。
月次の労働時間を見て130時間を超えている場合、
社会保険の加入義務があると判断されますので、参考にしてください。
また、前述の(a)(b)は「どちらかひとつを満した」場合は適用除外となりますので、
社会保険に加入をしないためには「労働時間を抑える」か「労働日数を抑える」
かのどちらかの方法を取ればよいことになります。
【2.日雇い・二ヶ月以内の期間雇用者】
いわゆる期間雇用者などについては、上記のように適用除外要件が定められています。
その他にも要件はありますが、以上の2つを代表的なものとして覚えておくと便利です。
以上、社会保険の加入要件についてでした。
定年と再雇用の今を知る
老齢厚生年金の支給開始年齢引き上げや、社会保障と税一体改革など、
老後の年金をめぐる一連の議論は、当然に企業の定年・再雇用制度と深い関連性があります。
本稿では、定年・再雇用制度にまつわる現行法規を今一度概説し、
さらにそれが企業運営にどのように関係しているかを考察します。
【定年年齢の原則】
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事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、
当該定年は、六十歳を下回ることができない。(高年齢者雇用安定法第8条)
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上記の通り、定年は必ず定めなければならないものではありません。
もし定める場合は定年60歳を最低ラインとする旨が決められています。
【継続雇用制度】
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定年(六十五歳未満の者に限る。以下この条において同じ)の定めをしている事業主は…(中略)…
次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
(高年齢者雇用安定法第9条)
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一 、当該定年の引き上げ
二 、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、
当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 、当該定年の定めの廃止
現行法規では定年60歳という最低ラインをさらに上回る制度が求められています。
上記条文をわかり易く説明すると、以下のようになります。
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定年は60歳でもいいけれど、最低でも65歳までは
(正社員のままでなくてもいいので)引き続き働くチャンスを規定してください。
チャンスは会社の都合ばかりでなく、公平に与えてください。
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継続雇用(再雇用制度や勤務延長制度)するかしないかの基準は
労使協定により定めなければならないことになっています。
【経営上の関係性】
継続雇用制度を整備することは、以下三点において経営上の要検討課題となります。
① 人件費増加の可能性
② 従業員の世代交代への障壁
③ 退職金との関係
企業の年齢構成によっては、60歳以上の社員を引き続き雇用することで
単純に人件費の増加につながることもあります。
また、「技能継承の必要性」と「従業員の若返りの必要性」のバランスを取る上でも、
継続雇用制度の中身は慎重に検討する必要があります。
さらに、継続雇用者の退職金についての取り扱いが未整備の場合、
継続雇用制度の整備と併せて検討しなければなりません。
定年・再雇用制度についてのご不明は、お気軽に当事務所までお尋ねください。